SNSマーケティングインタビュー

結局一番重要なことは何?ホットリンクの ムロヤ氏が語るSNSマーケティングの肝心要

Shirofune広報担当
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「SNSマーケティングは、ただアカウント運用をすればいいという話ではありません。いい商品、いいサービスがあり、どんなお客様のどんな課題を解決するのか地味ですが、この本質が一番大事な部分なんです」

こう語るのは、SNSマーケティング支援サービスを行う株式会社ホットリンクの室谷 良平氏(以下、ムロヤ)。同社のマーケティング部長として、SNSマーケティングの研究・分析・メソッド開発や企業コンサルティングに従事しているという。

今回のインハウスマーケティングラボでは、

・SNSマーケで、再現性の高い施策を行うためのポイント
・口コミ発生を加速させる文脈づくり
・SNSマーケティングにおける「0→1」フェーズ、「1→10」フェーズ
・SNS広告で指名検索を増やす上での注意点

などについて、編集部の金森がホットリンクのムロヤ氏に伺った。

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SNSマーケティングの第1歩は、目的を明確にすること

金森:本日はよろしくお願いします。ムロヤさんの著書「1億人のSNSマーケティング バズを生み出す最強メソッド」も拝読いたしました。SNSマーケティングのノウハウが網羅されており、初めて知ったこともあり面白かったです。一方で、「SNSマーケの肝心要が知りたい」とも思いました。

本日は、著書にまつわることから、あまりソーシャルの場では語られていないことまでお伺いできればと思っています。

早速ですが、SNSマーケティングを始める際、まず何を押さえるべきですか?

ムロヤ:はい、ありがとうございます。

これは、よく聞かれる質問なんですが、「目的は何か」に尽きます。

・どの業界
・どんな商品
・どういった課題を解決したい

などの目的によって取るべき適切な手段は異なります。

例えば、自社のオリジナル商品を売っているECサイトの場合、お客様によるクチコミで宣伝してもらい、新たな顧客に自社の商品を買っていただいく目的があります。一方、モール系のECサイトの場合、他でも買える商品の口コミは「ここで買う」動機付けにはならないのであまり意味がないですよね。

まず、何を目的にSNSを活用するのか、社内で明確にしておく必要があると思います。

金森:なるほど、SNS運用に関わらず、目的が重要ですよね。ちなみに、口コミと言えば「口コミされやすい商材」と「口コミされにくい商材」があると思います。この点に関して、ムロヤさんはどのようにお考えですか?

口コミされやすい商材とされにくい商材の違い

口コミされやすい商材とは、「ご飯が美味しい」「カフェに行った」「この本がよかった」など、社会的に振る舞いやすく、言及のハードルが低い商材です。

また、単純に市場に出回っている商材の数が多ければ口コミは多く、手にとる量が多ければ口コミも多い側面もあると思います。

一方で、例えば「かつら」などの人知れず検索されるコンプレックス商材は社会に振る舞いにくいため、口コミされにくいです。

◾️ 口コミされやすい商材の共通点

・心理的なハードルが低く、社会に振る舞いやすい(グルメ、旅行、本etc.)
・商品の流通量が多い

◾️ 口コミされにくい商材の共通点

・心理的なハードルが高く、社会に振る舞いにくい(カツラ、アンチエイジング系コスメetc.)
・商品の流通量が少ない

SNSマーケティングに勝ちパターンはあるのか

金森:ありがとうございます。ホットリンクさんでは、SNSマーケティング支援はどんなことを行うのですか?貴社で蓄積している勝ちパターンを軸に、お客様に合わせて支援するイメージでしょうか。

ムロヤ:ホットリンクで行う支援の内容、流れについて簡単に説明します。

まず目的・目標やクライアントのマーケティング戦略を踏まえ、その全体設計に基づきお客様の業界特有の消費者行動を分析し、SNS活用におけるKPI設計やどのSNSをどのように活用するか等、SNSの活用戦略の策定を進めます。

その上で、

・UGC(一般ユーザーによって作れられたコンテンツ)創出のためのソーシャルビッグデータ分析
・UGC創出に向けた各種施策の立案・実行

などの具体的なSNSマーケティングの戦略・実行方法をお客様に向けてアドバイスしています。

SNSマーケティングに関するフレームワークもあります。ただ、全てのケースでまったく同じフレームワークが適用できるわけではありませんので、それぞれのお客様の業界や状況に応じて設計しています。

再現性の高いSNSマーケ施策、2つのポイント

金森:お客様によってケースバイケースな一面がある一方で、比較的、再現性高く成果が出るSNSマーケティングの施策はありますか?

ムロヤ:基本的にやってみない限り、どのような施策の再現性が高いかは、断言はできません。ただ、SNSに関する知見やこれまでの実戦経験から、ULSSAS(ウルサス)などのセオリーがあります。

また、弊社はソーシャルビッグデータや数多くのクライアントの支援実績を持っているため、商材ごとにどのような会話がされているかや口コミを探れば、施策の大きな方向性が見えてきます。

ソーシャルリスニングから、どんな会話の文脈にのるのか、話す角度、切り口などを抽出しておき、人々の口に発しやすい方向にしていく。

例えばバズが起きたとき、ユーザーが商品を欲しいと思うバズでない限り、直接的な売上にはつながらないです。マーケティングの観点で、そのバズが売上につながるロジックなのかどうかを見極める必要があります。

コンテンツが盛り上がっても、売上が上がらなければ意味がありませんし、そもそも口コミがなければ話題にもならない。この2つは両輪でやっていくべきことだと思いますね。

■ 再現性の高い施策にするための2つのポイント

・売上につながるロジックになっているか
・人が口に発しやすい文脈や言葉をとらえることができているか

SNSマーケティングで、意識すべき「言及文脈」とは

いつでもブレない鉄則、まずはプロダクトありき

金森:ホットリンクさんがどのように支援されているかイメージがつきました。ちなみに、もし自社のみでSNSマーケティングを行うとなった際、始めにやるべきことは何でしょうか?

ムロヤ:アーンドメディアの観点を前提に話をしますね。例えば、専用のツールや高度な知識はなくても、自分の商品名でエゴサーチして、そもそも口コミが発生しているかを見るなど、やれることはいくつもあります。ただ、やはり商材と業態などによって施策は違います。

例えば、Shirofune社のような企業向けにSaaSを提供している企業ならば、まずは「うちだったらSNSをどう使ったらいいのか」という課題意識は一旦忘れて、ターゲット企業のマーケターがどんな風に口コミをするのかを想像してみる良いでしょう。

プロダクトとして良いのは前提で、そもそもプロダクトへの認知がないと会話に出ることはありません。0→1フェーズだったらまずは営業や他マーケ施策でユーザー数を増やすなり、地道に手に取ってくれている人を積み重ねていきましょう。

またBtoBの場合は、会話に出るためにはコンテンツ力が必要です。話題に値する導入事例や成功事例を積み上げて、他の企業も使っていることを認知させ、会話に出しやすい、口コミしやすいテーマにしていく

その後、徐々にリツイートされ、広告運用者界隈にも評判が広がったりしていきます。0→1フェーズと、1→10フェーズとで、やることは変わってきます。

■ 「0→1」フェーズ:BtoB SaaS企業の場合

・プロダクトの良さを追求する→コンテンツ力を高める→SNSで拡散

ムロヤまずはプロダクトありき。その後コンテンツを作ってSNSで拡散。いい商品、いいサービスは、いつでもブレない鉄則です。当たり前すぎるんですけど、ここが抜けている場合が意外と多いんですよね。地味だからこそ、ここの部分で差をつけられるんです。

「1→10」フェーズでは、人間の行動を根源的に考える

金森:「0→1」フェーズが終わった後、「1→10」フェーズでは何を行うべきでしょうか?

ムロヤここも人間の行動を根源的に考えるとヒントがあります

どういう状況であれば

・会話に出されるか
・会話のテーマとして盛り上がるのか
・市場が盛り上がるのか

人にホットなトピックと認識してもらえないと、なかなか会話には出にくいです。

※広告運用自動化ツールShirofuneの例

商品自体のアピールはもちろん重要です。ですが、それだけでなく商品を取り巻く社会的な環境下の文脈にあるほうが、言葉に出してもらえる機会は増えます。様々な人の口に出してもらいやすい文脈形成が大事で、今だとメガトレンドはコロナ対策、SDGs、5Gなど、会話に出る回数は多いですよね。

そして、話す文脈を広げると、話す人も増えていきます。

例えば広告運用者向けの「自動化ツール」の文脈で提案をしていたShirofuneを、経営者向けに「DXのマーケティングソリューション」の文脈で提案をしてみる。経営者として会話に出しやすい文脈をとらえると、その文脈に乗ってプロダクトの評判が広がる可能性がありますよね。弊社では「言及文脈」と言っています。

以上のようにSNSマーケティング=アカウント運用だけではないんです。

SNS広告とアカウント運用の使い分け、広告媒体の理解

SNSの運用と広告の使い分け

金森:次から、もう少し実務面の質問です。SNSマーケティングでは、アカウント運用と広告運用の2パターンがあると思いますが、どのように使い分けを行うべきでしょうか?

ムロヤ:トリプルメディアのフレームワークで、整理するのが一番早いので紹介します。

口コミされにくい商材ならば、オウンドメディアやペイドメディアでリーチをとる。また、口コミされやすい商材でも、話題を後押しするためににSNS広告を利用する場合もありますね。目的や、予算規模などの現実的な制約にあわせて各種メディアというツールの使い分けを見極めるべきです。

ひとつの媒体をどう使うかより、全体のプランニングの中での各媒体の役割を考えることが重要です。

第三者に見てもらいやすい商材ならアカウント運用は有効で、そうではない商材の場合、広告が必要です。商材によってユーザー行動が決まります。

ユーザー行動によって、そのユーザーにリーチしたり適切なメッセージを届けられるようにメディアプランニングが決まってきます。メディアプランニングの最適な組み合わせは目的によって変わりますから。

顧客の認識や行動を理解していなければ、思うような成果は出ないと思います。

Twitter、Facebook、Instagramなど広告媒体の使い分け

金森:やはり商材ありきですね。もう少し、主要SNS広告の運用について掘り下げたく。SNS広告媒体ごとの使い分けについて、どのようにお考えですか?

ムロヤ:ユーザーの年齢層や商材などに応じてコミュニケーションしやすい媒体は決まってきますよね。例えばシニア向けであれば、ユーザー特性的にFacebook広告など。

Facebook広告は、ブランディングはもちろん、管理画面でできる設定が優秀なので、獲得系のマーケにもおすすめです。

Twitter広告は、アーンドメディアを活性化させるなど、話題化させることが得意ですよね。ただ、Twitterの場合、FacebookやInstagramより、管理画面が上手に作られてないので、細かな設計がやりづらいデメリットはあります。

Twitter広告をうまく活用するには、ターゲット設計が命で、いかにターゲットがつぶやいているキーワードを抽出できるか、ターゲットがいそうなフォロワーを抽出できるかが肝なんです。ツイートのキーワードとアカウントデータをたくさん持った上で、Twitter広告の管理画面だけで出来ることの限界への理解がないと活用が難しい側面もあります。

Instagramも、ファッションやコスメなど、ユーザー特性に合わせた定番はあります。ユーザー数が3,300万人もいますし、Facebook広告と母体の機能は同じで優秀なので、ある程度どんな広告でも使えるとは思います。露出の際のクリエイティブ(動画やビジュアル的な見せ方)は工夫する必要がありますね。

SNS広告の活用で、指名検索数を増やすためには

金森:ちなみに、指名検索数と売上に相関性があると思うのですが、SNS広告の活用で指名検索を増加したい場合、注意すべきことはありますか?

ムロヤ:この点についても、シンプルに人間の根源的な行動を考えることです。指名検索する/しないのシーンなどを想像することによって、ありえない失敗は防げます。

よくある失敗例で、商品名が全然伝わらないことがあります。商品名を知らないと、検索ワードを入れられないじゃないですか。

あとは、その商品が欲しいと思ってもらえないと検索してもらえないので、興味関心、購入意向、検索意向が高まる訴求になっているかどうか。お客さまに深く刺さるような「商品を買う理由」、つまり便益訴求が必要です。

媒体のアルゴリズムや、プラットフォーマーの求める要素に沿ったコンテンツを作成など、小手先のハウツーばかりを考えてしまいがちですが、重要なことは基本の徹底

ダークソーシャルの対策と活用法

金森:ありがとうございます!最後にぜひ「ダークソーシャル」(参考記事:BtoBのダークソーシャルについて)についてもムロヤさんのご意見を伺いたく。ダークソーシャルでの拡散を狙って、何かをすることはありますか?

ムロヤ:ダークソーシャルと通常のSNSが異なる点は、クチコミが発生している環境がクローズドであることですよね。そのポイントを念頭に、ある程度は自身の経験から導き出せると思います

例えば社内のSlackで、

・自分はどんな記事をどんな理由でシェアしていたか
・同じチームのメンバーに「これ読んでおいて」と渡した記事はどんな記事だったのか、どんな動機があったのか

などを思い出してみてください。クローズドでもオープンでも、結局は誰と誰がどういう目的でどういう会話をしていて、会話のネタとしてどういうコンテンツ・出し方ならば良いのかを想像すると良いでしょう

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SNSマーケにつまずいたとき、ヒントが見つかる本

金森:本質を徹底する重要性を改めて実感しました。本日はありがとうございました!最後にぜひ、ムロヤさんの著書のご紹介をお願いします。

ムロヤ:ありがとうございます。

フリーランスのWebマーケティング専門コンサルタントである敷田憲司さんとの共著で、3月に発売されました。実は、いざ執筆が終わったあと、情報量が多すぎたかもしれないと思いました(笑)。でも、逆にいうと過去のSNSマーケティングの本と比べてもかなり網羅的な内容になったと思います。

何かにつまずいたとき、絶対どこかにヒントが書いてある。自分の方法が正しいかどうか、答えあわせができるようになっていると思います。

SNSマーケターの完全初心者向けというよりは、中級レベルの人向け。アカウント運用に限界を感じている人や、初級から中級の壁を乗り越えたい人にぜひ読んで欲しいです。

5年語、10年後に読んでも変わらない本質論を書きました。賞味期限の長い本にはなっていると思います。ぜひご一読くださいませ。

1億人のSNSマーケティング バズを生み出す最強メソッド

室谷 良平@rmuroya プロフィール
株式会社ホットリンク マーケティング本部マーケティング部 部長 。1988年生まれ。北海道長万部町出身。函館高専情報工学科を卒業後、新卒でオリンパスメディカルシステムズ株式会社に入社。医療機関向けIT製品の品質管理に従事。人材ベンチャーのウェルクスに転職後、キャリア事業の全サービスのSEOとUI/UXの統括を担う。 2019年に株式会社ホットリンクに入社し、支援企業のSNSコンサルティングや、SNSマーケティングの研究・分析・メソッド開発に従事している。

<取材=金森 悠介(@user_id_us)、文=安住 久美子(@081123tadatama)、編集=中島 孝輔(@KosukeNakajima_)>

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