広告主が求める、「営業力」の正体 〜読売連合広告社に学ぶ、必要とされ続ける代理店に欠かせないスタンスとは〜

かつらやウィッグなどの増毛商品の販売と、日本各地でサロンを運営する株式会社インクリーズヘアーは、Web広告の運用改善を、それまでのWeb専業の代理店から、総合広告代理店である読売連合広告社（以下：読連）に切り替えて依頼した。本記事ではその切り替えに至るまでの、読連の営業活動に焦点をあてる。

圧倒的な営業力を誇る同社は、なぜ長きに渡りクライアントからの支持を集めているのだろうか。新聞をはじめとするマス広告を中心に扱ってきた彼らは、どこに自社の強みを見出し、Web広告の受注へと繋げたのか。

インクリーズヘアーを20年に渡り担当する営業平井氏と、運用担当佐々木氏に話を聞いた。

Web広告は専業代理店に任せている。だから、総合代理店の自分たちは提案できない

第二営業局第一営業部 部長 平井 智之 氏（以下、役職・敬称略）
インクリーズヘアー様を初めて担当したのは、今から20年近く前、2003年の秋でした。ちょうどその頃、大きなお取引を頂いていたお客様の出稿がストップし、新しい仕事を探す必要に迫られていました。

その時に仕事をくださったのが、インクリーズヘアー様でした。弊社が持っている読売新聞のエリア版という枠を月極でいただき、そこから少しずつお取引が増えていきました。困っていた時に仕事をくださったということもあり、非常に感謝をしている存在でもあります。

今、マーケティング全般を担当されている下房さんは、当時動画の編集や楽天などのECサイトを担当されていました。20年も担当しているので、15年程前に下房さんがアドワーズやオーバーチュアを使って、Web広告の運用をしておられるのも横で見ていました。

当時からECサイトでかなりの売上を上げていたこともあり、私の中でインクリーズヘアー様＝Webに強い会社と認識していました。

一方で当時の私は、マス媒体の営業に注力していました。テレビCMをいただくとセットで新聞やラジオの案内をします。すると一定の割合で反響があるので、マス媒体が売りやすく、金額も大きいのでマス媒体だけで売上を大きく伸ばすことができました。

ところが、最近はマス媒体、特に新聞での反響が以前ほど見込めなくなってきました。テレビとセットで新聞やラジオを追加していただく可能性が減ってきてしまったのです。

次第にWeb広告もいただきたいと思うようになりましたが、「Web広告は専業の代理店に任せている」と言われると、専門的な知見を持つ専業代理店には勝てないだろうと、提案をしないまま時間が過ぎていきました。

営業力はあるのに、Web広告の売上が極端に少ない。その原因は営業の「自信のなさ」にあった

クロス戦略室 次長 佐々木 博章 氏（以下、役職・敬称略）
私は2021年度、読連のWeb広告を運用するインタラクティブ部に配属されました。

東京のグループ会社からの出向という形での異動でしたが、最初の1週間で感じたのは、読連はとにかく営業力がある、ということでした。

平井が20年近く、インクリーズヘアー様を担当しているというお話にもある通り、お客様との関係性が非常に強い。こんなに営業力があるのに、なぜWeb広告の売上が低いのか、というのが最初に感じた疑問でした。

実際、2020年度の売上に占めるWeb広告の割合はわずか5％という状況でした。なぜWeb広告が売れないのか？色々な営業に話を聞いてわかったのが、「自信がない」ということでした。

Web広告を受注して、もし失敗したら、既存のマス広告にも悪い影響があるのではないかという不安、自信のなさから、積極的に営業をしないという風潮があったのです。また、そもそもWeb広告への知見がないため話せない、という声もありました。

転機が訪れたのは昨年度、全社DX推進の一貫で導入されたWeb広告の自動運用ツール「Shirofune」の導入です。Shirofuneは私も出向元の会社で活用していました。オーバーチュア、アドワーズ時代からWeb広告を運用している私からしても「Shirofuneには敵わない」と、その効果を体感していたツールです。

Shirfouneの専門的なノウハウと営業の深い顧客理解。これがあれば「自分たちにも任せる価値がある」と再認識

平井
Shirofuneの導入は、営業にとって非常にインパクトの大きいものでした。20年近くインクリーズヘアー様のマス広告を扱ってきました。お客様を理解し、向き合ってきた自負があります。

Webの専業代理店が持つ専門的な知見やノウハウはShirofuneに任せればいい。そこに自分たちの持つ顧客理解、顧客関係性という強みがあれば、専業代理店とも互角に戦えるのではないか。そう考えれば、Web広告をいただける可能性は十分にあります。

もちろん、確実に成果を出せるかは実際にやってみないことにはわかりません。ただ、少なくても、専業代理店と同じ勝負の土俵には立てるのではないかと思いました。

インクリーズヘア―の社長と下房さんには、読連が全社でDXを進めていて変わりつつあること、その一貫でShirfouneというWeb広告の運用ツールを導入した話をしました。これは大手のWeb専業代理店も使っている国内No.1のツールであること。運用経験10年以上の、弊社のベテラン運用者がこれを操作することで広告効果の最大化が狙えること。だから一度やってみる価値があると思う、と話しました。

佐々木
我々はWeb広告の提案時に、必ずShirofuneの説明をセットで行っています。

私がどんなに運用経験豊富だと口で言っても証明はできません。しかしShirofuneというツールを使えば、一定以上のクオリティは間違いなく担保されます。これだけの代理店が使っているツールなので安心してください、プラスアルファで私が調味料のような存在で試行錯誤したり味付けしたりします、と。

すると「読連はテレビしかできないと思っていたけど、Webもできるんだね」と理解してもらえるケースが多いんです。

平井
インクリーズヘアー様には、Shirofuneのコックピット機能についても事前に説明をしました。これは、Web広告運用の管理画面を広告主に開示する、閲覧権限をお渡しする機能です。こういったものも活用して二人三脚でやっていきましょうと提案し、2022年の3月、初めてWEB広告のお取引をいただきました。

その後、早いタイミングでWeb広告の成果が出たことから、より大きなチャレンジをしようとテレビ広告への追加発注が決まりました。Web広告がきっかけで、さらに大きなお取引をいただくというグッドスパイラルになりつつあります。

隠さずに、開示し合うことが信頼につながる

佐々木
提案時にお話をしたShirofuneのコックピット機能は、実際の運用シーンで活用しています。具体的には運用画面の閲覧権限を下房さんにお渡し、同じものを見ながら会話をしています。

下房さんもおっしゃっていましたが、代理店側が運用の実態を隠すと「都合の悪いデータが隠されているのではないか」という不信感や、「ちゃんとやってくれているのか」という不安感を抱かれてしまいます。

こちらが何をやっているのか、包み隠さずにお見せすることが「ちゃんとやっていること」の何よりの証明になると思っています。

平井
我々は広告運用の実態を開示していますが、実はインクリーズヘア―の社長は、以前から私に経営計画を開示してくださっていました。売上や人件費、広告費、光熱費まで見せてくださり、その中の広告費の「マス広告」という項目がこれまで私が担ってきた役割でした。

それがWeb広告もいただくようになり、Shirofuneの画面を実際に見て感じたのは、お客様のビジネスに対する、よりリアルな手触り感です。

最初のCVが出た時は「1件の成果がこんなに嬉しいものなんだ」と素直に喜びを感じましたし、Shirofuneの改善チャンスを見るとお客様がやるべき課題も見えてきます。今まで以上に「リアルなビジネスの中身」を見せてもらったことで、ますます強い責任を感じ、もっとお客様に貢献したいという思いが強くなりました。

広告代理業がこれからどうなるのか、常々考えていました。Webに強いWeb専業代理店のように、スペシャルな専門性を持つ代理店が生き残っていくのではないかと思った時期もありました。ただ、今回のインクリーズヘアー様との取り組みを通じて、専業にもカバーしきれていない領域があることを知りました。総合代理店として自分たちの強みをさらに磨き、自分たちがすべき次の手を考えていきたいです。

取材・文／藤井恵　監修／岩井智昭（ShirofuneX）

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