Web広告市場への参入は今からでも遅くない。参入のファーストステップにツール導入が有効な理由
- 岩井智昭
※本記事の解説と、より詳細な説明をするオンラインセミナーを、パーソルP&T 畑中氏にも参加いただき、7月13日(木)13時より開催します。詳しくはこちらをご覧ください。
『2022年日本の広告費(株式会社電通)』によると、インターネット広告が総広告費に占める割合は43.5%となり、Web広告への参入は今や多くの広告代理店が抱える共通テーマとなっています。
しかし「予約型広告」を扱ってきた広告代理店が「運用型広告」へと舵取りをするには心理的な障壁はもとより、経験者等の採用といった物理的な障壁もあります。
そこで本記事では広告代理店のWeb広告参入をサポートしているパーソルプロセス&テクノロジーの畑中氏に、その意義と障壁の乗り越え方、Web広告を起点としたグッドスパイラルを築く方法について話を伺いました。
畑中 泰洋
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
デジタルマーケティング統括部 デジタルマーケティング部
デジタルマーケティング第1グループ プランナー
パーソルプロセス&テクノロジーのデジタルマーケティング統括部ではクリエイティブ制作から広告運用、アクセス解析まで一気通貫してデジタルソリューションを提供している。同事業部の中でも畑中氏はWEB広告に参入する代理店のサポートを担当。広告運用から分析、セールス方法やクライアントとの向き合い方など、WEB広告事業を立ち上げるためのイロハを伝授している。
2022年Web広告が広告費に占めるシェアは43.5%に
自社の売上構成が業界の構成と比例しない場合、売上低迷・採用難は避けられない
―「2022年日本の広告費」によると、インターネット広告が広告費に占めるシェアは43.5%となり、4マス媒体の33.8%を大きく超えたことがニュースになりましたね。
畑中氏(以下、省略)
2022年、広告業界の売上は7兆円超。中でも目覚ましいのがインターネット広告の成長です。4マス媒体の売上が前年比97.7%と縮小しているのに対し、インターネット広告は2桁成長を遂げています。テクノロジーの進化と共にWeb広告も日々進化しており、この流れはもはや止めることができません。近い将来、Web広告は広告費の半分を占めるようになるとも言われています。
この機会に広告代理店には是非とも自社の売上構成を見ていただき、広告業界全体の売上構成と比例していなければ、どこかでギャップが生じていることを認識していただきたいと思います。
―Web広告に対応できない代理店は今後どうなっていくとお考えですか?
生活者がデジタルにどっぷり浸かり始めたことで、広告業界でもゲームチェンジが起きています。4マス媒体への予算が縮小している中、今後もWeb広告を提供できない広告代理店は売上の縮小を避けられないでしょう。
今やWeb広告を取り扱っていない広告代理店は、世間一般からすると少し「遅れている」という感覚すら持たれてしまいます。これは巡り巡って採用にも悪影響を及ぼします。
これまで”広告業界=文系”というイメージが強くありました。ところがWeb広告はテクノロジーを活用した広告ですから、理系採用も範疇に入ってきます。文理の分け隔てなく採用をする必要がありますが、Web広告を扱っていなければ理系の採用は依然として厳しいでしょう。
しかしWeb広告は参入障壁の低いマーケットです。ゆえに異業種からもたくさんのプレイヤーが参入し、ここまで伸びてきました。「今からでは遅い」ということはありません。まだまだ、参入の余地はあります。Web広告に参入していない広告代理店には今こそ、参入を検討して欲しいと思います。
WEB人材の採用は難しい
だから、最初の一歩はツールに頼る
―広告代理店が新たにWeb広告に参入する際、どのような障壁がありますか。
もともと広告代理店が扱ってきた広告は「予約型広告」です。広告を出したらお終いの世界だからこそ、スペースブローカーとして他の代理店よりいかに良いスペースを抑えられるかがカギでした。
ところがWeb広告の中核は「運用型広告」となります。運用型広告は誰でも、どの媒体にも出すことができます。どのスペースに出したかではなく、どのように出して、その結果どのような成果が得られたのかを求められます。
ここに苦手意識を持ち、心理的な障壁を自分たちで作ってしまっているケースはよくあります。
また経験者の採用が障壁となるケースも多いです。自分たちではできないから経験者を雇わなくてはならない、経験者を採用できないから参入ができない…と採用がボトルネックとなり参入の機会を逃してしまうケースです。
ただ、そもそも運用未経験の企業担当者が経験者採用をするのは非常に難易度が高いです。未経験者では仕事のレベルを判断できず、経験者がチャレンジしたいと思える環境を用意することが難しいからです。ですから、まずやるべきは自分たちで一度、Web広告を経験することです。
Web広告というのは、実はそんなに難しいものではありません。特に最近では様々なツールが出ているので、未経験者もツールを活用することで簡単に最初の一歩を踏み出すことができます。Shirofuneのような運用ツールに頼れば、経験者を採用しなくてもスモールスタートで始めることができます。
自分たちで使えばWeb広告の仕組みを理解できるようになりますし、それが会社全体のスキルアップにも繋がります。ツールの導入によって小さな歯車が一旦回り始めると、クライアントからの信頼は格段に変容してゆきます。
ツールを活用すれば、少額案件にもチャレンジしやすくなる
小さな案件の積み重ねが、ノウハウの蓄積へと繋がる
―これまで畑中さんがサポートしてきた中で、そのようなグッドスパイラルを築けた事例があれば聞かせてください。
会社の古い組織体制に違和感を感じ、新しいことに取り組む必要に迫られたチャレンジ精神のある社員が音頭を取ってShriforuneを導入し、そこに付随したサポートをさせていただいた広告代理店がありました。
ツールというのは導入しただけでは価値を生みません。ツールによって得られた知見や工数を提供価値として還元することで初めて売り上げが上がっていきます。最初は厳しいかもしれませんが、どんなに少額案件でも積極的にチャレンジすることでノウハウは積み上がっていきます。
このノウハウを運用に生かしたり、新しいクライアントに提供したりすることで後々、何十倍にもなって返ってきます。
―少額案件に躊躇する広告代理店は多いですよね。
少額案件は利益のわりに工数がかかります。ただ実はその工数も、ツールによって抑えることができます。
100万円の案件だろうが10万円の案件だろうが、設定にはどちらも数時間を要しますが、Shirofuneを使えば30分に短縮できます。ツールを活用することで確実にチャレンジしやすくなります。
実際私がサポートしたある広告代理店はShirofuneを導入することで少額案件にも貪欲にチャレンジするようになりました。複数の少額案件を通じてナレッジを増やし、そのナレッジをクライアントに展開することで信頼を高め、最終的にはそれが自社の競争力となり売上向上に繋がりました。
Web広告事業がグロースしたことで人材採用の必要に迫られたのですが、自分たちで運用してきた経験から、求める人物像を詳細に設定することができました。事業も成長しているので、そこで働きたいという経験者の応募もあり、すべての歯車がうまく回り始めました。
ツールはイチ社員
採用して終わりではなく、共に成長するパートナー
―グッドスパイラルの最初のステップにツールが有効であることがよくわかりました。ツールと人の理想的な関係はどうあるべきでしょうか。
ツールはテクノロジーではありますが、共に企業を成長させていくパートナーです。「イチ社員」という立ち位置で捉えることが大切だと考えています。
採用の際、その人の背景を確認するように、ツール導入でもそのツールの成り立ち、誕生の背景を確認すると良いのではないでしょうか。例えばなぜShriofuneは生まれたのかを考えてみる。Web広告には運用が必要で、運用には工数がかかる。この工数を極力抑え、抑えた工数を他のものに使うことで生産性の向上と売上アップが図れるようになります。
つまり導入・採用して終わりではなく、その社員が持つ背景を踏まえて育成するように、ツールも背景を踏まえて活用し、育てていく必要があります。ツールはテクノロジーなのでどんどんバージョンアップし、進化をしていきます。その進化をキャッチアップし、自分たち自身も進化をすることが大切なのではないでしょうか。
―畑中さんは、広告代理店がShirofuneを活用してWeb広告事業を立ち上げるサポートをしていますね。第三者がサポートをする意義についても聞かせてください。
参入のファーストステップにツールの導入は有効ですが、どのレイヤーのどのポジションだとツールを最大限活用できるのか?というところまでをイメージできている企業さんは少数派です。上位レイヤーの方が「このツールを導入したから使うように」と言って、現場活用が進まずにスタックしてしまう企業さんが多いのです。
そこで我々のような第三者が、ツールの立ち位置を正しくお伝えした上で、どういった人がこのツールを活用できるのか?正しい視座を持つお手伝いをしています。
これまで、サポートによってスタックしていた歯車が一気に回り始めた広告代理店を何社も見てきました。ツールと現場が化学反応を起こす、そんなきっかけ作りをお手伝いできたらと考えています。
―最後に、これからWeb広告業界への参入を考えている広告代理店にメッセージをお願いします。
Web広告は今後も伸びていく可能性が十分にあります。今もなお、2桁成長しているという事実は伸び代のある証です。すでに遅いのではないか…とか、レッドオーシャンの業界に参入しても…という方もいらっしゃいますが、まだまだ伸び代のあるマーケットです。参入しない手はありません。今がチャンス、今からでも遅くはありません。
旧マスと違い、Web広告は誰でもどの場所でも取り扱うことができる媒体です。ゆえに地方の広告代理店にとってこれは大きなチャンスではないでしょうか。ためらっている広告代理店がいれば是非ともチャレンジして欲しいですし、我々としてはそのチャレンジの第一歩サポートしていきたいです。
<取材・文/藤井恵 撮影/鈴木慶子>