SaaSインタビュー

「このサービスは顧客に愛されているか?」安心と信頼に向き合うクラウドサインのマーケティング戦略に迫る

Shirofune広報担当
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これまで「紙」と「ハンコ」が一般的であった契約書のやり取りを電子化することで、よりスピーディな契約締結を実現している、電子契約クラウドサービスのクラウドサイン。現在、導入企業数は5万社を超え、電子契約を利用する企業の約80%以上がクラウドサインを利用しています。

「クラウドサインのターゲットはかなり広いんです。契約書や申込書、注文書を作成する場所すべてがターゲットになります。つまり、ほぼすべての業界と職種に対応し、ターゲットごとにクラウドサインの良さを伝えなければいけません。そこにマーケティングの難しさがあります

こう語るのは、同サービスのマーケターである夏目恵氏。今回のインハウスマーケティングラボでは、クラウドサインにおけるこれまでのマーケティング戦略と今後の展望についてお話を伺いました。

未開拓領域のSaaSでネットワーク効果によるグロースが成功

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夏目氏:
日本における電子契約という形態は10年以上前から存在していたものの、「契約締結の相手方も同じサービスを導入していないと利用できない」という課題があったことから、普及の進まない状態が続いていました。

そのため、2015年に弁護士ドットコム株式会社がリリースしたクラウドサインでは、相手方がサービス登録せずとも締結可能であることをポイントとし、サービスの提供を開始。もともとはIT企業やスタートアップや個人事業主をはじめとした「紙でのやり取りを煩わしいと感じる方々」を中心に認知が広まったのです。

クラウドサインの場合、受信者としてのサービス利用ををキッカケにサービスの認知、導入検討が始まりやすいという特性があり、これはネットワーク効果とも呼ばれます。

特に、ここ1年で取引先を多く持つ大手企業様を中心に利用が拡大したため、ネットワーク効果の大きさを感じています。展示会をはじめとしたお客さまと直接接する場で「この前クラウドサインで契約書を締結しましたよ!」と声をかけていただく機会が増えました。

ただし、まだまだ認知が届いていないと感じていて、不動産や金融、建設などの紙での契約業務が多い領域には、電子契約の概念がまだまだ浸透していない問題意識を持っています。

不動産領域では賃貸契約などをはじめとして契約書を取り交す場面が非常に多く存在していたものの、契約の書面交付を必須とする業法の壁がありました。しかし、国土交通省が2019年10月に一部企業や利用ケースを対象として契約書類電子化の社会実験を開始したことから、クラウドサインとしても利用を促進してもらえるようなコミュニケーションを準備しています。

また、2019年に入ってからは、これまでとは切り口を変えた広報にも力を入れており、サッカーJ2リーグに所属する水戸ホーリーホックと ンドカ・ボニフェイス選手との契約においては、“国内初の電子調印式”をテーマとしたプロモーション活動を行いました。

参照:
【水戸ホーリーホック×クラウドサイン 】ンドカ ボニフェイス選手との契約で、国内初の電子調印式を実施 

「専門家をもっと身近に」いかに安心と信頼を担保するか

夏目氏:
運営が弁護士ドットコムであるという事実は、さまざまな面でメリットがありました。2005年に会社が設立され、日本のリーガル分野におけるリーディングカンパニーとして10年以上に渡って業界を牽引した実績による安心感や信頼感が、クラウドサインにとってはプラスに働いてきました。

ご利用者様からのご質問としても、サービスを使いこなす方法のみにとどまらず、「このサービスは法的な効力が担保されているのか?」と問われる場面も少なくありません。

もし電子で交わした契約によって裁判沙汰になったとき、「クラウドサインでの契約だけど、それは本当に裁判所で使えるのか?」と不安に思われることもあります。それに関してはクラウドサインで裁判所宛への資料も用意していますし、法に関わる部分はしっかり努めさせていただいています。

クラウドサインでは、法的な効力をもっとも重要視しています。「専門家をもっと身近に」が、弁護士ドットコムのポリシー。その考え方が大切に受け継がれ、そしてクラウドサインにも現れているのを感じています。

クラウドサインのマーケティングチームが見ている顧客は「事業部」の人

夏目氏:
契約書と言うと法務部をイメージするかと思うのですが、クラウドサインのマーケティングチームでは、法務部以上に、事業部で働く方々をメインターゲットにしています

どのような会社の事業部においても、受発注書や申込書に関しての業務改善がまだまだ必要な状況です。課題意識を持って積極的に導入してもらいやすいという理由から、営業やマーケティング担当者へ対して、クラウドサインを導入することによる契約締結スピードの向上について触れる機会が多く、「月内回収率が何%上がる」「売上が何%上がる」といったメリットを訴求をしています。

電子契約は、紙の申込書よりもスムーズに契約を締結できるため、売上発生の予測が立てやすくなります。そのため、結果的に契約書の月内回収率が上がり、かつ売上も向上するのです。

CSチームとの連携を行いユーザー会にも参加

夏目氏:
カスタマーサクセスチームとも連携を行っており、先日にも既にクラウドサインを導入済みの顧客をお招きしてのユーザー会を開催しました。

マーケティングチームとして抱いていた課題感は、「既存顧客の声を聞く機会が少ない」ということ。「お客様の声こそ、良いプロダクトを作るために必要不可欠だ」ということは、以前からひしひしと感じていました。

マーケティング的な目線に立つと、新規の顧客獲得に力を入れがちですが、CSチームの価値観は、それとは異なってきます。現在クラウドサインをご利用中のお客様個々が抱える課題の解決に対して真剣に取り組むCSチームの姿勢や価値観、振る舞いは、マーケティングチームとしても新たな発見が多く、これからも続けていきたいです。

また、事例取材においては、カスタマーサクセスチームと綿密に連携して動いています。「不動産領域を対象とした広告を出してみたいので、不動産業界でクラウドサインをご利用中の企業の事例を掲載したく、アポイント取れないかな?」といった具合に、お客様との接点を探るためのコミュニケーションを頻繁に繰り返しています。

「このサービスは、顧客に愛されているか」

夏目氏:
マーケティングチームが追っているKPIとしては、新規のリード数と定義しており、その他にも認知獲得指標や流入数など、KPIの手前となる数字のパフォーマンスも見ています。ただ、最終目標はもちろん売上なので、セールスチームが担当する商談活動や受注率も鑑み、最終的にはバリューチェーンとしてのROI、LTVまでを把握しています。

LTVを捉える際には、収益性以上に「もっとお客様がクラウドサインを使いやすくなるためには、どうすればいいか?」という部分、つまりLTVの中でも特に契約継続期間を重点的に考えていますね。そのため、「この領域の顧客に、どんな場面でどう使ってもらえるとその顧客を成功に導くことができるのか」と、利用シーンまでを明確に定義してマーケティングメッセージを考えるようにしています。

クラウドサインはBtoBのサービスですが、toBの先にはtoCビジネスが存在しているケースがあります。例を挙げるとすれば、不動産会社や銀行の申込書など、カウンター越しで行われる契約などは、想像しやすいかと。例えば部屋を借りる場合、内見を済ませ物件申込み後に入居審査があります。そのため、通常2日〜1週間後に契約を取り交すフローが一般的です。なので、お客様は「仕事やプライベートの時間を調整し、また不動産会社へ行く」という手間を費やさなければいけません。しかし、契約過程をオンラインで行うことで、仕事の休憩合間に1時間でWeb会議を実施し、物件の契約に合意することができます。不動産会社側にとっても、お客様の来店準備がなくなるメリットがあります。

「このサービスは、顧客に愛されているか。」
これは常に、クラウドサインメンバー全員が考え続けていることですね

市場の売上No.1より、「電子契約」の市場を盛り上げていく

夏目氏:
私がクラウドサインに入社したキッカケでもありますが、クラウドサインは、「世の中を変えよう」という想いが本当に強いんです。

最終的にマーケティングチームとして作っていきたいのは、「書面契約だった場面が電子契約に代替し、円滑に契約が進む」という世界観。冒頭でも触れましたが、現在はまだ、電子契約の認知を高めるフェーズと我々は感じています。

売上No.1を狙うより、市場を盛り上げる立場に居続けたい」と思っています。電子契約やリーガルテックも含めて、自社の売上だけが大事という価値観は持っていません。たしかに電子契約業界で競合は存在しますが、そもそも「電子契約」の認知を高めるためにも、まずはマーケティングから盛り上げていくべきだと感じています。

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夏目恵氏 プロフィール(Twitter:@natsume_1231
大学卒業後、不動産メディア会社に入社。営業、コンテンツ企画を経て、マスマーケティング・ブランディング業務に従事。2018年、弁護士ドットコム株式会社に入社。電子契約サービス「クラウドサイン」のマーケティングチームで、マス広告・オフライン施策を中心としたマーケティング業務を担当している。

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