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インハウスマーケターが語る、KPI達成までの道のり@インハウスナイト【イベントレポート】

Shirofune広報担当
20190730インハウスナイト

7月30日にベーシック社にて開催された「インハウスマーケターが語る、KPI達成までの道のり@インハウスナイト#1」。4社のBtoBインハウスマーケターが集い、KPIをテーマにライトニングトーク(LT)とパネルディスカッションが行われた。

【第一部】4社インハウスマーケターによるライトニングトーク

第一部では、ベルフェイス株式会社 近内健晃氏、株式会社WACUL 松尾龍氏、株式会社シャノン 村尾慶尚氏、株式会社ベーシック 甲斐 雅之氏それぞれによるLT、第二部では株式会社才流 栗原康太氏モデレートによりパネルディスカッションが行われ、これまであまり語られたことのない各社のKPI達成までの苦悩やノウハウが赤裸々に語られた。

[1] マーケチームの垂直立ち上げ!試行錯誤の軌跡

近内健晃氏(ベルフェイス株式会社マーケティングチーム マネージャー)
人材広告、広告代理店を経て、事業会社のマーケター として教育・研修会社、マーケティングツールベンダーにてマーケティングマネジメントを担う。マーケティング戦略立案・仕組みづくり・実行・検証までをカバー。 MA導入・運用を3社、インサイドセールスチーム立ち上げも2社で実施。 ベルフェイスでは2018年10月よりマーケティングチームの立ち上げを行い、今に至る。

チームの立ち上げから、売上2倍までの試行錯誤

営業に特化したWeb会議システムを提供するベルフェイス社は、およそ3年半で1,000社以上へ導入され急成長。タレントの照英さんを起用したテレビCMでおなじみだ。昨年、マーケティングチームを立ち上げた同社は、なんと半年間でオフラインでのリード獲得数が1.6倍、オンラインで2倍に増加、売上も2倍に成長した。その達成までの試行錯誤を近内氏が語った。

KPIは達成したが、実はKPI設定に課題があると判明

マーケティングチーム立ち上げ時、マーケティングチームのKPIをリード数セールスチームのKPIを商談数と売上としていた。マーケチームとしては広告などあらゆる施策から700件のリードを獲得。チーム立ち上がり前と比べると2倍以上のリードとなりすぐに成果が現れる。また、セールスチームとしては商談数が増えていったものの、見込みの薄い商談も多く発生していたため、メンバーが疲弊しきっていることが判明。獲得したリードのフォローも十分にされてないことがわかった。

KPIと組織体制の変更で打開

社内で役員も交えて議論した結果、うまくいかなかった要因はセールスチームのKPIを商談数に設定していたこと、そして組織体制に無理があったという結論になった。。立て直しを図るため、マーケチームとオンラインセールスチームの間の機能として「SDRチーム」という資料請求の初動対応を行うチームを新たに設置した。そこでは、有効商談数をKPIとし、有効商談に繋がる問い合わせかどうかを判断し振り分けた。それにより、セールスが売上を追うことに専念する事ができ、疲弊を避けることができたのだ。結果として、売上は見事に増加した。

リードとナーチャリングの質の低下が浮き彫りに

組織体制に余裕ができ、リード獲得が加速すると同時に、「リードの質をいかに担保していくか?」が重要課題になってきた。そこで、どのチャネルが質の高いリードを生み出すのか、予算を投下するべきかを判断するために、Salesforceを活用してチャネル別にリードランクを見える化した。また、ナーチャリングをより確実に機能させるために、そもそもお客様への理解が不足しているという課題が明らかとなったため、お客様インタビューやメンバーへのヒアリングを通して、ターゲットのペルソナとその課題を具現化した。それを元に、ナーチャリングメールの内容を最適化。結果として、メールパフォーマンスが大幅に向上した。

同じくナーチャリングの成功事例として挙げたのは、「行動起点」を意識したことだ。商談前にどのような行動を取っている見込み客が検討可能性が高いのかを検証し、その結果以下4つの行動パターンの見込み商談率が2倍以上高いことが判明。

  1. 導入事例を1日2つ以上 / 連日2つ以上閲覧
  2. ナーチャリングメールからの体験予約実施
  3. 体験予約フォームからの離脱
  4. Marketoのリードスコア150点以上

これらを丁寧にナーチャリングし、SDRチーム&セールスチームと連携していくことで、売上の増加を実現。リードジェネレーション、リードナーチャリング、クオリフィケーションなどの取り組みをしながらマーケティングチームの垂直立ち上げ、そして他チームとの連携をしっかり行うことにより、最終的に売上を2倍に持ち上げることに成功した。

[2] 短期的な立て直しとABM活用法

松尾龍(株式会社WACULマーケティング部 部長)
2010年 楽天株式会社へ入社、営業・ECコンサルタントのマネージャーを歴任。2015年 オンサイト株式会社に入社。大手健康食品・化粧品メーカーなどのクライアントに、ECサイトの基盤構築からブランディング戦略の立案、マーケティング全般支援を実施。2018年11月 株式会社WACULに入社、事業開発責任者・マーケティング部長を経て、役員 アカウントマネジメント統括部 部長に就任。

短期的な立て直し施策とABM活用法

WACUL社はGoogleアナリティクスなどと連携することで、AIがサイトのコンバージョン最大化のための改善提案を行うSaaS「AIアナリスト」についてのKPI設定や取り組みを発表。現在約30,000サイトに無料トライアルが導入されており、メインチャネルである「AIアナリストブログ」は月に500〜800社のリードを獲得している。松尾氏が入社した2018年11月はリード数が目標に達していなかったが、中長期戦略を決めていく中で短期的にリード数をこれ以上増やすことは難しいと判断。アポ数の最大化に焦点をあて、成長を加速させる戦略をとった。

成功した施策と、失敗した施策

短期的な立て直しのための新たな目標設定をするにあたり、まずは実数を元にコミュニケーションルート上で傷んでいる部分を特定した。その結果、見るべきポイントを「アポ数」に絞る。アポ数の増加に向けたCVRや、掘り起こし数などをKPIとして設定し、体制面ではKPIを管理するリーダーを配置して施策を遂行していった。

いくつかの施策を進めた結果、ebookの配布とリスティング広告出稿の2つは失敗だったと松尾氏は振り返る。

松尾氏:
当時ebookの活用がトレンドで、顕在ターゲットの獲得を狙って実施しました。しかし、リード数は増えたものの質の高い営業に繋がりませんでした。弊社では無料トライアルを導入していただくとお客様のGoogleアナリティクス(GA)データを取得できるため、これまでは顧客のリアルなデータを元にした改善提案をうける体験を営業に活用できていましたが、ebookではそれが出来ず、精緻な営業が出来なかったんです。
またもう一つの失敗として、顕在ワードでリスティング出稿をしましたが、「AIアナリストブログ」が元々自然検索でリード獲得できていたので、総量として増えませんでした。

月間90時間の工数削減を実現したABM活用

AIアナリストは元々リードが潤沢にあったため、見込みが高いリードを効率よく振り分けることの優先度が高い。そこで、ABM(アカウントベースドマーケティング)を即座に導入したところ、月間で90時間の工数削減を実現。リソースに余裕ができたことで、セミナーを開催、また営業リソースを活用してセミナー会場や展示会に商談ブースを作る。結果として即受注が増え、非常に良い結果が出たそうだ。さらに、顧客獲得施策だけではなく、社内の目標達成意識の醸成についても松尾氏は触れた。

松尾氏:
施策として失敗と成功がありましたが、「目標達成」するためにはパワープレイの部分も大きかったです。例えば、アポの目標を日次管理にしたり、ヨミ管理を週次で確認するなどです。これまで、アルバイトスタッフなどは会社の状況や自身の目標を明確に認識していない状況でした。しかしSalesforceでヨミ管理表を作りSlackで随時シェアするようにするなど、頻繁に目標を意識できるコミュニケーションをとるようにしたんです。

最終的な結果として、6ヶ月間でアポ数が1.3倍に増加。セミナーが定常化しているおかげで掘り起こし顧客が増え、新規だけでなくベースが上がっている状況だ。また、松尾氏によると、ABMの利点として、リード獲得後に契約に繋がる顧客を判断するのは難しいが、スコアで振り落としができる点が効果的に活用できていると言う。それにより、訪問数を30%削減、受注率も維持している。

[3] KPI達成・・・しかし失敗例のご紹介

村尾慶尚(株式会社シャノン マーケティング部 部長)
外食チェーン店・本部勤務、事業譲渡により某カラオケ大手企業に転籍。その後株式会社シャノンに転職、 受託SE兼営業を行う。 製品のインプリ担当などを経て、現在マーケティングに従事。

マーケティング成績と会社業績の乖離

MA(マーケティングオートメーション)ツールを提供しているシャノン社。登壇した村尾氏は10年以上在籍しているが、KPIはほぼ毎年変更していると言う。KPIの設定や次々と出てくる課題に対しての打ち手と、具体的な失敗・成功事例を紹介した。

シャノン社では長年、展示会やセミナーなどオフライン中心のマーケティングを展開していたが、社会の流れを捉えオンライン広告などのデジタルに完全シフトした。その結果、当時のKPIだった「資料請求数」が急増。しかし、会社の業績は連動して上がらなかった。

振り返ると、「デジタル施策」にシフトすることで「見込み顧客の刈り取り」だけに注力してしまっていた事がわかった。BtoBの購買パネルにおいて、顧客は比較検討フェーズを必ず通る。シャノン社の場合、競合が課題を顕在化させて作ったマーケットにおいて、「比較検討するための資料請求」が伸びていたのだ。そもそもそこをKPIとして設定していたことが間違ってたと村尾氏は振り返る。

KPIを出来るだけビジネスゴールに近づける

KPI達成がビジネスの成長に結びつかない状況を解決するために、まずはKPIを「商談獲得数」に変更。その他いくつかの打ち手を為すことで今は順調にアカウント獲得数(=売上)を増加させている。KPIの達成よりKPIの設定が大事、さらに KPIがビジネスゴールに近づくと施策に幅が出ると、これまでの試行錯誤を振り返った。

村尾氏:
組織体制として、インサイドセールスをマーケティング部門の中に設置し、KPIを「商談獲得数」とし、ビジネスゴールの近くに設定しました。取り組みは手前(認知・興味関心)、KPIを奥(商談獲得数)にする事により、購買ファネルを広く見ることができます。そうすると、「比較検討フェーズ」だけではなく「商談フェーズ」まで見るため打ち手の幅が広がります。そうして最終的にインサイドセールスがアウトバンド施策をやってまで数字を達成する体制が作れました。

質的な結果の振り返りはメンバーごとに定量評価

村尾氏:
リードの質や商談の質などを定量的な評価にできるように、デッドレートを採用しています。デッドレートは部門全体ではなく人ごとに見ることが重要です。例えばインサイドセールスの誰が営業の誰に見込み顧客をパスするとどのくらいのデッドレートになっているかなど。目標を達成しようとすると、闇雲に数を追ってしまいがちですが、こうする事で人ごとの定量的な評価で振り返る事ができます。

その他シャノン社では、緊急度が低いが重要度が高い話をする機会を社長とつくることで中長期的な視点を獲得しつつKPIの見直しをスムーズにしている。また、月1回のユーザー会でお客様理解を深めるなど、論理的に正しそうだがKPIへの貢献を評価することが難しいことに取り組むなど、KPI達成に向けて様々な取り組みをしている。

[4] 半年後に月次の新規有料顧客を2倍にできた3つのポイント

甲斐 雅之(株式会社ベーシック formrun プロダクトオーナー)
Webマーケティングメディア「ferret」にてSNS運用/記事編集/イベント企画を担当し、その後にECサービス「Canvath」のディレクターを担当。現在はフォーム作成管理サービス『formrun(フォームラン)』のプロダクトオーナーを務めている。

半年後に月次の新規有料顧客を2倍にできた3つのポイント

フォーム作成管理サービス「formrun(フォームラン)」は、サービス提供開始2年で25,000ユーザーを突破。組織・サービス共にマーケティング体制がゼロの状態から半年間で売上を2倍にすることに成功。無料ユーザーを増やす事ができても売上に繋がらない苦境を乗り越た方法を語った。

甲斐氏:
事業買収してから、もともとマーケティング視点でのサービス設計や管理がなく苦しい状況でした。そこでまずは自社のメディアであるferretを活用し、コンテンツSEOに取り組みました。PR記事としてツール紹介記事のTOPに配置し、ビッグキーワードで検索上位にある記事をリライトして流入強化を図りました。

2つ目の施策としては、「オウンドメディアの構築」です。メディア(formLab)自体は、「お知らせ」や「Tips」など既存のお客様のためのコンテンツが多かったのですが、「お役立ち」コンテンツでSEOを強化しました。

ここまで、コンテンツマーケティングで一定の集客を図っていたformrun。しかし、無料ユーザーの増加が加速する一方で有料会員の獲得、つまり売上には繋がっていなかった。これに対して甲斐氏は、オンボーディングの強化を図る。

甲斐氏:
SaaSの場合、獲得したリードをオンボーディングからプランの有料化に転換させるのが一般的だとすると、formrunでは無料利用から有料プランへの転換にオンボーディングを実施します。そこでマーケターは新規登録〜有料プランへのアップセルを担当、CS(カスタマーサクセス)はオンボーディング以降を担当することとし、強化を図りました。マーケターは有料のアップセルまで見ることで、既存ユーザーの有料プランの活用度合いを元に、どのようにすれば使ってくれるかという仮説を出します。それをオンボーディングのコンテンツに活かしていきました。

具体的なオンボーディング施策として、ステップメールの配信ログイン後のモーダルを設置。無料ユーザーの有料化後0日目に7日間のオンボーディング実施をユーザーに告知し、0~7日目と30日目にステップメールを配信。このサポートについてはTwitter上で言及されるなど口コミも多かったそうだ。結果的に、モーダル設置後は有料化数が前月の2倍になった。

【第二部】パネルディスカッション

第二部では、BtoBマーケティングのコンサルティングを行う株式会社才流、代表栗原氏のモデレートにより第一部登壇社4社のパネルディスカッションが行われた。

マーケティングのKPI設定については、第一部の各社LTでも重要なポイントとなっていたが、多くは経営層から降りてくる目標売上に合わせて、マーケティング指標へ落とし込んで決めているようだ。また各施策の予算配分の決定について、WACUL社はサービスの特性上、他社サイトのデータを活用して効果を見立ており、自社の強みにしているのが特徴的だった。

ベルフェイス近内氏:
例えば今期予算を決める際には、前半期分のデータをもとに売上目標から逆算して、チャネル毎にどのくらい予算をかけるべきかを考えます。不足分については、ボトルネックを特定した上でその解消をすることができる施策を検討したりします。

WACUL松尾氏:
今行なっている施策を全力でやった場合に目標に到達するかをまずは見にいきます。到達するならそれをひたすら実行しますし、しない予測が立てば顧客ターゲットを広げる施策を検討します。弊社ではBtoBサイトのデータを持っていますので、どの施策でどの程度まで伸びるかが見えやすい側面があります。BtoBのSaaSでいうと無料トライアルのCVRはWACULが一番高いと思います。高い月は5%、アベレージで3.5%程度ですね。

ペルソナは精緻に設定するべきか

質のいいリードを増やす際にペルソナを設定する企業も多いのではないだろうか。マーケティング部門で設定するターゲットとしてはできるだけ精緻に設定した方が良いという意見もあるかもしれないが、WACUL社とformrunは細かくしすぎないとの回答だった。

WACUL松尾氏:
ターゲットは8マトリックスぐらいで、そこまで細かく設定していません。細かくし過ぎても訴求するメッセージ内容をそこまで細かくできないので。

ベーシック甲斐氏:
比較的ターゲットが幅広いので、マーケティング観点でのターゲットとしてのペルソナは設定していません。事業を進めるにあたり、例えばLPのデザインだとか意思決定する際にはペルソナを活用しており、規模が大きく10年以上の企業とスタートアップの2軸で持っています。

ebookを冊子で送付し、アポ率10%超え

最近の施策で上手くいった施策とそうでない施策は各社で大きく異なっていた。ebookが成功したベルフェイス社と上手くいかなかったWACUL社。またシャノン社では電子データのebookではなく、紙の冊子を送付することでアポ率10%超えという効果をあげている。

ベルフェイス近内氏:
上手くいっている施策としては、資料請求が一番ホットです。ebookから商談に繋がったリードは、リードタイムは長くなるもののCACが低くなることがデータからわかっています。しかし、特定のホワイトペーパーDLサイトでebook施策が上手くいったからと、他のホワイトペーパーDLサイトを利用しましたが失敗しました。リードに繋がっても受注には繋がらなかったですね。

WACUL松尾氏:
上手くいった施策は、大きく2つです。1つ目は弊社取締役の垣内がメディア化したことです。すでにWebマーケターを中心に8千フォロワーを獲得しており、商談がスムーズになり受注率が上がったり、プロダクトに権威付けができています。2つ目はオフライン施策です。これまでオンラインでの獲得がメインでしたが、オフラインにも大手企業などのターゲットが存在することがわかり、大手の事例を集めてパンフレットにしています。
逆に効果でなかったのはebookです。CPAが安く、アポも取れましたが受注には至らなかったです。仮説としては、無料トイアル利用、ebookのダウンロード、ナーチャリングを経て再度無料トライアル、などCVまでの段階が多いためリードタイムが長いのだと思います。

シャノン村尾氏:
展示会で獲得したリードに対して、サンクスメールではなく資料請求をダイレクトに訴求することは一定数の効果が見られています。また、Webサイト経由でebookの請求があれば、電子データではなく印刷して送付し、荷電します。そうするとアポ率が平均10%超え、効果がありました。さらに一段発展させたものが、ebook冊子に手書きの手紙を同封することです。工数がかかるため1日1通くらいですが、普段手紙を受け取らないようなミドルマネジメント層に送ることで、他に埋もれずに見ていただけています。

今回のイベントでは、KPI達成に向けた施策もさることながら、そもそも正しいKPIの設定がいかに重要かという事実を改めて認識させられた。登壇者の生々しい試行錯誤は、マーケティング戦略や施策にとどまらず、組織体制づくりや社内コミュニケーションなどでも行われている。目の前の目標だけではなく、顧客と向き合い、社内をも動かし、事業貢献に向き合っている登壇者の事例は多くのインハウスマーケターにとって新たな気づきと視点を与えるのではないだろうか。

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この記事を書いたライター
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