YouTube運用を通じたBtoB企業の顧客獲得と自社ブランディングの方法。世界へ ボカンの徳田氏に聞く、YouTube運用の目的と成功の秘訣
- Shirofune広報担当
Webマーケティングソリューションを提供しながら、YouTubeチャンネルを通じて見込み客の獲得に成功している企業がある。
海外Webマーケティング支援事業、越境EC事業を手がける「世界へ ボカン株式会社」だ。同社は、社長自らが動画制作の指揮を執り、出演〜撮影までを手がけることで週2回の動画をコンスタントにYouTubeに公開しつづけている。
結果として海外Webマーケティングを発信するチャンネルというニッチな領域ながら、開設から1年半でチャンネル登録者数は5,000人近く、月間の再生時間は2,000時間、2万再生に上る。
同社はYouTubeという動画プラットフォームの価値をどのように捉えているのか。YouTube運用の秘訣や自社ブランディングの重要性について代表の徳田氏に話を伺った。
世界へ ボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希氏 (https://linktr.ee/yukitokuda35)
イギリス留学中、海外における日本企業の情報流通量が少ないことに問題意識を持ち、日本企業の魅力を世界に発信する仕事をしたいと帰国後、海外Webマーケティングを行う企業にインターンシップとして参加し、入社。同社の取締役に就任後、海外Webマーケティング事業部をMBOする形で世界へ ボカンを設立。越境EC・海外Webマーケティングの支援を生業とする。アフリカ向け中古車輸出企業の売上を30億円から500億円に導く等、中古車輸出、製造業、不動産関連のプロジェクトで数多くの実績を残す。同社が運営する海外Webマーケティングチャンネルはチャンネル登録者数5,000人を超える。
YouTube運営の目的は、自社をはじめて知ってもらうきっかけづくりと深く知ってもらう機会づくり
―YouTubeチャンネルでは海外Webマーケティングというテーマで5,000人近いチャンネル登録数を集めていますね。どういった目的で運営されているのでしょうか。
目的は2つあります。1つは自社を知っていただくきっかけづくり。2つ目は深く知っていただく機会づくりです。
そもそも海外向けにマーケティングニーズのあるお客様はそう多くありません。もちろん、ピンポイントで海外Webマーケティングの情報だけを発信しても興味を持ってくれる人はほとんどいません。
また、海外向けのマーケティング業務は国内のマーケティング担当者が兼務することも多く、代理店さんがクライアントから相談をもらうケースも多くあります。そうなった時「海外Webマーケティングと言えば世界へ ボカン」と第一想起に上がることを目指しています。
YouTubeを通じて様々なマーケターと接点を持つこと、ニーズが顕在化する手前の方をターゲットにすることでより多くの母集団にアプローチできると考えました。
また、海外向けのWebマーケティングはWeb広告運用やSEO改善などの戦術施策だけでどうにかなるものではありません。市場環境やクライアントが持っている資源・商材特性を加味し、戦略を一から考えていく必要があります。そのため、弊社の知見や代表である私のことを深く知っていただく機会づくりも目的としています。
―YouTubeはニーズが顕在化した層ではなく、その手前の潜在的なニーズを持つ層へのアプローチと位置付けているのですね。
もちろん動画によって目的は使い分けています。だいたい8:2で8割はニーズが潜在的な層へ弊社を知っていただくことを目的としたもの、2割はニーズが顕在的な層へより深く弊社を知っていただくためのものと位置付けています。
動画なら視聴者の隙間時間に入り込める
―動画コンテンツとテキストコンテンツの違いはどこにありますか?
人が検索をしてテキスト情報を読むのはニーズが顕在化した時だと考えています。テキストコンテンツはどうしても読むための労力が必要です。
情報を積極的に探しているニーズが顕在的な人に対してはアプローチできるのですが、その手前の潜在的なニーズの層にはあまり有効ではありません。となると動画は有効な手段ではないでしょうか。
弊社のYouTubeチャンネルも「洗濯物を干しながら聴いています」「車を運転しながら、勉強のために聴いています」といった声をいただいており、動画を見るというより聴く、という使い方をされている方が多い印象です。ユーザーの隙間時間に入り込み「ながら」ができるのは、動画メディアだからこそだと思います。
YouTube運用継続の理由は、社外マーケターの巻き込み
―動画コンテンツは工数がかかるので重要性は理解しながらも着手できていない企業も多くいます。踏み切れた理由を教えてください。
そもそも一定の数をこなさないことには質は伴わないと理解していたので、継続するしないに関わらず、まずは最低50本と決めていました。
量質転化はマーケティング支援をしている中で日々、感じています。海外マーケティングのニーズが顕在化したタイミングで第一想起になっておくためにもコンテンツ量を積み重ねて認知を拡大することを決めていました。
今は週に2本の動画をアップしていますが、継続的にコンテンツを作るには自社からの情報発信だけでは難しいので、マーケターの方との対談形式にしました。
実際に始めてみると、アップした動画への反響が毎回得られ、継続の大きなモチベーションになっています。
近江商人の経営哲学に「三方よし」という言葉があります。YouTube施策はまさにこの三方よしで、発信する我々はもちろん、視聴者にも勉強になり、出演してくださるマーケターからも「YouTube経由で問い合わせがきた」と喜ばれたんです。すごくいいマーケティング手法だと思い続けてきました。
代表の徳田氏が企画〜撮影まで行い、動画編集以外は社内で完結
―週2本、継続的に動画をUPするためにどのような体制で運営されていますか?
動画制作は8つのステップを踏んでいます。
このうち企画〜撮影までと、最後のYouTubeにアップロードし、公開する部分、を私が担当しています。動画は全て対談形式でその様子を撮影しています。
対談・撮影の後は社内のメンバーに内容を文字起こししてもらい、それをブログにUPしたり、要素をインフォグラフィックという形で図示してTwitterなど別媒体にも配信しています。
参考:Shopify運用大全 最先端ECサイトを成功に導く81の活用法と越境EC5つの勝ちパターン FRACTA河野氏 × 世界へ ボカン徳田
公開後、1回作った動画はメディアミックスの相乗効果を狙って二次・三次活用し、たくさんの人に見てもらえるように配信する工夫をしています。
動画編集作業のみ外部に委託し、残りのフローは社内のメンバーで対応しています。撮影そのものにはあまりこだわらない、見た目よりも内容で勝負すると決めているのでかっこいい動画を作ろうと、納品に時間をかけることはしていません。
チャンネル登録者数・再生回数などの定量成果は目標に置かない
―YouTube視聴者からの問い合わせは増えていますか?
まず、YouTube経由のお問い合わせ数はチャンネル運営の目的には置いていません。
現状、YouTubeを見てくださった方からのお問い合わせは全体の半分くらいです。その中でも、2つに分類でき、1つは対談相手が紹介してくださるパターン、もう1つは動画を見て問い合わせがくるパターンです。
対談相手からの紹介は当然、対談相手が増えるほど割合としては高まってきています。一方、動画から直接のお問い合わせは狙うことができませんし、そもそも、視聴者からの問い合わせがくるようになったのはごく最近です。
ですので、目的としては、初回の打ち合わせ前に理解を深めていただくために使ったり、休眠顧客の方へ送らせていただいたり…といった使い方もしています。
知っていただくためのYouTube動画だけでなく、深く知っていただくための、顧客接点を持った後に活用するYouTube動画という位置づけから、動画をどういった顧客との接点で活用することができるか?を考えるようにしています。
例)動画を通して信頼して頂くためのお客さま事例動画
例)お打ち合せ前に海外WEBマーケテイングの考え方を理解して頂くための動画
―YouTubeチャンネルの運営を検討している法人へのアドバイスがあればお願いします。
再生回数やチャンネル登録数に一喜一憂せず、独自のKPIを持って取り組むことが大切だと考えています。いま、弊社のチャンネル登録数は5,000人ほどですが、動画によっては再生回数が200〜300。伸びるものは1万、2万と再生されます。ここに一喜一憂していてもしょうがない。
結局はそのテーマで検索している母集団の数に左右されるからです。ニッチな市場であればあるほど、チャンネル登録数も視聴数も伸びないので頑張って更新を続けていても反応をほとんど得られない状態が続きます。
制作する動画のジャンルに興味関心のある視聴者数が、チャンネル登録数の天井になります。BtoBのニッチなジャンルであるほど登録者数が伸びないのは当然のことです。成功の定義によりますが、本当に届いて欲しい一人の視聴者が見た1再生こそ真に価値がある、という考え方もあります。
弊社では海外Webマーケティングチャンネルと謳いながらも、内容は少し広げてWebマーケティング全般とすることで幅広いマーケターの方にリーチすることを目指しています。動画の中で海外の事例を織り交ぜたり、私たちが海外Webマーケティングに取り組んでいる企業だということを知っていただく内容を盛り込むことで第一想起が得られるよう心がけています。
YouTube運営を通じた自社ブランディングでオンリーワンの存在に
―最後に、自社ブランディングに取り組む価値はどこにあると思われますか?
比較検討されにくくなる、と思います。動画を通じて話している私を見ていただくことで人となりや考え方が感じ取れるのか「徳田さんにお願いしたい」と指名がくるようになりました。結果として営業成約率も向上しています。
また認知が広がることで信頼感を醸成できるというメリットもあります。弊社の場合、YouTubeを始めて公的機関からのセミナー依頼がくるようになりました。公的機関とのお仕事を通じて弊社に対する信頼感も醸成されるといういいサイクルが回り始めています。
とは言え自社マーケティング、それも動画コンテンツの制作を継続的に頑張るにはモチベーションが必要です。私の場合、第一線で活躍されているマーケターの方々のメソッドを間近で聞ける、知れる、ということが最大のモチベーションになっています。こんなにも素晴らしい方々が喜んでノウハウを共有してくれる場はそうないな、と。
一人のマーケターとしてとても楽しい時間ですし、実際私が一番この施策を通して学び、成長していると思います。これまで170人とコラボしたので、170人分のノウハウが手に入っていますからね。大きな労力がかかる分、担当者が楽しめるテーマを設定することが何より大切なことだと思います。
(写真/矢野 拓実 取材・文/藤井 恵 編集/中島 孝輔 株式会社才流)
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