SO Technologies 長谷川氏が語る、広告運用の自動化と広告代理店の組織のあり方の変遷

Shirofune広報担当
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「ツールの発展によって、組織全体として運用スキルの再現性の恩恵を受けられるようになってきています。広告代理店の組織づくりのキーファクターも、採用とチームマネジメントの時代から、ツールインフラ整備と運用の再現性担保へ変わってきていると思います」

このように語るのは、 SO Technologies株式会社の執行役員CMOである長谷川 智史氏です。各媒体の自動化機能や運用自動化ツールの発展は、広告代理店の組織づくりにどのように影響を与えたのか。

今回の「Ad Agency Lab」では、広告運用の自動化と広告代理店の組織のあり方というテーマで、SO Technologiesの長谷川氏と、株式会社オプトの子会社で取締役を務めた経験もあるTATEITO株式会社 代表取締役の平野氏にフリーディスカッションしていただき、その内容を記事にまとめてお届けします。

(画像右)長谷川 智史 SO Technologies株式会社 執行役員CMO
(画像左)平野 考宏 TATEITO株式会社 代表取締役

生産性の向上を目的に、運用自動化ツールが広告代理店の間で少しずつ浸透している

平野:本日はよろしくお願いします。

まずはこれまでの歴史を振り返って、広告代理店のデジタル化、ツール導入における変化をどのように感じられていますか?

長谷川:まず、媒体プラットフォームやビジネスソフトウェアなどで、オートメーション化できるツールが増えてきたことが大きな変化の1つだと考えています。

特にここ2、3年で、各広告媒体の自動化機能が本格化し、入札の調整等が徐々に自動でできるようになり、ATOMのようなツールによって、レポートなども1発で出力できるようになりました。それに合わせるように、広告媒体以外の企業からも多くの自動化ツールが提供され、自動化の流れが大きく進んだように感じています。

広告ツールだけでなく、Googleの「データポータル」や「Google Apps Script」などにより、必要なデータを集計してまとめる業務も従来とは比にならないほど簡単にできるようになりました。それら以外にもRPAによる業務の自動化などで、ツールができることの幅が広がりましたよね。

デジタル化、とまでは言えない範囲ですが、新型コロナウイルスの影響でテレワークが中心となったことで、紙のレポートが無くなりました。昔は、クライアントとの定例会議の日の朝はコピー機に行列ができていましたから。(笑)

平野:広告代理店での運用自動化ツールの普及も進んでいますよね。

長谷川:ATOMやShirofuneなど、運用自動化ツールの導入実績などを見ると、じわじわと広告代理店に普及していっているように感じますね。ただ、このコロナ禍でぐっと増えたかと言われればそうではありません。テレワーク云々ではなく、業務の自動化による生産性の向上が、ツール導入の目的になっているのだと思います。

運用自動化ツール導入が進んでいる広告代理店と、進んでいない広告代理店の違い

平野:たしかに運用自動化ツールの導入が広告代理店に広がっていることは感じますね。

では、ツール導入が進んでいる広告代理店と、進んでいない広告代理店はどこに差があるのでしょうか?

長谷川:組織の規模と、再現性をつくろうとしているかどうか、がキーポイントだと思います。

運用自動化ツールの導入メリットは、業務効率の改善だけでなく、運用スキルの再現性を高められることだと考えています。

そもそも1人や2人の規模で運用をしている企業であれば、そこまでツールは必要なく、個人の工夫やスキルセットの範囲内でどうにかできてしまいます。

しかし、運用者の人数が5人くらいまで増えてくると、運用者ごとにスキルセットや習熟度が異なるため、ツールの導入効果である再現性向上のレバレッジが大きいです。少人数の運用チームが5名〜10名にスケールするタイミングでツールを導入するケースは多いと思いますね。

平野:組織がスケールするタイミングでツールを導入しない企業もいますよね。

長谷川:5名や10名などある程度人数ががいるにも関わらず、ツールを導入しない企業というのは、ツールを単なるコストとして捉えていたり、広告運用のスキルをある種、“職人技”のように考えているケースが多いですね。

平野:ツール導入の意思決定には、やはりマネージャー・経営陣の姿勢が大きく関係していると思います。

長谷川:そうですね。例えば私が広告運用のマネージャーだったときは、まだ広告運用を自動化するツールすらありませんでした。自分の運用技術に誇りがあったため、自分で広告の管理画面を操作をして、広告クリエイティブの作成から出稿、レポーティングまで全部自分でやっていたんです。まさに広告運用を”職人技”と考えていた職人タイプでした。

この職人タイプは「ツールによる運用スキルの標準化=広告運用のレベルが下がる」と考えている傾向があるので、運用自動化ツールの導入に二の足を踏むことが多いんです。自分のスキルに誇りを持っていますから。なので、ツールを導入せずに自らの広告運用のスキルである”職人技”の後継者を育てていきます。

ただ、実際には広告運用の組織って3年くらいでメンバーの半分が入れ替わってしまうと言われています。せっかく自分のスキルを継承し育成した運用メンバーが離れてしまい、組織として運用の成果を担保しづらくなっていきます。そのときにやっと組織としての運用スキルの標準化、運用スキルの再現性向上の重要性に気付き、ツールを導入するケースは少なくありません

平野:「ツールによる運用スキルの標準化=広告運用のレベルが下がる」のでしょうか?

長谷川:先ほどもお伝えした通り、ある程度の規模になり組織を成長させるためには、個人でなく全体のスキルを底上げしていく必要があります。ツールで広告運用に関するすべての業務を標準化するのではなく、あくまで必要な業務部分だけを標準化できれば、組織の生産性をベースアップできると考えています。

たしかに以前は、広告運用の自動化ツールを導入すると、指標やレポートがツールのフォーマットに統一されてしまいました。そのためツールを使った広告運用は、媒体管理画面をカスタマイズした広告運用と比べると、質が低いものでした。

しかし今では自由にKPI・成果指標を設定して、目的に応じたフォーマットでレポートの出力ができたりと、広告運用者の職人技を活かせるような形でツールが利用できるようになっています。広告運用の現場のトッププレイヤーは「ツールを武器として使う」という形になってきていますね。

これからの広告代理店に求められることは、組織の標準化と全体最適への投資

平野:ツールの発達によって広告代理店の組織のあり方も変わってきているのではないでしょうか。

長谷川:ツールの発達も関係しますが、広告代理店の組織づくりは3つのフェーズに分けることができると考えています。

・フェーズ1:運用担当者の個の運用スキルに依存している
・フェーズ2:分業により運用スキルの標準化が実現している
・フェーズ3:ツール導入でさらに運用スキルが標準化されている。加えて業務効率化も実現しているため、マーケティング戦略のようなさらに広範囲な支援もできる

フェーズ1は高度な広告運用スキルを有するメンバーが集まった、個の力の集合体のような組織。このフェーズ1での属人的な組織は、もちろん組織としての広告運用能力は高いですが、離職で組織に影響が出たり、同様の組織の再現性が低かったりとデメリットも多くあります。

フェーズ1でのデメリットを経て、フェーズ2ではスキルが標準化された組織に変わっていきます。戦略の設計と俯瞰ができるリーダーと、複数名の広告運用者による分業体制です。フェーズ1と比べると、広告運用者一人あたりのスキルは低いですが、リーダーが効率良く最適な指示をオペレーターに振ってプロジェクトを推進していくため、仮に運用者が離職してもフェーズ1ほど組織に影響は出ません。また、上流設計ができるリーダーがいればどの運用者でも同レベルの組織を構築できるため、組織の再現性も高いです。

フェーズ3は、運用自動化ツールの導入によって、さらに広告運用が標準化された状態の組織です。それまでヒトが担ってきた部分をツールで代替するため、工数削減や生産性の向上に繋がりますし、運用自動化によってヒューマンエラーも起きにくくなります。単純な運用業務の部分をツールで自動化できるため、運用者はKPI設計やコミュニケーション設計など、より上流の支援に注力できます。

なによりもまずは組織の標準化への舵取りをすることがトップには求められますね。

平野:会社全体としてスキルの標準化へ踏み切らないと、職人タイプの人はなかなか変われないかもしれませんね。

長谷川:まさしく昔の私がそうでした。現場の運用担当者からマネージャーに昇格したのですが、マネージャーになっても大手のクライアントの運用はメンバーに任せず、自分でやってしまっていました。

このように自らの運用スキルに誇りを持った運用者が自分で手を動かすことは珍しくないと思っていて、まずはトッププレイヤーをトッププレイヤーのままにせず、標準化すなわち全体最適をミッションとして役割を与えるべきですね。

また、最近のいわゆる「イケてる広告代理店」のほとんどが社内にエンジニアを抱えています。というのも、自動化をすすめる中でAPIなどの仕組みを利用しようと思ったら、必ず技術的な課題が出てくるので、エンジニアの技術が必要となります。人であれツールであれ、全体最適のために投資をする意思決定は必要ですね。

「経験豊富で運用スキルが高いベテランをアサインできます」が通用しない時代になりつつある

平野:実際のところ、ツールの導入によって広告代理店のパフォーマンスは向上しているのでしょうか?

長谷川:例として「ツールを導入している広告代理店の新卒の運用担当」と「ツールを導入していない広告代理店の中堅の運用担当」を比較して考えてみます。

3年前くらいまでは、後者の方がパフォーマンスは高かったと思うんです。でも今はツールの力で運用スキルの再現性が高くなっているので、極端な例えですが、ビジネスに対する理解力があれば、新卒でも中堅以上のパフォーマンスを出せうる状況です。

それだけツールによる運用スキルの再現性の恩恵を受けられるようになってきています。広告代理店の組織づくりのキーファクターも、採用とチームマネジメントの時代からツールインフラ整備と運用の再現性担保へ変わってきていると思います。

「大手の広告代理店に頼むと経験の浅い新卒がアサインされますよ。うちなら経験豊富で運用スキルが高いベテランをアサインできます」というセールストークが通用しない時代になってきているんです。

平野:広告運用の自動化ツールがもたらす運用スキルの再現性は、“職人技”や“経験”と同等のレベルになっているんですね。

長谷川:特に人材流動性が高まっている昨今では、この運用スキルの再現性こそが重要なポイントになります。

繰り返しになりますが、広告運用の業界では3年くらいで組織の半分が入れ替わると言われています。せっかく高度な広告運用スキルを継承してメンバーを育てても、やめてしまったら組織全体としての戦闘力は落ちてしまいますよね。

なかなか現場にいると3年という時間軸で物事を考えるのが難しいですが、そこを見越して戦略設計を描くのであれば、ツールを用いて組織の運用スキルの再現性を高めていくことは自然な流れではないでしょうか。

広告運用者の頭脳を代替できるようなツールを提供していきたい

平野:広告代理店とツールのあり方について、広告レポート自動化ツールの「ATOM」を提供する立場としての業界の展望を教えてください。

長谷川:ATOMに限らず、これまでは標準化ばかりを推してきたのがツールでした。ただそれは作業的なオペーレーションに限った領域でした。

今では、徐々に広告運用者の頭脳を代替できるようなツールに発展してきています。ATOMでは、属人化された領域をツールで支援する「属人化テック」のようなことをやっていきたいですね。

「標準化」というのは、広告代理店も、そのお客様もみんな嫌がる言葉なんです。誰だって「特別扱い」されると嬉しいので、そんな特別扱いをツールで支援できるようなサービスを提供していきたいですね。

(写真/矢野 拓実 編集/中島 孝輔 株式会社才流)

プロフィール

長谷川智史 SO Technologies株式会社 執行役員CMO

1979年生まれ。株式会社オプトを経て、2008年株式会社ビービットに入社。コンサルタントとして大手企業・Web系先端企業のWebマーケティング改善に従事。2012年ソウルドアウトに参画。成果改善部門や自社メディアLISKUL立ち上げを経て、2016年取締役CMOに就任。2021年4月よりSO Technologies 執行役員CMOとして広告会社支援SaaS「ATOM」などマーケティングに携わる。

平野考宏 TATEITO株式会社 代表取締役

新卒で人事コンサル会社に入社。2005年に株式会社オプトへ転職し、SEM部本部長として120名のマネジメントと、リスティング広告売上高日本一も達成。同社で地方中小企業のリスティング広告運用を支援する子会社を起案、取締役も務める。

2012年にTATEITO株式会社を設立、代表取締役就任。マーケティングに特化した動画学習サービス立上げ後、現在は組織内動画配信プラットフォーム”RUUUN”を中心に、動画を活用した組織の学習環境づくりに取り組む。

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