インタビュー広告代理店

広告プラットフォーマーがWeb広告代理店に求める本音とは?これからのWeb広告代理店に求められること

金森悠介
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市場や社会の変化の影響を顕著に受けるデジタル広告、その影響は広告の出稿企業だけでなく、プラットフォームやWeb広告代理店にも大きく影響を与えます。

2020年は新型コロナウィルスの感染拡大が社会に大きな影響を与え、人々の暮らしや働き方が一変した年になりました。

広告業界に限って言えば、業界全体で、広告表現における違法な表現などの取締強化による健全化、またGoogle・Appleを中心としたCookieなどによる個人情報の取り扱いに関する規制など、大きな環境変化が進んでいます。

日々移り変わる情勢や業界の変化を、Web広告代理店はどう受け止めるべきなのでしょうか。

今回の記事では、広告プラットフォーム機能も併せ持つメディアを運営する企業で役員を務めていた方に匿名(社名・氏名)を条件に、インタビューを行いました

広告プラットフォーム側の意見として、Web広告代理店の経営に役立つ内容もあるかと思います。適宜参考にしていただけたら幸いです。

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“コロナ禍”により大変動があった2020年

ーー2020年はデジタル広告の市場・社会が大きく変化した1年だったと思います。前職でのメディアへの影響はありましたか?

影響は大きかったです。2020年は、”コロナ禍”等の影響により、売上にも影響があった一年でした。

“コロナ禍”による変化

“コロナ禍”は広告出稿量の大幅減少という大きな影響をデジタル広告業界にも対して与えました。

特に旅行代理店や飲食店が広告出稿を控えたことが目立ちました。さらに他業種でも広告出稿によるレピュテーションリスクを恐れたため出稿を控えているケースも多く、例年よりも広告出稿が減少していますね。

あわせてコロナ禍になった直後は、新規商談もほぼ獲得できていません。商談獲得のため該当部署の電話番号に架電しても、テレワークの実施によってオフィスに社員がいないので、そもそも連絡が取れないんです。メールで連絡が取れても「次回出社時に連絡しますね」と、商談が長引くケースも多くありました。

“コロナ禍”等の影響を受けて、アプリのDAU(1日間のアクティブユーザー数)は伸びているのにもかかわらず、売上は落ち込むという構造でした。

既存の方法では売上を伸ばすどころか、落ち込んでいく一方です。2020年は、新たなマネタイズ手法を模索することになりました。

ーー具体的にはどのようなマネタイズ案を考えていたのですか?

広告も中に含まれる音声・動画コンテンツの提供や、純広告販売、その他に広告以外のサービス展開です。

結局、DAU(1日間のアクティブユーザー数)やMAU(1ヶ月間のアクティブユーザー数)は伸ばせても、運用型広告だけでは売上が頭打ちになるのが明らかだったためです。特に近年は、キュレーションアプリやメディアの勝敗は決まってしまい、多くのメディアが閉鎖に追い込まれる流れにあると思います。これまでメインとしてやっていなかった方法で、どのように価値提供できるか考える必要がありましたね。

運用力だけではWeb広告代理店としての差別化は難しい時代に

ーーこうした状況下で運用型広告をとりまく環境はどうなっていると考えていますか?

主要プラットフォーマーの自動化が進むことで、運用力での差別化が難しくなっている

前提として、GoogleやFacebook、Twitterといった主要プラットフォーマーが提供する広告管理ツールにおける自動化の機能が進化・普及してきているため、以前より広告運用をやりやすくなっていると思います。

これまでは、プラットフォーマーの広告管理ツールは使いづらかったため、代理店が提供する広告運用を専門に行う専門組織・体制がないと分析・運用が難しかったり、多くのメディアに広告出稿を分散して予算を載せ替えながら運用するケースが多かったりと、代理店の強みが発揮できていたと思うんです。

ただ現在は、プラットフォーマーが提供する広告管理ツールも自動化機能が進化してきているため、広告代理店が従来のように運用力で差別化しようとすることが、難しくなっているのではないでしょうか。

広告運用を内製化する流れも加速

こうした流れの一つとして、広告運用をインハウスで行う企業が増えていると思います。「Web広告代理店で広告運用をしていた人が、事業会社へ転職してインハウスで広告運用をする」といったケースもよく耳にします。

経験者であれば事業会社の方が、運用型広告を1人で回すことも可能なのでしょう。

また私の把握している限り、効率の良いメディアが何個かに絞られてくれば、意外に未経験者でも運用できてしまうんですよね。そうなると、運用手数料もかからない広告運用の内製化も十分に検討余地があるのでしょう。

いま伸びているWeb広告代理店の特長

こうした状況下でもいま伸びている、Web広告代理店は、広告運用だけでなく、新しい価値提供に挑戦しているところだと考えています。例えばサイバーエージェントさんはその筆頭でしょう。広告代理店でありながらも自社でABEMAというメディアを持つなど、広告代理事業以外にも柱となる事業をつくっています。

これからのWeb広告代理店は、Web広告だけでバリューを提供し売上を立てることが昔より難しくなってきていると思います。自分たちの強みをどこに置き、どのように価値を伝え、強みを生かした付加価値をどう決め、どう提供するかがより重要になるのではないでしょうか。

プラットフォーマーにも、付加価値や強みがより一層求められていく

もちろん、Web広告代理店だけでなく、プラットフォーマーにも付加価値や強みがより求められています。例えばGoogleやFacebook、AmazonのようなプラットフォームはとにかくDAUが多く、出稿企業も膨大です。一方で小規模のプラットフォーマーはその20%程度のDAUしかなく、出稿企業数も少ないです。

この規模の差を活かし、フレキシブルな対応を強みとするプラットフォームは多いですね。例えば前職でも、グローバルプラットフォーマーにはできない小回りが効く価値提供を行っていました。「ちょっと面白い企画をやってみよう」という時には小さめのメディアに相談してもらえると、実現しやすくなるのではないでしょうか。

プラットフォーマーがWeb広告代理店に求める本音

ーー普段なかなか伝えられていないものの、プラットフォーマーとしてWeb広告代理店に「実はこうしてほしい」といった要望はありますか?

広告における成果の定義と評価軸の合意形成をとっていただきたい

クライアントと、広告における成果の定義、評価軸を握ってもらえるとありがたいですね。

現在、インプレッション課金型の広告、つまり純広告の効果検証がとても厳しくなっているんです。本来インプレッション課金型の広告は、見られた数や純粋想起で効果を見ていただきたく。基礎調査と出稿後の調査データを比較して、利用意向や好意度数の変化を示すといった形で効果検証いただきたいんです。

ただ、Web広告は数字が全て計測できてしまうので、クライアントはコンバージョン数やCPAに目が行ってしまいます。その結果「コンバージョンとして設定していた、アプリダウンロードには繋がらなかったね」と評価されてしまい、その後の広告出稿に繋がらないケースが多くあります。

こうした評価軸のブレが非常に多くあるため、成果と検証の定義をしっかりと握って、クライアントに理解していただいた上で、定常的に掲載いただけるお客様をご紹介いただけると大変ありがたいですね。

クライアントにプレゼンテーションする機会をいただきたい

さらに、プラットフォーマー側からクライアントに直接プレゼンテーションする機会を、Web広告代理店にセッティングいただけると非常にありがたいです。

プラットフォーム・メディア側には、事例やノウハウといった情報を多く持っているので、「我々はこのようなメディアで、こういった考えで広告を提供しています」と伝える機会があればクライアント、プラットフォーマーの双方が互いに信頼できます。

クライアント側も「紹介してもらったからといって、次からは代理店抜きで直接お話しよう」とも考えていないでしょう。

Web広告代理店とは「一緒にクライアントの効果を出すために動いていこう」と思える関係づくりができれば幸いです。

まとめ

インタビューは以上です。

本件は、Web広告代理店の経営層に役に立つ情報を届けるべく企画いたしました。全てを鵜呑みにせず、広告プラットフォーマー側の一意見として、事業運営の参考にしていただければ幸いです。

最後に、弊社(株式会社Shirofune)が直近に感じている変化を紹介させてください。

事業運営をする中で見えてきた弊社内の仮説ですが、以下①や②のような傾向が増加していると考えています。


①コロナ禍を契機に、広告運用を内製化するケース

広告代理店様に広告運用を外注されていた広告主様だけでなく、Web専業の代理店に広告運用を外注していた広告代理店様でも内製化を進めるケースが増加

後者の主要因は、既存顧客からの要望に応えるため。結果的に、顧客満足度および案件相談数がアップする実績も。

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②Web広告代理事業を効率化することで、リソースを別事業に再配置するケース

既存のWeb広告代理事業を効率化し、利益率を改善することで、別事業にリソース(人員、お金)を投資する取り組みを行う広告代理店様が増加

Web広告のみならず、広義のWebマーケティング支援事業を行う企業様や、規模の大きい広告代理店様では、DX支援といったコンサルティング会社と競合するサービスを開発するケースも。


弊社が提供する、広告運用自動化ツール「Shirofune」も、上記ニーズの解決策として利用されるケースも増加しています。①や②のような課題感に当てはまる方はぜひShirofuneの利用をお試しください。

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(取材・執筆/金森 悠介 デザイン/垰本 千代 編集/中島 孝輔)

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