「Appliv」の体制変更を支えた2人が明かす、「全員企画・全員自走」を掲げるインハウスチームの作り方
- Shirofune広報担当
デジタルマーケティング業界における老舗企業であり、2019年現在も最先端を走っているナイル株式会社(以下:ナイル)。
企業理念としても、「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」と自社を定義しており、クライアントへのマーケティング支援を行うかたわら、自社サービスも数多く運営し続けている。
そんなナイルにおいて、代表的な自社サービスとして長らく運営されていたのが、アプリレビューサイトである「Appliv(アプリヴ)」だ。2012年8月に事業が立ち上がって以降、2019年現在も着実に成長を積み重ねており、月間1000万UU(ユニークユーザー)も目の前という好調ぶりとなっている。
2018年に「Appliv」の体制変更が行われ、当時から現在までのサービスグロースを担当した福田氏と針替氏に、インハウスマーケティングの成功に至った経緯を伺った。
運営体制を「機能別組織」から「プロジェクト型組織」へ
2017年秋に福田氏と針替氏へと体制変更の旨が共有され、2018年1月に現在のチーム構成へと変わった「Appliv」の運営チーム。
具体的な成果としては、3年後の2020年12月までに定めていた目標をわずか1年で達成し、売上としても約1.5倍まで引き上げることができたという。
そして、新体制がナイル役員陣から高い評価をいただけた理由として、機能別組織からプロジェクト型組織へと変わったことが大きな要因であったことが明かされた。
福田氏:
体制変更以前は、それぞれの職能に応じて組織が分かれていました。営業、マーケティング、デザイン、エンジニアといったそれぞれの職能ごとにチームが構成されており、「営業であれば売上と利益」「マーケティングであればPV」といった具合に目標が定められていました。
私自身、体制変更前には広告営業を担当しており、売上や収益を向上させるために、マーケティングや開発の面で、インパクトある施策に取り組もうと試みていました。しかし、事業部別に分かれている組織では、抱いていた課題を解決させることが難しかったのです。
体制変更後は「Appliv」の運営メンバーとして、私が売上全般に関わる全般的な指標、針替がトラフィックを主としたユーザーサイドの指標を担当しつつ、チームで共通となっている目標をメンバーに共有し、達成してもらう仕組みづくりを行いました。
各分野における専門性が高いメンバーというよりは、自身の専門分野を持ちつつも、「どうすれば売上を達成できるのか?」「どうやって事業を伸ばそうか?」という目線を持ちながら目標にコミットできるメンバーにてチームが構成され、デザイナーやエンジニアを含めた組織が形成されました。
「OKRというツール」に踊らされていた立ち上げ間もない時期
福田氏:
また、新体制の立ち上げに伴い、目標管理のフレームワークとして、OKR(Objectives and Key Results)を導入しました。
実際にOKRをやってみた感想としては、目標(Objectives)の設定が難しいなと。職種を跨いで構成されたチームでは、同じ目標となる定性的な理想を定義することが、とても大変でした。
また、成果指標(Key Results)との関連性を見いだすプロセスも、マネジメント層としては問われているなと。その関連性を見いだすことが非常に難しく、成果指標の取り決めや遂行に関しては柔軟に対応し、場合によってはMBO(目標管理制度)的なフレームワークを採用するケースもありました。
特に、これまでエンジニアチーム内で完結していたマネジメントも、プロジェクト型組織では大きく変わりました。当時、チームマネージャーであった私はエンジニアやデザイナーのメンバーを相手に1on1を行うようになり、リファクタリングやブランドづくりを始めとした、私自身にとって専門外の知識とも向き合う必要性が生まれました。
バランスを取り続ける上で、経営陣や株主様、ひいてはユーザーに対して、数字や現場の声をいかに届けるのかということへの意識は欠かせません。
また、ナイルではピアレビューという制度を利用しており、開発領域などの評価を、専門家の声を借りながら定量的に落とし込む試みにも取り組んでいました。
私自身がエンジニアリングについて詳しくない部分もあり、専門家の知見を借りながら、各メンバーの評価を5段階へと落とし込むなど、なんとか定量的な形で成果を確認できるように工夫をしていました。
針替氏:
OKRを導入し始めた当初は、正直「OKRというツール」に踊らされていたなと、今振り返れば思います。
みんなが考える「OKR像」にバラつきがあり、ビジョンへの目線を第一優先にするメンバーもいれば、売上にフォーカスする社員もいる。これらの意思統一を図ることが、非常に難しかったです。
目標達成を目指すための「ツール」であるという認識が大事であり、OKRという目標管理方法に日々向き合いつつも、少しずつアップデートを重ねていく姿勢が問われているように感じます。
地道な改善の成果を、チーム全員で確認可能な体制を作る
チーム作りの土台としてOKRを導入し、メンバーの目線の先を意識するようになった「Appliv」運営チーム。事業として掲げる売上とサイトパフォーマンス向上のために、実際に取り組んだ施策は、実は地道な改善の積み重ねであったという。
福田氏:
SEO文脈での取り組みですと、ページタイトルの改善などは、体制変更前には殆ど強化しておりませんでした。
サイトパフォーマンスの向上を狙う上で、「効果(の見えやすさ)」と「実装工数」をそれぞれ縦軸と横軸に置き、各施策のインパクトを可視化・一覧化することで取り組みの優先順位を明確にしました。
上記グラフの通りですが、その他のSEO施策に比べてタイトル改善は圧倒的にコストパフォーマンスが高く、「Appliv」の改善を行う上でも、大きな成果を残すことに成功しました。
こちらの打ち手ベースでの取り組みに関しては、【2019年決定版】タイトル改善が唯一無二にして最強のSEO対策である3つの理由 | SEO HACKS公式ブログ にも掲載されているので、実際の取り組みや注意点についてはご確認ください。
また、サイトパフォーマンスなどの数値を定点でチェックする仕組みも、改善前はビジネスサイドのみで設計を担当しており、中途半端な状態になりがちでした。そのため、エンジニアリング技術を活用することにより、レポーティングの最適化を進めました。
サイトパフォーマンスや狙いたいキーワードの流入状況などを可視化し、ライターの視座も変わったように思えます。これまでビジネスサイドが中途半端なレポート作成業務に当てていた時間を、プランニングやクリエイティブ作りに置き換えることができました。
チーム全体で目標にコミットできる体制を築けたことが大きかったですね。
針替氏:
また、チームで「Appliv」のグロースに取り組む上で、エンジニアやデザイナーの目線に立ち、「自分が取り組んだ施策がどうなっているのか?」を確認してもらう機会を設けるようにしました。
今では「Appliv」に関わっているほぼ全員がGoogleアナリティクスはもちろん、ABテストツールであるGoogleオプティマイズでテストを実施したり、ヒートマップを駆使したりと、個々人が気軽に仮説検証を取り組める組織になりました。
施策に対して、上司からアドバイスを受けるよりも、「Appliv」ユーザーの閲覧・利用状況を、遂行者自身でユーザーからのフィードバックを直接確認してもらう方が、個々人の納得度や次のアクションの精度が高くなった印象を抱いてます。
これまではマーケターと呼ばれる人のみが仮説検証のレポート作成、報告を全部行っていたのですが、今ではエンジニアやデザイナー、編集者の人たちも「自分で数字を取りに行ける体制」を構築することができました。そうなると、シンプルに事業の売上やユーザー指標といった数字にも自然と興味を持ち始めるようになり、自分ゴトとして自社サービスと向き合えるメンバーも増えてきましたね。
「マーケティングに取り組む = 人と向き合う」なのでは?
企業のマーケティング支援としてコンサルティング業務も手がけるナイルのメンバー。そんなクライアントへの支援を手がけつつ、自社サービスのインハウスマーケターとして捉える「インハウス化」のあり方とは?
福田氏:
いわゆる「マーケティング」の定義は難しく、自分の担当範囲が見えづらかったり、取り組んだ範囲における成果を把握しにくかったりする側面があると思います。
今、私が担当しているサービスでは、売上達成に向けてのマーケティング施策は私が関わりつつも、プロダクトの在り方を定める責任は針替が担っているため、事業成長のために自らの範囲外における業務との向き合い方が大切です。
「人を動かす」ではありませんが、自分の守備範囲である事業数値に責任を持ちつつも、より大きな責任と権限をもった人の動かし方や提案方法を模索することが今後自分に問われていると思いますね。
針替氏:
私自身も、いわゆるマーケターというよりは、現在はプロダクトオーナーという肩書きを持っており、「Appliv」の方向性を定めたり、戦術の落とし込みを主に担っています。
自分としては、メンバーに共有している中長期的なプロダクトミッションに基づき、やるべきことを続けてきたつもりでも、メンバーからは非連続な取り組みに見えているケースも少なくない。
ストーリーとして私個人では描けているものを、どうやってチームに伝えて、共感してもらうのか。ここは苦労していることでもあり、今後も改善していきたいところですね。
また、私自身のキャリアとして、これまで事業数値へのコミット以上にメディアパフォーマンスやPVの改善・向上に時間をかける機会が多かったことから、別の専門性を有しているメンバーと一緒に働くことが、とても刺激になっています。
それこそ、福田から共有してもらう、過去に営業マンとして取り組んできたクライアントとの折衝経験、Web広告に対する豊富な知識、事業成長を目指すための意見などは、私としてはとてもありがたい限りです。
チームで事業成長にコミットする上で、自身が提供する価値、同じチームメンバーが与えてくれる価値に向き合うことが、「全員企画・全員自走」を掲げるインハウスチームでは欠かせないと思います。
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(写真右)福田 士朗氏 プロフィール(Twitter:@siro7603)
新卒で都内ITベンチャーに入社後、2015年にナイル株式会社に中途入社。営業管理や広告運用などを経て、Applivの体制変更を推進するリーダーを請け負う。現在はマーケティング担当として売上責任からプロダクト方針の策定など幅広い業務に従事。持ち前の推進力で、着実に事業を成長を成功させたことが評価され、ナイル社で2017年、2018年度の全社年間MVPに表彰される。最近ハマってるアプリは「シティダンク」
(写真左)針替 健太氏 プロフィール
学生の頃から個人でメディア運営を行っており、そのままアフィリエイトで食べていくか釣具屋さんに就職するか迷っているときに、たまたま就活イベントで誘われたナイル株式会社に入社。個人メディアで培ったノウハウを元に、国内最大級のアプリ情報メディア「Appliv」(https://app-liv.jp/)に立ち上げから携わり、オペレーション構築やWeb解析、SEO、広告運用などのWebマーケティングに本格的に取り組む。現在はメディア責任者として数十名のメンバーをまとめると同時に、個人でも中小企業を中心にWebサイトのマーケティングをまるっとサポートする活動もしている。最近ハマってるアプリは『みんはや』。著書に『Googleオプティマイズによるウェブテストの教科書』(共著)がある。
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Shirofune広報担当