
広告キャンペーンと広告グループの違いとは?使い分け方や設定方法、事例も交えて解説

- 菊池 満長
広告運用の成果を左右する最大の要因は、媒体側のAIをいかに活用できるかにあります。たとえば、従来のリスティング広告では、ユーザーが「何を」検索したかに基づいて広告が配信されていました。しかし現在では、生成AIの進化によって単なるキーワード一致にとどまらず、ユーザーが「なぜ」その検索をしているのかという意図まで読み取り、より精度の高い広告配信が可能になっています。
この高度なAI最適化を最大限に引き出すためには、広告キャンペーンの構造を正しく設計することが欠かせません。特にキャンペーンと広告グループの役割を混同したまま設定してしまうと、AIが誤った学習を行い、予算が無駄に消費されてしまいます。成果を最大化するためには、両者の違いを正確に理解し、戦略と戦術を切り分けて設計することが求められます。
本記事では、広告キャンペーンと広告グループの本質的な違いや正しい使い分け方、さらに具体例を交えながら解説していきます。
そもそも広告キャンペーンと広告グループとは
広告キャンペーンと広告グループは、一見すると似たような概念に見えますが、本質的には異なる役割を持つ要素です。広告運用に携わる上で、この違いを理解せずに設計してしまうと、異なる目的の施策が混在し、本来成果を出すべき予算が無駄に消費されるおそれがあります。
まずは、広告キャンペーンと広告グループについて、あらためて整理しましょう。
広告キャンペーンとは?設定できる内容をおさらい
広告キャンペーンとは、広告配信を管理する上での基本単位であり、配信の目的、予算、ターゲットなどを設定する枠組みです。簡単にいえば、「何のために広告を出すのか」を定義するレイヤーにあたります。
リード獲得、売上げの最大化、認知拡大といった目的を設定すると、その内容に応じて最適化のアルゴリズムが働きます。キャンペーンで設定できる主な項目は以下の通りです。
- 予算設定:1日の上限や月間の総予算など、全体の配信量を決める役割。
- 入札戦略:Google広告であれば、tCPA(目標コンバージョン単価)やtROAS(目標広告費用対効果)といった自動入札方式を選択。
- 配信条件:地域、言語、ネットワーク(検索、ディスプレイ、動画など)を指定。
たとえば、東京都内で開催するセミナーの集客を目的にリード獲得キャンペーンを立て、その中に複数の広告グループを設けるという構成になります。
このように、キャンペーンは広告配信全体の戦略を決める上位レイヤーであり、目的設定を誤ると、すべての広告が誤った方向に最適化されてしまうリスクがあります。
広告グループとは?設定できる内容をおさらい
広告グループとは、広告キャンペーンの枠内で、具体的なターゲティングやクリエイティブをまとめる中位階層の構成要素です。ここでは、「誰に」「どんな広告を見せるか」という戦術レベルの設定を担います。
主に設定できる項目は以下の通りです。
- キーワードまたはオーディエンスの選定
- 広告クリエイティブの紐づけ
- 入札調整や表示タイミングの最適化(プラットフォームによる)
たとえばリスティング広告の場合、広告グループごとにキーワードテーマを分けるのが一般的です。「無料体験」という検索意図のグループと、「料金比較」という意図のグループを分けることで、それぞれに最適な広告文やランディングページを出し分けられます。
ディスプレイ広告や動画広告では、リマーケティング対象と新規ユーザーを広告グループで分け、異なるメッセージを配信することで効果を高める運用がなされます。
広告グループを適切に分けることで、訴求ポイントのABテストやターゲティング手法の比較が容易になります。たとえば、同じリード獲得キャンペーン内で「導入事例訴求」と「コスト削減訴求」を分けて検証すれば、どちらがより高いCTRやCVRを生むかを短期間で把握できます。つまり、広告グループとは、キャンペーン戦略の中で仮説検証を効率的に行うための実行単位として機能するのです。
広告キャンペーンと広告グループの違い
広告キャンペーンと広告グループの違いは、広告配信における戦略と戦術の違いに相当します。
戦略とは、大きな目的を達成するための全体方針や方向性を指し、戦術はその戦略を実現するための具体的な手段や行動を意味します。経営に置き換えると、「どの市場を狙い、どこに投資するか」が戦略であり、「その市場でどのような顧客接点を築き、どんな営業手法を採用するか」が戦術にあたります。
広告運用も同様です。キャンペーンは「広告の目的」「予算」「入札戦略」「配信チャネル」などを定める戦略単位であり、広告グループは「誰に」「どのような訴求やクリエイティブで配信するか」を管理する戦術単位です。
たとえば、新規顧客を獲得する目的で月100万円の予算を設定したキャンペーンを立てたとします。この段階で、目的(新規リード獲得)、予算(100万円)、入札戦略(tCPA)、配信チャネル(検索広告など)は確定します。その上で広告グループを分ければ、20代の新規ユーザーには価格を訴求し、30代のビジネス層には機能性や業務効率を強調するなど、ターゲットに応じた広告展開が可能になります。
キャンペーンが戦略の地図を描く役割を担い、広告グループはその地図上でどのルートを通って目的地へ向かうかを決める存在だといえるでしょう。
この違いを正しく理解することは、広告運用の精度に直結します。両者を混同すると、本来は目的別に分けるべき予算をひとまとめにしてしまい、効果の薄い広告に無駄な費用が吸われてしまいます。一方で、広告グループをむやみに増やすと予算が細分化され、各グループのデータが十分に蓄積されず、機械学習による最適化も機能しにくくなります。これは戦場を細かく分けすぎて、兵力がどこにも集中できない軍隊にたとえることができるでしょう。
重要なのは、戦略と戦術の線引きを明確にし、それぞれに役割を持たせることです。キャンペーンでは目的や予算配分を明示し、広告グループではターゲティングや訴求仮説の検証を行う。そうした構造を維持することで、目的に沿った形で効率的に広告運用を進められ、成果につながる意思決定がしやすくなります。

広告キャンペーンと広告グループの違いを理解しておくべき理由
広告キャンペーンと広告グループの違いを理解することは、広告運用において単なる知識ではなく、成果を大きく左右する実務上の必須スキルです。なぜなら、両者を正しく区別できるかどうかで、予算配分、学習スピード、改善アクションの精度が決定的に変わってくるためです。
広告配信を進める中で、「予算を増やしているのに成果が安定しない」「分析しても原因が特定できない」といった課題に直面した経験はないでしょうか。こうした悩みの多くは、キャンペーンと広告グループの設計ミスに起因しています。
たとえば、キャンペーンで分けるべき施策を広告グループで分けてしまったり、その逆を行ったりすると、学習アルゴリズムが適切に機能せず、効果測定や改善の着手が遅れる要因になります。このようなリスクを避けるためにも、キャンペーンと広告グループの違いを正しく把握することが重要です。
以下では、両者の理解によって得られるメリットを、3つの視点から解説します。これらの視点を押さえることで、広告運用の全体像がより明確になり、課題に対する改善の一手を素早く打てるようになるでしょう。

役割の階層が明確になる
広告キャンペーンは、何を、どこまで達成したいのかを定める最上位の枠組みです。たとえば、リード獲得を目的とするのか、売上最大化を目指すのか、といった目的設定が該当します。その下層に位置する広告グループは、具体的に、誰に、どのようなクリエイティブで届けるかを細かく設定する役割を担います。
この階層構造を意識することで、後から設定内容を見直す際、判断に迷いが生じにくくなります。あるキャンペーンがリード獲得を目的としていれば、その配下の広告グループには、20代向けの価格訴求、30代向けの機能訴求といった具合に、ターゲットや訴求軸ごとの構成が整理されているはずです。
一方で、この階層が曖昧だと、1つのキャンペーン内に目的の異なる広告が混在することで、予算や成果の管理が破綻しやすくなります。そのため、設計段階で役割を明確に区切っておくことが、無駄な重複や設定ミスを防ぎ、運用全体の透明性と整合性を高める鍵となります。
予算と入札のコントロールが柔軟になる
広告キャンペーンと広告グループの違いを理解して設計すると、予算や入札戦略のコントロールに柔軟性が生まれます。
キャンペーン単位では、全体の財布として予算を大枠で決め、入札戦略を設定します。リード獲得を目標とする場合、tCPA(目標コンバージョン単価)を選択すれば、自動的に最適化が進むでしょう。一方、広告グループ単位では、特定のキーワードやオーディエンスに対して入札を強める、あるいは抑えるといった細かな調整が可能です。この構造により、全体の予算を守りつつ、成果が出ているターゲットに重点的に投資できます。
同じキャンペーン内に「無料体験」訴求の広告グループと「割引キャンペーン」訴求の広告グループを並行して走らせたとしましょう。もし無料体験グループの方が圧倒的にCVRが高ければ、その入札を引き上げて予算を厚く振り分けられます。逆に成果が低いグループは調整または停止することで、無駄なコストを削減できます。
さらに、地域やデバイス別の成果差にも柔軟に対応可能です。キャンペーン全体の入札戦略は維持しながら、広告グループごとに「モバイルを優先する」「特定オーディエンスを強化する」といった設定を行えば、より精緻な最適化が実現できます。
この階層構造を理解せず、すべてを同じ階層で運用すると、成果に応じた投資の最適化が行えません。設計段階でキャンペーンと広告グループの役割を明確に意識しておくことが、運用効率の大幅な改善につながります。
効果測定と改善が速くなる
広告キャンペーンと広告グループの違いを理解して設計すると、効果測定と改善のスピードが大幅に向上します。
キャンペーン単位では、CPAやROASといった全体KPIを追跡できます。一方、広告グループ単位ではCTRやCVRなど詳細指標を把握できるため、どのターゲットや訴求が成果に直結しているのかを素早く見極められます。
たとえば、同じリード獲得キャンペーンの中に「事例訴求」と「コスト削減訴求」の広告グループを並行させたとします。キャンペーン全体では目標CPAを達成していても、実際には事例訴求グループが成果を大きく押し上げている可能性があります。この場合、事例訴求グループを強化し、コスト削減訴求グループのクリエイティブを差し替えるなど、具体的な改善策をすぐに打ち出せます。

また、階層を分けておくことで改善の優先順位も明確になります。全体で成果が落ち込んでいるのか、一部の広告グループに原因があるのかを切り分けやすいため、無駄に大きな変更を加えて学習をリセットしてしまうリスクも減少します。
結果として、仮説検証のサイクルが短縮され、改善スピードが加速します。これはABテストを効果的に進める上でも欠かせない基盤であり、勝ち筋を早期に見極め、予算を集中投下するための前提条件となります。
広告キャンペーンと広告グループの使い分け方
広告キャンペーンと広告グループは役割が異なるため、混同せずに使い分けることが成果を大きく左右します。キャンペーンは戦略の枠組みを決める「器」であり、広告グループはその中で仮説を検証する「実験箱」として機能します。この違いを理解しておくことで、予算を最適に配分しつつ、効率的に改善を進められます。
ここからは、それぞれをどのような場面で活用すべきかを具体的に整理します。まずは、キャンペーンを設定すべき場面から見ていきましょう。
広告キャンペーンを使う時
広告キャンペーンは戦略を分けたいときに用います。目的、予算、入札戦略、地域、チャネルといった上位設計が異なる場合には、必ずキャンペーンを分ける必要があります。このルールを徹底することで、成果を最大化できる基盤が整います。
それでは、広告キャンペーンを活用すべき代表的な3つのシーンを見ていきましょう。
目的が異なる場合
広告キャンペーンを分けるべき最も基本的なケースは、目的が異なる場合です。キャンペーンごとに最適化アルゴリズムが働くため、目的を混在させると学習が正しく進みません。
たとえば、新規顧客の獲得を狙いCPAを重視する施策と、既存顧客の購入頻度を高めROASの最大化を目指す施策がある場合を想定します。これらを同じキャンペーンにまとめてしまうと、どちらの施策も中途半端な成果になるでしょう。
実務の現場では、資料請求や無料トライアル獲得を目的としたキャンペーンと、アップセルやリピート購入を目的としたキャンペーンを分けて運用するのが一般的です。それぞれに応じて追う指標も異なるため、キャンペーンを分けることで配信内容と学習アルゴリズムを一致させられます。

逆に、目的が異なる施策をひとつのキャンペーンに押し込めると、最適化の方向性がぶれてしまい、成果が出ているのか判断できないという状態に陥ります。目的ごとにキャンペーンを分けておけば、KPIの達成状況を明確に管理でき、意思決定のスピードも速まります。
まずは、目的ごとにキャンペーンを分けるという設計思想を徹底するようにしましょう。
配信地域・期間が異なる場合
広告キャンペーンを分けるべきもう一つの典型的なケースは、配信地域や期間が異なる場合です。キャンペーンは、地域設定やスケジュール設定を管理する単位でもあるため、条件の異なる施策を一つにまとめると成果が歪みます。
具体的には、東京限定で開催するセミナー集客と全国規模で展開する認知拡大施策を同じキャンペーンに組み込むと、学習アルゴリズムが反応の良い方に予算を偏らせてしまい、地域ごとの成果を正しく測定できません。東京でのコンバージョンが取りやすければ、全国向けの広告に予算が回らず、全国施策が失敗に終わるリスクがあります。
期間についても同様です。短期間で集客するイベントキャンペーンと長期的に認知を狙う常時施策を一つのキャンペーンにまとめると、予算消化や学習がアンバランスになり、双方の目的を達成しにくくなります。期間が明確に区切られる施策は、独立したキャンペーンとして設計することで、KPIの進捗を正確に追跡できます。
地域や期間の違いは、一見すると細かな設定の差に思えるかもしれませんが、実際には成果に直結します。キャンペーンを分けることで、地域ごとのROIや期間ごとの効果測定が明確になり、改善アクションを迅速に打てるようになります。
配信チャネル・ネットワークが異なる場合
広告キャンペーンを分けるべき大きな理由の1つに、配信チャネルやネットワークが異なるケースがあります。
たとえば、Google広告には検索ネットワーク、ディスプレイネットワーク、YouTubeなど複数の媒体があり、それぞれ配信の仕組みやユーザー行動の特性が大きく異なります。これらを同じキャンペーンにまとめると、アルゴリズムが成果の出やすいチャネルに予算を偏らせてしまい、他のチャネルの効果を正しく評価できません。
検索広告は顕在層を狙う施策であり、すでにニーズを持つユーザーにリーチするためCVRが高くなりやすい特徴があります。一方、ディスプレイ広告やYouTube広告は潜在層へのアプローチが主目的で、CTRやCVRを検索広告と単純に比較することはできません。この2つを同じキャンペーンで管理すると、検索広告に予算が集中し、ディスプレイやYouTubeの検証が不十分になるリスクがあります。

特にYouTube広告は動画視聴やブランド認知を目的とすることが多く、独立したキャンペーンとして設計するのが基本です。配信チャネルやネットワークの異なる施策を無理に一括管理すると、正しい効果測定も改善もできません。キャンペーン単位で分けることが、成果を伸ばす前提条件となります。
広告グループを使う時
広告グループを活用すべきなのは、同じキャンペーンの目的や戦略を維持しながら、その中でターゲティングや訴求ポイントを切り分けたい場合です。
キャンペーンが全体の方向性を決める戦略の「器」だとすれば、広告グループはその中で仮説を細分化し、検証を進める「実験箱」にあたります。戦略自体を変更する必要がある場合はキャンペーンを分けるべきですが、同じ戦略内で複数の仮説を同時に試したいときには、広告グループを活用するのが最適です。
以下では、広告グループを効果的に使う代表的なシーンを見ていきましょう。
キーワードやターゲット層ごとに分ける場合
広告グループを使う典型的なケースは、キーワードやターゲット層を切り分けたいときです。
リスティング広告では、ユーザーの検索意図によって適切な広告文やランディングページが異なります。すべてを1つの広告グループにまとめてしまうと訴求がぼやけ、「安いプラン」を探しているユーザーにも、「高品質なサービス」を求めるユーザーにも響かない広告になりかねません。
そこで広告グループを分け、キーワードテーマごとに広告を整理します。「低価格」関連の検索語には、コストパフォーマンスを強調した広告文と料金表を提示し、「高品質」関連の検索語には、導入実績や機能を訴求する広告文と事例紹介ページを出す。こうすることでユーザーの期待に合った広告を届けられ、CTRやCVRの改善につながります。
ターゲティングの切り分けも同様です。20代前半の層と30代のビジネス層、情報収集担当者と意志決定者では響くメッセージが異なります。広告グループを分けて配信することで、それぞれに合わせた訴求を試み、成果を比較できます。
広告グループを活用すれば、「誰に、何を伝えるのか」を整理しながら検証でき、単なる配信にとどまらず仮説検証を通じて最適化を進められるのです。
訴求ポイントやオファーを分けたい場合
広告グループを分けるもう一つの典型的なケースは、同じ目的の中で訴求ポイントやオファーを切り分けたいときです。
ユーザーが反応するポイントは一様ではなく、ある人は無料体験に惹かれ、別の人は割引特典に価値を感じるでしょう。この違いを1つの広告グループにまとめてしまうと、どの訴求が成果を生んでいるのかを正確に測定できません。
たとえば、あるSaaSのリード獲得キャンペーンで「無料体験あり」という訴求と「今だけ初月半額」という訴求を同時に試す場合、同じ広告グループに入れてしまうと成果データが混在し、どちらが効果的かを判断しづらくなります。しかし広告グループを分ければ、クリック率やコンバージョン率を個別に比較でき、より成果を伸ばす訴求を短期間で特定できます。

さらに、広告グループごとに異なるランディングページを設定できる点も重要です。無料体験訴求なら申込みフォームに直結するページを、割引訴求なら料金プランを強調したページを用意する、といったようにユーザー体験を最適化できます。
このように広告グループを活用することで、仮説ごとのABテストを明確に実施でき、成果の高い訴求へ素早くリソースを集中させることが可能になります。
オーディエンス属性別に分けたい場合
広告グループを分けるべき重要なケースの一つが、オーディエンス属性ごとに配信を切り分けたい場面です。
年齢層や職種、購買行動の違いによって反応するメッセージは大きく変わるため、同じ広告を一律に配信すると訴求が弱まり、成果も伸びにくくなります。広告グループを属性別に分ければ、それぞれに合った訴求を試し、成果を比較しながら最適化できます。
たとえば、リマーケティング広告を運用する場合、カートに商品を入れたまま離脱したユーザーと、すでに購入経験のあるリピーターでは有効なアプローチが異なります。
前者には「今なら送料無料」といった背中を押すメッセージが有効ですが、後者には「会員限定アップグレードプラン」など継続的な価値を提示する方が響くでしょう。これを同じ広告グループに入れてしまうと、どのメッセージがどの層に効果を発揮しているのかを正しく把握できません。
広告グループを分けておけば、属性ごとにクリック率やコンバージョン率の差をデータで把握できます。その結果、特定の層に強く響くオファーを素早く発見でき、無駄なコストを削減しながらROIを高められます。
広告キャンペーンと広告グループの設定の方法 ~ Google広告の場合 ~
広告運用を成果につなげるためには、設計段階で広告キャンペーンと広告グループを正しく構築することが欠かせません。特にGoogle広告では、キャンペーン単位と広告グループ単位で設定できる項目が明確に分かれており、その違いを理解していないと運用効率が大きく低下します。
ここではGoogle広告を例に、キャンペーンと広告グループをどのように設定すべきかを整理します。
広告キャンペーンの設定方法
Google広告におけるキャンペーン設定は、まず「広告の目的」を選ぶところから始まります。リード獲得、売上増加、トラフィック拡大など、選択する目的に応じて最適化アルゴリズムが変わるため、この段階の判断は成果に直結します。
ここではBtoB企業がリード獲得を目的にすると仮定し、「見込み顧客の獲得」を設定してみましょう。

次に「キャンペーンタイプ」を選びます。検索広告、ディスプレイ広告、ショッピング広告、動画広告などの配信チャネルから選択します。今回はリード獲得が目的のため、検索(リスティング)広告を選択します。

その後、単価設定を行います。キャンペーンで重点を置きたい指標をコンバージョン、クリック数、インプレッション数などから選択します。
リード獲得が目的であれば、コンバージョンを主要指標に設定するのが基本です。この段階で目標コンバージョン単価を入力しておけば、指定した目標値内で成果を最大化できるよう、自動的に入札が調整されます。

最後に、配信地域や言語、広告表示のスケジュールを設定します。これらの設定を基盤として、その下位階層にある広告グループが配信される仕組みです。
広告グループの設定方法
キャンペーンの枠組みを整えたら、その中で広告グループを設定します。広告グループの核となるのは、ターゲティングと広告クリエイティブです。
検索広告では、まず広告グループごとにキーワードを登録し、それに紐づけて広告文を作成します。キーワードはテーマごとに分けることが推奨され、異なる意図を持つキーワードを同じ広告グループに混在させるのは避けるべきです。
ディスプレイ広告や動画広告では、オーディエンスの属性や興味関心、リマーケティング対象などを広告グループごとに分け、それぞれに最適化したクリエイティブをセットします。たとえば、20代の新規ユーザー向けにはトライアル訴求のバナーを、既存顧客向けにはアップセルを促す動画を配信するといった形です。
広告グループを整理しておけば、仮説ごとの成果を明確に比較でき、どの訴求やターゲティングが効果的かを素早く判断できます。その結果、勝ち筋に予算を集中させ、成果を最大化する運用が可能になります。
広告キャンペーンと広告グループの使い分け方の事例
広告キャンペーンと広告グループの違いは理論として理解できても、実務では「どの場面で分けるべきか」が悩みの種になります。そこでここでは、具体的なシナリオをイメージして使い分けの判断基準を整理します。例を参考にしていただければ、自分の施策に当てはめやすくなり、より現実的な判断が可能になります。
事例①:新規獲得とアップセルを同時に狙うBtoB SaaS企業のキャンペーン設計
あるBtoB SaaS企業が、新規顧客のリード獲得と既存顧客のアップセルを同時に狙おうとしました。
新規顧客にはサービスを体験してもらうために「無料トライアル」を訴求し、既存顧客には契約プランを拡張してもらうため「有料プランへの移行」を打ち出す必要がありました。両者はターゲットも訴求内容も異なるため、本来は別のアプローチが求められます。
これらを同じ広告キャンペーンにまとめてしまうと、アルゴリズムは獲得しやすい新規顧客ばかりに最適化を進め、予算の大半が無料トライアル施策に偏りかねません。その結果、アップセル広告は十分に配信されず、期待した成果を得られない可能性があります。
さらに同一キャンペーン内ではKPIが混在するため、「どちらの施策が効果を上げたのか」が測定しづらく、改善アクションも遅れてしまいます。
そこで施策を分割し、リード獲得キャンペーンとアップセルキャンペーンを独立して設計しました。前者ではCPAを基準に最適化し、無料トライアル登録数をKPIと設定し、後者ではROASを基準に、有料プラン移行数や売上増加を指標としました。これによりアルゴリズムがそれぞれの目的に応じて最適化を行うようになりました。

その結果、新規顧客と既存顧客の双方に対して適切に最適化が働き、全体として効率的に成果を積み上げられます。また、施策を分けたことでレポートも整理され、経営層への報告時に新規獲得とアップセルの効果を明確に示せるようになるのです。
事例②:目的を混ぜないキャンペーン設計で成果を最大化
ある人材サービス会社が、全国規模でのブランド認知拡大施策と東京限定の採用イベント集客施策を同時に進めようとしました。
当初は効率を優先し、両方を1つの広告キャンペーンにまとめましたが、アルゴリズムは反応率の高い東京イベントに予算を偏らせ、全国向けの認知施策の配信量が極端に減少。その結果、全国施策の成果を正しく検証できず、KPIの達成度合いも不明瞭なまま推移しました。
問題を解決するため、施策を切り分けて「全国認知キャンペーン」と「東京イベントキャンペーン」を独立して設計しました。
全国認知キャンペーンではブランド想起率やクリック数をKPIに設定し、長期的視点で配信を最適化。一方、東京イベントキャンペーンはCPAを基準とし、イベント登録数の最大化に集中しました。これにより、双方の目的に沿った学習が働き、それぞれの成果を独立して管理できるようになったのです。
さらに全国認知キャンペーン内部では、広告グループを「20代向け」「30代向け」「40代以上向け」に分割。各年代に合わせてメッセージやクリエイティブを変え、CTRやCVRを比較することで、年代別にどの訴求が有効かを明確に分析できました。

その結果、若年層にはキャリア支援制度を訴求する広告が効果的であり、中高年層には安定性や実績を強調した広告が成果を上げることが分かりました。この二段構えの設計により、戦略レベルでの施策分割と戦術レベルでの仮説検証を同時に実現し、全国的な認知の底上げとイベント集客を効率的に両立できました。
事例③:広告グループ分割で判明した勝ち筋
あるEC企業が大規模なセール告知キャンペーンを実施しました。
キャンペーン全体の目的は売上最大化であり、戦略レベルでは目的が一つに絞られていたため、キャンペーンを分ける必要はありませんでした。しかし、同じ売上最大化という目的の中でも、ユーザーがどの訴求に最も反応するのかは事前に分からず、仮説検証が不可欠でした。
そこで広告グループを三つに分け、異なる切り口を試しました。
- 値引き訴求:割引率や特別価格を前面に打ち出した広告
- 送料無料訴求:送料ゼロのお得感を強調した広告
- 限定品訴求:期間限定・数量限定の商品を打ち出し、希少性による購買意欲の喚起を狙う
各広告グループでは、それぞれに最適化したバナーやテキストを用意し、ユーザーの反応を比較できるよう設計しました。
運用の結果、CTRでは送料無料訴求が最も高く、ユーザーの興味を大きく集めました。しかしCVRを分析すると限定品訴求が最も高く、購入に至る割合で他の訴求を大きく上回っていたのです。この分析から、同じクリックを獲得しても、最終的な売上げに直結するのは限定品訴求であることが明確になりました。

この知見を活かし、次回以降のセール施策で限定品訴求に重点的に予算を配分し、さらに訴求内容やクリエイティブを磨き込みました。その結果、売上効率は大幅に改善し、ROIも向上傾向です。
もし広告グループを分けずに配信していたら、成果の裏側でどの訴求が真に効果を発揮していたのかを把握できず、予算配分の最適化も実現できなかったでしょう。広告グループによる分割と検証が、成果拡大の鍵を握った事例といえます。
まとめ
広告キャンペーンと広告グループは、一見似ているようで役割はまったく異なります。
キャンペーンは広告運用の大枠を決める戦略単位であり、目的・予算・入札戦略・配信チャネルといった上位設計を担います。一方、広告グループはその枠内で「誰に」「どの訴求で」配信するかを整理する戦術単位です。
さらに言い換えれば、広告キャンペーンは媒体AIに最適化の方向性を伝える単位であり、広告グループはユーザーに最適化されたメッセージを届ける単位と位置づけられます。両者を正しく使い分けることが、成果最大化の前提条件です。
実務では、目的が異なる場合や地域・チャネルが違う場合はキャンペーンを分け、同じ目的の中でターゲットや訴求を検証したい場合は広告グループを分ける。このルールを徹底することが基本です。例で確認したように、戦略と戦術を切り分けることで全体設計が明確になり、意思決定のスピードも高まります。
広告運用を担う立場であれば、キャンペーンを「戦略の器」、広告グループを「仮説実験箱」として設計してください。目的と検証を切り分けるだけで、同じ予算でも成果の出方は大きく変わります。

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現在までに米大手EC企業や広告代理店への導入実績。
2025年3月に米国広告業界で最古かつ最大級の業界団体である全米広告主協会からMarketing Technology Innovator AwardsのGoldを受賞。





