
AI×人間の創造性で業界の常識を変える——マーケティングの本質を見据えたツール活用術 ~AViC社のAIクリエイティブ分析ツール活用~
- 株式会社AViC 執行役員 奥川哲史
広告運用の自動化が当たり前になった今、勝敗を分けるのは”仮説の解像度”と意思決定の速さ。I’m Creativeは、広告クリエイティブ内のコンテンツ差を特定し、パフォーマンスの良し悪しの仮説を立て、改善案を構成案も含め出力するという、誰でもプロ級のプランニングの土台に立てる仕組み。一方で株式会社AViCは、その土台を開発初期から現場で使い倒し、使いこなしの型を磨いてきた。
二者の本音で、再現可能な勝ち筋を共有する。
竹下(Shirofune)
まずはAViCさんの自己紹介からお願いします。
奥川様(AViC)※以下、敬称略
AViCは企業のデジタルマーケティングにおける課題解決のため、戦略設計、集客施策の実行、広告運用まで一貫して支援しています。媒体やツールの変化が速い中で、仕組みと検証で成果を積み上げる。私は営業と運用、事業責任の両面をやってきました。共通するテーマは、「現場が勝てる仕組みをどう作るか」。高い技術をベースにした仕組みがあるからこそ、個人の才覚を上乗せできますし、その上振れをまた新しい仕組みに昇華させていける、そこにこだわっています。

奥川 哲史(おくがわ さとし)プロフィール
株式会社AViC 執行役員。2009年、株式会社ネットフロンティア(現:株式会社アイトリガー)に新卒入社。営業部門・広告運用部門の責任者、子会社代表を経て、2019年に代表取締役社長に就任。日本に9人のLINE認定講師「LINE Frontliner」としても活動。2022年6月AViC入社、2024年10月より執行役員。
クリエイティブ分析が生む”仮説の解像度”——プランニングの新しい型
竹下
GoogleやMetaの自動化が高度化していくなかで、クリエイティブ領域ではどのような変化が起きていますか。
奥川
正直、GoogleやMetaの自動化が進むほど、代理店としてDisplay広告単体での運用で「何で差をつけるか」はシビアになってきています。ターゲティングや入札調整の自動化が進むと、大きな運用変数はクリエイティブになり、クリエイティブの質がパフォーマンスをダイレクトに左右します。そのため、我々もクリエイティブ領域のサービスの磨き込みは早いタイミングから継続して進めています。
我々が意識をしているのは、どれだけ仮説の切り口の数を増やし、その中から鋭い仮説を優先度を付けて選び、それをもとにプランニングに落とし込んでスピーディーに制作〜配信することです。仮説の質が低いとその先の改善案も良いものにはなり得ません。仮説の質の高さが全ての起点になっています。
この考えをベースに実行を進める上で重要な役割を担っているのがI’m Creativeの分析レポートです。
導入前は、社内でのクリエイティブの会議で案件チーム内で分析結果のコンセンサスを取るだけで1時間掛かってしまうこともありましたが、今では同じ時間で改善の具体案まで決めきることができています。
I’m Creativeの「良い / 悪いクリエイティブの特徴を比較によってあぶり出す」というベースとなるコンセプトや、その考えをもとにしたレポートを皆が共通の理解を持って確認することで、議論がスムーズに行うことができているからだと思います。
竹下
意思決定のスピードが格段に上がっているのですね。
奥川
はい。そして、このデータに基づいたアプローチは、クライアントへのご提案時にも非常に価値を発揮します。多くの広告主様が「従来の代理店だと、何で良かったのか、悪かったのかが曖昧なまま次の提案をされるので、プランニングの精度が上がらず無駄打ちが多いと感じる」という共通の課題感をお持ちでした。
I’m Creativeを使って要因を特定し、再現性のあるプランニングができることを提案すると、「無駄打ちが無くなりそうだし、これなら広告主側にもナレッジがたまるので、すごく良いですね」と、非常に高く評価いただけます。
竹下
それは嬉しいお言葉です。実際に成果に繋がった事例などはありますか?
奥川
たくさんありますよ。最近の例を挙げると、あるクライアントで、これまであまり注力されていなかったディスプレイ広告にて運用をご支援しました。
I’m Creativeでの分析を基にプランニングと配信を行ったところ、コンバージョン数は190%に増加し、CPAも従来の3分の1以下まで大幅に改善することができたのです。仮説の質が成果に直結することを、実績でも証明できた好例ですね。

初期から「現場で一緒に」磨いた——伴走のリアル
竹下
改めて、I’m CreativeとAViCさんとの関わり方を教えてもらえますか?
奥川
開発初期から、現場でガッツリ使い倒してきました。どの粒度だと意思決定につながるか、どの並びだと視点移動が少ないか、実戦での問題点をそのまま持ち帰って、都度フィードバックしていました。言い方を選ばず言えば、現場で汗をかきながら一緒に磨いた感覚です。かなり細かいポイントまでフィードバックとリクエストをさせてもらいました。
竹下
まさに”伴走”でしたね。机上の理想と現場のリアルはズレがちですが、AViCさんは「ここで判断を迷う」「この項目が見えていないと迷う」等、具体的に教えていただける。ご利用いただいている代理店各社様からのご要望を頂きますが、AViCさんからの要望は非常に多く細かいポイントまで及びますね。
NG表現設定——「AViCの強い要望」から生まれた機能
竹下
I’m Creativeの機能で先日リリースした『NG表現設定』機能、これもまさにAViCさんの強い要望が開発のきっかけとなりました。ブランドレギュレーションに触れる恐れのある表現を事前に定義し、AIが文脈で適用範囲を判定、改善案の出力段階で自動フィルタリングされます。
奥川
そうですね。スピードとアウトプットの精度をより上げていくという時に課題になっていたのが、この点でした。せっかく精度が高い仮説が出せても、それを踏まえた改善案で使えない表現が入ってきてしまうと、そのまま案として採用することができず、必要に応じた手を入れなければなりません。
内容の精査と修正作業という手間が掛かってしまっていましたが、今回の新機能によって、ほとんど解消できています。NG表現として登録した情報から、登録した意図を汲み取って適用する範囲を自動的に判断してくれるというのも、単語・表現レベルで細かく設定する必要がなくて初期設定も楽で非常に助かっています。
<NG表現設定画面>

要約+”素に近いデータ”——仮説の切り口を増やす作法
竹下
AViCさんはサマリレポートだけでなく、より素に近い粒度のレポートデータも使うと聞きました。
奥川
はい。比較分析のサマリレポートは差の大きな順から優先度を付けて解説してくれるのでとても便利です。ただ先ほども伝えた通り、仮説の切り口は様々で、顧客やタイミングによって「こういう仮説が考えられるのでは?」というのが出てきます。
これは我々が顧客に向き合い深いコミュニケーションを取っているがゆえに気付けるものです。その仮説をデータで裏付けるために詳細のデータを確認したり、別途データ集計をしたりしています。
分析レポートの出力までの操作をできるだけシンプルにして欲しいというリクエストも出していました。まずは分析する対象等はI’m Creative側がレコメンドした内容で一度出してみて、出力データを見ながら必要に応じて対象や指標を変えて再度出力するという、この反復がスピードを持って回せるようになっていると思います。
<サマリシート イメージ>

<詳細レポート イメージ>

「傾向分析」から「動画構成案」へ——ゼロイチを一気に短縮
竹下
比較分析レポートとは別のレポート形式の「傾向分析レポート」はどう活用していますか? そして、先行して試していただいた動画フォーマット版はいかがでしょう?
奥川
「傾向分析レポート」も広く活用しています。勝ちクリエイティブを軸にして横展開していく際は、従来の比較分析レポートをベースにしますが、新規のクリエイティブを作る際には、直近2~3ヶ月程の配信結果を踏まえた、良いクリエイティブに見られる共通項、悪いクリエイティブに見られる共通項を把握しつつ、それを踏まえたアイデアを具体化するこちらのレポートの情報が有効です。バリエーションの幅をもって構成案画像まで出力できるので、社内やお客様とのディスカッションのベースにできています。
また動画フォーマット版のレポートも先んじて確認させてもらっていますが、これは本当にすごいですね。新規の動画構成のストーリーラインとカット毎の絵コンテまで一気に出せる機能、しかも動画を配信していない広告主であっても静止画フォーマットの傾向分析結果から出せてしまうのには驚かされました。これができるツールは、世界で見てもI’m Creativeだけじゃないですか?
これはゼロイチの負荷がごっそり減ります。今は動画企画の叩き台作成に1~2日かかっていますが、これがあれば1~2時間程度で数パターンを初回の打ち合わせに”叩き台”を持っていけますし、大きく生産性を上げられる打ち手になると思います。
欲を言えば、我々の”意図”を組み込むことができると、より使えるなと思います。たとえば「メインターゲットを肩こり症状を抱えた人に設定する」「最初のカットにアテンションを引く表現を入れる」のような指示やプランニング要素を織り込むイメージです。AViCの“こだわり”や”技術”を入れ込んで我々だからこそ出せるアウトプットに仕上げたいです。
竹下
ありがとうございます。実は既に柔軟に意図を組み込んで新しいプランニングができる別の新しい機能の開発を仕込んでいて、それでおっしゃっていただいた要望は満たせそうです。期待してお待ちください。
<傾向分析レポート内 新規動画構成案シート>

AI時代に価値を届け続けるために——AViCが目指すマーケティングの未来
竹下
AI技術が急速に発達する中で、AViCさんとして今後どのような価値を社会に届けていきたいですか。
奥川
AIは手段であって、目的ではない。私たちが大切にしているのは、AIという強力な技術を使って「本当にクライアントの事業成長に寄与できるマーケティング」を実現することです。
従来のデジタルマーケティング支援は、どうしても広告運用やクリエイティブ制作といった「手段」に偏りがちでした。でも、本来マーケティングは、その企業がどんな価値を、誰に、どうやって届けるかを設計することから始まるべきです。私たちは、事業の本質的な課題を理解し、そこから逆算してコミュニケーション戦略を組み立て、最適な施策を実行し、さらにその結果から次の仮説を生み出す – この一連の流れを、AIの力で高速化・高精度化したいのです。
私たちのミッションは「Team AViC がビジネスドライバーとなり、世の中に新たな景色を創る」。AI時代だからこそ、技術と人間の創造性を掛け合わせて、クライアントと一緒に業界の常識を変えていきたい。上流の事業課題発見から下流の解決施策実装に至るまで、一本の物語として責任を持って支援する。それがAViCならではの価値だと思っています。
竹下
AIの民主化が進む中で、私たちShirofuneも、単なるツール提供を超えて、現場の知恵とAIを融合させる基盤でありたい。AViCさんのような先進的なパートナーと一緒に、業界全体のレベルアップに貢献していきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願い致します。