残業は月間7.6時間のみ!広告運用を効率化する仕組み|株式会社カルテットコミュニケーションズ
- 中島 孝輔
「多くのWeb広告代理店が持つ経営課題の根源は『言われたままの仕様で案件を受注する方法』にあると考えています。案件をどう受注するか、これがビジネスを幸せにするポイントです」
こう語るのは、株式会社カルテットコミュニケーションズ(以下、カルテットコミュニケーションズ)のCOOである多田 芳教氏だ。
同社は、「世界一効率的な代理店になる」をビジョンに掲げ、リスティング広告運用代行事業や広告運用支援ツールの開発・販売事業を行っている。
また、広告運用代行事業のみならず、同社は、700を超える制作会社や総合広告代理店などと、巨大なパートナーネットワークを構築しているという。
今回の「インハウスマーケティングラボ」では、同社COOの多田氏(以下、敬称略)に広告代理店の抱える課題の根本原因など、幅広くお話を伺った。
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リスティング広告運用特化の事業を行うと決めた背景
多田:2年間の個人事業主の期間を経て、弊社代表の堤と共に2011年、カルテットコミュニケーションズとして法人設立しました。当時はなりふり構わず、Webサイト制作やデザイン、IT関連の支援などいわば何でも屋をしていました。
代表の堤が前職で多少Web広告に携わっていたので「Web広告が良さそう」という感覚は持っていました。
偶然にも、システム設計の受託で取引のある会社が既にリスティング広告を実施しており、その会社からリスティング広告運用代行の相談をもらいました。2つ返事で「やります」と答え、リスティング広告の運用代行を始めました。実は、運用経験は初だったんですが(笑)
その会社のEC売上は約1000万だったのですが、月額200〜300万円のリスティング広告運用を改善したところ、売上を初月で1.5倍以上にできました。これは凄い、とリスティング広告の効果を実感しました。
当時は、周りにリスティング広告運用をできる方もいない、今ほどノウハウブログや書籍などもありません。手探りながらも研究し、対応しました。
結果的にお客様に大きな売上インパクトを与えることができ、我々が提供できるサービスは数あれど、リスティング広告の運用がもっとも価値提供できる分野と確信し、リスティング広告運用特化の事業を行うと決めました。
業界全体の健全化のため、広告運用支援ツール「Lisket」を外販
多田:当時は今よりも、運用面が整備されておらず、非効率な部分が多かったです。そこで、業務効率化ツールを開発し、自社内で利用していました。
しかしながら、広告代理店業界全体に蔓延る、残業続きの労働環境に強い課題感がありました。我々も例外ではありません。もっと業務を効率化し、労働時間を短縮すること、これが私にとって大きなテーマでした。
そもそも、レポーティングや入稿はただの作業。これら単純作業に労力を割いても、顧客の売上は直接的には上がりません。本来であれば、広告代理店は戦略立案や顧客とのコミュニケーションにもっとリソースを割くべきです。
社内ツールによって着実に業務効率は上がり、自分たちの労働環境はますます改善されていきました。しかし、依然として業界全体は非効率なままです。
元々は自分たちのために作った社内ツールですが、業界全体をより良くしたい、その思いで「Lisket」として社外向けにも業務効率化ツールを使ってもらおうと決めました。仮に自社のライバルが「Lisket」で業務効率化を実現しても、我々が戦略立案やコミュニケーションの部分で勝てば良い、そう考えたんです。
カルテットコミュニケーションズのビジネスモデル
多田:カルテットコミュニケーションズの特徴は、
- ターゲット
- 料金
- 国内最大級のパートナー提携数
にあります。
我々のメインターゲットは、SMB(中小企業)市場。SMB市場自体に金額的な定義はないですが、当社のメイン顧客は広告予算で100万円以下、特に予算20万円以下のお客様が最も多い割合を占めています。
同じSMB市場ターゲットでも下限広告費が50万とか100万とかに設定されている代理店もありますので、20万円以下という予算帯の案件でビジネスとして成立させている代理店は非常に少ないと思います。
一般的な広告代理店の場合、広告主が使用した広告費から一定の割合を手数料としていると思います。しかし、カルテットコミュニケーションズでは、手数料制ではなく固定費用制です。
手数料の考え方については非常にこだわりを持っていて、特に少額予算広告主にとって最も費用対効果の高い形になっていると思います。費用について詳しくは、ぜひ当社Webサイトでご確認いただければと思います。
また、パートナーシップ構築にも注力しています。広告運用を得意としない制作会社、Webに特化していない総合広告代理店など、全国700社以上のパートナーがいます。
パートナー様には得意な本業に集中してもらい、我々が裏で広告運用をサポートすることで、パートナー様の取引先である広告主様に総合的にご満足いただく体制を作っています。また、パートナー様の強みに合わせて広告運用のパッケージ商品を一緒に作り上げることもあります。
※参考:パートナー様の声
カルテットコミュニケーションズの顧客獲得手法
多田:顧客獲得手法の大半は、
- ・リスティング広告運用
- ・ブログ運営
以上2つがそれぞれ半分ほど。
ブログ運営では、SEOを強く意識しており、創業当時からブログを毎日更新しています。今では流入経路のほとんどが自然検索経由です。今でこそマーケティング事業部全員で分担していますが、当時は2,3人で回していたので、ブログの毎日更新は大きな負担でしたね。
大変でしたが、ブログは大きな財産として残っているので、本当にやっておいてよかったです。今では、ブログ更新は会社の文化になっています。
カルテットコミュニケーションズが抱える2つの経営課題
多田:カルテットコミュニケーションズでは、主に経営課題が2つあります。
- ・新規リード獲得の課題
- ・運用業務の工数の課題
もっとも大きな経営課題は新規リード獲得です。これまで通りの手法を続けるだけでは新規リード獲得が限界に近いと考えています。手法を増やし、新規リード獲得を狙うことが当面の目標です。
なお我々には、リード獲得においてこだわりがあります。それは、新規顧客へのテレアポや飛び込み営業は行わない、100%プル型のリード獲得です。
というのも、社長の前職が、プッシュ型の営業スタイルが主体の会社でプッシュのメリットはあれども圧倒的にデメリットの方が多いと考えています。
テレアポや飛び込み営業が主体だと大前提として効率が悪いです。テレアポは100コールして良くて1件アポが取れる程度。しかも先方の温度感は非常に低い状態です。
仮に商談に発展したとしても、先方の立場が強くなってしまいまい、価格やサービス内容でどうしても譲歩してしまいがちです。アウトバウンド手法のメリットは理解していますが、それ以上にデメリットが多いんです。
組織拡大に伴いリード分母も比例して増やさなくてはいけませんが、プル型にはこれからもこだわっていきます。
ちなみに、最近取り組み始めたリード獲得手法は、郵送DM。Webだけではリーチが難しい層に向けて、あえてアナログな手法を使い、効果を検証しています。
また、今まで取り組んだことがなかったセミナーやウェビナーもチャレンジしています。特に当社と手を組んでくれるパートナー様の獲得に力を入れていくので、パートナー様専用のサイトも制作中です。
そして、もう1つの課題が運用業務の工数です。
これまで工数削減のため、自社ツール「Lisket」を使用していました。ただ、使い勝手が良いのであれば、サードパーティー製ツールも1つの選択肢です。その一環で「Shirofune」もトライアル中です。明らかに業務効率化につながっているので好感触です。
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分厚い報告書を作っても、顧客の売上は上がらない
多田:多くのWeb広告代理店が持つ経営課題は、
- ・長時間労働
- ・社員の定着率
などでしょう。
私は、これら経営課題の根源は「言われたままの仕様で案件を受注する方法」にあると考えています。
例えば、
- ・過度に低価格で受注
- ・クライアントの指示をすべて受ける
など。いわゆる御用聞きスタイルで受注してしまうと、結局長続きしません。社内はタスクに追われて疲弊するのに成果はまったく出ず、顧客からの信用は失う…、ゾッとしますね。
案件をどう受注するか、これがビジネスを幸せにするポイントです。
- ・顧客の要望であっても広告のプロとしてNoを言うことも必要
- ・成果に直結しない作業は極力無くすか顧客と相談して妥協点を見つける
- ・なんとなく行っている報告(レポーティング、定期訪問)があれば、目的を再確認、意味がないならやめる
少なくともこれらを意識するだけで生産性は劇的に上げられます。
弊社の手数料は比較的安く、依頼主側もそれを理解しています。成果へ直結する業務にリソースを割くため、毎日の電話や定例ミーティングでの往訪は極力避けています。
数値レポートも月1で自動送付するのみ。説明は主にレポートへの補足説明と管理画面についての簡単な説明のみです。もちろん意味があって成果に繋がることであれば作業も、報告も行いますが、こちらがきちんと顧客に説明すれば、ほとんどの場合は理解してくれます。
分厚い報告書を作っても、顧客の成果が上がるわけではありません。
カルテットコミュニケーションズでは、案件の受注方法を工夫し、リスティング運用業務の効率化以外にも様々な取り組みによって、月間の平均残業時間を業界で驚かれるレベルにまで短縮できました。
※参考:完全公開!月間平均残業時間6.8時間のネット広告代理店が暴露する残業の減らし方
顧客にとって本当に意味のある業務をしっかり考え、集中して行い、成果を出し、満足してもらう。そしてワークライフバランスの取れた働き方で従業員の定着率が上がる。
このあたりのノウハウは、当社とパートナーシップを結んでもらえる方だけでなく、業界全体に積極的にシェアしていきたいと思っています。
販売代理店パートナーネットワークを、日本一巨大にするために
多田:今後、以下2つをカルテットコミュニケーションズとして注力していきたいです。
- ・対応可能なマーケティング領域の拡大
- ・販売代理店パートナーネットワークの拡大
リスティング広告運用以外にも、WebサイトやLPの制作、メールマーケティングなどもカバーするため対応領域を増やしていきたいです。
もうひとつ。現在展開しているパートナーネットワークを日本一巨大なものにしていきたいです。
日本全体、地方の隅々までWebマーケティングを広げていきたい。
このように考えたときに当社が独自で日本中に拠点を展開していくというのは現実的ではありません。各エリアで既に何かしらのご活躍をされている企業様とパートナーシップを組み、あるべきマーケティングを全国津々浦々まで伝えていきたいです。
カルテットコミュニケーションズも利用する、広告運用自動化ツール「Shirofune」>
多田 芳教氏 プロフィール
1983年生まれ。
株式会社カルテットコミュニケーションズの専務取締役COO。元ネットワークエンジニア。代表取締役の堤大輔と共に同社を創設。堤とは静岡大学時代の同級生。
マーケティング事業部の統括責任者として少額予算のリスティング広告でも利益を出せるような運用組織構築を行いつつ、2019年通算で月間の残業時間が7.6時間と残業を少なく抑えて働きやすい環境を実現。
180cm80kgの図体でお酒は一滴も飲めない。その代わり食べるのが大好き。
<取材・編集=金森 悠介(@user_id_us)、文=中島 孝輔(@KosukeNakajima_)>