広告代理店

これまでの事業モデルに違和感があった。デジタルアスリート長橋氏が目指す、新しい広告代理店の形

Shirofune広報担当
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広告プラットフォームの自動化や、広告運用ツールの登場により、広告運用ノウハウの流通など、広告代理店業界における市場環境の変化により、広告代理店としてのあり方を見直す企業も多いのではないでしょうか?

今回、話を伺ったデジタルアスリート株式会社(旧リスティングプラス)は「広告代理店」に違和感を持ち、リスティング広告を中心に展開していた広告代理事業を、リスティング広告にとどまらないマーケティング支援事業に転換しました。事業転換の背景と今後の目的、広告代理店業界の課題など、同社代表の長橋真吾氏に話を伺いました。

これまでの「リスティングプラス」

ーーあらためて、これまでの事業の歩みを教えてください。

2011年7月に「リスティング広告の専門家」という位置づけでリスティングプラスを創業し、今年で11期目になりました。創業当時は、SEOとリスティング広告がWebサイト集客の主な手法となっており、我々はリスティング広告の運用と広告の遷移先であるLP(ランディングページ)の改善を一緒に提供することで、競合優位性を出していました。

徐々にFacebook広告や動画広告、コンテンツマーケティングなどを活用したマーケティング支援を始め、現在は総合的なデジタルマーケティング支援を行っています。

とはいえ、売上比率で言えばデジタル広告の代理事業が9割を占めており、いただくお問い合わせもデジタル広告に関するものがほとんどです。しかしながら現実問題として、デジタル広告の部分最適化だけでクライアントの売上を伸ばしていくことが難しくなってきており、デジタルマーケティング全体の改善や広告運用の先のインサイドセールスなどをお手伝いするマーケティング支援が増えてきています。

広告運用の手法がコモディティ化している中で、広告代理店はどう差別化を図っていくのか

ーー広告代理店にとって、今は転換期とも言われていますが、 同様の課題は感じていますか?

プラットフォームは日々改善されており、我々はそのアルゴリズムを予測できても、本質的な部分はわかりません。プラットフォームにブラックボックスがあるために、クリエイティブも、広告配信の設定も、まったく何も変えていないのにCVに影響が出るケースがあります。そのため、例えば「なぜ、今月は質の悪いCVが増えているのですか?」といった質問をいただいても、市況環境含めた定性的な分析と定量的な分析をもって回答しなければならず、説明責任を果たす為の時間が増大してきています。

更に広告運用の自動最適化機能が発達すればするほど、我々が説明できる領域は減っていくと予測しています。

ーーそうなると、広告代理店としての存在意義というのも危ぶまれてきますね。

そうですね。媒体プラットフォームやそれ以外のツールでも運用の自動化がどんどん進んでいますから、運用以外の部分に付加価値がないと広告代理店は利益を抜いているだけの手数料ビジネスとしか思われなくなってくるのではないでしょうか。あわせて、広告運用のインハウス化も加速しています。広告代理店は広告運用以外の自分たちの強みを出していかないといけない時代になってきたように感じています。

ーー創業時と今を比べてWeb広告業界の市場環境も変化していますか?

やはり、自動化が大きく進んだことと、広告の運用について言えば、ノウハウが世の中に多く出てきたため、やり方がコモディティ化していると感じます。

今は検索すれば、YouTubeやブログ、書籍など、さまざまな広告運用に関する情報が手に入ります。昔はこういった情報がなかなか手に入らなかったので、適当な設計をして無駄な予算を使っていた企業に、代理店が専門家として入ることで、パフォーマンスを上げられていました。

今はさまざまな情報に簡単にアクセスできるようになり、なかなか競合との差別化ができなくなってきています。正しいやり方を知っていれば勝てていた時代から、正しいやり方を知っているだけでは勝てない時代になってきました。そういった意味では、アカウント構造に詳しく適切な運用をするだけの広告代理店が顧客に価値を提供するのが難しくなっているとは思いますね。

広告代理店の業界構造に違和感を持っていた

ーーこうした代理店としての違和感を感じ始めたのはいつ頃からなのでしょう?

2017年くらいからですね。ちょうどその頃から各社が価格競争をはじめて、手数料の利率を引き下げ始めました。

本来、我々の市場を広げるのであれば、広告をたくさん配信する中小企業をどんどん増やしていかなければなりません。しかしながら、広告代理店の業界は広告予算の大きな企業を中心にサービス提供し、広告予算の少ない企業には十分なサービスを提供できない属人的な業界構造になっています。

例えば、当初は広告予算30万円だったお客様が、我々の支援によって予算を5,000万円まで使えるくらいに売上を伸ばしたケースがありました。それくらいまで予算が伸びると、大手の代理店がこぞって、そのお客様に声をかけ始めます。

また、広告費が増えるに応じて代理店への支払いが多くなるというのも、お客様にとっては理解しづらい部分があるのではないかと考えています。広告費が5倍になったからといって、我々が5倍の業務をするかというと、そうではありません。ですがこうした料金体系が商習慣として残っています。

市場を広げ、お客様の売上に向き合うのであれば、こういった利益構造も含めて広告代理店は考えていかなければならない時代になっているのではないかと思います。

自動化やインハウス化などの潮流の中で、広告代理店は改めて顧客へ提供できる価値を再定義しなければならないでしょう。それは同時に、広告代理店市場でどう生き残っていくかを考えることでもあります。

そのためにも、まずは自社の強みを見つめ直すことが必要なのではないでしょうか。

リスティング広告の運用にこだわらず、本質的なマーケティング支援を提供していく

ーー市場環境の変化に合わせて事業を転換されたとのことで、新事業で目指されている領域を教えて下さい。

今回の事業転換では、LPの運用へ重きを置く形となります。リスティング広告の専門家として創業したときから、このLPの制作は強みとしていた部分ですが、改めてこの領域に再注力していきます。

広告代理店といえば電通さん、博報堂さんを筆頭に多くの代理店が、様々な形で支援を行っているため、お客様からすればその選択肢は様々です。

ですが、LPの制作でNo.1はどこなのかと言われれば、もちろん良い会社さんはたくさんありますが、明確なNo.1というのは決まっていないかなと。さらに言えば、制作はできても広告運用まで含めると、現在はそういったNo.1が決まっていないと思っていますので、そこを狙いにいきます。

具体的には、広告運用の部分はShirofuneの活用にて運用者のハイブリッドで運用しつつ、LPを週一で高速回転させる事によってCVRの抜本的な改善を図ります。

△事業転換に合わせ、Webサイトを一新

ーーリスティング広告からさまざまなチャネル・媒体へ展開して、そこからの原点回帰、といった形でしょうか?

そうですね。これまでFacebookやGoogle、Yahoo!といった媒体を中心に広告の運用をしてきて、やっぱりLPも流入元によって成果が出たり出なかったりというのがわかるようになってきました。

ですが、現実問題として媒体別にLPを用意できている会社はほとんどありません。それは工数の問題もありますし、その工数に見合うかどうかの判断ができていないからだと思っています。

今は、広告媒体によっても最適なLPの形式や興味を引くコンテンツが違うので、媒体属性や季節性を加味してLPを運用するのです。

LPOはLP内の一部の部分最適化ですが、我々はLP全体のブラッシュアップを運用したり、媒体に合わせてLP自体を最適化させていくLPの運用に注力します。

こうした部分を我々が支援して、LPのCVRを高められれば、お客様は広告を今以上に積極的に配信できるようになりますし、媒体の自動調整といったブラックボックス化している変数に左右されることなく、PDCAを回して改善が可能になると考えています。

ーーこうした事業転換の背景は何だったのでしょう?

やはり、お客様へ広告の運用面での説明に時間が取られてしまっていて、本質的なマーケティング支援ができていないことや、ツール性能の向上によって運用面での支援だけでは代理店としての価値が薄れてきていることが背景にあります。

そのときに広告運用自動化ツール「Shirofune」がかなり精度が上がって、代理店向けのプランが提供されたと聞き、これであれば運用部分の工数を削減しながら、別の部分に注力できると考え、今回の事業転換に至りました。

ーーLPというのは今後もマーケティングにおいて重要な役割を担っていくのでしょうか?

イノベーター理論でいえば、LPを用いた広告が効く層はアーリーアダプターからイノベーターくらいまでで、それ以降の層はSNSやお客様の口コミ評価が購買の決定要因として大きくなります。

商品のライフサイクルが短くなっている今、LPを用いた広告は、新商品の最初のブーストとして強みを発揮しています。企業は新製品を次々に開発し、広告でブーストをかけていくのが、業界内で新規顧客を増やしていく上では重要だと考えています。

また、LPであればABテストによって数字ですべての成果を検証できます。広告の配信自体はプラットフォームによって自動化が進み、人の手を介入させない形に変化してきています。そのため、データに基づいた検証がしやすいLPは今後もマーケティングの仮説検証において大きな役割を担うと考えています。

事業転換にあわせて料金体系を一新

ーー今後は料金体系も一新されると聞きました。

これまでの広告代理店の基本は「広告予算額×◯◯%」の形でしたが、それをやめて、広告予算額に関わらず、一律でいただこうと考えています。

これまでの広告代理店のモデルだと、お客様の広告費を上げることでしか収益構造が改善できません。そうなったときに、いつのまにかお客様の売上利益を上げる提案ではなく、広告予算を落とさない提案に無意識に動いてしまいがちです。そもそも予算額が伸びるのはお客様の商品力・資本力ありきの部分です。そう考えると、広告代理店が売上を上げるのはマーケティング支援による力ではなく、予算を説明する力となってしまいます。

そうではなく、お客様をより本質的にマーケティングの力で支援するために、これから1~2年での事業転換を目指します。

ーー広告費×20%の料金設定を変えると今よりも代行費がが下がってしまうお客様もありますよね?

もちろんそうなのですが、我々の価値を再定義しようとしたときに、痛みの無い選択は変化を産まないのではないかと思いました。

予算が大きな案件は、やはりブランド力があり、商品自体も「売れる商品」なので、運用する側からすると難易度が低く、お客様からすれば投資対効果が良くないんです。そうなるとお客様としてはインハウス化を検討しますよね。

そうではなく、これから新たな商品を売り出して、シェアを広げていく段階のお客様にスポットを当てて支援をしていく方が、我々としても価値が発揮しやすく、こうした料金体系の方がお客様にとっても理解しやすいのではと考えています。こうすることで、他社の代理店さんとの価格競争にも巻き込まれずに済みますしね。

新社名「デジタルアスリート」にかけた想い

ーー今回の事業転換に伴って社名も「デジタルアスリート株式会社」へと変更したとお聞きしました。新社名に込めた想いをお聞かせください。

今回の事業転換と社名変更にあたり、私なりに「デジタルマーケティングのプロフェッショナルとは何か?」を考えてみました。その中で、プロフェッショナルというと完成されたイメージがどうも合わなくて、我々がPMFを目指している真っ最中であり移り変わりの激しいデジタルマーケティングの領域で常に研究や自己研鑽を行っている集団の方が我々に合ってると思ったのです。そう考えたときにこれってアスリートと同じだなと。

この業界は良くも悪くも、新たなマーケティング手法やプラットフォームが次々に登場するため、今は特定の領域で専門性があっても、10年経てば一般化されてしまいます。今はTikTokやメタバースなどが注目を集めていますが、これらが10年後も続くかと言われれば難しいところです。そうすると、この業界でトップラインを走り続けるためには、新たなプラットフォームやマーケティング手法を身に着けながら、自身のスキルを高めることが必要です。

今いるメンバーや、これから入ってくる新卒や未経験の人材に対して、このプロフェッショナルの姿勢をわかりやすく伝えるために、このイメージしやすい「アスリート」という言葉を使いました。お客様に対しても、我々の姿勢が伝われば、同じマインドで向き合ってもらえるだろう、との想いもあります。

ーー料金体系の変更もあり、お客様への向き合い方も変わっていきそうですね。

昔はデジタルマーケティングの領域では裏技のような手法がいくつかあって、それだけでトラフィックやCVRを伸ばせていましたが、今やそんな技はありません。コンテンツ・ブランド・マーケティングといった総合力で戦っていかなければいけないので、そこをまずお客様に理解していただく必要がありますね。

お客様の努力も必要ですから、お互いにプロフェッショナルとして両軸からマーケティングに向き合うことができれば、必ず成果は生まれると考えています。

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ーー事業転換に伴い、新たな採用の予定はありますか?

中途採用をより強化していきたいですね。特にデジタル広告をある程度やってきて、次のスキルを身に着けたい人。こういった人ほど、Google等のプラットフォームの自動化で、ブラックボックス化した部分が増えて、やりがいがなくなってきているのかなと。そういった方と一緒に、もっと本質的なマーケティングの支援を行っていきたいですね。


株式会社リスティングプラスはデジタルアスリート株式会社へと社名を改め、新たな広告代理店としての形を目指しています。

提供サービスの再定義や料金体系の一新により、どのような姿で市場を切り開いていくのか注目です。

(撮影/矢野 拓実 編集/中島 孝輔 株式会社才流)

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