ROAS(広告費用対効果)とは?マーケティング上の意味や読み方、計算式と分析の手順をわかりやすく解説

菊池 満長

近年、電通の「2023年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は依然として拡大しています。特にリスティング広告やSNS広告といった運用型広告への投資が増えており、投資対効果が明確に測定できる広告チャネルに予算が集中する傾向が顕著です。景気の先行きが不透明な中でも、成果を定量的に評価できる施策がより重視されるようになっているのでしょう。

広告費の費用対効果を評価する「ROAS」は、広告運用に携わる人なら確実に押さえておきたい必須知識ですが、正しく理解できてない人も多いのではないでしょうか。その理由として、ROIやCPAと混同しやすいこと、計算式を知っていても数値が示す意味を正しく読み取るのが難しい点が挙げられます。

本記事では、まずROASの基本的な意味や計算式、どのタイミングで確認すべきか、その重要性についてわかりやすく解説します。その上で、実際の広告運用での活用方法や、ROASが高ければ高いほど本当によいのかという点についても深掘りしていきます。

広告予算が限られた中で成果を最大化したい広告担当者、マーケティング責任者、さらにクライアントに具体的な成果を説明する必要がある広告代理店担当者にとって、ROASの正しい理解と活用は欠かせないスキルです。この記事を通じてROASの知識を深め、効果的な広告運用を実現するための基盤を築きましょう。

ROASとは?マーケティング上の意味と読み方

ROAS(アールオーエーエス、ロアス)とは、「Return On Ad Spend」の略で、広告費用対効果を示す指標です。簡単にいえば、広告費に対してどれだけの売上げを生み出したかを数値化したもので、広告運用の効率を測るために使用されます。

たとえば、広告費が10万円で売上が50万円だった場合、ROASは以下の計算式で算出できます。

例)
ROAS = 売上 ÷ 広告費 = 50万円 ÷ 10万円 = 5(500%)

これは、広告費1円あたりで5円の売上げを生んだことを意味します。ROASが100%(1倍)を上回れば費用対効果が高く、逆に100%を下回れば費用対効果が低いことを示します。このため、ROASは「広告費の回収率」と呼ばれることもあります。

広告運用の現場では、ROASは施策の成果を評価し、次の予算配分や広告戦略を最適化するために欠かせない指標です。迅速かつ定量的に広告の費用対効果を把握できるため、Google 広告やSNS広告などの運用型広告において欠かせない指標といえるでしょう。

ROASの発展の背景

ROASが注目されるようになった背景には、デジタル広告市場の拡大と広告運用手法の進化が密接に関係しています。従来のマスメディア広告、たとえばテレビCMや新聞広告では、広告費用に対する具体的な効果を測定するのが難しい状況にありました。これらの広告媒体では、視聴率やリーチ数を基準に広告効果を推定することが一般的ですが、それが実際の売上げにどの程度貢献したかを明確に把握するのは困難です。

一方でデジタル広告の登場と普及により、広告効果を定量的に評価できる環境が整いました。クリック数、コンバージョン数、売上データなど、広告運用に関連する詳細なデータが取得可能になり、広告費用と売上げの直接的な関係を測定する指標としてROASの重要性が高まっています。

さらに、運用型広告の普及もROASが注目される要因として考えられます。運用型広告では、広告パフォーマンスをリアルタイムでモニタリングし、ターゲティングや入札額を調整することが必要です。このような運用プロセスにおいて、ROASは効果的な意思決定を行うための基準となります。たとえば、「このキャンペーンのROASが低いから広告費を削減しよう」といった具体的な行動指針を立てることが可能です。

ROASとROI、CPAとの違い

ROAS、ROI、CPAは、どれも広告投資の成果を測るために使われる重要な概念です。しかし、それぞれに異なる特徴と用途があるため、違いを理解しなければ、より正確な広告戦略の立案や分析は行えません。以下では、ROASとROI、CPAの定義の違いと具体的な用途について説明していきます。

ROASとROIの違い

ROI(Return On Investment)は、広告費用だけでなく、その他のコスト(商品原価や人件費、運営費など)を含めた投資全体に対する利益率を示します。

全てのコストを含めた「投資全体の利益率」を測定し、事業全体や各施策の収益性を評価する指標です。短期的な広告効果ではなく、中長期的な収益性を分析する際に重要視されます。一般的に、施策が完了した後や四半期・年度単位で測定し、経営判断や予算配分の基準として活用します。

一方で、ROASは広告のパフォーマンスを評価する指標であり、キャンペーン期間中にリアルタイムで測定し、PDCAを迅速に回すのに役立ちます。たとえば、複数の広告クリエイティブやターゲティングの効果を比較し、最適な広告に予算を集中させるといった活用が可能です。

ただし、ROASは売上げをベースとした指標であり、利益を直接反映するものではありません。ROASが高くても、商品原価や人件費が増えればROIが悪化する可能性があります。そのため、ROASだけで広告効果を判断するのは適切ではなく、利益率や他の指標と併せて分析することが重要です。

また、BtoBのように購買プロセスが長期に及ぶビジネスモデルでは、ROASが低くてもROIが高いケースがあります。たとえば高単価商材の場合、広告からのコンバージョンで短期で売上げが発生しなくても、長期的に見れば収益につながる可能性があります。そのため、ROASとROIの両方をバランスよく活用し、それぞれの特性を理解した上で適切な指標を選ぶことが重要です。

ROASとCPAの違い

続いて、ROASとCPAにはどのような違いがあるのでしょうか?

CPA(Cost Per Acquisition)とは、広告によって1件のコンバージョンを得るためにかかった費用を示す指標です。広告費をどれだけ効率的にコンバージョンにつなげられているかを測るために活用されます。


1件獲得するごとに費用を割り出せるため、リアルタイムに近い形で広告の効率を把握しやすいのが特徴です。特に、会員登録や無料トライアルなどのアクション完了時に即座に計測できるケースでは、短期間で施策の良し悪しを評価しやすい指標でもあります。

一方でROASは、広告施策のパフォーマンス評価や効果的なキャンペーンの特定に活用できる、つまり「この広告が売上げにどれだけ寄与したか」を知りたいときに活用できる指標です。広告を出稿してから、売上げが立った時点で評価するため、ある一定期間ごとの評価をする必要があります。たとえば、長期的なリピート購入を含める場合は、測定期間をどこまで取るかが重要です。

ROASを考えることがなぜ大事なのか

それでは、なぜ広告運用においてROASを考えることが重要なのでしょうか。広告運用を行っていくにあたって知っておきたい4つの理由を説明します。

理由1:広告投資の効果を可視化するため

ROASは、広告運用の成果を数値で「見える化」する指標です。この指標を活用することで、広告費がどれだけ売上げにつながったのかを直感的に把握できるだけでなく、具体的な運用改善に役立つ多くの示唆を得られます。たとえば、広告運用において「どの施策が成功しているのか」「どこに無駄があるのか」がわからないままでは、予算配分の最適化も、経営層への成果報告も難しくなります。

ROASを通じて投資効果を可視化すれば、課題を明確にし、次のアクションの具体化が可能です。さらに、広告戦略が事業目標にどの程度貢献しているかを明確に測定できるため、広告戦略と事業戦略の整合性を保つ重要な判断材料となります。

理由2:予算配分の最適化をするため

広告予算は無限にあるわけではないため、限られた予算の中で多くの成果を生み出さなければいけません。ROASを用いれば、どのチャネルやキャンペーンに予算を集中させるべきかを明確にし、収益を生み出さない広告へ予算投下するという事態を防げます。

たとえば、Google 広告でROAS200%のキャンペーンと、Facebook広告でROAS500%のキャンペーンがある場合、ROASが高いFacebook広告へ予算を再分配することで、より収益性の高い広告運用を行えます。

また、季節やイベントに応じて、ROASの高いチャネルへ即座に予算を移動する調整を行うことができれば、短期間で成果の最大化が可能です。このようにROASを活用することで、広告予算を最大限効率よく活用し、持続的な収益拡大を実現できます。

理由3:経営層やクライアントへの報告での重要な指標のため

経営層やクライアントが広告成果を評価する際、最大の関心事は「この投資がどれだけの売上げや利益を生んだか」という点でしょう。ROASは、広告費〇〇円で△△円の売上げを生み出したという具体的な投資対効果を数値で示すため、その施策への評価やその後の意思決定の迅速化に役立ちます。

さらに、ROASは単なる成果指標ではなく、成長戦略やリソース配分を決定する要因にもなります。ROASが高い施策は追加投資を検討する根拠となり、逆に低い施策は改善や撤退を判断する材料として活用されます。

経営会議や打ち合わせといった限られた時間内で成果を伝える場面においては、その簡潔で直感的な数値によるわかりやすさは大きな強みです。他の指標(CPAやCTR)が部分的な効果しか示せないのに対し、ROASは広告に関する費用対効果を示す指標だからこそ、経営判断における広告の有効性を後押しします。

理由4:事業戦略と広告戦略の整合性を確認するため

広告を成功させるには、事業戦略と広告戦略が同じ方向を向いている必要があります。この2つの整合性がなければ、短期的には成果を上げても、長期的に損失を招く可能性があるためです。

たとえば、BtoB向けの製造業がこれまで展示会を中心に認知を拡大してきた場合、オフラインですでに十分なリーチを獲得していることが考えられます。この状況でさらにオフライン広告を出し続けても、新規のターゲット層には届きにくく、コストの増加や費用対効果の低下を招く可能性があります。

この場合、次の成長戦略としてデジタル施策を活用し、オンラインでの認知拡大やリード獲得を進めることで、ROASの最大化を図るのが有効です。広告戦略と事業戦略を一致させることで、限られた広告予算をより効果的に活用できるでしょう。

このように、ROASを指標として事業戦略と広告戦略の整合性を確認することは、持続可能な成長を実現するために欠かせません。

ROASを見るべきタイミング

では、ROASはどのようなタイミングで考慮すればよいのでしょうか? 広告運用の実務のシーンに合わせて確認すべき具体的なタイミングを解説します。

運用中の広告成果のモニタリング

運用中のデータを分析し、ROASが目標値に達しているかを確認することで、改善点や強化すべきポイントを迅速に把握できます。モニタリングの目的は、問題の早期発見と即時対応です。

ROASが目標を下回る施策があれば、ターゲティングの見直しやクリエイティブの変更、出稿チャネルの再評価といった具体的なアクションを速やかに実行する必要があります。

一方で、ROASが目標を上回る施策が見つかった場合、その成功要因を分析し、さらなる予算投入や投資の拡大を検討することで、成果の最大化ができるでしょう。ROASのモニタリングは、単に結果を追うだけでなく、リアルタイムで戦略を調整する手法として効果的です。

広告キャンペーン終了後の総括

広告キャンペーン終了後には、広告全体の成果の評価が欠かせません。広告費が売上げにどの程度貢献したのかを数値化することで、施策が目標にどれほど効果的であったかを明確に検証できます。この分析により、次回の広告予算配分や戦略計画のための具体的で信頼性のあるデータが得られます。

広告代理店においては、ROASにもとづき「投資に対するリターン」を具体的な数字でクライアントに提示すれば、広告施策の透明性を確保することが可能です。具体的には、クライアントは広告の成果を正しく理解し、代理店との信頼関係が強化されます。施策の成功要因や改善点を丁寧に説明することで、クライアントとの継続的なパートナーシップの構築を行えるでしょう。

総括の際にはROASのみではなく、ブランド価値や顧客のライフタイムバリュー(LTV)といった長期的な指標も併せて評価することが重要です。短期間で高いROASを記録したキャンペーンが、ブランドの認知度や顧客のリピート率に与えた影響まで確認すれば、施策の全体的な価値を把握できます。

広告キャンペーンやクリエイティブごとの分析

ROASは、広告全体のパフォーマンス評価だけでなく、個別キャンペーンやクリエイティブの詳細な分析にも有効です。同じ製品サービスを訴求する広告であっても、チャネルやクリエイティブごとに成果が異なる理由を解明することが、広告戦略を次のレベルに引き上げる鍵となります。

それでは、具体例を見てみましょう。「広告キャンペーンA」のROASが目標を上回っている一方、「広告キャンペーンB」のROASが目標に届かない場合、それぞれのターゲティング設定やクリエイティブの内容の比較により、どの要素が成功に貢献しているのかを明らかにできます。

この知見を活かし、「広告キャンペーンA」の成功要素を「広告キャンペーンB」に取り入れることで改善が可能です。画像やコピー、色使いなどがどのように成果に影響を与えたかを定量的に評価することで、改善のヒントを得られます。

定期的な予実管理や報告(レポーティング)

広告運用を効果的に継続するためには、予算と成果を定期的に比較し、その結果を上司や経営層に報告する予実管理が重要です。ROASを活用することで、「広告費〇円に対して△円の売上げを生み出した」という具体的な成果を明確に示せます。広告運用の透明性が向上し、施策の有効性をデータにもとづいて説明できるため、経営層の理解や判断をスムーズに進めることが可能です。

また、現在の広告運用が予算内で収益を最大化できているかを確認し、目標未達成の場合には調整を行う指針としても機能します。効果が低いチャネルの予算を削減し、高ROASを記録している施策にリソースを集中させるといった具体的なアクションの検討が可能です。

広告代理店の場合、定期的なROASの報告は、クライアントとの信頼関係を深めるうえで重要です。運用結果を詳細に説明するとともに、次回施策に向けた改善提案を行うことで、データにもとづいた次のステップを提示できます。

具体的には「前回はSNS広告で高いROASを記録したため、今回もSNSを中心に予算を配分しつつ、動画クリエイティブを追加して成果を拡大する」といった提案が可能です。こうしたプロセスを通じて、クライアントと長期的なパートナーシップを構築できます。

ROASの計算式と分析の手順

ここでは、ROASを計算し、分析を行うための手順をわかりやすく解説します。

手順1:ROASの計算式に必要な情報を集める

ROASの計算には、広告費と売上額の2つのデータが必要です。これらを正確に収集しなければ、ROASを正しく算出できません。まず広告費とは、Google 広告やSNS広告などのプラットフォームで発生した費用を指します。代理店への委託費用、広告ツールの利用料金、ランディングページの制作費用などは、広告運用に関連しますが、ROASの計算には含めません。これらの費用は、ROIの計算に用います。

Google 広告では、広告アカウントの「概要」タブで広告料金を確認できます。

(出典:Google広告管理画面)

売上額(収益)は、広告経由で発生した売上げのことです。広告と連携したECプラットフォームやCRMシステムなどから取得します。Google 広告では、コンバージョンタグを設置し、イベントスニペットに金額を記載することで、売上額を計測できます。

売上額を計算する際は、広告による直接的な収益のみを対象にし、他のチャネル(SEOやメールなど)からの売上げを含めないようにしましょう。

手順2:ROASの計算式に当てはめて計算する

広告費と収益を出したら、以下の計算式でROASの算出をします。

ROAS = 売上げ ÷ 広告費

たとえば、広告費が10万円で売上げが50万円なら、ROASは5(500%)となります。

ROAS:50万 ÷ 10万 = 5(500%)

この結果は、「1円の広告費で5円の売上げを生んだ」ことを意味します。ROASを計算することで、広告施策の費用対効果を簡単に把握可能です。計算結果をグラフや表にまとめれば、上司やクライアントへの報告時に、広告運用の成果を効果的に伝えられます。さらに、異なるキャンペーンやチャネルごとのROASを比較する際にも役立つでしょう。

手順3:広告キャンペーンやクリエイティブなどの要素で分析する

ROASの効果的な活用には、広告キャンペーン全体だけでなく、キャンペーン単位やクリエイティブ単位で細かく分析することが重要です。そうすれば、広告運用の収益性を正確に把握し、次回以降の施策改善につなげられます。

キャンペーン単位でROASを比較すれば、新製品のプロモーションと既存顧客向けのアップセルキャンペーンのどちらが収益性が高いかを判断できます。一方、クリエイティブごとのROASを測定することで、効果の高いコピーや動画を特定し、他のキャンペーンやチャネルに展開して、全体のパフォーマンスを向上させることが可能です。

このように、ROASの分析を細分化すれば、広告運用の成功要因を明確にし、データにもとづき収益性の高い広告施策を展開できます。

手順4:目標値と実績値のROASを比較して評価と次回の戦略の検討

ROASの計算後、目標値と実績値を比較し、広告運用が計画通りに進んでいるかを評価します。このステップは、次回施策の成功を左右する重要なステップです。評価を通じて、施策ごとの成功要因や改善点を明確にし、次回の戦略に活かしましょう。

目標ROASを達成できなかった場合、ターゲティングの精度不足や配信チャネルのミスマッチ、クリエイティブの効果不足といった原因を特定します。一方で、目標を大幅に上回った施策については、成功要因を深掘りし、他の施策に応用することでさらなる成果が期待できます。

次回の広告戦略では、これらの分析結果をもとに以下のような改善を行いましょう。

  • 効果が低かったキーワードの削除や除外キーワード設定をする
  • ターゲティングをさらに絞り込んで無駄な広告費を削減する
  • 高ROASを記録したターゲット層への配信を強化し、成功したクリエイティブや配信チャネルを再設計する
  • 新たな形式の広告や配信チャネルのテスト運用を行い、効果的なアプローチを探る

目標値と実績値の比較を通じて得られるデータは、単なる評価ではなく、次回施策を成功へ導く指針となります。ROASを活用し、広告パフォーマンスを最大化する戦略を追求しましょう。

ROASを計算・分析するためのおすすめのツール

ROASを正確に計算し、効率的に分析するためには、ツールの活用が便利です。適切なツールを利用することで、計算や分析に要する時間を短縮しながらROASを算出できます。ここでは、おすすめのツールカテゴリーをそれぞれの特徴とともに解説します。(記載している内容は2025年2月時点の情報です。)

表計算ソフト

広告運用において、Microsoft ExcelGoogleスプレッドシートは、ROASの計算を効率的に行うための一般的で使いやすいツールです。広告費や売上データを入力するだけで瞬時に計算できます。さらに、計算結果をもとにグラフや表を作成することで、データを視覚化し、施策の成果を直感的に把握することが可能です。

(出典:SOLUTIONS

また、広告運用専門サイトでは、こうした表計算ソフトを活用した無料テンプレートが提供されています。上記テンプレートは、フォームに氏名、メールアドレス、役職、月間広告費を入力するだけで簡単にダウンロード可能です。テンプレートには計算式があらかじめ組み込まれているため、初心者でもROASを効率的に算出・分析でき、運用の負担を大幅に軽減します。

ROAS算出ツール

ベンダーが提供するROAS算出ツールを活用すれば、広告費用や売上データを入力するだけで、瞬時にROASを計算できます。計算式を知らないユーザーでも直感的に操作できるよう設計されており、広告運用に不慣れな初心者からプロフェッショナルまで幅広く活用されています。

(出典:HubSpot「Ads Calculator」

HubSpotの「Ads Calculator」は、広告予算やクリック単価、コンバージョン率といった基本データを入力するだけで、ROASだけでなくクリック数やCPAなども自動的に算出できる便利なツールです。(ただし、ドルのみに対応しているため、使用する際には通貨変換が必要になる点には注意しましょう。)一方、Omni Calculatorはドル以外の通貨にも対応しており、グローバル市場で展開する企業にも適した選択肢となっています。

(出典:Omni Calculator

BIツール

BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、広告運用データをはじめ、複数のデータソースを統合し、視覚的に分析・モニタリングできる強力なツールです。ROASはもちろん、CPAやROIといった関連指標も効率的に分析できるため、広告運用の精度を飛躍的に向上させられます。

代表的なBIツールには、Tableau(タブロー)Looker Studio(旧Google Data Studio)があります。

(出典:Tableau

Tableauは、多様なデータソースとの連携に優れており、ドラッグ&ドロップ操作でカスタマイズ可能なダッシュボードを簡単に作成できます。たとえば、Google 広告やFacebook広告のデータに加え、CRMデータや売上データを統合することで、広告の成果を多角的に分析することが可能です。Tableauは有料ツールであり、2025年1月時点で一般的なライセンス「Creator」の価格は月額115ドル/ユーザーとなっています。

(出典:Looker Studio

一方、Looker StudioはGoogle 広告やGoogle アナリティクスなどのGoogle系サービスと高い親和性を持つ無料BIツールです。テンプレートも豊富にあるため、比較的容易に使いこなせます。複数の広告プロダクトを運営している場合はTableauを、Google 広告を中心に運用している場合はLooker Studioを選ぶとよいでしょう。

また、BIツールの導入により、広告運用に関わるすべてのデータを一元化し、チーム全体で共有しやすくなるため、コミュニケーションの効率も向上します。これにより、広告戦略をデータにもとづいて迅速に立案し、成果を最大化することが可能です。

広告運用自動化ツール

広告運用自動化ツールは、入札額の調整、ターゲティング設定、配信スケジュールの最適化、レポート作成などを自動化することで、広告運用の効率化とパフォーマンス向上を支援するツールです。

弊社が提供する広告運用自動化ツール「Shirofune」は、Google 広告やYahoo!広告などの主要プラットフォームを網羅し、広告運用を自動化します。

たとえば、上限CPAや下限ROASを設定するだけで、目標達成に向けた入札調整や予算管理を自動で行います。さらに、リアルタイムでのデータ収集と分析にもとづいて最適な運用調整を実施するため、変化の激しい市場環境にも柔軟に対応可能です。

こうした自動化機能を活用することで、ROAS向上を図りつつ、広告運用全体の効率を飛躍的に向上させられます。また、手動での調整作業が不要になるため、運用担当者は戦略設計やクリエイティブ制作など、より付加価値の高い業務に注力することが可能です。

ROASは高い方がいい?目安や業界平均値は?【参考情報】

ROASは、広告運用の効率性を示す重要な指標であり、一般的には高いほど効果的な運用を意味します。しかし、必ずしも「高いROAS=良い広告運用」とは限りません。広告の目的が新規顧客の獲得やブランド価値の向上である場合、短期的な売上げや高ROASだけを追求すると、長期的な成長が損なわれるリスクがあるためです。

高ROASを追求する戦略では、購入意欲の高い顧客に広告を集中配信することが一般的です。これは効率的な運用につながる一方、情報収集段階の潜在顧客を取り逃がすリスクが生じます。たとえば、競合他社が丁寧に潜在顧客へのアプローチを行っている場合、長期的には市場シェアを奪われる可能性もあります。

また、ROASが高くても、商品原価や運営コストを考慮しなければ、十分な利益を確保できないケースもあります。このように、ROASは短期的な成果だけでなく、長期的な利益や戦略とのバランスを考慮して評価しなければいけません。

適正なROASの設定は業界や広告戦略によって異なります。WebFXによればGoogle 広告の平均ROASは200%とされていますが、業界によってその数値は大きく変動します。EMarketerのデータでは、2022年のアメリカ市場において、スポーツ用品の平均ROASは498%と高い一方、自動車業界の平均ROASは193%と低い傾向にあります。このような差は、商材の単価、購入プロセスの複雑さ、ターゲット顧客層の違いなど、業界特有の要因に起因するのです。

(出典:EMarketer

また、広告チャネルの特性も考慮が必要です。リターゲティング広告では高ROASが期待される一方、新規顧客獲得を目的とする広告では、低ROASでも許容される場合があります。適正な目標を設定するには、各広告チャネルの特性や業界平均を参考にしましょう。

ROASは広告運用の効率を測る上で重要な指標である一方で、それだけを追求することが最適な広告運用につながるとは限りません。短期的な成果と長期的な成長の両立を意識し、業界や広告チャネルの特性を踏まえた目標を設定して、より持続可能で効果的な広告戦略を実現していただければと思います。

まとめ

ROASは、広告費がどれだけの売上げを生んだかを数値で示す重要な指標です。その活用範囲は、経営層やクライアントへの成果報告に留まらず、予算配分の最適化や事業戦略と広告戦略の整合性の確認など、多岐にわたります。

確かに、高いROASは効率的な広告運用を示します。しかし、高ROASの追求に囚われすぎると、新規顧客獲得や認知拡大といった中長期的な施策が軽視されるリスクが生じるでしょう。広告運用の成功には、短期的な収益目標と、ブランド価値や顧客ロイヤルティ向上といった長期的視点のバランスが重要です。

ROASを「単なる数値指標」としてではなく、持続可能な広告運用を実現するための判断材料として活用しましょう。その理解と実践が、広告運用の成果を最大化し、事業成長を支える大きな一歩となります。

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