Amazon広告ROAS

Amazon広告のROASとは?ACoSとの違いやROASを高めるためのポイントについて解説

菊池 満長

かつてWeb広告といえばGoogle広告やSNS広告が主流でしたが、近年、Amazon広告が急速に存在感を高めています。特にEC事業者やDtoCブランドにとって、Amazon広告は単なる集客手段ではなく、売上げに直結するインフラとして機能し始めています。

その理由は、Amazon広告がユーザーの購買行動と密接に連動し、検索から購入までを一貫して完結させる構造にあります。いわば購買行動との距離ゼロの設計により、クリックが即座に売上げにつながりやすく、広告効果の可視性も極めて高いのです。この特性ゆえ、Amazon広告ではROAS(広告費用対効果)が最も重視される指標となります。

実際、Amazonによると広告を12カ月継続運用した出品者は、初月比でROASが平均11.2%向上したというデータもあります。ROASを意識した広告投資は、販売数やレビュー増を通じてアルゴリズム評価を高め、検索順位向上にも貢献します。広告は単なる費用ではなく、検索上位という資産を得るための戦略的投資と捉えるべきです。

本記事では、Amazon広告の基本構造から広告タイプ別の特性、ROASとACoSの違い、そしてROAS向上に向けた戦略と実例までを解説していきます。

ROASの定義と計算方法とは

ROASは広告運用における重要な指標であり、あらためてその定義と計算方法を整理しておく必要があります。利益ベースか売上ベースか、高ROASが常に良いのかなど、正しく理解していなければ、広告施策において混乱を招く原因となります。

ROASの定義

ROAS(Return On Ad Spend:アールオーエーエス、ロアス)とは、広告に投じた費用に対して、どれだけの売上げを得られたかを示す、つまり広告の費用対効果を示す指標です。広告費1円あたりの売上げを示し、たとえばROASが200%ならば1円の広告費が2円の売上げを生んだことを意味します。

リスティング広告やディスプレイ広告、さらにはAmazon広告のようなECプラットフォーム内の広告運用においても、ROASはパフォーマンスを評価・改善する際の基準となります。なぜなら、従来のテレビCMや新聞広告などと異なり、デジタル広告では費用と売上げのデータがリアルタイムに取得できるためです。

ここで注意すべきなのは、ROASはあくまで「売上ベース」の指標であるという点です。利益率が考慮されないため、商品単価が高い商材やマージンの大きなビジネスモデルでは高ROASを得やすく、逆に利益率が低い場合は、高ROASでも十分な収益が確保できていない可能性があります。

このような背景から、ROASはCPA(顧客獲得単価)やROI(投資利益率)、LTV(顧客生涯価値)などの利益ベースのKPIとあわせて読み解く必要があります。

ROASの計算方法

ROASの計算方法はシンプルで、以下の式で算出できます。

この数式により、投じた広告費に対して得られた売上げの比率を明確に算出できます。たとえば、50万円の売上げを得るために広告費を10万円使ったとすると、ROASは500%になります。

ただし、実務においてこの計算は単に数字を当てはめるだけで終わるものではありません。広告経由の売上げに含める対象はどこまでか、広告費としてどこまでのコストを算入するのかといった定義を明確にする必要があります。特にAmazon広告のように、複数のキャンペーンが同時に走っている場合やクロスチャネルで施策を展開している場合は、分析の前提条件を統一しなければ比較ができません。

実際、ROASを運用改善に活かすには、以下のような手順が基本となります。

このようにROASの計算自体は単純であっても、その活用には細やかな数値管理と論理的な検証プロセスが不可欠です。Amazon広告のように出稿単位が細かく、ターゲティング精度も高い広告プラットフォームにおいては、ROAS分析の深度が運用成果を大きく左右します。

Amazon広告とは

巨大ECプラットフォームであるAmazonは、BtoCやDtoC企業にとって見逃せない重要なチャネルです。すでにAmazonに出店している企業も多いでしょう。しかし、期待した成果が得られず悩むケースでは、その原因が集客にあることも少なくありません。Amazonには無数の店舗が存在し、自社製品を見つけてもらうこと自体が難しいのが現状です。

こうした集客課題の解決に貢献するのが、Amazon広告です。Amazonという購買プラットフォーム内で広告が表示されるこの仕組みは、ユーザーの購買意欲が高まっているタイミングで訴求できる点で、他の広告媒体にはない強みを持っています。

特にBtoC商品の販売に注力する企業にとって、Amazon広告は売上げに直結する強力な手段となり得ます。なぜなら、Amazon内で商品を検索・閲覧しているユーザーの多くは、すでに購入の意思決定プロセスに入っているためです。広告による商品認知や比較検討が、すぐに購入という行動に反映されやすく、検索結果で上位に表示されることで、売上げを大きく伸ばすことも可能です。

さらにAmazon広告の特長として、EC運営と広告運用が分断されていない点が挙げられます。商品情報、在庫、レビュー、広告がすべて同一プラットフォーム上で連動しており、ユーザーの購買体験を途切れさせることなく、最終的な購入へと導くことができます。加えて、広告経由の行動データを活用することで、より精緻な最適化が可能となり、他媒体とは一線を画す運用が実現します。

では実際に、Amazon広告にはどのような種類があるのでしょうか。

Amazon広告の種類

Amazon広告には、ユーザーの購買行動や検討ステージに応じて複数の種類が用意されています。それぞれの広告タイプは、表示箇所・目的・ターゲティング手法が異なり、組み合わせ次第で多様なマーケティング戦略を展開することが可能です。

スポンサープロダクト広告

スポンサープロダクト広告とは、ユーザーの検索結果ページや他の商品詳細ページに自社商品の広告を表示する手法です。簡単にいえば、「Amazon版のリスティング広告」であり、ユーザーの検索キーワードと連動して広告が配信されます。

(出典:Amazon

たとえば、「プロテイン」と検索したユーザーに対して、自社の商品ページへの導線を広告として表示する、それがスポンサープロダクト広告の基本的な構造です。広告をクリックすればそのまま商品詳細ページへと遷移し、ユーザーは価格・レビュー・スペックなどを確認しながら即座に購入判断を下せます。

この広告の最大のメリットは、売上げに直結する可能性が高いことです。すでに特定の製品を探しているユーザーに対して、自社の広告を優先的に見てもらえるため、クリックさえしてもらえば購買に移る可能性が高いといえます。特にスマートフォンの充電器のように、安価で製品自体のスペックでは差が出ない場合、スポンサープロダクト広告は大きな効果をもたらすでしょう。

スポンサープロダクト広告の配信には、複雑なバナーや動画制作が不要であり、Amazonにすでに出品されている商品であれば、即座に広告出稿が可能です。さらに、クリック課金制であるため、広告が表示された時点では費用は発生せず、ユーザーが実際にクリックして初めて広告費が発生します。この仕組みにより、無駄な出費を抑えながら効率的に運用できる点も見逃せません。

スポンサーブランド広告

スポンサーブランド広告とは、Amazon広告の中でもブランドの認知拡大や購買導線の整備に特化した広告形式です。検索結果の最上部など視認性の高い位置に、画像や動画を用いて広告を配信できます。ユーザーの検索意図に乗じてブランド認知を拡大する広告ともいえます。

(出典:Amazon

スポンサープロダクト広告との大きな違いは、その構成と訴求対象にあります。

スポンサーブランド広告では、最大で3つの商品を1つの広告枠にまとめて掲載でき、さらにブランドロゴやキャッチコピー、バナー画像などを組み合わせることで、より広範な視覚的訴求が可能です。たとえば、あるアパレルブランドが新作のシャツ・パンツ・シューズを同時に訴求しながら、「春の新生活フェア」と題したキャンペーン訴求を行うといった展開が実現できます。

この広告形式は、ユーザーがまだ具体的な商品を絞り込んでいない初期検討段階において効果を発揮します。

検索語句がブランド名ではなく、「ノートパソコン」「日焼け止め」「登山用ジャケット」といった一般カテゴリであっても、上位に露出されることで、まずは自社ブランドの存在を知ってもらい、そこから複数の商品ページへと流入を促すことができるのです。

新ブランドや新商品のローンチ時、あるいは競合ブランドとのポジショニング差別化を図るタイミングで活用される傾向にあります。

スポンサーブランド広告はクリック単価がやや高めに設定される傾向がありますが、その分だけ認知効果や回遊率向上といった中長期的なリターンが見込めることから、ROASを直視しすぎず、ファネル上部の戦略として組み込むことが肝要です。

スポンサーディスプレイ広告

スポンサーディスプレイ広告とは、Amazonとその提携サイト・アプリに幅広く配信する広告です。

この広告の特徴のひとつは、表示される場所の多様性にあります。Amazonの商品詳細ページ、検索結果ページのほか、Amazon外部のウェブサイトやアプリ上にも広告を配信できるため、ユーザーがAmazonを離れても継続的な接触が可能となります。たとえば、一度カートに入れたが購入に至らなかったユーザーに対して、他のメディア閲覧中に該当商品の広告を再表示させるといったリターゲティング広告のアプローチが可能です。

(出典:Amazon

スポンサーディスプレイ広告は、ターゲティングオプションも充実しています。閲覧履歴、購入履歴、インタレスト(興味・関心)などに基づいたセグメント設定ができるため、広告の表示対象を細かく絞り込み、無駄な配信を抑えつつ、的確なユーザーへ訴求できます。さらに、Amazonの豊富なファーストパーティデータが活用されている点も、精度の高い配信を実現するうえで大きな強みです。

スポンサーディスプレイ広告は、他のAmazon広告と比較して、購買ファネルの中間〜下部に位置づけられる存在といえます。すなわち、「ブランドや商品は認知しているが、まだ購入には至っていない層」に対して再度接点を持つことができるのです。これは広告費の無駄撃ちを防ぎながら、CVRを効率よく高める手段として有効です。

たとえば、競合商品を閲覧したユーザーに自社商品を訴求したり、関連カテゴリーの商品を購入した層に別商品の提案を行ったりと、クロスセル・アップセルの文脈でも活用されています。

スポンサーTV広告

スポンサーTV広告とは、AmazonのFire TVや関連デバイス、Amazon Freevee(旧IMDb TV)などの動画配信プラットフォームを通じて配信される動画形式の広告です。従来の画像中心のAmazon広告とは異なり、視覚・聴覚の両方に訴えることでブランドメッセージの浸透力を高められる、いわばAmazon版テレビCMともいえるフォーマットです。

(出典:Amazon

最大の特徴は、テレビのような大画面で広告がスキップ不可の形で配信されるという点です。つまり、ユーザーが動画コンテンツを視聴する前や途中で挿入されるかたちで再生されるため、一定時間以上、確実に視聴してもらえるというメリットがあります。これはスマートフォンやパソコンでの短尺動画広告と比較して、ブランドイメージの刷り込み効果が高いという強みにつながります。

さらに、Amazonの購買データや視聴データに基づいて、広告配信対象を緻密に絞り込めるのも大きな強みです。たとえば「過去30日間にベビー用品を購入した家庭」「アウトドア商品を頻繁に検索するユーザー」など、Amazon独自のファーストパーティデータをもとに高精度なターゲティングが実現します。これにより、無関係なユーザーへの配信を最小限に抑え、効果的な広告出稿が可能になります。

一方で、コンバージョンまでの距離は遠いため、あくまでも種まき型の施策として成否を判断しなければいけません。また、配信費用も高額になると思われるため、スタートアップや中小企業にとっては優先度が低い広告です。

Amazon DSP広告

Amazon DSP広告とは、Amazonが提供する広告配信プラットフォームを通じて、Amazon内外のメディアに広告を配信できる高度なターゲティング広告のことです。

(出典:Amazon

この広告の最大の特長は、Amazonの購買・閲覧・検索といったファーストパーティデータを活用して、Amazonの外でも広告を出せる点にあります。たとえば、あるユーザーがAmazon内でスキンケア商品のページを頻繁に見ていた場合、そのユーザーが別のサイトや動画配信サービスを利用している最中にも、関連商品の広告を表示できます。

さらに、Amazon DSP広告はターゲティングの精度がきわめて高く、ユーザーの購買意図を的確に捉えることが可能です。「過去に自社商品の購入歴があるユーザー」「競合ブランドの商品を検索・購入しているユーザー」「定期的に特定カテゴリーの商品を購入しているユーザー」など、詳細な行動データをもとに広告配信対象を設計できます。これにより、広告予算の無駄を抑えながら、高いコンバージョン率を実現できるのです。

実際の運用では、自社ECサイトへの流入を増やすキャンペーンとして使われたり、Amazon内の売上げを底上げする全方位的な広告戦略の一環として導入されたりします。

Amazon広告におけるROASとACoSの違い

Amazon広告を運用するうえで、ROASとACoSは欠かせない成果指標です。どちらも広告の効果を数値化するKPIですが、その定義や計算方法、活用目的は異なります。

似たように見えても、重視する指標によってキャンペーン設計や最適化の方針は大きく変わります。特にAmazon広告は、購買行動を直接もとに評価できるため、指標の理解が曖昧だと、広告費の無駄や判断ミスにつながる可能性があります。

以下では、ROASとACoSの違いとその使い分け方について解説します。

ROASとACoSの定義の違い

ここまで見てきた通り、ROASとは広告費に対してどれだけの売上げを得られたかを示す指標です。一方、ACoS(Advertising Cost of Sales)は、売上げに対してどれだけの広告費がかかったかを示します。両者は広告の費用対効果を測るために使われますが、視点が正反対である点に注意が必要です。

たとえば、ROASが400%であれば、1万円の広告費で4万円の売上げがあったことになります。同じ条件でのACoSは25%となり、売上げの25%を広告費に充てたことを意味します。このように、同じ数字を示していても、全く異なる指標です。

ROASは「攻め」、ACoSは「守り」の指標と捉えると理解しやすくなります。ROASは、カテゴリ支配やブランド構築などを目的に赤字覚悟で展開する戦略にも対応できるため、成長フェーズに適しています。一方、ACoSは売上げを確保しながらの運用に適しており、収益フェーズの維持に向いています。

「結局、Amazon広告ではどちらを重視すべきか」と感じる方もいるでしょう。どちらを指標とするかはフェーズや戦略に応じて異なりますが、Amazonのように購入意欲の高いユーザーが集まるプラットフォームでは、ROASを重視するのが基本です。

AmazonではACoSの数値が良好であっても、市場シェアを確保できていなければ成長とはいえません。Amazonのアルゴリズムでは、売上げ・レビュー・CTR・CVRといった指標が自然検索順位やレコメンド枠に影響するため、多少ROASが低くても出稿量を増やす判断が、長期的なシェア拡大につながります。一時的な損失を許容しながらも、ROASを軸にした運用を継続することで、Amazon内で優位なポジションを築くことが可能です。

ROASとACoSの計算式の違い

ROASとACoSは、いずれも広告の費用対効果を測定する代表的なKPIです。しかし、計算式が正反対であるため、導き出される数値の読み方も異なります。ACoSの計算式は以下の通りです。

たとえば、10万円の広告費で50万円の売上げがあった場合、ROASは500%となり、広告費1円あたり5円の売上げを生み出したことになります。ROASは数値が高いほど効率が良いとされ、主に収益性を評価する際に用いられます。

同じ条件でACoSを求めると、「10万円 ÷ 50万円 × 100 = 20%」となり、売上げの20%を広告費が占めていることを示します。ACoSは数値が低いほど広告費の負担が小さいと判断されます。

このように、ROASとACoSは数学的に逆数の関係にあり、ROASが高くなればACoSは低くなり、その逆もまた然りです。ROASは「どれだけ稼いだか」、ACoSは「どれだけ使ったか」という視点の違いがあり、それぞれの指標が示す意味を正確に理解することが重要です。また、どこまでの数値を許容できるかは、商材ごとの利益率や販売戦略によって異なります。

たとえば、粗利率が70%ある高利益商材であれば、ACoSが30%でも十分に利益が残ります。一方で、粗利率が25%の低利益商材では、ACoSが20%を超えると利益がほとんど出なくなります。したがって、計算式の理解に加えて、自社商品の利益構造と照らし合わせた目標設計が不可欠です。

さらに、ROASとACoSはどちらか一方だけを見ても適切な判断はできません。たとえば、ROASが高くても広告費が過剰で利益が薄いケースや、ACoSが低くても売上げ自体が小さく、ビジネスインパクトが限定的なケースもあります。両指標を併用し、バランスをとりながらモニタリングすることが求められます。

Amazon広告の運用でROASを意識する重要性

Amazon広告では、ユーザーがすでに購買意欲を持っているタイミングで広告が表示されるため、クリック後の売上げへのつながりを精密に評価できる環境が整っています。これは、ROASをリアルタイムかつ正確に把握できるという意味で、大きなアドバンテージとなります。

加えて、AmazonはECプラットフォームであるため、広告から商品ページ、カート、購入完了までのプロセスが一貫して管理されているのが特徴です。外部サイトを経由する必要がないため、広告が生み出した売上げやユーザー行動を広告主が正確に把握しやすく、他のチャネルでは得られないレベルで広告の貢献度を可視化できます。

ここでは、Amazon広告においてROASの重要性が特に高い理由を、3つの視点から解説します。

広告コストと売上げの関係がダイレクトに把握できる

Amazon広告が他の媒体と比べて圧倒的に優れている点のひとつは、広告費と売上げが直線的につながっていることです。これは、Amazonが広告プラットフォームであると同時に、購買プラットフォームでもあるという構造によって実現されています。

ユーザーは広告をクリックし、そのまま商品ページに遷移して購入に至る。この一連のプロセスがすべてAmazon内で完結するため、広告がどれだけ売上げに貢献したかを広告主が即座に把握できるのです。

たとえば、Google広告やSNS広告では、広告効果を測定するために、その先のECサイトやランディングページとのコンバージョンデータ連携が必要です。しかし、この場合は設定ミスやCookie制限などにより、データが正しく取得できなかったり、広告と購買行動の因果関係が曖昧になったりするリスクがあります。それに対してAmazonでは、広告から売上げまでの行動が一つのプラットフォーム上に記録されており、ROASの算出精度が極めて高くなっています。

こうした高精度なデータ環境は、広告戦略の立案にも大きなメリットをもたらします。たとえば、売上げが伸びているにもかかわらずROASが悪化している場合は、過剰な広告投資が原因と仮定でき、広告予算を削減しても売上げに影響がないならばコストを抑えられるという判断が可能です。逆に、ROASが急上昇している広告グループがあれば、そこに追加予算を投入することで、利益の最大化を狙えます。

複数商品・キャンペーン間の最適化がしやすい

Amazon広告の運用において、ROASが優れた指標とされるもうひとつの理由は、複数の商品やキャンペーンを横断して比較・分析しやすい点にあります。特に、多数の製品を展開するブランドや、複数の広告タイプを併用している企業にとって、ROASはどの施策にどれだけ広告費をかけるべきかという判断の基準を提供します。

たとえば、あるブランドが10種類の商品を出品しており、それぞれにスポンサープロダクト広告やスポンサーブランド広告を展開している場合、キャンペーン数は数十件にのぼることもあります。このような状況で、「どの広告が成果を上げているか」「どの商品に予算を集中すべきか」といった判断を、感覚ではなくデータに基づいて行う際に、ROASは有効です。

ROASは売上げと広告費の比率で算出されるため、単なる売上額やクリック数では判断できない効率の優劣を明確に示します。月5万円の広告費で売上げ10万円の商品A(ROAS200%)と、同じく5万円で売上げ30万円の商品B(ROAS600%)を比較すれば、どちらに追加予算を投入すべきかは明白です。こうした判断を繰り返すことで広告運用の最適化が進み、全体のROAS向上にもつながります。

さらにROASは、キャンペーンタイプを問わず共通の指標として活用できるため、異なる広告形式の成果を横断的に評価することも可能です。スポンサープロダクト広告のROASとスポンサーブランド広告のROASを比較することで、「購買直結型の広告が成果を出しているのか」「認知拡大系の広告が成約に寄与しているのか」といった戦略の検証にも役立ちます。

Amazon内のSEOやブランド認知との相乗効果を追求できる

Amazon広告でROASを重視することは、単に目先の売上効率を追求するだけではありません。広告の成果が売上げにつながることで、Amazon内の検索順位やおすすめ表示といったSEOにも波及し、中長期的な売上拡大やブランド認知の向上にもつながります。これこそが、Amazon広告におけるROAS追求がもたらす二次的な価値です。

Amazonの検索アルゴリズムは、CTRやCVRに加え、売上実績やレビュー数といった総合的なパフォーマンスデータをもとに検索順位を決定します。つまり、広告経由で売上げが増加すれば、それに伴い商品ページの自然な露出機会も拡大し、広告終了後であっても自然流入の増加が期待できます。これは、広告が自己強化型のSEO装置として機能する好循環を生む構造です。

たとえば、スポンサープロダクト広告で積極的に露出を得た商品が、一定の販売数とレビューを獲得した場合、その商品が検索結果の上位に自然表示されるようになり、広告を使わずともクリックや購入が発生しやすくなります。つまり、ROAS改善を図る取り組みが、広告依存型の集客から、自走型の集客体制への移行を後押しするのです。

こうした副次効果があるからこそ、短期的に赤字が出る場面でも、ROASを意識した広告配信を続けることが重要です。特にAmazonに新規出店した企業や、出店から日が浅い企業の場合は、「売上実績が少ない → 検索上位に表示されない → 集客できない」という負のスパイラルに陥りやすいため、スポンサープロダクト広告を活用し、意図的に露出と売上げを作ることをおすすめします。

一般に、Web広告は費用として消化される印象を持たれがちですが、Amazon広告では将来の成長への投資として捉えるようにしましょう。

Amazon広告のROASを高める4つのポイント

Amazon広告の運用において、ROASは最も重要な評価指標のひとつです。しかし、単にROASを測るだけでは意味がありません。成果を最大化するには、ROASを継続的に改善し続けるための具体的な施策を講じていくことが不可欠です。

そのためには、闇雲に広告費を増やしたり入札単価を上げたりするのではなく、複数の観点から構造的に施策を設計していく必要があります。

以下では、Amazon広告のROASを高める4つのポイントをご紹介します。

ポイント①:商品ページの内容をリッチにする

どれほど優れたターゲティングや入札戦略を実行しても、最終的にユーザーが購入を判断するのは商品詳細ページです。つまり、広告はあくまで入口に過ぎず、購買の決め手となるのは商品の見せ方、訴求力、そして信頼感といったページ内容です。

ROASの構成要素を分解すると、次のような式でも示すことができます。

この式からも明らかなように、CVRはROASに大きな影響を与える要素です。

具体例を見てみましょう。広告により月間1000件のクリックを獲得したとしても、CVRが1%であれば購入数は10件にとどまります。しかし、同じクリック数でCVRを3%に引き上げられれば、購入数は30件、売上げも単純計算で3倍に拡大します。つまり、広告運用の外側にある商品ページの改善こそが、ROASを押し上げるレバレッジポイントとなるのです。

商品ページの最適化すべき要素は多岐にわたりますが、今回はAmazon公式サイトで推奨されている中から、特に重要なポイントを紹介します。

まず最も重視すべきは製品画像です。Amazonで検索した際、多くのユーザーが最初に目にするのがメイン画像であるため、高品質な画像を用意することが不可欠です。また、使用シーンや特徴などを説明するサブ画像も、上限である8枚まで設定することが推奨されます。

次に重要なのが商品タイトルです。単なるキーワードの羅列ではなく、用途や機能、差別化ポイントを盛り込みつつ、検索キーワードを意識した構成にすることが望まれます。

さらに、価格も購買判断に直結する要素です。多くのユーザーは価格を比較したうえで最安値を選ぶ傾向があるため、競合状況を踏まえた適正な価格設定が必要です。Amazonでは価格の自動調整機能も提供されているため、積極的に活用しましょう。

また、レビューの件数や評価もCVRに大きく影響します。新商品でレビューが少ない場合は、広告を通じて初期販売数を確保し、レビューの蓄積を促すことが重要です。これにより、広告効果が加速度的に高まるケースもあります。

このように、商品ページの品質を高めることは、ROASの向上にとどまらず、SEO対策やユーザーからの信頼獲得にも波及します。

ポイント②:キーワード選定をして、予算と入札を集中させる

スポンサープロダクト広告やスポンサーブランド広告では、表示対象となる検索語句をコントロールできるため、広告費を売上げに直結しやすいキーワードに集中させることが、ROAS改善に直結します。

では、どのようなキーワードが売上げに直結しやすいのでしょうか。まず挙げられるのは、ブランド指名ワードです。これは自社に対する購買意欲が極めて高いユーザーを集客できますが、検索数には限りがあります。

次に注目したいのは、カテゴリと条件を組み合わせたキーワードです。たとえば、「育毛剤」というカテゴリに「40代女性」という条件を加えることで、具体的なニーズを持つユーザーに広告を届けられます。ただし、条件を絞るほど検索ボリュームは減少する傾向があります。

もう一つは、ニーズ起点のキーワード選定です。育毛剤を検討するユーザーの顕在ニーズは「髪を増やしたい」ですが、このような一般的なニーズは競合も多く、入札単価が高くなりがちです。そこで、「副作用が心配」「敏感肌にも使えるものがよい」といった悩みを抱えるユーザーに対して、「育毛剤 敏感肌」「育毛剤 副作用なし」など、より具体的なニッチワードを狙うとよいでしょう。

特に予算が限られている企業では、人気の顕在ニーズ系キーワードに集中すると入札競争が激化し、コスト効率が悪化します。したがって、検索ボリュームが少なくても競合の少ないニッチキーワードに広告を配信することが推奨されます。

加えて、スポンサープロダクト広告やスポンサーブランド広告の検索語句レポートを活用することで、売上げやROASの高い検索クエリを特定し、それらを専用の広告グループに分けて運用するという手法も有効です。逆に、ROASが著しく低い語句については除外キーワードとして設定し、無駄な広告費の発生を防ぎましょう。

Amazon広告ではGoogleリスティング広告と同様に、マッチタイプを選択できます。運用初期は、購買意欲の高いキーワードを中心に絞り込み部分一致で配信し、検索語句の揺らぎに対応しながらCVRとROASの向上を目指しましょう。限られた予算を有効に活用することで、購入数の増加とともにアルゴリズム上の評価向上も期待できます。

一定のデータが蓄積された段階では、成果の高いキーワードは完全一致でCPCを抑えつつ、類似語を絞り込み一致で追加するなど、より戦略的な運用へと移行していきましょう。

ポイント③:広告タイプを組み合わせて成果の最大化をする

ROASを高めるうえで重要なのが、広告タイプごとの特性を理解し、それぞれを意図的に組み合わせるという視点です。

Amazon広告には複数の形式があり、それぞれが異なる役割と強みを持っています。これらを個別に運用するのではなく、一つのファネルとして構造的に活用することで、広告全体の効率性と成果を底上げすることが可能になります。

以下に各広告タイプの特徴をまとめました。

これらの特徴を踏まえたうえで、運用フェーズに応じて広告タイプを使い分けましょう。

一例をあげると、運用初期ではスポンサープロダクト広告を活用し、購買意欲の高いキーワードを中心に絞り込み部分一致で配信しながら、CVRやROASの高いキーワードを見極めます。

売上拡大フェーズに入ったら、スポンサープロダクト広告では完全一致を活用しつつ、スポンサーディスプレイ広告を用いて、商品ページを閲覧したユーザーへのリターゲティングを図ります。さらに予算に余裕があれば、スポンサーブランド広告への展開も視野に入れるとよいでしょう。

DSPについては、直接的なコンバージョン獲得ではなく、Amazon外でユーザーに接触し、その後の指名検索やスポンサープロダクト広告のCTR向上を促す目的で活用するのが効果的です。このため、DSPは単体で評価するのではなく、出稿後の指名検索数やスポンサープロダクト広告におけるROASの変化とあわせて分析することが推奨されます。

また、DSPは間接効果を狙う設計であるため、家電などの高単価商材との相性が良好です。対して低単価商材の場合は、スポンサープロダクト広告を通じた即時の成果獲得を狙う方が、ROASの向上につながりやすいでしょう。

ポイント④:在庫・価格・クーポンを広告入札と連動して管理する

ROASを高めるには、広告運用そのものに注目するだけでは不十分です。実際には、在庫状況・価格戦略・販促施策といった供給・販売条件と広告入札を適切に連動させることで、広告効率を大きく向上させることが可能です。

まず在庫管理の観点では、在庫が残り少ない商品や入荷未定の商品に広告を配信し続けると、売上機会の損失だけでなく、ROASの悪化を招くリスクがあります。

クリックされても購入に至らなければ広告費が無駄となり、CVRやROASは大きく低下します。このため、在庫と連動して広告配信を自動停止する仕組みや、入札額を調整するルールの設定が不可欠です。特に自動入札を活用している場合、在庫との連携を軽視すると運用効率が崩れる恐れがあります。一方、在庫が潤沢で販売強化のタイミングにある場合は、入札を積極的に強化し、広告表示機会を最大限に確保すべきでしょう。

この際、価格戦略とのバランスを見極めることが重要です。競合より価格優位性がある、あるいは相場より魅力的な価格であれば、広告によって注目を集め、短期間で売上げやレビューの獲得につながります。こうした取り組みは、商品のランク向上や検索アルゴリズムの評価改善にも貢献し、ROASの短期的な改善だけでなく、中長期の成果にもつながります。

さらに有効なのが、クーポンやタイムセールなどの販促施策との連動です。たとえば、10%オフクーポンを表示している商品に広告を集中配信することで、CTRとCVRがともに上昇し、結果としてROASの大幅な改善を見込めます。

こうした情報(在庫・価格・クーポン)は広告運用担当者だけで管理するのではなく、販売・在庫管理チームと連携した運用体制を構築することが重要です。

社内での情報共有がスムーズに行われていれば、「在庫が減ってきたので入札を抑えよう」「週末のタイムセールに合わせて広告を強化しよう」といった調整がリアルタイムで可能となり、ROAS改善のスピードと確度が大きく高まります。

Amazon広告のROASを向上させた具体事例を紹介

Amazon広告を活用してROASを大きく改善した企業の取り組みを3つ紹介します。いずれの事例にも共通するのは、ROAS改善が単なる偶然や一時的な施策ではなく、目的意識に基づいたPDCAの積み重ねで実現されているという点です。数字の裏にある思考や運用体制にもぜひ注目して読み進めてください。

具体例①:「どの商品が、いつ売れるか」を可視化そし、ROASを27%改善

(出典:Naturediet

Naturediet社は、イギリスで持続可能なドッグフードを製造・販売する企業です。リサイクル可能な紙容器を業界に先駆けて採用するなど、環境に配慮した取り組みと高品質な製品開発に注力しています。

Amazonでの売上拡大を目指すなかで、同社はROASの向上と広告運用にかかる人的リソースの最適化という課題を抱えていました。特に、広告施策と実際の販売動向との関連性が把握しづらく、時間帯や商品別の予算配分が感覚に頼ったものになりがちでした。

そこで同社は、Amazonが提供するラピッドリテール分析を活用し、売上げ・在庫・トラフィックといったデータを製品単位・時間単位で取得。それにより、どの時間帯にどの商品が売れやすいかを可視化し、広告予算や入札単価のリアルタイム最適化を可能にしました。また、広告運用自動化ツールを導入することで、キャンペーン運用の属人化も解消しました。

これらの取り組みにより、2023年第1四半期のROASは前四半期比で27%改善。従来は手動で行っていた広告最適化業務も大幅に効率化され、運用時間は約90%削減されました。データドリブンな広告運用により、Amazon内での売上成長と業務効率化の両立を実現しています。

具体例②フルファネル広告設計でROASが33%向上、新規顧客獲得率100%達成

(出典:Beekeeper’s Naturals

Beekeeper’s Naturalsは、ミツバチ由来の天然素材を活用したウェルネス製品を展開する、カナダ・トロント発のブランドです。人工的なサプリメントに代わる、自然で効果的な代替品の提供を目指しています。

健康志向の高まりとともにブランド認知は広がっていましたが、新たな顧客層へのリーチ拡大と、効率的な広告運用による売上最大化が課題となっていました。特に、ターゲットユーザーの見極めと広告費の最適配分が求められていたのです。

そこで同社は、Amazon Marketing Cloudの「AMC Audiences」機能を活用し、購買意欲や閲覧傾向に基づいたカスタムオーディエンスを構築。検索キーワードの傾向や行動パターンに応じてセグメントを分類し、ファネルごとに適した広告配信を実施しました。これにより、上位ファネルでは潜在層の掘り起こし、下位ファネルではコンバージョン促進を目的とした戦略的なアプローチが可能となりました。

30日間のキャンペーンにおいて、AMCオーディエンスを活用した施策は、他の広告手法と比較してROASを33%向上させました。さらに、上位ファネルにおけるキャンペーンでは新規顧客獲得率100%を達成し、ブランドの認知拡大と効率的な販売促進の両立に成功しています。

具体例③「在庫×割引×広告」の連動設計で通常比1,220%の売上拡大とROAS363%向上

(出典:Mattel

BarbieやHot Wheels、Fisher-Priceなどのブランドを展開するMattelは、世界的に知られる玩具メーカーです。オーストラリア市場では、Amazonを通じた販売強化に積極的に取り組んでいます。

従来の広告運用は、断続的なキャンペーンが中心であり、プライムデーのような大型イベントに向けた計画的な運用や、予算配分の最適化が課題でした。また、競合他社の広告出稿が強化されるなか、自社の限られた予算内で成果を最大化する必要がありました。

こうした課題を踏まえ、Mattelは2022年に広告戦略を常時運用型へと転換。特にプライムデーに向けては、過去のパフォーマンスデータをもとに高ROASが見込めるキャンペーンに重点投資を行い、通常の5倍に増額した予算を柔軟に運用しました。

キャンペーン期間中は2時間ごとに在庫状況や広告効果をモニタリングし、リアルタイムで調整を実施。また、広告対象を「在庫が潤沢で割引対象の商品」に限定することで、コンバージョン率の最大化を図りました。

その結果、プライムデー期間中のMattelの広告経由売上は通常比で1,220%増、ROASは過去のベンチマーク比で363%向上を記録。全体のプライムデー売上げも前年比で500%増加しました。イベント後も成長は持続し、オーストラリア市場における売上げは150%増加するなど、継続的な成果を上げています。

まとめ

Amazon広告におけるROASは、単なる広告効率ではなく、商品力、ページ設計、予算配分の最適化度を反映する経営指標です。ROASを軸に広告運用を見直すことで、限られた広告費でも利益を伴う売上げの継続的な成長が可能になります。

特にAmazonでは、ROASの改善がレビュー獲得や自然検索順位の向上につながり、広告を超えた販売資産の構築にもつながります。ROASを高める特効薬はありませんが、CTRやCVRを意識した商品ページの改善、キーワードの精査、不要な出稿の抑制など、地道な施策の積み重ねが長期的な優位性を生み出します。

成果が明確に可視化されるからこそ、ROASは磨く価値のある指標です。本記事をきっかけに、Amazon広告運用においてROASを軸とした戦略設計を検討してみてはいかがでしょうか。

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