コンテンツは“役割”が大事。抜けがちな”自分ゴト化”と”ストーリー”とは?
- 高谷みう
今や様々な業種においてコンテンツマーケティングは重要なWebマーケティング施策となっている。コンテンツマーケティング・SEO分析ツールの「MIERUCA(以後:ミエルカ)」を提供している株式会社Faber Companyは、SEOツール業界を牽引する企業の一つだ。2015年3月にリリースされた同サービスは、5年で1,000アカウントの導入を目指していたが、わずか3年超で達成。さらに導入企業数は増えており「Web担当者の一番のお気に入り」を目指している。
今回は、同サービスのマーケティングや広報など対外コミュニケーション全般をマネジメントしている月岡克博氏に、今後のサービス成長のために描いているマーケティング戦略とコンテンツマーケティングで陥りがちな考え方についてお話を伺った。
オフラインとオンラインでリード獲得を最適化
サービスをリリースしてからこれまであらゆるマーケティング施策を行なってきたミエルカ。これまでのマーケティング施策だと、リード獲得数が最も多いのは展示会、リードの質が高いのはWeb経由、特に自然検索流入だという。
月岡氏:
マーケティング施策の中で最もリード数を獲得できるチャネルはオフラインの展示会で、多い時だと1イベントで1万リードくらい獲得します。何社か合同で良い場所にブース出展することでリード獲得単価は低く抑えられますが、来場者の属性や課題感はバラバラ。直近の商談につながる確率はやはり下がってしまいます。一番商談に近いのは当然オンラインからの問い合わせで、月に数百件ほど。問い合わせをしてくださるほとんどの方がコンテンツマーケティングやSEOに課題を持っている顕在層にあたります。
オンライン施策として、導入事例などのオウンドコンテンツはもちろん、Web広告、ソーシャルメディア広告などをやっています。「ミエルカ」の指名検索からの問い合わせも多く、「ミエルカの評判を周りから聞いてから問い合わせした」という声もよくいただきます。「SEOやコンテンツマーケティングならミエルカ」と想起されているのであれば嬉しいですね。
指名検索を増やしたのは、“面”を押さえる施策とカスタマーサクセスの伴走支援
指名検索での問合せを獲得するためにどのような施策を行ってきたのか。指名検索が増えた理由として、“面”を押さえる施策とカスタマーサクセスの2つだと振り返る。
月岡氏:
指名検索を増やそうと思って実行したマーケティング施策は特にありません。指名検索が増えた理由として、まずはオンラインとオフライン、面を押さえる施策を徹底、継続してきたことです。IT系のベンチャーになるとオンラインに偏った施策に傾倒しがちですが、オフラインも組み合わせないと潜在層にはリーチできません。
また、ミエルカに対する「口コミ」が増えた影響もあるなと。口コミが増えた要因は以下の2つだと考えています。
・プロダクトやそれに付随するサービスが良いこと
・カスタマーサクセスの伴走支援
プロダクトが良いことは大前提として、弊社はカスタマーサクセスによる施策伴走支援も一体でサービス提供しています。ミエルカのようなマーケティングツールの場合、ツールを使うことでタスクが完了しないことがほとんどです。出てきたアウトプットを活用して、施策に活かさない限り何の成果も出ないという性質のもの。だから施策実行をお手伝いするカスタマーサクセスの役割が重要です。いかにミエルカをお客様の業務活動に組み込んでいただくか。ユーザー会などのイベントも含めて、よりサポートを充実させることに取り組んでおり、その点で安心できるというお声を数多くいただいています。
今後は”認知獲得”以前の”啓蒙活動”をしていく
サービスリリースから垂直立ち上げで一定の市場をつくりあげてきたように見えるミエルカ。さらなるアカウント数拡大に向け、サービスの”認知獲得”ではなく、市場を拡げるためにSEOやコンテンツマーケティングの必要性を”啓蒙”していかなければならないという。
月岡氏:
これまでは、「SEOやコンテンツマーケティングをやりたい」というニーズが顕在化しているお客様に対しての施策がメインでした。今後は「SEOやコンテンツマーケティングの必要性がよく分からない」とか、自社サイトの課題解決手段としてSEOやコンテンツ強化を想起していない潜在層にもっとリーチしていく必要があります。このような、対象となるお客様のニーズの変化に伴い、我々のコミュニケーションを変えていく必要があります。
顕在化しているお客様にはミエルカの機能説明や、他社の成功事例を紹介する事が多かったのですが、今後は「なぜSEOやコンテンツマーケティングをやるべきか?」「SEOやコンテンツが自社サイト運営における重要施策だ」ということをより伝えていかなければならないですね。
全てのコンテンツからコンバージョンしない。意識すべき「ストーリー」と「役割」とは
これからコンテンツマーケティングに取り組む企業や、成果を感じられていない企業に対して月岡氏からアドバイスをいただいた。多くの担当者が悩みやすい企画段階での考え方や、数字の捉え方について、すべての記事にコンバージョンを求めるのではなく、コンテンツごとに「役割」が果たされているか、という点を見る事が大事だという。
月岡氏:
コンテンツを企画するときは、コンテンツごとにどのような役割を持たせるのかを明確にすることが大事です。役割というのは、主に「集客」「自分ゴト化」「コンバージョン」の3つだと考えています。
例えば、ランニングシューズメーカーがシューズを売りたいとします。まずは「集客」のために、ランニングフォームについて悩みを持ったユーザーに「ランニングフォーム 改善」というキーワードで検索したことを想定したコンテンツを作成します。ランディングしたユーザーは、ランニングフォームの悩みを解決したいだけです。その瞬間にランニングシューズを欲しいとは思っていません(笑)なので、この時点でコンバージョンしなくても、つまり直帰したとして問題ありません。
その次に、ランニングフォームに対する悩みとシューズの購入を橋渡しする(「自分ゴト化」)コンテンツが必要になります。例えば、ランニングフォームに合わせたシューズの選び方があると仮定した場合に、「【間違ってない?】ランニングフォームごとに最適なシューズの選び方」のようなコンテンツを適切にレコメンドすることで、「集客」用のランニングフォームの記事から回遊してもらえる可能性が高くなります。
このようなユーザーの気持ちを理解した「ストーリー」がなかったり、間に位置する「自分ゴト化」につながるコンテンツがなくコンバージョンコンテンツと連係が取れていないサイトはよく見られます。
検索クエリのうち80%以上は悩みや疑問などの情報収集型のクエリと言われています。残りの20%弱が商品サービスの購入や成約に近い取引型のクエリです。「集客」の役割を担う記事は悩みや疑問を解決するコンテンツにするのが良い。ユーザーは悩みが解決したら満足なので、そのコンテンツを見たら離脱する。つまり直帰率が90%以上になることもあります。ただそれでユーザーが満足しているなら問題ありません。直帰率90%以上でも検索上位をキープするようなコンテンツもあります。
何度か同じような悩みについて調べているうちに、同じサイトを見ていることに気がつき、「あ、このコンテンツを作ってるのは●●って会社なんだ」と商品やサービス、会社の認知に繋がっていきます。その後、いざ何かほしいなと思ったときに第一想起されるサイトやサービスになっていることが重要で、そこから指名検索されるようになれば成果に繋がりますよね。
また最近は、サイテーション(評価・評判)もSEO上にプラスに影響を与えていると考えています。ミエルカもリリース当時から様々な施策を展開していますが、去年1年間で指名検索数は約3倍になりました。それに応じてWeb上の問合せも増加しています。オンライン施策はSEOだけでなく、広告やプレスリリース、外部メディア掲載なども密接に関連しています。オフラインでも展示会やセミナーイベントなどでの露出も欠かせません。あらゆる施策が影響しているのでマーケターは守備範囲を広くする必要があって大変ですよね。ちなみに、ミエルカだと定期的に開催されるユーザー会が、色々なユーザーが得意領域を披露しあって「技の交換」が生まれているのはいいなと思っています。
コンテンツマーケティングはもはやあらゆる企業において基本的かつ重要な施策であり、長期的に成果を生み出す施策だからこそ、闇雲に実行するのではなく戦略的に行なった方が良いだろう。また、Googleのアップデートや多くのコンテンツの登場により効果変動が激しいSEOだが、自社コンテンツに限らず、ソーシャルメディアやメディア露出、オフラインでの活動などあらゆる施策を含め、広い視野を持って「第一想起」を目的としたマーケティングを意識することも多くの担当者にとって参考になるのではないだろうか。
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月岡克博(つきおか かつひろ)氏 プロフィール
株式会社Faber Company
エグゼクティブ・マーケティング・ディレクター
1982年、神奈川県生まれ。SFA、CRMベンダーを経て、2014年にFaber Company参画。 SEOやコンテンツマーケティングの営業・コンサルに従事した後に、マーケティングを担うIMC部門を新設。SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を中心に自社マーケティング全般と広報&PRを担当。
- この記事を書いたライター
高谷みう