
DSPとSSPとは? 広告プラットフォームの基本、メリット・デメリット、選定時のポイントまでわかりやすく解説

- 戸栗 頌平
広告主が利用するシステム「DSP(デマンドサイドプラットフォーム)」と、媒体社が利用するシステム「SSP(サプライサイドプラットフォーム)」は、プログラマティック広告の世界を支える主要なテクノロジーです。
これらのテクノロジーは2000年代初頭、Web広告が世の中で広く利用されるようになった時期に出現し、この20年あまりで大きく進化を遂げてきました。
最近ではWebサイトやモバイルアプリ内へのバナー広告や動画広告配信だけでなく、Amazon Prime VideoなどのコネクテッドTVや、音楽ストリーミングサービスへの音声広告なども配信できるようになりました。そのほか、AIや機械学習といった最新テクノロジーを活用しながら、ますます合理化が進んでいます。
今回はその「DSP」と「SSP」の基礎知識にはじまり、利用する際のメリット・デメリット、システム選定時に着目すべきポイントなどについて解説します。終盤では広告担当者にとって気になる業界の最新動向もご紹介しますので、どうぞ最後までお読みください。
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは?
はじめに、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の基礎知識についてご紹介します。
DSPの定義・特徴・目的
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは、広告主が利用するためのシステムです。
広告主や広告運用を担う広告代理店は、DSPを利用することでさまざまな媒体の広告枠在庫をリアルタイム入札(RTB)によって自動購入・管理できます。また、ディスプレイ広告・動画広告・モバイル広告など、複数のフォーマットの広告を配信可能。リターゲティングやオーディエンスターゲティングに基づく配信設定や、配信状況の分析レポートといった機能も利用できます。
DSPを利用することで、広告主側はメディア買付を自動化でき、大量の在庫に効率的にアクセスできます。なおかつ、適切なターゲットに向けて合理的に広告を配信でき、予算消化を最適化できるため、広告配信の効率化とROI向上を図れるでしょう。
このようなシステムはWeb広告市場の拡大に伴って、2000年代初頭に登場しました。Web広告を出稿したい企業が増加するとともに2000年代後半に普及が拡大し、2010年代に入るとシステムの洗練化も進展。登場した初期にはディスプレイ広告にだけ対応していましたが、徐々に動画広告、モバイル広告、ネイティブ広告など取り扱えるフォーマットも増えていきました。
また、DMP(データマネジメントプラットフォーム)と連携させ、企業が保有するデータを広告配信のターゲティングに活用できるようにもなっていきました。
2010年代半ばからは、SSP(サプライサイドプラットフォーム、広告媒体側が利用するシステム。詳細後述)やアドエクスチェンジといったプラットフォームが登場するなどして、DSPを取り巻く環境は複雑化が進んでいきました。現在では、機械学習やAIの活用や、「広告配信の透明性」「ブランドセーフティ」「アドフラウド防止」といった課題とも対峙しながら、現在に至るまで進化を続けているのです。
DSPの仕組み
DSPでは、リアルタイム入札(RTB)の技術が活用されています。リアルタイム入札とは、広告主が広告枠の購入を求めてリアルタイムオークションを実施することです。
ここで、リアルタイムオークションの流れについてわかりやすく図も交えながら見てみましょう。
ユーザーがWebページを閲覧するたびに、SSP(サプライサイドプラットフォーム)が広告枠の入札リクエストを発行します。すると、DSPでは広告主が行ったターゲット設定に基づき、数ミリ秒以内に入札価格を決定して提示。このとき、DSPは高度なアルゴリズムとデータ分析を駆使したうえで、適切な広告枠を選択します。
入札はアドエクスチェンジ上で行われます。アドエクスチェンジとは、DSPとSSPを橋渡しする仕組みです。SSPとDSPがリアルタイムで通信することで、入札・配信するまでの流れを効率的に仲介してくれるのです。SSPは、広告主による最も高い入札価格を選択した上で、ユーザーに向けて広告を配信します。
このような一連の流れにより、取引成立から広告配信まではわずか数十ミリ秒で完了します。

参考:What is a demand-side platform? A complete guide | Amazon Ads
代表的なDSPの例
よく利用されている代表的なDSPの例として、以下が挙げられるでしょう。これらのプラットフォームは膨大な広告在庫と、さまざまなターゲティング機能を提供しており、広告主の多様なニーズに応えています。
| 日本国内 | |
| ・マイクロアド「UNIVERSE Ads」・サイバーエージェント「Logicad」・フリークアウト「Red」 | |
| 海外 | |
| ・Google「Display&Video 360」・Amazon「Amazon DSP」・Adobe「Adobe Advertising Cloud」・Trade Desk「The Trade Desk」・MediaMath「MediaMath」・Criteo「Criteo」 |
SSP(サプライサイドプラットフォーム)とは?
前章で、媒体社側が利用するためのシステム・SSP(サプライサイドプラットフォーム)について少し触れました。ここからは、そのSSPについて詳しく解説します。
SSPの定義・特徴・目的
SSPは媒体社側が利用するためのプラットフォームで、媒体社が運営するWebサイトやモバイルアプリ上の広告枠を自動的に販売できるテクノロジーです。
SSPは複数のアドエクスチェンジやDSP、アドネットワークと接続し、広告枠在庫を数多くの買い手に公開する役割を果たします。
主な特徴として、広告主からの入札を受け付けて、最高入札額で在庫を販売できる点が挙げられます。つまり、媒体社はSSPを利用することで広告枠在庫を最も高い価格で売却できるよう最適化でき、収益の最大化を図れるのです。
また、売上分析レポートや在庫管理機能も提供し、広告配置の制御(カテゴリー分類や、最低落札価格設定)を通じて、媒体社が収益とユーザー体験を両立できるよう支援しています。
SSPの歴史のはじまりは、DSPが登場したのと同時期である2000年代に遡ります。2000年代終盤にRTB(リアルタイム入札)の技術が導入されたことで、SSPは媒体社にとって収益化を大きく後押しする存在となっていきました。その後は「プライベートマーケットプレイス(PMP)」という、厳選された広告主に対してのみ高品質の広告枠取引を提供する場も登場しました。
SSP・DMPを介した合理的な広告取引の仕組みは、時代を経るごとに洗練を重ねてきたことがうかがえます。
SSPの仕組み
SSPもDSPと同様に、RTB(リアルタイム入札)の技術を用いている点が大きなポイントです。
前章で紹介した通り、ユーザーがWebページを読み込むと、SSPが入札リクエストをDSPに向けて送信し、DSPが価格提示を行います。SSPは提示された入札の中から最高額を選び、その広告をサイトに表示させるという流れです。
また、SSPはヘッダービディングにも対応しています。ヘッダービディングでは、ユーザーによるページ表示前に複数のDSPに同時に入札を依頼可能です。そのため、広告枠をめぐる競争がさらに促進され、広告単価を向上させられる点が特徴だといえます。
このように、SSPは数多くの広告枠需要を取り込みつつ、媒体社側の広告収益を最大化する役割を果たす存在です。
代表的なSSPの例
代表的なSSPの例をいくつかご紹介します。
国内で利用されているSSPは、電子書籍やアプリなど特定媒体に強いサービスも多いため、利用前に案件傾向を確認するとよいでしょう。
また、海外でよく利用されているSSPは、グローバルな買い手ネットワークを持ち、広告フォーマットやチャネルを幅広くサポートしている点が特徴です。
| 日本国内 |
| ・マイクロアド「COMPASS」・fluct「fluct SSP」・Geniee「GENIEE SSP」・Supership「Ad Generation」・GMO NIKKO「GMOSSP」 |
| 海外 |
| ・「Google Ad Manager」・「Amazon Publisher Services」・「Magnite」・「PubMatic」・「Index Exchange」・「OpenX」・「Sovrn」 |
DSPとSSPの違い
ここで、DSPとSSPの違いをみていきましょう。
| DSP | SSP | |
| 広告主(広告枠を買って出稿したい側) | 誰のためのツールか | 媒体社(広告枠を売って広告を掲載したい側) |
| 広告枠の買い付けを効率化・最適化する | 目的 | 媒体の広告収益を効率化・最適化する |
「株の取引」に置き換えて考えてみましょう。「広告主 = 株を買いたい投資家」「媒体社 = 株を売りたい企業」と、それぞれたとえて説明します。
すると、「DSP=投資家側の証券会社」といった位置づけとなり、「この株を、これくらいの値段で買いたい」と発注する役割を持つ存在となります。一方、「SSP = 企業側の証券会社」という位置づけです。「うちの株を、一番高く買ってくれる人に売りたい」と受注する役割を担うものだと想定できます。
ここで再び、「広告枠」の話に戻します。
ユーザーがWebサイトを訪れた瞬間、SSPは「広告枠が空きましたよ」と複数のDSPに宛てて知らせてくれるのです。それに対し、各DSPは「そのユーザーになら、うちの広告をこの値段で表示したい」と一斉に入札を実施します。
SSPは、最高額を提示したDSPを選び、その広告がサイトに表示されるという仕組み。この一連のやり取りを瞬時に動かす要の技術が「RTB(リアルタイム入札)」です。
DSP/SSP導入のメリット・デメリット
ここからは、広告主がDSPを利用するメリット・デメリット、媒体社がSSPを利用するメリット・デメリットについてご紹介します。
DSPを利用するメリット・デメリット
広告主はDSPを導入することで、膨大な広告在庫に自動的にアクセス可能です。また、ターゲティング精度や入札最適化によって、配信効率が大幅に向上すると期待できます。広告運用の自動化で時間を節約でき、リアルタイムの効果分析も可能なため、ROIの改善も見込めるでしょう。
一方で、プログラマティック広告はシステムが高度で専門的な知識も必要となります。アドフラウド問題やビューアビリティ問題、プライバシー規制(GDPR/CCPAなど)への対応コストが発生する点には注意が必要です。また、プラットフォーム手数料や入札に関する不透明さなども課題となりやすいでしょう。
SSPを利用するメリット・デメリット
媒体社はSSPを利用することで、広告枠の買い付けを求める数多くの広告主に向けて在庫を公開できます。そのため、広告枠の埋まり率が向上し、複数のDSPによる競争によって収益増加が期待できるでしょう。さらに、最低落札価格や広告枠のカテゴリ制御により、在庫価値を維持・向上させることにもつながります。
しかしその反面、導入には技術的な設定や手数料負担も伴います。また、特定のSSPに依存しすぎると買い手が偏るリスクも想定されるでしょう。加えて、広告枠販売をめぐる競合環境が変化した場合には在庫が思うように売れなくなる可能性も念頭に置く必要があります。
DSP/SSP選定時のポイント
ここからは、DSPおよびSSPを選定する際のポイントについて解説します。
広告主(DSP側)の視点
広告主がDSPを選定する際には、以下4つの観点で確認しましょう。(参考:「Choosing the Right Demand-Side Platform (DSP)」 priceweber)
| 在庫の質・量 | ・DSPが提携している媒体の幅広さ・利用できる取引の質(直接取引や、プレミアムアクセスの利用可否など)・不正トラフィック対策の有無 |
| 配信フォーマットの多様性 | ・動画広告、モバイル広告、コネクテッドTV広告などさまざまな広告フォーマットで出稿できるかどうかを確認 |
| ターゲティング機能 | ・ファーストパーティデータやサードパーティデータの活用可否・詳細なセグメント設定ができるかどうか・Cookieレス時代に向けて、独自IDやコンテクスチュアルターゲティングなど先進的な機能を備えているかどうか |
| 透明性 | ・料金体系(手数料設定などに透明性があるか)・システム導入後のサポート体制・ブランドセーフティやアドフラウド対策の有無 |
媒体社(SSP側)の視点
媒体社がSSPを選定する際には、以下のような観点が重要となります。(参考:「The Best SSPs for Publishers in 2025」playwire)
| システム連携の可否 | ・既存の広告配信プラットフォーム(一例:Google Ad Managerなど)との連携可否 |
| 対応フォーマット | ・Webサイト・モバイルアプリ双方で、動画広告、ネイティブ広告などの多様な広告フォーマットに対応できるかどうか |
| 需要元の豊富さ | ・複数の主要DSPやアドエクスチェンジとの接続数・質を評価。より多くのプレミアム広告主にリーチできるSSPは高い収益性が見込める・プライベートマーケットプレイス(PMP)機能が充実しているかどうか |
| 収益最適化機能 | ・リアルタイム入札性能、最低落札価格設定、ヘッダービディング対応など、収益を最大化する機能の有無 |
| 広告品質管理 | ・アダルト広告排除、ユーザー体験向上といった機能の有無 |
| レポーティングおよびサポート | ・接続状況や収益データのダッシュボード、技術サポート体制の充実度、導入支援などの有無 |
DSP/SSPの最新動向・今後の展望
ここからは、DSPおよびSSPの最新動向や、今後の展望についてご紹介します。
市場拡大と統合動向
近年、プログラマティック広告市場は急速に拡大し、DSP市場規模は2024年の約178億USドルから2033年には1121億USドルに達すると予測されています。業界シェアではDSPが全体の約33%を占め、広告主・代理店のプログラマティック広告予算の中心となっているのです。
また、Google、Amazon、Meta、The Trade Deskなどの大手企業が市場を牽引しており、買収や連携によるプラットフォーム統合も進んでいる状況にあります。
加えて、AIや機械学習の導入が進み、広告配信の自動化・最適化機能はさらに強化されつつある状況です。なお、AI・機械学習に関する最新動向について詳しくは後述します。
DSP・SSPの融合と統合型プラットフォーム
昨今のWeb広告業界では、DSPとSSPの機能の融合にも注目が集まっています。
たとえば最近では、Nexxen(旧Amoebee)のような企業がDSPとSSPを統合した新たなプラットフォームを打ち出し、データを一元化しながらAIも駆使した広告運用を提案しているのです。
DSPがリーチやフリークエンシー(広告を表示する頻度)を管理する機能を持ち、SSPが自動入札に関するノウハウを提供するなど、両者の強みを組み合わせる動きが進んでいるといえます。
今後は、テクノロジー基盤の連携が価値提供の鍵となり、プラットフォーム統合が一層進むとも考えられるでしょう。
プライバシー規制とファーストパーティデータ
EUのGDPRや米国のCCPAなど、プライバシー規制の強化によってサードパーティCookieの利用が制限され、DSP・SSPはクッキーレス時代への対応を迫られています。
そこで今後は、ファーストパーティデータの活用や、新たに開発が進む識別子(Privacy Sandbox、UNIQUE IDsなど)を活用する時代を迎えると予測できるでしょう。
つまり、データドリブン広告の手法は見直されつつあり、今後はユーザー許諾に基づくデータ収集と精緻なターゲティング技術がより重要になるといえそうです。
AI・自動化の深化
Web広告配信の領域ではAI・機械学習の活用が一層進み、RTB入札や予算配分、クリエイティブ最適化などにおいてAIの導入が進んでいる状況です。
たとえば、DSPでは配信データに基づく自動入札調整や、高度なオーディエンスセグメント作成が可能になり、効率的な広告運用支援がさらに強化されています。加えて、SSP側でも需給予測や在庫最適化にAIを活用する動きが加速。このような最新技術の導入により、広告主・媒体社双方で運用効率と成果がさらに向上すると期待されています。
まとめ
本記事ではDSPとSSPの違いについて基礎からわかりやすく解説し、広告主・媒体社それぞれにとっての利用メリットや、プラットフォーム選定時に注視すべきポイント、アドテック市場における最新動向についてもご紹介しました。
アドテクノロジーの領域は、インターネットが人々の生活に広く浸透するに連れて登場し、この20年あまりで大きく進化を遂げてきたことが伺えます。
今後は、ユーザーから許諾を得たデータや識別子を活用しながら、ユーザー体験を損なわない広告を効率的に届けるといった点が、一つの焦点となっていくと推測されます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。本記事がアドテック領域の最新動向キャッチアップのために役立ちましたら幸いです。
豪州ビジネス大学院国際ビジネス修士課程卒業。複数企業と起業を経てBtoB専業マーケティング代理店へ。その後、外資SaaSのユニコーン企業の日本法人立上げを行い、法人営業開始後マーケティング責任者として創業期を牽引。現在、日本のBtoBマーケティングの支援事業を行う株式会社LEAPTにて代表取締役。また、株式会社Shirofuneの外部マーケティング責任者を兼任。





