
メディアプランニングを行う際の注意点やコツ、事例についても解説

- 戸栗 頌平
広告予算が限られるなかで、どの媒体に出稿すべきか、何を基準に判断すべきか、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。ザ・CMOサーベイによれば、61%の企業が、利用するチャネルの数が増えていると回答しています。
SEO、SNS、広告、メール、展示会、ウェビナー、さらに広告1つとってもオフライン広告とオンライン広告、より細かく見ればリスティング広告、屋外広告、交通広告、エレベーター広告とチャネルの数は増え続けています。顧客接点の数が増え続ける現代では、この選択肢の多さ自体が意思決定を複雑にしているのです。
こうした状況下で注目されているのが、媒体の特性や目的に応じて最適な配分・設計を行う「メディアプランニング」です。事業ゴールから逆算して全体設計を行うことで、費用対効果や施策の再現性が大きく変わってきます。
本記事では、そもそもメディアプランニングとは何かという基本から、オンライン・オフラインの代表的なメディアの特徴、成果を最大化する設計のコツ、注意点、そして実際の成功事例までを網羅的に解説します。
メディアプランニングとは
メディアプランニングとは、適切なメディアを活用してマーケティング課題を解決するための戦略策定のことです。従来は新聞やテレビCMといったペイドメディアが主流でしたが、テクノロジーの進化や顧客行動の多様化により、オウンドメディアやアーンドメディアといった多彩なチャネルが登場しました。
顧客と製品・サービスとの接点が増える中、売上拡大という最終目標に向けて、どのメディアでどのようなコミュニケーションを取るのかという設計が欠かせません。
なお、ペイドメディア領域において、メディアプランニングは広告コミュニケーションの中核を担っています。具体的には、媒体選定、出稿目的、指標設定、予算配分などを体系的に設計し、限られたリソースを最大限に活かすプロセスです。行き当たりばったりの施策ではなく、ファネル全体を見据えた戦略的な運用こそが、最終的な成果を左右します。
オンライン・オフラインでのメディアの例
適切なメディアプランニングを実施するためには、各メディアの理解が欠かせません。ここでは、オンライン・オフラインメディアの主な例を整理します。
オンラインのメディア
オンラインメディアとは、インターネットを通じてユーザーと接点を持つメディアの総称です。Webサイト、リスティング広告、SNS、メール、動画配信など、多様なチャネルが存在し、ターゲットの興味・関心に応じて柔軟なアプローチが可能です。
オンラインメディアの最大の特長は、ユーザー行動を数値として把握できる点にあります。クリック率、コンバージョン数、流入チャネル、アクセス数などが可視化されることで、「流入は多いのになぜ購入につながらないのか」「なぜクリックされないのか」といった課題に対して、数値を手がかりにユーザーインサイトを導き出し、迅速な改善につなげることが求められます。
ここからは、代表的な4種類のオンラインメディアとその特徴について詳しく見ていきます。

オウンドメディア(Owned Media)
オウンドメディアとは、企業や個人が自ら所有・管理し、情報発信を行うメディアのことです。代表的な例としては、Webサイト、ブログ、メールマガジン、モバイルアプリ、ECサイトなどが挙げられます。これらはすべて自社の方針に基づき、自由にコンテンツを設計・発信できる点が特徴です。

BtoB企業の場合、製品紹介ページ、導入事例、ホワイトペーパー、業界コラムなどを通じて、自社の専門性や提供価値を潜在顧客に伝えることが可能です。また、SEO施策やコンテンツマーケティングと連動させることで、リード獲得やLTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。
オウンドメディアは、広告と異なり継続的な情報発信によって資産として蓄積されていくため、中長期的なマーケティング戦略の基盤としても有効です。
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディアとは、広告費を支払って活用する第三者のメディアを指します。リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告、動画広告、純広告などが代表的です。

即効性が高く、短期間でリーチの拡大やトラフィックの増加を狙える点が強みです。ただし、クリック単価や競合状況により費用対効果は大きく変動するため、適切な予算設計と緻密な運用が欠かせません。また、広告を出稿し続ける限り費用が発生するため、依存しすぎるとリスクを伴います。
たとえば、十分な広告費を投下できなくなれば配信量が減り、売上げも低下し、結果としてさらに予算が縮小するといった悪循環に陥る恐れがあります。新製品の投入時や顧客基盤が未成熟な段階では、ペイドメディアによる認知獲得が有効です。しかし、同時にオウンドメディアの構築・強化によって顧客接点を自社で保有する基盤づくりも進めましょう。
アーンドメディア(Earned Media)
アーンドメディアとは、顧客やメディアといった第三者が自発的に自社について言及するメディアを指します。具体例として、SNSでのシェアや口コミ、レビューサイト、ユーザーによるブログ記事、プレスリリースを通じたメディア掲載、インフルエンサーの自主的な紹介などが挙げられます。

(出典:ITトレンド)
最大の特長は、企業が広告費を支払っていないため、第三者の発信として信頼性が高い点にあります。たとえば、ECサイトでの購入前にレビューを確認したり、SNSで目にした第三者の投稿が購入動機になったりするケースは少なくありません。このように、第三者の声は購買意欲に強く影響を与えます。
一方で、企業が直接コントロールできない領域であるため、好意的な評価を得るには、継続的な製品・サービス改善や誠実な顧客対応が欠かせません。さらに、否定的な意見や炎上リスクに備えた危機管理体制も並行して整える必要があります。
シェアードメディア(Shared Media)
シェアードメディアとは、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTokなど、ユーザーが投稿をシェアできるメディアを指します。アーンドメディアの一部と捉えられますが、レビューサイトや個人ブログのように拡散性が限定的なものとは性質が異なるため、区別して理解することが重要です。

(出典:X)
最大の特徴は、ユーザー参加型の企画やコンテンツを通じて、共感や巻き込みを促進できる点にあります。自社サービスの使い方動画、導入事例の共有、満足度の高い体験をもとにした投稿などがその例です。こうした仕組みにより、ブランドが自然に拡散され、広告では届きにくい層にも波及効果を及ぼすことが期待できます。
オフラインのメディア
オフラインメディアとは、インターネットを介さず、紙面や空間、物理的な場を通じて情報を届ける広告媒体を指します。デジタル化が進む現在でも、地域特化の認知訴求、ブランドの信頼性向上、大規模イベントでの体験価値創出など、さまざまな場面で重要な役割を果たしています。
以下では、代表的なオフラインメディアの種類と特徴を紹介します。
| メディアの種類 | 定義・特徴 | 具体例 |
| マスメディア | テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、不特定多数に一斉に情報を届ける伝統的な広告媒体。高いリーチ力と社会的信頼性を持つ。 | テレビCM、新聞広告、業界専門誌への出稿 |
| 交通広告系メディア | 移動時間に接触する広告。視認性と反復接触による記憶定着が特徴。ビジネス層への訴求に有効。 | 電車内中吊り、駅構内ポスター、デジタルサイネージ、タクシー広告 |
| 屋外広告(OOH)メディア | 街頭や公共空間に設置される広告。視覚的インパクトと強制的な視認性が強み。 | 大型ビルボード、屋上広告、デジタルビジョン、ネオンサイン |
| 印刷物・販促物系メディア | ターゲットの手元に直接届ける広告媒体。視覚的整理と保存性が高い。 | チラシ、パンフレット、ダイレクトメール、カタログ、POP |
| イベント・体験型メディア | 展示会やセミナーを通じて体験や交流を提供するメディア。信頼醸成や高品質リード獲得に有効。 | 展示会・見本市、セミナー・カンファレンス、サンプリング、スポンサー広告 |
マスメディア
マスメディアとは、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、不特定多数に向けて情報を一斉に届けられる伝統的な広告媒体です。高いリーチ力と社会的信頼性を備えており、企業や製品のブランディングや知名度向上に大きく寄与します。
テレビCMは全国規模で即時認知を獲得でき、新聞や業界誌への出稿は信頼性を裏付ける手段として機能します。BtoB企業にとっては、日経新聞や専門業界紙などを活用することで、決裁権を持つ層に直接訴求でき、商談のきっかけづくりにも有効です。一方で、コストが高く効果測定も難しいため、目的やターゲットに応じた慎重なメディア選定が欠かせません。
交通広告系メディア
交通広告とは、通勤・通学などの移動時間に接触することを想定した広告を指します。電車内の中吊り広告やドア横ステッカー、デジタルサイネージ、駅構内ポスター、バスやタクシーのラッピング広告などが代表例です。
視認性が高く、反復接触によって記憶に定着しやすい点が特徴です。ビジネスパーソンへの効率的なアプローチが可能であり、BtoB領域でも注目を集めています。なかでもタクシー広告は、普段接触しにくい経営層や意思決定層にリーチできる可能性が高い媒体です。

(出典:Growth)
交通広告は「大規模に展開している企業」という印象を与えやすく、ブランド信頼性の強化にも貢献します。ただし、媒体ごとに費用や出稿単位が異なるため、効果的に活用するには綿密なエリア戦略が必要です。
屋外広告(OOH)メディア
屋外広告(Out-of-Home, OOH)とは、街頭やビル、公共空間など屋外に設置される広告を指します。大型看板(ビルボード)、屋上広告、デジタルビジョン、ネオンサインなどがあり、視覚的インパクトに優れている点が特徴です。

(出典:株式会社春光社)
屋外広告の最大の強みは視認性の高さにあります。ユーザーが意識していなくても半強制的に視界に入るため、人通りの多い場所に掲示すれば認知率や想起率の向上を期待できます。さらに、デジタルサイネージを活用することで、時間帯や曜日に合わせて柔軟にクリエイティブを切り替える運用も可能です。
印刷物・販促物系メディア
印刷物や販促物は、ターゲットの手元に直接情報を届けるメディアです。チラシ・パンフレット・ダイレクトメール(DM)・カタログ・ショップカード・POPなどが該当します。

(出典:ラクスル)
BtoB企業では、商談時に渡す製品パンフレットや郵送による業界別カタログ、イベントで配布する資料などが代表的な活用方法です。視覚的に整理された情報を残せるため、後日の見直しや社内共有にも適しています。また、デジタルとの連携も重要で、QRコードや短縮URLを通じてWebへの導線を組み込むことで、紙媒体の反応をオンラインで可視化できます。
イベント・体験型メディア
展示会・見本市、セミナー・カンファレンス、サンプリングイベント、スポーツ・音楽イベントのスポンサー広告など、体験を通じた接点形成を図るのが体験型メディアです。
BtoB企業にとって、展示会はリード獲得や商談創出の最前線です。実機のデモンストレーションや担当者との会話を通じて、信頼感を醸成し、Webだけでは伝わりにくい情報を届けられます。また、共催セミナーや協賛イベントでは、業界内のポジション確立やネットワーキングの強化にもつながります。

(出典:マーケティングWeek)
オフラインの中でも能動的な参加を促すこの手法は、質の高いリードを獲得したい企業に適しています。
メディアプランニングを行うメリット
広告やプロモーション施策を成功させるには、単発の出稿ではなく、全体を見通した設計と振り返りの仕組みが欠かせません。とりわけ広告媒体がオンライン・オフラインを問わず多様化する現在、どの媒体にどれだけ投資すべきか、どのように組み合わせるべきかを判断するためには、事前の戦略立案が重要です。
メディアプランニングを行うことで、社内外の関係者と共通言語で議論ができ、費用対効果や施策改善のスピードも大きく向上します。以下では、メディアプランニングの3つのメリットを解説します。

広告費用対効果の向上
予算が限られている中、適切なメディアプランニングを行わずに広告を配信しても、費用対効果の向上は期待できません。
極端な例として、SNS広告や動画広告に偏れば短期的には認知拡大が進みますが、MOFUやBOFU施策が欠落するため、検討層や意思決定層への接触が弱くなり、結果としてコンバージョンにはつながらないでしょう。逆にリスティング広告など購入直前層を狙う施策だけに依存すれば、潜在層を育成できないため、数カ月後にはリード供給が途絶え、営業活動全体が頭打ちになるリスクを抱えます。
メディアプランニングの最大の価値は、こうした短期成果と長期育成のバランス欠如を是正できる点にあります。ターゲットが乏しい媒体やROIが低い媒体を避けつつ、ファネル全体をカバーする設計を行うことで、単なる効率化にとどまらず収益構造そのものを安定させることが可能です。
さらに視点を広げれば、認知段階ではSNSで潜在層にブランドを刷り込み、比較検討段階では検索広告で具体的ニーズを取り込む。そして購入段階ではリスティングやリターゲティングで刈り取り、信頼強化の段階ではOOHやPRで社会的信用を補強する。こうした複数チャネルを組み合わせた設計は、LTV向上に直結します。

単発のCPA最適化ではなく、顧客獲得コストを回収し続けられる仕組みを築くことこそが、メディアプランニングを不可欠とする理由です。
戦略に基づいた広告予算の最適化ができる
広告運用でよくある失敗のひとつが、全メディアに均等に予算を配分してしまうことです。表面的にはバランス良く見えますが、メディアごとに到達できる顧客層やファネル上の役割が異なるため、実際にはROIを下げる原因となります。広告運用の目的や自社の事業フェーズに基づき、限られたリソースをどこに投じるかを明確化しなければ、最終的な成果にはつながりません。
その際に有効なのがファネルの考え方です。
広告の目的は大きく「認知拡大」「比較検討」「購入」の3つに分類でき、目的ごとに投下すべきチャネルやクリエイティブは変わります。認知拡大が目的であれば、TOFUに属するSNSや動画広告に重点的に予算を投じるのが有効です。ただし、SNSといってもX(旧Twitter)は速報性や拡散力、LinkedInはBtoBの専門性、Instagramはビジュアル訴求に強みがあるなど、特性は大きく異なります。
「とりあえずSNS」ではなく、ターゲットが集中している媒体を選ばなければいけません。

さらに、根拠に基づいた予算配分を行えば、全体の意思決定の質を高める効果も生まれます。経営層に対しては「なぜこのチャネルに投資するのか」を定量的に説明でき、営業・広報・カスタマーサクセスといった他部門に対しても、顧客のファネル進行に沿った役割分担を共有できるため、社内の足並みがそろいやすくなります。
また、KPIの達成状況を踏まえたレポートや施策ごとのインサイトを体系的に蓄積すれば、単発施策の検証にとどまらず、予算設計そのものを進化させる学習サイクルが形成されます。広告費は単なるコストではなく、企業の知見資産を育てる投資へと変わるのです。
施策の評価と改善の効率化
広告施策やマーケティング施策を、CPAやCTRといった単一の指標だけで判断するのは木を見て森を見ずの典型です。たとえば「SNS広告はCPAが高いから失敗」「リスティングはCPAが低いから成功」といった評価は、一見合理的に思えますが、実際には全体最適を妨げます。なぜなら各チャネルは本来、ファネルの異なる段階で相互に作用し合いながら成果を生んでいるためです。
メディアプランニングを導入すれば、施策ごとにファネル全体のどの段階に寄与しているのかを位置づけられるため、点ではなく線で成果を捉えられます。つまり役割貢献度という評価軸を設定することで、SNS広告が直接CVを生まなくても、認知形成や比較検討の前提づくりに不可欠であることを定量的に示せるのです。
さらに、事前に指標設計と評価テンプレートを整備すれば、施策の評価と改善は飛躍的に効率化します。ペイド、オウンド、アーンド、シェアードを横断して、反応率・CVR・滞在時間・商談化率といったKPIを一貫した物差しで追えば、どの接点がボトルネックとなり、どこがレバレッジポイントになっているかが明確になります。属人的な感覚値ではなく、再現可能な運用知見へと進化させられるのです。
BtoBにおいては、1回の接触で商談に至ることは稀であり、展示会→ホワイトペーパーDL→メールナーチャリング→営業接触といった複数接点を経て初めて受注につながります。そのため、各施策の貢献度を可視化するアトリビューション分析の導入は極めて有効です。
どのチャネルが起点となり、どのチャネルが決定打となったかを明らかにすれば、予算配分やクリエイティブ設計の優先度を精緻に調整でき、限られた予算から最大限の成果を引き出せます。
メディアプランニングする時の注意点
メディアプランニングは、事業戦略やマーケティング目標と深く結びついた、論理的かつ整合性のある意思決定プロセスです。だからこそ、闇雲に出稿を進めたり、社内の「なんとなくこうした方がよさそう」といった声だけで施策を決めたりしてしまうと、費用対効果が下がるだけでなく、ブランディングや信頼性にも影響を及ぼしかねません。
ここでは、実際にメディアプランニングを行う際に多くの企業が見落としがちな注意点について、4つの視点から解説します。

目的・ターゲットが曖昧なまま媒体選びを始めない
メディアプランニングを行う前には、必ず目的とターゲットを明確にする必要があります。
目的設定はKGIとKPIに分けて考えるのが基本です。KGIは年間売上10億円、LTV平均500万円といった企業全体の最終目標を示す指標であり、KPIはその達成に向けた中間的な達成基準を担います。両者は独立して存在するものではなく、KPIの積み上げがKGIの到達を確実にする「因果の階段」として機能しなければ意味がありません。
まずは企業全体、あるいはマーケティング部門単位でKGIを明確に定め、その達成に必要な要素を分解したうえでKPIを設計しましょう。
「マーケットシェア3割拡大」をKGIに掲げた場合、市場が未成熟であれば新規認知拡大が有効なKPIとなります。一方で、すでに一定の認知を獲得している成熟市場では、競合からの乗り換え件数、購入率や転換率、さらにはLTVといった指標のほうが、より直接的に成果を規定します。つまり、市場環境や事業フェーズに応じてKPIは変動するという前提を持つことが重要です。

ターゲット定義も曖昧では不十分です。「マーケティング担当者」といった抽象的な括りではなく、「従業員規模500名以上の企業で、SaaS導入の決裁権を持つ管理職」といった具体的な粒度で設計することが理想です。こうした粒度で定義することで、広告のクリエイティブや媒体選定にブレが生じにくくなり、メッセージの一貫性と予算配分の合理性が保たれます。

(出典:LEAPT)
逆に、この設計を怠ったまま媒体選びに進むと、KGIやKPIと結びつかない出稿が増え、予算が無駄に消費されます。結果として、短期的にはCPAが改善しても、長期的なブランド成長や市場シェア拡大といった本来の目的にはつながらない危険性が高まるでしょう。
メディアごとの文脈に合わせてコンテンツを最適化
同じ広告素材をすべてのメディアに一律展開するのは、一見効率的に見えますが、実際には効果を削ぎ、場合によっては逆効果を招くリスクがあります。なぜなら各メディアには固有の視聴姿勢と期待役割があり、それを無視したクリエイティブは受け手に違和感を与え、メッセージの伝達効率を下げるためです。
リスティング広告に接触するユーザーは、課題を今まさに調べている能動的な状態にあるため、解決策を端的に示し、強いCTAで次の行動に直結させる訴求が効果的です。一方SNS広告では、ユーザーは受動的にフィードを眺めていることが多く、この文脈では論理よりも共感やエモーションが重要となります。UGCや口コミ的要素を取り入れることで拡散力が高まります。
ディスプレイ広告では、一瞬で目に飛び込むかどうかが勝負であり、シンプルなコピーと視認性の高いデザインが不可欠です。オフライン広告(OOHや交通広告)は接触時間が限られるため、誰に、どこで、どのように記憶させるかという設計が成否を分けます。タクシー広告なら経営層への密閉空間での刷り込み、駅広告なら日常動線での反復接触といった活用が有効です。
結局のところ、メディアごとに広告素材を最適化しなければ、どれほど優れたクリエイティブでも適材適所で機能せず、予算効率も下がります。逆にチャネルの特性に合わせてフォーマットやメッセージを調整すれば、同じ予算でも接触効果や記憶定着率を大きく高められます。
コントロール不能性や炎上リスクを見込む
アーンドメディアやシェアードメディアは、企業が直接コントロールできない領域です。だからこそ、大きな潜在価値と同時に予期せぬリスクも存在します。コントロール不能である点は、信頼性の源泉であると同時に炎上の火種にもなり得るのです。
メディアプランニングにおいては、こうした想定外の反応や炎上リスクを前提条件として織り込むことが欠かせません。レビューやSNSでの声は、広告以上に購買意思決定へ影響を及ぼすことが多いため、好意的な反応はブランド資産となり、逆にネガティブな拡散は企業の評判を一瞬で損ないます。この二面性を見越した危機管理設計がなければ、他のメディア戦略が成功しても土台から崩れかねません。
具体的には、ネガティブレビューやSNSでの拡散を早期に検知するためにソーシャルリスニング体制を常設し、トラブル発生時に「誰が・いつ・どう動くか」を明文化した対応フローを事前に定めておくことが重要です。また、インフルエンサーと連携する際には、発信内容の事前確認、NG表現の共有、成果物の利用範囲や権利関係を契約で明確にしておくことで、予期せぬトラブルを最小化できます。
さらにUGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用する際は、権利許諾や出典表記のルールを徹底するだけでなく、好意的な投稿をオウンドメディアや公式SNSに集約し、ブランドストーリーとして再利用するなど、ポジティブな波及を設計する視点も求められます。これは、コントロール不能な声をいかに自社の文脈に取り込むかという攻めの姿勢にも直結します。
著作権や商標などの法令順守を意識する
広告施策における法令順守は、ブランドの信頼基盤そのものです。クリエイティブ領域では、表示義務、比較表現の妥当性、引用範囲の適切さなど数多くの留意点が存在し、これを軽視すれば短期的に成果が出ても、中長期的には企業価値を損なうリスクが高まります。
「業界No.1」「最大◯%削減」といった訴求表現は、客観的なデータと調査機関の明示が必須です。根拠を欠いたまま使用すれば、虚偽誇大表示として景品表示法違反に該当し、行政処分や信用失墜につながります。さらに薬機法、特定商取引法など業界特有の規制が複数同時に適用されるケースも少なくなく、媒体側の審査を通過しただけでは不十分です。
自社の属する業界ごとの規制要件を、網羅的に把握する姿勢が不可欠です。
また、著作権や商標権の侵害リスクにも注意が必要です。画像や動画、キャッチコピーの流用や類似商標の誤用は、意図せず法的トラブルを招きかねません。オンライン広告の分野では、Cookie規制や越境データ転送に伴う個人情報保護の強化が進んでおり、プライバシー対応の可否が国際的な信用に直結しています。
メディアプランニングの成功の秘訣やコツ
メディアプランニングは、設計しただけで成果が出るわけではありません。むしろ、実施後の検証と改善、メディアごとの文脈理解、予算配分の柔軟性など、運用フェーズでの磨き込みが成果の分かれ道になります。
ここでは、メディアプランニングを成果につなげるための実践的なコツを3つ紹介します。

テスト&ラーニングの設計
効果的なメディアプランニングには、初期の仮説と検証可能な構造が欠かせません。重要なのは「この訴求は有効か」「このフォーマットは反応を生むか」といった問いに対し、ABテストなどで検証できる設計にしておくことです。
一例を挙げると、リスティング広告では料金訴求と導入実績訴求でコピーを分けて比較し、SNS広告ではビジュアル中心とテキスト中心の構成を検証します。媒体をまたいで比較する際は、指名検索数やコンバージョン率など共通のKPIを設定することで、異なるメディア同士でも相対的に効果を評価できます。
このように1テスト1目的を徹底し、小さな学びを積み上げることで、改善サイクルを着実に加速させることができます。
メディアの文脈とクリエイティブを適合させる
メディアごとにユーザーが求める情報の期待値は異なるため、同じコンテンツであっても、掲載するメディアによって反応は大きく変わる可能性があります。そのため、各メディアの特性に応じて、訴求の軸やクリエイティブを適切に調整する必要があります。
以下は、主要なメディア別に効果的とされる訴求ポイントの一例です。

すべてのメディアで、その特性に合わせた訴求設計を行うことで、同じ広告予算でも成果に大きな差が生まれます。媒体ごとの役割と接触状況を丁寧に分析し、訴求内容とクリエイティブを最適化することが、メディアプランニングにおいて極めて重要です。
予算配分の動的最適化
初期の予算配分に固執する必要はありません。重要なのは、メディアごとのパフォーマンスを定期的に検証し、費用対効果の高い媒体に柔軟にリソースを再配分していく「動的最適化」の視点です。
たとえば、あるSNSキャンペーンが指名検索の増加に貢献していると判明した場合、そのチャネルに追加予算を投下し、逆に成果が見られないチャネルについては一時的に停止または縮小することで、全体のROIを高めることが可能です。
さらに、再配分を行う際のタイミングと予算の振り幅について、事前にルール化しておくことで、組織内での判断や合意形成もスムーズに進みます。初期段階では仮説に基づいた予算配分でも構いませんが、運用の中で得られる実績データをもとに、効果が高く、なおかつ伸びしろのある媒体へ集中的に投資する姿勢が、最終的な成果を大きく左右します。
メディアプランニングの事例5つ
メディアプランニングを行う際には、理論だけでなく、現実的な課題・制約・組織内の合意形成といった現場ならではの工夫が求められます。ここでは、実際のBtoB・BtoC企業におけるメディアプランニングの具体事例を5つ紹介し、それぞれの計画設計と成果を見ていきましょう。
事例①マスメディアとSNSの融合で売上2倍、フォロワー27倍
老舗の男性グルーミングブランドであるOld Spiceは、ブランドの若返りを図るため、大胆でユーモアを前面に押し出した統合キャンペーンを展開。市場調査によって、ボディウォッシュの購入者の約6割が女性であることが明らかになり、女性の感性にも響くクリエイティブを設計しました。
2010年のスーパーボウル週末に合わせて、まずYouTubeでCMを先行公開し、その後にテレビ放映を行うデジタルファーストの戦略を採用しました。テレビや映画館での広告に加え、ブランドサイトやSNSも連携させ、マスメディアとデジタルを横断的に組み合わせた設計が特徴です。
中心となったのは、元NFL選手イザイア・ムスタファを起用した一人語り形式のCM「The Man Your Man Could Smell Like」。非現実的な場面転換とユーモアを効かせた語り口が視聴者の関心を引き、YouTube上で急速に拡散されました。
この反響を受けて展開されたのがResponse Campaignでした。SNSに寄せられたコメントや質問にリアルタイムで応答するという構成で、わずか2日半の間に186本ものパーソナライズド動画を制作・投稿。一方通行だった広告が対話型へと進化し、ユーザーが積極的に関与する流れを生み出しました。
ファンによるパロディ動画や口コミも相次ぎ、公式アカウントがそうした投稿を取り上げたことで、二次拡散の勢いが一気に高まります。さらに、人気テレビ番組への出演や著名人との交流も重なり、テレビからSNS、YouTubeに至るまで、すべてのメディアで一貫したユーモア路線を貫き、話題の中心に居続けました。
動画は公開初日に約590万回、1週間で4000万回を超える再生数を記録し、最終的には14億インプレッションに到達しました。SNSのフォロワー数やエンゲージメントも急増し、Twitterは27倍、Facebookは8倍にアップ。売上げも大きく伸長し、ボディウォッシュの販売は前年同期比で2倍以上となり、市場シェアのトップに立つ成果を挙げました。
これまで古臭く見られていたブランドイメージは大きく刷新され、若年層へのリーチ拡大にも成功しました。この事例は、統合型キャンペーンおよびメディア戦略の成功例として、現在も高く評価されています。
事例②位置情報×アプリ×リアル店舗をつなげた設計力
ファストフード大手のバーガーキングは、競合マクドナルドとの店舗数の差を逆手に取ったデジタル戦略を展開しました。2018年に実施された「Whopper Detour」キャンペーンは、自社モバイルアプリの普及と来店促進を目的とした、位置情報広告を活用したモバイル中心の施策です。
全米にある1万4000以上のマクドナルド店舗の周囲を、半径約180メートルのジオフェンスで囲み、その範囲内に入ったユーザーのスマートフォンに対し、公式アプリ上でワッパー1セントのクーポンを自動表示する仕組みを構築しました。クーポンをアプリで確定すると、最寄りのBK店舗が案内され、スムーズな来店と商品受け取りにつながる導線が設計されていました。
キャンペーンでは「ライバル店に行ってワッパーを手に入れよう」という挑発的なメッセージを掲げ、SNS投稿や動画広告に加え、マクドナルド店舗の近隣に屋外広告を設置するなど、多面的なアプローチで話題化を図りました。このユーモアに富んだ仕掛けはSNSで大きな反響を呼び、ユーザーによる自発的な拡散も促進されたのです。
実施からわずか9日間で150万件を超えるアプリダウンロードを記録し、iOSとAndroidの両プラットフォームでランキング1位を獲得しています。モバイル注文による売上は従来の3倍に拡大し、全米店舗の来客数は直近4年間で最高水準に達しました。
さらに、キャンペーン全体で35億インプレッションを獲得し、約4000万ドル相当の広告効果を生み出すなど、投資対効果は37倍に達しました。終了後もアプリ経由の売上は従来比で2倍の水準を維持し、新規顧客の継続利用にも結びついています。
事例③デジタル×リアルが生んだ環境啓発
スペインの大手銀行BBVAは、自社モバイルアプリに搭載した「カーボンフットプリント計算ツール」の認知拡大を目的に、環境意識を啓発するユニークなキャンペーンを展開しました。若年層の利用が多いTikTokやInstagramを主な舞台とし、影響力のあるインフルエンサーを起用して、実際の街に巨大オブジェを設置しSNS上で話題を喚起するという、オンラインとオフラインを融合させた戦略です。
まず、スペイン国内の複数都市に、長さ28メートルの巨大な足跡を突如出現させ、「誰が、何のために仕掛けたのか」という謎を提示しました。この演出は現地の人々やメディアの注目を集め、環境問題を象徴する強いビジュアルインパクトが話題となりました。
並行して、TikTokニュースメディアや複数の人気インフルエンサーが、「街に謎のフットプリントが出現」と発信し、フォロワーの間で憶測や議論が広がりました。やがて彼らが差出人不明の招待状を受け取ったことを報告し、物語は次の展開へと移っていきます。
キャンペーン終盤、インフルエンサーが招かれた秘密イベントにて、仕掛け人がBBVAであることが明かされ、同時にアプリのカーボンフットプリント機能が紹介されました。イベントの様子はインフルエンサーによってリアルタイムで発信され、フォロワーも「種明かし」を共有する形で参加し、物語の完結に立ち会う構成が取られていました。
約3週間にわたる展開の結果、290万人以上のユニークユーザーにリーチし、350万インプレッションを獲得。インフルエンサーの投稿には12.5万件を超える反応が寄せられ、環境メッセージとBBVAのブランド名は、特に若年層の間で広く認知されました。アプリ内の関連ページへのアクセス数は31万件を突破し、新機能の利用促進にもつながっています。
加えて、この取り組みは社会的な意義の高さも評価され、スペインの広告賞において「ベストSNSキャンペーン実施」および「ソーシャルプロジェクト効果」部門での受賞を果たしました。CSRのメッセージとマーケティング目的を両立させた、先進的な成功事例といえます。
事例④エレベーターで毎日目にする体験を設計
クラウド受付システム「RECEPTIONIST」や会議室予約システム「予約ルームズ」などを展開するRECEPTIONIST社では、エンタープライズ領域への認知拡大を目的に、オフィスエレベーターメディア「GRAND」への出稿を実施しました。従来はSEOやリスティング広告を中心に施策を行っていましたが、大手企業層へのアプローチには限界を感じていたといいます。
GRANDは都内大規模ビルを中心に4200台以上のエレベーターに設置され、週230万人以上にリーチ可能。広告接触のタイミングがビジネスアワーであることや、視聴者の4人に1人が業務サービスの意思決定層である点が、高評価につながりました。
2025年1月には2週間の広告配信を実施し、1週目に「RECEPTIONIST」、2週目に「予約ルームズ」を訴求。L字型レイアウトやナレーションなど、エレベーター内の視聴環境に配慮した専用クリエイティブを制作しました。配信後は、LP流入や指名検索が過去最高を記録し、インテントスコアも12倍に。社外・社内の双方から「広告を見た」との声が寄せられ、強い認知形成効果が確認されました。

(出典:MarkeZine)
マーケティング部の古瀬氏は、オフィス回帰が進む中で「タクシー広告に勝るとも劣らない認知媒体」と評価。オフィス内の他のサイネージと組み合わせることで、さらに効果が高まると述べています。またGRAND側も、通勤や退勤時の交通広告と組み合わせることで、認知の記憶定着を促す流れを提案しています。
共通の環境で複数人が同時に広告に触れる特性を持つエレベーターメディアは、今後BtoB・BtoC問わず、職場内認知を高める有効なチャネルとして注目されています。
事例⑤SNS・TVer・屋外広告で共感をつなぐ:BARTHの統合型メディアプランニング
BARTHは「なりたいジブンは、夜につくる。」をブランドコンセプトに、入浴を中心としたナイトルーティンの価値を提案しています。
立ち上げ当初は「入浴×睡眠」に着目し、当時注目されていた睡眠負債という社会課題に応える形でブランドをスタート。重炭酸入浴剤というカテゴリにおいて先行的なポジションを確立し、睡眠改善を求めるビジネスパーソン層に向けて睡眠投資というメッセージで認知を拡大することに成功しました。
2019年にはSNSで「泥のように眠れる」「家族全員が寝坊した」といったユーザー投稿が拡散し、大きなブレイクスルーに。コロナ禍では健康意識やセルフケアへの関心が高まり、おうち時間の充実を求める消費者のニーズにもマッチして、入浴剤市場での存在感を高めていきました。
ブランドはSNSを主軸に多様な施策を展開。人気漫画『ねこに転生したおじさん。』とのコラボやユーザーの寝顔を募集するキャンペーンなど、SNS上のトレンドやバズワードを巧みに活用して、睡眠の価値を情緒的に伝えるコミュニケーションを行ってきました。また、限定商品では「実はこれ、美容中。」というメッセージを用いたビジュアル展開を行い、渋谷駅でのピールオフ広告なども話題となりました。

(出典:MarkeZine)
現在は、TVer広告を活用して「ナイトルーティン」というブランドの背景を丁寧に伝えるとともに、店頭POPとの連動も図るなど、多チャネルでの一貫したブランド体験を構築しています。
まとめ
メディアプランニングは、広告の出稿先を選ぶ作業ではなく、マーケティング戦略そのものに直結する重要なプロセスです。目的やターゲットに合わせて最適なメディアを設計・配分し、コンテンツや予算を動的に調整しながら施策を磨いていくことで、限られた予算の中でも最大の成果を生み出すことが可能です。
BtoB領域では、複数の意思決定者や長期的な関係構築が関与するため、オンライン・オフラインを問わず一貫性のあるタッチポイント設計と評価体制が成果の分かれ道となります。
本記事で紹介した注意点や成功のコツ、そして実際の企業事例を参考に、貴社のマーケティング活動にも再現性と説得力を備えたメディアプランニングを組み込んでいただければ幸いです。
豪州ビジネス大学院国際ビジネス修士課程卒業。複数企業と起業を経てBtoB専業マーケティング代理店へ。その後、外資SaaSのユニコーン企業の日本法人立上げを行い、法人営業開始後マーケティング責任者として創業期を牽引。現在、日本のBtoBマーケティングの支援事業を行う株式会社LEAPTにて代表取締役。また、株式会社Shirofuneの外部マーケティング責任者を兼任。





