
運用自動化ツールのシェア調査結果とツールの比較・選定で確認するべきポイントを解説

- 菊池 満長
運用業務に追われ、本来注力すべき戦略や改善に時間を割けない。そう感じている方は少なくないでしょう。広告運用、情シスのシステム管理、バックオフィスの事務処理などは、企業活動を支える重要な業務でありながら、定型作業が多く、人材リソースを圧迫しがちです。
たとえば、広告運用では富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の調査で、54.5%が「戦略策定やクリエイティブ制作といったコア業務に十分な時間を割けていない」と回答しています。定型業務に追われる状況が続けば、競争力の低下を招きかねません。
こうした課題を解決するカギとなるのが運用自動化ツールです。市場にはRPAやRBA、統合運用管理、広告運用自動化、構成管理といった多様な分野のツールが存在し、それぞれが確かな実績を重ねています。
本記事では、分野ごとのシェア動向、導入の意義、比較検討のポイント、代表的なツール事例までを徹底解説します。もし今、業務の煩雑さやリソース不足に課題を感じているなら、運用自動化ツールは検討すべき有力な選択肢です。自社に最適なツールを見極めるために、ぜひ最後まで読み進めてください。
運用自動化ツールとは
運用自動化ツールとは、日常的な業務やシステム運用における定型作業をソフトウェアに任せ、自動化するための仕組みです。
広告運用における入札調整やレポート作成、情シス部門でのサーバー監視や障害対応、バックオフィスでの請求書処理や給与計算といった業務は、いずれも繰り返しが多く、人材リソースを消耗しやすい領域です。こうしたタスクを自動化すれば、担当者は属人的な作業から解放され、戦略的な業務や改善活動に集中できるようになります。
運用自動化が注目されている背景には、生産年齢人口の減少があります。限られたリソースで競争力を維持するには、自動化できる業務はツールに任せ、人間はより付加価値の高い領域に注力する必要があるでしょう。さらに、自動化は効率化にとどまらず、品質向上やリスク低減にも直結します。
人手作業では避けにくい入力ミスや対応漏れも、ツールを通じてルール化することで防止できます。つまり、運用自動化は業務の基盤を強化するだけでなく、企業の競争力を高める武器にもなるのです。
運用自動化ツールの分野ごとのシェア調査結果は?
運用自動化ツールの導入を検討する際には、分野ごとの市場シェアを把握することが重要です。どのベンダーが、どの領域で強みを持っているかを理解することで、ツール選定の判断材料となるほか、導入後の安定性も見極めやすくなります。ここでは、RPA、RBA、統合運用管理、広告運用自動化、構成管理といった主要領域ごとに、公開情報をもとに解説します。
まずはRPA(Robotic Process Automation)から見ていきましょう。AIMultipleによる、検索数やレビューをもとにした2025年8月時点のデータでは、UiPathが全体の57%のシェアを獲得しています。
UiPathはRPA分野のリーディングカンパニーとして広く知られており、この結果も妥当といえるでしょう。次にシェアが大きいのはMicrosoftのPower Automateで17%、続いてAutomation Anywhereが14%となっています。

(出典:AIMultiple)
RBA(Run Book Automation)およびジョブ管理に関しては、明確なシェア調査結果は見当たりませんが、世界的な評価サイトG2では、Sift、Cisco Duo、Auth0が高評価を得ています。これらはレビュー件数が多く、かつ評価水準も高い点が特徴です。
国内では日立のJP1が強い存在感を持ち、2023年度の国内ジョブ管理市場で45.3%の売上げシェアを記録しています。特に大企業における基幹システム運用の自動化には欠かせない基盤です。
統合運用管理の分野では、Mordor Intelligenceによると、ServiceNow、BMC Software、SolarWindsがグローバル市場のリーダーとされています。一方、国内においてはITreviewでZabbixとJP1が5年連続で市場リーダーと評価されています。

(出典:Mordor Intelligence)
広告運用自動化ツールについては、最新かつ網羅的なシェア情報は公開されていません。ただし、2021年の調査ではShirofuneが9割を超えるシェアを持っており、国内市場においては事実上のスタンダードとしてみなしてもよいでしょう。入札や予算配分の自動化機能を備え、広告代理店から事業会社まで幅広い層に支持されています。
構成管理ツールの分野では、HashiCorp Terraformが世界市場のおよそ30%を占めています。次いで、Ansibleが23.9%、Saltが14.92%です。国内では、2025年8月時点のITreviewランキングにおいて、Red Hat Ansible Automation Platformが1位、Chefが2位という評価を受けています。
このように、分野ごとに強みを持つプレイヤーや利用状況には大きな違いがあります。自社の課題や目的に応じて、どの分野に注力すべきかを見極めることが、ツール選定における重要な第一歩です。
運用自動化ツールの導入の意義を多角的に解説
運用自動化ツールの導入は、工数削減にとどまらず、企業の競争力を高める施策となります。日常的に発生する定型業務を効率化することで、担当者はより付加価値の高い業務へリソースを振り向けられるようになるためです。
ここでは、広告運用、情シス・IT運用、バックオフィスという3つの領域に分けて、導入の意義を整理していきます。

広告運用における導入の意義
広告運用は、媒体ごとに管理画面が異なる上、入札調整、予算配分、クリエイティブ検証、レポート作成など多岐にわたる作業を伴います。これらをすべて手動で行うには限界があり、担当者の負荷が増すだけでなく、改善サイクルの遅れによって競合に後れを取ってしまうリスクも高まるでしょう。
たとえば入札調整では、24時間体制での監視は現実的に難しく、対応の遅れによって不要な広告費が発生したり、入札単価が低いまま表示機会を失ったりする可能性があります。こうした最適化の遅延は、短期成果が求められる広告運用において致命的な影響を及ぼしかねません。
さらに、BtoBやSaaSのように中長期的な成果が重視される業種では、コンバージョン数だけでなく、顧客生涯価値(LTV)を踏まえた運用が欠かせません。LTVを正確に把握するには、広告データとCRMやSFAといった顧客管理システムを連携させ、複数チャネルにまたがる顧客行動を統合的に分析する必要があります。
運用自動化ツールを導入すれば、媒体横断での入札・予算最適化、ABテストの自動化、レポート生成の迅速化、LTVの自動測定が可能です。その結果、少人数のチームでも大規模な配信を効率的に運用でき、広告担当者は戦略立案や社内調整など、より本質的な業務に集中できるようになります。
情シス・IT運用における導入の意義
情シスやITインフラ運用の現場では、監視、障害対応、パッチ適用、ユーザー管理など、膨大な定型業務が日々発生します。
従来のように人がログを逐一確認し、手順書を頼りに対応する方法では、属人化や対応の遅延を避けられません。また、作業者のスキルや経験によって処理品質やスピードに差が出やすく、ヒューマンエラーのリスクも常につきまとうでしょう。
こうした課題に対して、運用自動化ツールを導入すれば、定型業務をスクリプトやワークフローに置き換え、誰が実行しても同じ結果を再現できる仕組みを構築できます。そのため、運用品質の標準化・安定化が進み、障害発生時の一次対応も迅速かつ正確に行えるでしょう。
手動対応に費やしていた膨大な工数を削減できるため、担当者はセキュリティ強化やDX推進、新規システム導入計画など、より戦略的な領域にリソースを振り向けることが可能です。さらに、自動化によって作業履歴や承認プロセスを記録・可視化できるため、内部統制や監査対応の面でも大きな効果を発揮します。
クラウド利用やシステム規模の拡大が進むなかでも、スケーラブルかつガバナンスの効いた運用を維持できる点は、情シスにとって極めて重要な導入意義といえるでしょう。
バックオフィス業務における導入の意義
経理や人事、総務といったバックオフィス部門でも、日々の業務は膨大な定型タスクに占められています。請求書や経費精算のチェック、勤怠データの集計、入退社手続き、各種帳票の作成などはルールが明確です。一方、手作業に依存すると入力ミスや確認漏れが発生しやすく、効率性と正確性の両面で課題を抱えやすい領域です。
運用自動化ツールを導入すれば、これらの作業をシステム的に処理し、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。請求処理では、OCRやRPAを活用して請求データを自動で取り込み、会計システムへの転記から照合まで完結させることが可能です。
人事業務においても、入退社に伴うアカウント発行や権限付与をワークフロー化し、承認後に自動実行することで、スピードとセキュリティを同時に確保できます。
また、自動化によって定常業務の工数を削減できれば、バックオフィス担当者は付加価値の高い業務、すなわち経営に資するデータ分析や制度設計、社員体験の改善などに注力できます。
運用自動化ツールの比較はどのような時に必要なのか
運用自動化ツールは、すべての企業に必ずしも導入が求められるものではありません。状況によっては、導入しても期待した成果につながらない場合もあります。では、どのようなケースで比較検討が必要になるのでしょうか。ここでは、その代表的な3つのシーンを解説します。

作業量や複雑性が増したとき
運用自動化ツールの導入を検討すべき場面のひとつが、作業量や運用の複雑性が増大したときです。小規模な環境や単純な業務フローであれば、スクリプトやExcel管理で対応可能ですが、企業の成長やシステムの多様化に伴い、次のような課題が顕在化します。
- 作業量の急増:サーバーやクラウド環境の拡張により、監視対象やジョブ数、アカウント数が指数関数的に増加。人手では追いつかず、チェック漏れや遅延が常態化する
- 環境の複雑化:オンプレとクラウド、複数のSaaSやネットワーク機器が混在すると、ツールや作業手順が分断され、全体像の把握が難しくなる
- 業務フローの多段化:単純な監視やリカバリにとどまらず、承認プロセス、部門間連携、コンプライアンス対応が絡み、1つのタスクが複数の条件分岐を含むようになる
具体例として、広告運用ではGoogle広告、Facebook広告、Amazon広告と出稿媒体が増えるほど作業量が膨らみます。IT運用では、AWSとAzureの併用に加え、オンプレミス環境も残っているような状況では担当者の負担が大きくなるでしょう。
このように環境が分散・複雑化するにつれて、個別ツールや人力での管理には限界が生じ、横断的に最適化・制御できる仕組みを再検討せざるを得なくなるのです。
追うKPIや計測要件が変化したとき
たとえば広告運用では、初期段階であればコンバージョン数やクリック率といったシンプルな指標を追うだけで十分なケースが多々あります。しかし、事業の成長に伴い顧客接点や販売チャネルが増えると、KPIが高度化することは珍しくありません。
長期的な顧客関係を評価するにはLTVの算出が不可欠となり、単純な広告反応率だけでは不十分です。BtoBの領域では、オンライン経由のコンバージョンに加え、オフライン商談の発生数や電話問い合わせ件数といった外部システム連携指標の追跡が必要となるでしょう。
営業部門との連携が進む段階では、商談化率や成約率といった下流のファネル指標まで含めなければ、経営判断に資するデータを提示できません。

このように、追うべきKPIが変化すれば計測条件も複雑化します。既存ツールがコンバージョン数のカウントにとどまる場合、新たな指標を正確に取得・統合できず、最適化の精度や意思決定のスピードに影響を及ぼします。
その場合、CRMやSFAとのデータ連携機能、オフラインコンバージョンの自動インポート、多チャネル横断のアトリビューション分析といった高度機能を備えたツールへの移行が必要です。
同様の構造的課題はIT運用領域にも存在します。初期は稼働監視や障害通知だけで十分であっても、企業規模の拡大や外部要件の変化により、監査ログの長期保存やISMS・SOC2・ISO27001といったセキュリティ認証への対応が不可欠です。
こうした規制・コンプライアンス要件を満たせないツールは、もはや基盤として不十分であり、ガバナンスやセキュリティ、拡張性を前提に設計された自動化ツールへの移行が求められるのです。
ランニングコストが大幅に上がってしまうとき
多くの運用自動化ツールは、初期導入費用だけでなく、従量課金型や対象数ベースの料金体系を採用しています。
RPAは「ロボット1体ごと」、IT運用は「監視対象台数」、広告運用ツールは「月間広告費の一定割合」といった形で費用が変動するのが一般的です。導入初期は小規模利用でコストを抑えられても、利用規模が拡大するにつれて課金対象が増え、数年単位で固定費が膨らむことは珍しくありません。
注意すべきは、使うほど便利になるが、同時にコストも増えるという構造です。企業が成長し自動化を広範囲に展開するほど、当初の想定を超えたライセンス費用が発生し、ROI(投資対効果)が逆転するリスクすらあります。
SaaS型サービスでは、ユーザー数、APIコール数、ログ保存容量など、見落としやすい要素に課金が紐づくため、契約当初は予測できなかったランニングコストが後から重荷になるケースも考えられます。
このため、契約更新や運用拡大のタイミングでは、他社ツールとの料金体系や課金ロジックを必ず比較しましょう。「無制限ライセンスの買い切り型に切り替える」「対象台数に依存しない定額制を選ぶ」「クラウド課金からオンプレ版に移行する」といった選択肢を検討することで、長期的なコスト最適化が可能となります。
加えて、3年・5年といった中長期シナリオでの費用試算を行い、自社の成長速度や利用範囲の拡大を前提に、最も持続可能なプランを選び直すことが不可欠です。
運用自動化ツールの比較はどこで行うのか
運用自動化ツールの選定では、表面的な機能比較や価格だけで判断するのは危険です。導入効果を正しく見極めるには、多角的な情報源を活用することが欠かせません。レビューサイト、アナリストレポート、そして自社でのトライアル。この3つを組み合わせることで、客観性と実効性の高い検証が可能になります。
レビュー系サイトでの情報収集
国内の代表的なレビューサイトには、ITreview、ITトレンド、BOXIL SaaSがあります。
これらのプラットフォームには、実際に導入・利用しているユーザーの評価や口コミが集約されており、メーカー公式サイトでは得られない生の声を確認できます。操作性、導入サポート、コスト満足度、不満点など、利用現場で感じたリアルな評価が可視化される点は大きなメリットです。

(出典:ITreview)
レビュー系サイトを利用する際には、星の数やランキングだけを参考にするのではなく、自社と同規模・同業種のユーザー事例を重点的に確認することが重要です。
中堅企業の情シス部門が「監視対象500台規模で使った結果、UIが煩雑だった」と評価していれば、自社導入時の運用負荷を事前に想定できます。広告代理店が「月額広告費1000万円規模でのROAS最適化に効果的」と述べていれば、規模感に応じた活用イメージを描けるでしょう。
また、レビューサイトの多くは比較表機能や導入事例集を備えており、どの業種で多く採用されているか、解約理由に何が多いかといった傾向を把握できます。「UIは優れているがカスタマーサポートが弱い」「小規模には適しているが大規模拡張には不向き」といった声は、公式情報からは読み取れない重要な判断材料となります。
レビューサイトは、自社の状況に照らして実際に活用できるかを判断するための情報源として活用するとよいでしょう。
アナリストレポートや調査機関からの情報収集
IDC、MM総研、ITRといった調査機関は、運用自動化ツールを含むITソリューション市場に関するレポートを定期的に発表しており、市場規模、シェア推移、成長率、導入業界別の傾向などを定量的に示しています。
これらの情報は、個別製品の利用感を知るレビューサイトとは異なり、市場全体を俯瞰できるマクロ視点を得られる点が大きな強みです。どのベンダーがグローバル市場で高いシェアを維持しているか、今後3〜5年でどのカテゴリーが成長するかといった予測が示され、ベンダーの将来性や投資余力を判断する材料となります。
ただし、こうしたレポートは調査ごとに母集団や対象範囲が異なるため、どの地域・業種を対象にしているか、クラウド型とオンプレ型を分けているかなどの前提条件を理解した上で読み解かなければいけません。異なる調査を横並びで比較する際に定義の差を吸収せず数字だけで判断すると、誤解を招くリスクがあります。
アナリストレポートは、ツール単体の機能比較ではなく、ベンダーの持続性や市場ポジション、成長トレンドを見極めるために活用するのが効果的です。市場動向と自社の中長期ニーズを照らし合わせることで、導入後も安心して利用を継続できるか、将来的にサポートが途絶えないかを判断でき、ツール選定の確度を高められます。
自社でのトライアル
最終的にツール選定の決め手となるのは、自社環境でのトライアル検証です。市場シェアが高く導入実績が豊富なツールであっても、自社の業務プロセスやインフラ構成、セキュリティポリシーに適合しなければ十分な効果は得られません。逆に知名度が低いツールであっても、要件に合致すればROIを大きく高められる可能性があります。
比較検討を進める際には、まず評価観点を整理したチェックリストやテンプレートの作成が不可欠です。操作性、既存システムとの連携性、監査ログの取得可否、スケーラビリティ、コスト構造、サポート品質といった軸を明確にすれば、複数ツールを同じ条件で評価できます。トライアルはデモ環境にとどめず、自社の実データや運用フローを用いて検証することが重要です。
広告運用ツールなら実際のアカウントを接続してレポート自動生成を試す、IT運用ツールなら監視対象サーバーにエージェントを導入してアラート挙動を確認する、RPAなら経費精算や請求書処理を自動化してエラー率や実行時間を測定するといった形です。
その際には、実際にツールを利用する複数の担当者に操作してもらい評価を集めましょう。そうすることで、導入したが現場に浸透しなかったというリスクを防げます。
運用自動化ツールを比較・選定する際の確認ポイント
運用自動化ツールを導入する際には、機能や価格を並べて比較するだけでは不十分です。自社の業務環境や成長フェーズに応じて本当に活用できるかどうかを、多角的に確認する必要があります。ここでは代表的な5つの観点を解説します。

自社が自動化したい業務に対応しているか?
最も基本かつ優先度の高い確認事項は、自社が自動化したい業務をツールで確実にカバーできるかどうかです。
- 広告運用:入札の自動化、レポート作成、クリエイティブテストの最適化
- 情シス・IT運用:障害検知、復旧タスクの自動実行、サーバー監視、パッチ適用
- バックオフィス:請求書処理、経費精算のチェック、勤怠管理、入退社手続き
人気や市場シェアだけで選ぶと、必要な領域が標準機能に含まれていない、結局は追加開発が必要だったといったリスクが生じがちです。選定段階では具体的なユースケースを書き出し、それが標準機能でどこまで対応できるかを徹底的に確認しましょう。
外部との連携や拡張性があるか?
多くの業務は複数のシステムをまたいで行われます。
たとえば広告運用では、媒体の管理画面だけでなく、GA4などによるコンバージョン計測やユーザー行動分析、各媒体データを統合・可視化するBIツール、獲得したリード情報を管理するCRMやSFAなどを併用します。このように複数システムを横断しているからこそ、API連携やプラグイン対応といった拡張性の高さが重要になるのです。
現時点では限られた業務の自動化だけが必要だとしても、事業拡大やシステムの増加に伴い、自動化対象は広がっていく可能性は十分にあります。そのとき拡張性の低いツールを導入していると、業務に対応できず、場合によっては新たなツール導入が必要となり、選定や学習のコストが余計に発生するかもしれません。だからこそ、初めから拡張性の高い運用自動化ツールを選ぶことが肝要です。
自社で運用がしやすいか?
導入直後はベンダーの手厚いサポートを受けられても、成否を分けるのは長期的に自社で安定運用できるかです。
ポイントになるのは、ユーザー単位のきめ細かな権限設計、監査ログ・操作履歴の自動記録、変更や新設定を安全に試せるサンドボックス、トラブルシューティングや知識継承を支える充実したドキュメント/ナレッジベースといった運用基盤の有無です。
これらが整っていれば、担当者の異動や退職があっても、引き継ぎ後も同水準で運用を継続できます。とりわけ内部統制やコンプライアンスを重視する企業では、ツールが属人化を解消し、統治可能な運用を実現できるかを慎重に見極める必要があります。
費用対効果はあるか?
ライセンス費用だけを見て、安い・高いと判断するのは避けましょう。
実際には、従量課金の仕組みや最低利用期間、契約更新条件、追加機能を利用する際のアドオン費用など、見落としやすいコスト要因が複数存在します。また、導入時の教育やトレーニングにかかる費用、あるいは自社でのスクリプト開発や設定作業に必要な工数まで含めて考えなければ、真のコストは把握できません。
一方で、工数削減による人件費の圧縮や、業務品質の向上によって得られる効果は長期的に大きなリターンをもたらします。短期的な支出だけで判断するのではなく、ツール導入によって削減できるコストと、新たに生み出される付加価値の両面を比較することが重要です。
サポートやコミュニティがあるか?
ツール導入後に頼りになるのは、ベンダーのサポート体制とユーザーコミュニティの存在です。サポートが日本語で受けられるか、問い合わせ対応が24時間365日体制で行われるか、稼働率を保証するSLAが提示されているかといった点は安心感に直結します。バージョンアップが定期的に実施され、その内容がリリースノートとして適切に公開されるかどうかも欠かせません。
さらに、ユーザー同士でノウハウを共有できるフォーラムや勉強会が活発に運営されていれば、現場での学習コストを大きく下げられます。特に海外製ツールでは、国内サポートが限定的だったり対応が遅れたりすることもあるため、こうした体制の有無が導入後の満足度を大きく左右します。
運用自動化ツールの各分野の代表的なツール事例
運用自動化ツールは分野ごとに役割や強みが異なり、選定の際にはそれぞれの特徴を理解することが欠かせません。ここではRPA、RBA、統合運用管理、広告運用自動化、構成管理の5つの領域に分けて代表的なツールを紹介します。ツール概要や活用シーンを把握し、自社に合うかどうかを判断する参考にしてください。
RPA
RPAは、パソコン上の定型業務をソフトウェアロボットが代行する仕組みです。Excel入力やメール送信、Webサイトからの情報取得など、バックオフィス業務を効率化する領域で広く活用されています。属人化の解消と業務スピードの向上が大きな導入メリットです。
ツール例① UiPath

(出典:UiPath)
UiPathは世界的に導入実績を持つ代表的なRPAツールであり、業務自動化の分野では標準的な選択肢のひとつとされています。
最大の特徴は、プログラミング知識がなくても扱いやすい直感的な操作画面と幅広い業務シナリオに対応できる柔軟性です。たとえば、経理部門では請求書データを自動で読み取り、会計システムに転記する業務を効率化でき、人事部門では入退社に伴うアカウント作成や勤怠データ処理を自動化することで、担当者の負担を大幅に軽減できます。
さらに、UiPathはAIとの連携やクラウド基盤との統合も進化しています。単純な定型業務の自動化にとどまらず、OCRを活用した非定型データ処理や機械学習モデルを組み込んだ意思決定支援まで活用の幅を広げられる点も魅力です。
オンプレミス環境だけでなくクラウド環境にも対応しているため、全社規模での展開やグローバル拠点を跨いだ導入にも適しています。
料金体系は、2025年8月時点でベーシックプランが月額25ドルから利用可能で、スタンダードプランやエンタープライズプランについては利用規模に応じて個別見積りが必要となります。
ツール例② Power Automate

(出典:Microsoft)
Microsoftが提供するPower Automateは、ローコードとAIを組み合わせて業務を効率化できる自動化プラットフォームです。
ExcelやOutlook、TeamsなどMicrosoft 365との親和性が高く、既存のオフィス業務に自然に組み込める点が強みです。たとえば、メール添付のExcelを自動保存し、フォルダ分類や数値抽出までをノーコードで設定できます。
機能は、クラウドフロー、デスクトップフロー(RPA)、プロセスマイニングなど多岐にわたり、SaaSからローカルアプリ操作まで幅広く対応可能です。Excelマクロを組まずに画面操作を記録するだけで自動フローを作れるため、専門知識がなくても扱えます。
さらにCopilot機能により、たとえば「請求書PDFを仕分けして数値を表にまとめて」と指示するだけで自動フローを作成できます。SAPやSalesforceとの連携テンプレートも備えており、部門単位の効率化から承認やドキュメント処理までエンドツーエンドの自動化に発展させやすい点も魅力です。
料金は、2025年8月時点でPremiumプランがユーザーあたり月額2248円(年払い)から、無人ボット稼働は月額22488円(年払い)。無料版もあるため「小規模に試してから有償版に移行する」というステップを取りやすいことも導入の後押しとなっています。
RBA
RBA(Run Book Automation)は、サーバー監視や障害対応などの運用手順を自動実行するための仕組みです。ジョブ管理と組み合わせて利用されるケースが多く、システム運用の安定性向上に直結します。
ツール例① Azure Automation

(出典:Microsoft)
Azure Automationは、Microsoftが提供するクラウドベースの運用自動化サービスで、プロセス自動化・構成管理・他サービスとの統合を一元的に行える点が特徴です。Azure環境だけでなくオンプレや他クラウドにも対応し、ハイブリッド環境を持つ企業にも適しています。
プロセス自動化では、PowerShellやPythonで作成したRunbookを用い、夜間のサーバ停止や定期バックアップ、障害時のログ収集と通知の自動化が可能です。Azure MonitorやServiceNowと連携すれば、アラート発生と同時にRunbookが起動し、復旧作業を自動で開始できます。
構成管理ではDesired State Configuration(DSC)を利用し、大規模サーバ群に統一設定を一括適用可能です。セキュリティポリシーやネットワーク構成を自動で維持でき、設定漏れや人的ミスを防ぎながらコンプライアンスを確保できます。
料金は、まず200ドル相当のクレジットを利用して30日間試用できます。以降は従量課金制となり、月々の無料枠を超えた分だけ課金される仕組みです。
ツール例② ServiceNow

(出典:ServiceNow)
ServiceNowは、世界的に利用されるITサービスマネジメントプラットフォームであり、RBAの領域でも高い評価を得ています。
従来は担当者が手作業で行っていた障害対応や承認フロー、社内申請などの定型業務を標準化し、自動化できる点が大きな特長です。これにより属人化を防ぎ、作業品質を均一に保ちながら、対応のスピードと正確性を向上させます。
また、インシデント管理、変更管理、構成管理(CMDB)、ナレッジ管理といった機能を統合的に備えており、ローコード開発にも対応しています。そのため、社内業務に合わせたアプリケーションを短期間で構築できる柔軟性もあります。
既存の監視ツールや外部システムとの連携にも強みがあり、Zabbixなど主要プロダクトと接続して自動的にチケットを発行し、後続の対応プロセスを実行できる点は実運用において大きなメリットです。操作画面は直感的でわかりやすく、業務ナレッジを蓄積して問い合わせ対応や社内連携を効率化する効果も期待できます。
一方で、大規模データを扱う際のパフォーマンスや、豊富な機能ゆえに習熟に時間がかかるといった課題も指摘されています。
統合運用管理
統合運用管理ツールは、システム全体の監視やログ収集、インシデント対応を一元化するための基盤です。クラウドとオンプレを併用するハイブリッド環境での利用価値が高まっています。
ツール例① JP1/Integrated Management

(出典:日立)
日立の「JP1」は、国内で長年利用されてきた統合運用管理ツールであり、ジョブ実行管理に強みを持ちます。複数サーバーにまたがるバッチ処理を連携させ、一連の流れを自動実行できるため、夜間や早朝の監視工数を大幅に削減可能です。エラー発生時には該当ジョブや後続ジョブを柔軟に再実行でき、効率的なリカバリーを実現します。
ジョブ管理に加え、システム監視や障害対応の自動化にも対応しています。外形監視やログ収集によりシステムの健全性を可視化し、異常兆候を早期に検知可能です。障害発生時にはログ採取、メール通知、パトライトによるアラートまで自動で実行し、初動対応を迅速化します。
GUIで複雑な分岐処理を直感的に設定でき、大規模環境でも安定稼働する点が特長であり、現場担当者が安心して運用できる点が高く評価されています。
ツール例② Zabbix

(出典:Zabbix)
Zabbixは、オープンソース型の統合運用管理・監視ソフトウェアであり、世界中で広く利用されています。
ライセンス費用が不要なため、特に中堅から大規模システム環境でコストパフォーマンスの高い監視基盤を構築できる点が大きな魅力です。サーバーやネットワーク機器だけでなく、Webサイト、クラウド、コンテナなど幅広いITリソースをリアルタイムで監視し、ダッシュボードで全体の稼働状況を可視化できます。
一方でログ監視はやや弱く、条件分岐や高度な設定には外部スクリプトやUserParameterを要する場合があります。そのため、GUI中心で直感的に操作したい利用者にとってはハードルが高いと感じられることもあるでしょう。
ただし、Zabbixのエコシステムは活発で、オンラインナレッジや有償サポート、パートナー企業による導入支援が整っており、実運用での不安を軽減できるはずです。
Zabbixを導入すれば、数百台規模のサーバーやネットワーク機器を一元的に監視でき、障害検知や原因特定のスピードの向上を期待できます。
広告運用自動化
広告運用自動化ツールは、入札調整や予算配分、レポート作成を自動化し、運用効率と成果を最大化します。特に多媒体運用を行う企業にとって欠かせない存在です。
ツール例① Shirofune

Shirofuneは「1日10分でプロ品質の広告運用」を実現する国産の広告運用自動化ツールです。Google広告・Yahoo広告・Meta広告・Amazon広告など主要媒体を横断的に管理し、媒体ごとのデータを自動統合してレポート化できるため、従来は数時間かかっていたレポート作成がワンクリックで完了します。
広告運用に不慣れな担当者でも直感的に操作できるUIを備え、最適化提案をクリックひとつで反映できるため、広告初心者から経験豊富な運用者まで幅広い層に支持されています。
さらに、AIによるクリエイティブ分析機能を搭載しており、バナーや動画広告の成果を自動で評価・改善提案が可能です。これにより、入札調整や予算配分の最適化だけでなく、クリエイティブ面での改善サイクルを高速化できる点も特長です。
Shirofuneを導入することで、レポートや入札作業といった日常的な工数を削減し、運用者は戦略立案やターゲット分析など本来注力すべき領域に時間を割くことができます。広告運用の属人化を防ぎ、組織全体で広告成果を最大化したい企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。
ツール例② Optmyzr

(出典:Optmyzr)
Optmyzrは、Google広告の元開発者によって立ち上げられたリスティング広告運用支援ツールです。運用者が時間を取られやすい入札調整や予算配分を自動化し、レポート作成や異常検知まで一括で行えるため、広告アカウントを効率的に管理できます。
最大の強みは柔軟なルールエンジンです。運用者は自社に合った条件をノーコードで設定でき、低パフォーマンスのキーワードを停止したり、一定条件で予算を増減させたりといった処理を自動化できます。さらに専用ダッシュボードやアラート機能により、運用状況をリアルタイムで監視し、異常値を早期に発見可能です。
AIによる改善提案機能も備えており、運用担当者は戦略策定や顧客対応といったコア業務に集中できます。広告アカウント数が多い企業や代理店にとって、効率化と精度を両立させる強力なプラットフォームといえるでしょう。
ただし対応媒体はGoogleとYahoo!のリスティング広告に限られるため、幅広いデジタル広告を一元管理したい場合には他ツールの方が適しています。
構成管理
構成管理ツールは、サーバーやクラウド環境の設定をコードで管理し、インフラ運用を自動化します。IaC(Infrastructure as Code)の普及とともに導入が広がっています。
ツール例① Terraform

(出典:Terraform)
Terraform(テンフォーマー)は、HashiCorpが開発したインフラ構築・管理の自動化ツールであり、「Infrastructure as Code(IaC)」を代表する存在です。サーバーやネットワーク、クラウド環境の構成をコードで定義し、繰り返し安全にデプロイ・変更・削除できる点が特徴です。
具体的には、AWS、Azure、GCPといったクラウド上にサーバーやネットワークを一括構築できます。同じコードを利用すれば、テスト環境と本番環境をそっくりコピーでき、設定ミスを防ぎながら再現性の高い運用を実現します。
Kubernetesのクラスターを複数クラウドにまたがって展開したり、GitHub Actionsと連携してプルリクごとに一時的な「プレビュー環境」を自動作成したりすることも可能です。LambdaやS3といったサービスもコードでまとめて準備できるため、手作業による設定の手間を削減できます。
つまりTerraformは、人手で行うと煩雑でミスが起きやすいインフラ作業を、プログラムのように管理し、安全かつ効率的に自動化できるツールといえます。
ツール例② Ansible

(出典:Ansible)
Ansible(アンシブル)は、サーバーやネットワークの構築・設定・運用を自動化できるオープンソースのIT自動化ツールです。大きな特徴はエージェントレスで、対象サーバーに特別なソフトを導入せず、SSHやWinRM経由で操作できる点にあります。設定はシンプルなYAML形式で記述するため可読性が高く、誰が見ても理解しやすいコードとして管理可能です。
具体的には、LinuxやWindowsサーバーへのソフトウェアインストール、設定ファイルの配布、サービスの起動・停止といった日常運用を一括で自動化できます。さらにクラウド環境の初期セットアップ、複数サーバーへの一括設定、KubernetesやVMwareの管理など幅広いシーンに対応します。
Terraformでサーバーの箱を構築し、Ansibleでその中身(ミドルウェアやアプリケーション設定)を整えるといった連携利用も一般的です。これによりテスト環境と本番環境を同じ手順で迅速に構築でき、デプロイミスの回避や運用効率の向上につながります。
さらにRed Hatが提供する「Ansible Automation Platform」を導入すれば、エンタープライズ向けにセキュリティ強化、GUI管理、イベントドリブン自動化などが利用でき、全社的な自動化基盤として活用可能です。
まとめ
運用自動化ツールは、単なる効率化の仕組みではなく、企業の競争力を高めるための基盤です。RPAによる定型業務の削減、RBAや統合運用管理によるシステムの安定化、広告運用自動化による迅速な意思決定、構成管理によるインフラの再現性確保など、各分野で異なる役割を果たします。
導入の意義は業務ごとに異なりますが、共通して重要なのは人が担うべき業務とツールに任せる業務を明確に分けることです。これが成果の最大化につながります。
一方で、ツールは万能ではありません。自社業務への適合性、外部システムとの連携性、長期運用の可否、費用対効果、サポート体制などの観点から慎重に比較・選定する必要があります。特に成長フェーズにある企業では、要件やKPIの変化に応じて定期的にツールを見直すことが欠かせません。
運用自動化ツールの導入は、工数削減やコスト効率化にとどまらず、リスク低減や戦略的業務へのシフトを可能にします。適切に比較・選定し、自社の成長に合った最適なツールを導入することが、今後の企業運営を左右するといえるでしょう。

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現在までに米大手EC企業や広告代理店への導入実績。
2025年3月に米国広告業界で最古かつ最大級の業界団体である全米広告主協会からMarketing Technology Innovator AwardsのGoldを受賞。





