
ECサイト運営における広告の種類や広告戦略策定のステップを解説

- 戸栗 頌平
ECサイトを運営していると、「広告費を増やしているのに売上げが思うように伸びない」「一定のアクセスは集まっているのに購入につながらない」「ROASが目標値を下回り、広告投資の判断が難しい」といった課題に直面することがあります。
特に近年は、EC市場そのものが拡大している一方で、競合企業の参入や広告投下も増えました。経済産業省の最新調査によると、2024年の物販系BtoC-EC市場規模は15兆2194億円、前年比3.7%増となり、EC化率も9.78%まで上昇しています。
広告費を投じれば一定の流入は獲得できます。しかし、ターゲット設定、訴求内容、配信媒体、LPや商品ページの設計、購入後のリピート施策までが連動していなければ、クリックは増えても売上げや利益にはつながりません。特にEC広告では、CPAやROASだけを短期的に見るのではなく、購入単価、リピート率、LTV、在庫状況、利益率まで踏まえて戦略を設計することが重要です。
本記事では、ECサイト運営において活用される主な広告の種類から、広告戦略を策定する重要性、見直すべきタイミング、具体的な策定ステップまでをわかりやすく解説します。さらに、企業の成功事例も交えながら、売上げ拡大と費用対効果の改善につながる広告戦略の考え方をご紹介します。
広告戦略とは
広告戦略とは、ビジネス目標を達成するために、「誰に、何を、どのチャネルで、どのように伝えるか」を設計する一連の計画です。単に広告媒体を選んで配信することではなく、売上げ拡大、認知向上、新規顧客獲得、リピート購入促進などの目的に応じて、広告活動全体の方向性を定めることを指します。
まずは、ECサイトに特化した広告戦略の定義と押さえておくべき広告の種類、業界の広告費水準を整理します。
ECサイトにおける広告戦略とは
ECサイトにおける広告戦略とは、自社商品やブランドを購入につなげるために、流入から購入、リピートまでを見据えて広告チャネルとクリエイティブ、予算配分を設計する計画を指します。実店舗とは異なり、ECサイトは検索やSNSなどデジタル接点が中心です。そのため、各接点での出会い方を緻密に設計しなければ売上げが積み上がりません。
ポイントは、新規顧客の獲得には検索広告やショッピング広告、認知拡大にはSNS広告や動画広告、リピート促進にはリターゲティング広告といったように、目的とチャネルを対応させながら全体最適を図ることです。重要なのは、個別の広告施策を場当たり的に走らせるのではなく、ファネル全体(認知→検討→購入→リピート)を一気通貫で設計することです。戦略があると改善判断もぶれず、効率よく広告ノウハウを蓄積できます。
ECサイトにおける広告の種類
ECサイトで活用される広告には、大きく分けて検索連動型広告、ショッピング広告、SNS広告、動画広告、アフィリエイト広告、メール広告の6種類があります。物販ECの場合はこれに加えて、AmazonスポンサープロダクトやRakuten RPPなどのモール内広告も主要チャネルになるでしょう。
それぞれの広告は得意とする役割が異なり、ファネルのどの段階で機能するかも違うため、自社の商品特性と目的に合わせて組み合わせることが、ECサイトの広告戦略立案で重要です。ここでは、ECサイトにおける広告の種類を見ていきましょう。

検索連動型広告(リスティング広告)

検索連動型広告(リスティング広告)とは、ユーザーがGoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索したキーワードに連動して、検索結果ページに表示されるテキスト広告です。購入意欲が顕在化しているユーザーに直接アプローチできる点が強みで、ECサイトでもっとも基本となる広告チャネルといえます。
たとえば、「ランニングシューズ おすすめ」や「敏感肌 化粧水」といった商品名やカテゴリ名で検索するユーザーは購入直前の状態です。そのため、コンバージョン率が高くなりやすい傾向があります。一方で、人気キーワードはクリック単価が高騰しやすく、放っておくと予算が一気に消化されます。
除外キーワードの設定、入札戦略の選択、レスポンシブ検索広告のアセット改善といったチューニングが運用効率を大きく左右するわけです。
ショッピング広告

ショッピング広告とは、Google Merchant Centerに登録した商品データをもとに、検索結果に商品画像や価格、ショップ名を表示する広告フォーマットです。物販系ECに最適化された広告で、テキスト広告では伝えきれない視覚情報を活かして商品のメリットを直接訴求できます。
ショッピング広告の配信には、Google広告アカウントとGoogle Merchant Center、商品データ(フィード)の3つが必要です。フィードでは商品識別子(GTINやMPN、ブランド)、availability、image_link、product_type、google_product_categoryといった主要属性を正しく入力することで、関連性の高い検索クエリで表示されやすくなります。
アパレルや雑貨、家電など、見た目で選ばれる商品ジャンルでは特に効果が高く、競合との比較検討フェーズで自社商品が選ばれる確率を引き上げられます。
なお、2022年以降スマートショッピングキャンペーンはP-MAX(Performance Max)キャンペーンに移行しました。ショッピング在庫を中心に検索やディスプレイ、YouTube、Gmail、Discoverまで横断配信できる仕様になっています。
P-MAXの学習がうまく回るための目安は1キャンペーンあたり月15件以上のコンバージョンとされており、これを下回るとアセットグループを統合してデータを集約する判断が定石です。アセットグループは商品カテゴリやターゲット層が明確に異なるときだけ分割します。見出しは13本以上登録するとアセット評価が高くなりやすいなど、Googleのアセット強度を意識した設計がそのまま成果に効きます。
商品フィードを起点に、Google全面の自動配信と手動の構造設計をかけ合わせるのが、P-MAX運用の核心です。
SNS広告

(引用:Facebook)
SNS広告とは、Meta(Facebook/Instagram)、X(旧Twitter)、TikTok、LINEなどのソーシャルメディア上で配信される広告です。SNSの利用データをもとに、年齢、性別、興味関心、行動履歴など細かなセグメントでターゲティングできるのが特徴です。
ECサイトでは、未認知層への新規アプローチやブランドの世界観を伝えるブランディング目的で活用されます。InstagramやTikTokではビジュアルやショート動画が機能しやすく、化粧品やアパレル、フード、雑貨など世界観で選ばれる商材と相性が良い傾向があります。
また、セール期間中に自社サイトを訪問したユーザーにリマーケティング広告を配信するのも定番の手法です。
近年DTCブランドを中心に定着しているのが、UGC(ユーザー生成コンテンツ)型クリエイティブの活用です。実際のユーザーや一般ライクなインフルエンサーが自然な口調で商品を使うショート動画は、ブランドが作り込んだ広告よりもMetaやTikTokのフィードに馴染みやすくなります。UGC型クリエイティブがCTRやCVRを底上げするケースが頻繁に共有されています。
重要なのはクリエイティブの本数で、月10〜20本以上の差し替えとABテストを継続するようにしましょう。リターゲティング配信を組み合わせることで、サイト訪問者やカート放棄ユーザーへの再アプローチもしやすく、ファネル全体をSNS広告で設計するD2Cブランドも増えています。
動画広告

(引用:YouTube)
動画広告とは、YouTubeやSNS、Webメディア上で再生される映像コンテンツによる広告です。視覚と聴覚に同時に訴えられるため、商品の使い方や世界観、ブランドストーリーを短時間で伝えるのに向いています。
ECサイトでは、新商品の認知拡大やブランドの理解促進、Webサイト誘導の目的で活用されます。YouTubeのインストリーム広告やバンパー広告、デマンドジェネレーションキャンペーンを組み合わせることで、検索や比較検討に至る前段階のユーザー層にリーチすることが可能です。
動画は制作コストが高くなりがちですが、ショート動画を中心にスマートフォン視聴に最適化することで、SNS広告との連動運用もしやすくなります。
アフィリエイト広告

(引用:A8.net)
アフィリエイト広告とは、アフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)を介して提携メディアや個人ブロガーに自社商品を紹介してもらい、成果(購入や申し込み)が発生したときに報酬を支払う成果報酬型の広告です。固定費を抑えながら多様なメディア経由で集客できる仕組みです。
ECサイトでは、レビューや比較記事、ランキング記事から流入する見込み客の獲得に強みがあります。化粧品、健康食品、サブスクリプション商品など、購入前に第三者の口コミやレビューを参考にする商材で効果が高くなりやすい傾向があります。
一方で、媒体側のコンテンツ品質によってはブランド毀損のリスクもあるため、提携メディアの選定とクリエイティブの統一感には注意が必要です。
メール広告
メール広告とは、自社が保有する顧客リストや外部のメディアが保有する読者リストに対して、商品やキャンペーンを案内する広告です。すでに自社や提携メディアと接点を持つユーザーに配信されるため、新規広告と比べてコンバージョン率が高くなりやすい傾向にあります。
ECサイトでは、既存顧客へのリピート促進、休眠顧客の掘り起こし、新商品の告知、季節キャンペーンの案内などで活用されます。配信タイミング、件名、CTA設計を改善することで、開封率とクリック率を底上げが可能です。
CRMツールやMAツールと連携させ、購入履歴や閲覧履歴に応じたパーソナライズ配信に発展させると、メール広告は単なる告知から売上げを生み出すチャネルへと変わります。
モール内広告(Amazon広告・Rakuten RPPなど)

(引用:Amazon)
モール内広告とは、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングといったECモール内で、検索結果や商品ページに自社商品を露出させる広告です。Amazonスポンサープロダクトや楽天RPP、楽天CPA、Yahoo!ショッピングのPRオプションが代表的で、すでに購入を検討しているモール内ユーザーへ直接アプローチできるチャネルになっています。
物販ECにとってモール内広告は、Google広告と並ぶ広告費の主戦場になりつつあります。電通の調査でも、物販系ECプラットフォーム広告費は2025年に2444億円(前年比112.5%)と再成長の局面に入っており、モール出店者にとって無視できない投資領域です。
モール内広告は、商品単位でACoS(Advertising Cost of Sales)やROASを細かく追える分、商品マスタやレビュー、検索ワードと連動した運用設計が必要になります。
Amazon広告では、最初にスポンサープロダクトのオートターゲティングで実際にコンバージョンに至った検索語句を収集し、成果の良いキーワードをマニュアルターゲティングのキャンペーンに昇格させていく運用が王道です。
商品単位でACoSが目標値を超え続けている場合は、検索語句レポートから無駄打ちキーワードを除外し、商品ページのタイトルや画像、レビュー数を改善します。そうすることでオーガニックの転換率を引き上げる、というオン広告とオフ広告を両輪で回す発想が成果に直結します。
ECサイトにおける広告費の比率や目安
ECサイトの広告費は、業界や商品単価、利益率によって最適水準が変わりますが、おおまかな目安として売上げの5〜20%程度を広告費に充てる企業が多い傾向があります。新規参入期は20%前後まで広告費を投下して認知獲得と顧客基盤づくりに振り切り、安定成長期に入ると5〜10%程度に落ち着くケースが一般的です。
業界全体の動向としては、電通の調査によると、2025年の物販系ECプラットフォーム広告費は2444億円(前年比112.5%)と再成長の局面を迎えています。物価高騰によりセールやポイント還元を志向する消費者へのアプローチが増え、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどモール内広告への投資が拡大していることが背景にあります。
ROASの目安は粗利率と受注頻度によって大きく変動するため、業界平均の数字を鵜呑みにするのではなく、損益分岐ROASを自社で逆算しておくことが重要です。計算式は「損益分岐ROAS = 1 ÷ 粗利率 × 100%」で、たとえば粗利率30%の商材なら最低ROASは333%、粗利率50%なら200%が損益分岐点になります。ここに新規獲得かリピート獲得かのLTV補正を加えて、自社の目標ROASを設計するのが現実的なアプローチです。
ECサイト運営における広告戦略策定の重要性
広告戦略を持たずに走り出すECサイトは、競合に押されて停滞しやすいだけでなく、広告費の使い方も場当たり的になりがちです。ここでは、戦略策定が必要な3つの理由を順に解説します。

広告費の無駄打ちをなくし、利益率を守るため
ECサイトは実店舗と異なり、放っておいても自然に客足が増えることはありません。広告戦略なしに場当たり的に広告を出し続けると、費用対効果の低い施策に予算を浪費してしまいます。戦略的にCPA(顧客獲得単価)やROAS(広告費用対効果)を設計し管理することで、限られた予算を最大限に活かし、利益率を守りながら成長できます。
たとえば、損益分岐ROASを350%と定めた場合、それを下回るキャンペーンは原則として停止または見直し、上回るキャンペーンに予算を寄せる運用が可能です。
新規獲得とリピート獲得で許容CPAを別々に設定する、LTV(顧客生涯価値)を踏まえて初回購入時の許容赤字幅を決めるなど、利益から逆算した予算配分ルールを最初に作っておくと、月次の判断が大幅に楽になります。広告戦略は、攻めの設計でありながら、利益を守るための防御策としても機能します。
検索やSNS上での顧客接点を競合に奪われるのを防ぐため
EC市場は競争が激しく、検索結果やSNSのフィードは競合他社との奪い合いです。明確な広告戦略があれば、どのチャネルでどのターゲット層にどのメッセージを届けるかを一貫させられます。戦略のない企業は競合に顧客接点を奪われ続け、じわじわとシェアを失っていくでしょう。
検索結果ページでは、リスティング広告とショッピング広告、自然検索の上位記事を含めると、ファーストビューだけで自社と競合が同時に並びます。そこで自社が選ばれるかどうかは、広告文の訴求軸、ショッピング広告の画像と価格、ランディングページの信頼性要素の積み重ねで決まります。
SNS広告でも同様に、同じターゲット層に対して競合とクリエイティブで競い合う構造です。広告戦略があると、各接点でどう差別化するかを事前に言語化でき、現場のクリエイティブ制作も迷わなくなります。
購入後もつながり続け、リピーターを育てるため
新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客へのリターゲティングやリピート促進まで含めた広告戦略を持つことで、1人の顧客から得られる収益を長期的に最大化できます。新規獲得コストは既存顧客へのアプローチコストの数倍にのぼることも多いため、ファネル全体を見渡した戦略設計は収益構造の健全化に直結します。
具体的には、購入後30日以内のクロスセル配信、定期購入の継続率を高めるリマインドメール、休眠顧客への再アクティベーション施策、優良顧客への類似ユーザー拡張など、顧客フェーズごとに広告メッセージとチャネルを設計しましょう。
特にカート放棄ユーザーへのリターゲティングは、ECサイトの売上げ回復施策として効果が大きい領域です。業界の運用ノウハウとしては、商品閲覧者は7日以内・カート放棄者は3日以内・購入完了者は除外、というセグメント設計が定石です。
新規広告だけで成長しようとすると、CPAの上昇とともに事業の利益率が悪化していくのが定石ですが、リピート顧客がLTVを底上げしてくれる仕組みがあれば、新規広告の許容CPAも引き上げられます。広告戦略の射程をリピート顧客まで広げることが、ECサイトの収益力を持続的に高める前提条件になります。
ECサイト運営における広告戦略策定のタイミング
広告戦略は一度作って終わりではなく、事業フェーズや市場環境の変化に合わせて見直すべきものです。以下では、戦略策定や見直しを検討すべき4つの代表的なタイミングを順にご紹介します。

サイトローンチ前・立ち上げ期
ECサイトを開設する前の段階が、広告戦略を策定する最初のタイミングです。この時期に、誰に、何を、どのチャネルで届けるかを設計しておくことで、ローンチ直後から無駄のない集客ができます。後から戦略を立て直すのはコストも時間もかかるため、土台として最初に固めておくことが重要です。
立ち上げ期に決めておくべきは、ターゲットペルソナ、ブランドメッセージ、損益分岐ROAS、初期の主力チャネル、ABテストの方針、計測設計などです。特にコンバージョン計測(Google広告のタグ、GA4の設定、拡張コンバージョンの実装)はサイト公開と同時に動いていないと、最初の3カ月のデータが資産にならず後悔します。
立ち上げ期の広告戦略は、攻めの設計と同時に、データを正しく蓄積する基盤づくりでもあります。
新商品・新カテゴリの投入時
既存サイトであっても、新しい商品ラインや商品カテゴリを追加するタイミングは戦略を見直す好機です。
ターゲット層や訴求メッセージが既存商品と異なる場合も多く、既存の広告施策をそのまま流用すると効果が出ないケースがあります。商品特性に合った広告種別やクリエイティブ、予算配分を改めての設計が必要です。
たとえば、化粧品ECでスキンケアからメイクアップへラインを拡張する場合、ターゲットの世代やSNS上で響くクリエイティブのテイストが変わります。既存商品向けの検索広告のキーワード群やSNSクリエイティブをそのまま流用するのではなく、新カテゴリに合わせた検索ニーズ調査、競合分析、訴求軸の再設計を行います。
新商品投入は、広告戦略を再点検する自然なきっかけとして活用できるでしょう。
売上げが伸び悩んでいる時
アクセス数や転換率が落ちているにもかかわらず、広告費だけがかさんでいる状況は、現行の広告戦略が市場や競合の変化に対応できていないサインです。このタイミングで改めて戦略を見直し、どのチャネルが機能していないか、ターゲット設定やクリエイティブに問題がないかを分析することで、コストを抑えながら売上げ回復の糸口を見つけられます。
具体的には、過去3カ月のチャネル別ROASと新規/リピート別CPAを並べて、どこに無駄が出ているかを洗い出します。検索広告で除外キーワードが整理されていない、SNS広告のクリエイティブが半年以上同じ、リターゲティングのオーディエンスがメンテナンスされていない、といった放置箇所が見つかることが多い領域です。
売上げの伸び悩みは、戦略の劣化を知らせるアラートとして受け止め、半期に1回の点検サイクルに組み込んでおくと安全です。
季節の需要期を前にした時
年末商戦やバレンタイン、母の日、夏セールなど、需要が高まることがあらかじめわかっているタイミングは、広告戦略を事前に仕込んでおく絶好の機会です。需要期の直前になってから動き出すのでは手遅れになることも多く、少なくとも1〜2カ月前には予算配分や訴求メッセージ、使用する広告チャネルを設計しておく必要があります。
需要期にやるべきは、過去同時期の広告データの振り返り、競合の動向リサーチ、需要が立ち上がる前のリターゲティングオーディエンスの再構築、クリエイティブの事前制作、ランディングページの季節用差し替え準備などです。
スマート自動入札を使っている場合、需要期前にいきなり予算や入札戦略を変えると学習段階に戻ってしまうため、徐々に予算を引き上げる設計が現場ではよく採用されます。需要期に売上げを取り切れるかどうかは、準備期間の長さで決まる側面が大きいといえます。
ECサイト運営における広告戦略策定のステップ
広告戦略を実際に作っていく際には、目標設定から効果測定までを順を追って進めることで、施策の抜け漏れを防げます。ここでは、5つのステップを順に解説します。

STEP1:目標やKPIの設定
まず、何のために広告を打つのかを明確にします。新規顧客獲得なのか、リピート購入の促進なのか、新商品の認知拡大なのかによって、選ぶべき広告手法や予算配分が大きく変わります。目標を定めたら、CPA、ROAS、CVRなど具体的な数値目標(KPI)に落とし込むことで、後の効果検証が可能です。
ECサイトの場合、月次の売上げ目標、新規購入者数、リピート率、平均注文単価、LTVといった事業KPIに広告KPIをひも付けて設計します。たとえば月商3000万円を目標にする場合、平均注文単価8000円、ROAS400%という前提なら、広告費の上限は約750万円といった逆算ができます。
広告KPIだけが独り歩きしないよう、必ず事業KPIとセットで目標を引くことが戦略の出発点です。
STEP2:ターゲット顧客の定義
誰に届けるかを具体化します。年齢や性別、居住地といった属性だけでなく、購買行動、興味関心、悩みなどを含めたペルソナを設定することで、広告のチャネル選定やクリエイティブの方向性が定まります。ターゲットが曖昧なまま広告を出しても、費用対効果は上がりません。
具体的には、自社の購入データから優良顧客の属性や行動パターンを抽出し、ペルソナの解像度を上げてください。
新規顧客と既存顧客でペルソナを別々に作り、それぞれに合わせた広告チャネルと訴求軸を設計するのが有効です。新規ペルソナにはSNS広告での認知獲得、既存ペルソナにはメール広告やリターゲティング配信、という形でチャネルとセグメントを対応させることで、無駄な配信が減ります。
STEP3:広告チャネルと予算の配分
設定したターゲットと目標にもとづき、どの広告チャネルに予算を振り分けるかを決定します。新規獲得には検索広告やショッピング広告、認知拡大にはSNS広告や動画広告、リピート促進にはリターゲティングやメール広告といったように、目的とチャネルを対応させながら予算を最適に配分します。
予算配分では、ファネルの上から下までを意識した80:20または70:20:10の配分(新規獲得:リピート:実験予算)の採用が推奨です。実験予算は、新しい広告フォーマットや新規チャネルのテスト用に確保しておく枠で、これがないと改善のネタが尽きます。
月次や四半期で配分比率を見直し、ROASが伸びているチャネルへ柔軟に予算を寄せられる設計にしておくと安心です。
STEP4:クリエイティブの制作と配信
チャネルと予算が決まったら、広告文、バナー、動画などのクリエイティブを制作し、実際に配信を開始します。このとき重要なのは、最初から「これが正解」と決め打ちしないことです。同じ広告を1種類だけ出すのではなく、複数のパターンを用意し、どの表現や画像、動画がもっとも反応されるのかを確認しながら改善していく必要があります。
検索広告では、複数の見出しや説明文を用意し、ユーザーの検索意図に合わせてさまざまな組み合わせで表示できるようにしましょう。その上で、配信結果を見ながら、反応の良い広告文は残し、反応が弱いものは別の表現に入れ替えていきます。商品の特徴を伝えるだけでなく、価格、実績、悩みへの共感、購入後のメリットなど、複数の切り口を試すことが大切です。
SNS広告では、静止画だけでなく、短い動画や利用者の声に近い素材、訴求内容を変えたパターンをいくつか同時に配信します。たとえば「価格の安さ」を訴求する広告、「品質の高さ」を訴求する広告、「利用シーン」を見せる広告では、反応するユーザーが異なる場合があります。配信後すぐに判断するのではなく、一定期間は結果を見ながら、クリックされやすい広告や購入につながりやすい広告の見極めが必要です。
また、広告の成果を正しく把握するための計測環境づくりも重要です。近年は、プライバシー保護の流れが強まり、以前のようにすべてのユーザー行動を正確に追跡することが難しくなっています。特にCookieの制限やiPhoneのプライバシー設定の影響により、実際には購入が発生していても、広告管理画面上では成果として反映されないケースがあります。
このような計測漏れが増えると、広告の成果を正しく判断しにくくなるわけです。本当は売上げにつながっている広告を「成果が悪い」と判断して止めてしまったり、反対に成果につながっていない広告へ予算を使い続けてしまったりする可能性があります。そのため、ECサイトでは、購入完了時の情報を安全な形で活用し、広告の成果をできるだけ正確に把握できる仕組みを整えることが重要になっています。
つまり、広告運用では、クリエイティブを改善することと同じくらい、成果を正しく測れる状態を作ることが重要です。どの広告が売上げにつながっているのかを正しく把握できてはじめて、予算配分や改善施策の精度を高められます。
STEP5:効果測定とPDCAの実施
配信後は設定したKPIをもとに効果を定期的に測定し、改善を繰り返します。
何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかをデータにもとづいて判断し、予算の再配分やクリエイティブの修正、ターゲティングの調整を行います。広告戦略は一度作って終わりではなく、このPDCAサイクルを継続することが長期的な成果につながるでしょう。
実際の運用においては、週次でクリエイティブ単位のパフォーマンスを、月次でチャネル別のROASとCPAを、四半期で戦略全体(ターゲット、損益分岐ROAS、配分比率)を見直す3層の運用サイクルが現場で機能しやすい型です。
GA4とGoogle広告の連携、Looker Studioでのデータの可視化、Amazonや楽天など複数媒体の横断レポートを整えておくと、判断のスピードが一気に上がります。PDCAサイクルが回り続ける仕組みを作れるかどうかが、戦略の質を最終的に決めます。
ECサイト運営における広告戦略策定の成功事例
ここまで解説してきた広告戦略策定の流れを、実在企業の事例から確認します。ここでは、ECサイトの広告戦略がどう成果に結びついたかを3社の例で見ていきます。
事例①:株式会社山善(多商品EC×Amazon広告の自動化)

(引用:株式会社山善)
工作機械・住宅設備・家庭用品まで幅広い商材を扱う商社の株式会社山善は、Amazon広告を中心とした複数媒体で1万点を超える商品を出稿しています。商品点数が膨大なため、商品ごとの入札調整やキーワード管理に十分な時間を割けず、運用工数が肥大化していました。
そこで広告運用自動化ツールのShirofuneを導入し、Amazon広告と検索広告のキーワード調整や入札最適化、レポーティングを自動化。担当者は戦略立案や売り場改善など上位の判断に集中できる体制へ切り替えました。その結果、商品単位での運用粒度を保ったままROASの目標を達成し、運用工数も削減できました。
モール内広告のように細かな運用が必要な領域では、入札やレポーティング業務を自動化に任せ、人は予算配分やクリエイティブといった戦略判断に時間を寄せる役割分担が機能します。本事例の詳細はこちらで詳しくご紹介しています。
事例②:株式会社にしき食品(自社EC強化×ブランド成長)

(引用:株式会社にしき食品)
レトルトカレー・無添加食品を展開する株式会社にしき食品は、ECモール依存からの脱却と自社ECサイトでの売上げ強化を経営課題に掲げていました。
自社ECの売上げを伸ばしたい一方で、専任の広告運用担当者が不在のため、検索広告やSNS広告のPDCAを十分に回せていませんでした。そこでShirofuneを導入して広告運用の自動化と日次最適化を進めるとともに、浮いた工数を商品ページの改善やブランドコンテンツ制作へ再配分。
結果、自社ブランドの売上げが前年比130%超まで伸長しました。自社ECの広告は、配信側の調整に加え、ランディング先となる商品ページやブランドストーリーの質と組み合わせて初めて成果につながります。広告運用を自動化し、人的リソースをサイト体験の改善へ振り向ける発想が、自社EC強化の段階で成果を押し上げる要素になるわけです。
本事例の詳細はこちらで詳しくご紹介しております。
事例③:株式会社I-neのBOTANIST D2Cヘアケアブランド成長(公開情報による好例)

(引用:BOTANIST)
株式会社I-neが運営するヘアケアブランドのBOTANISTは、2015年の発売以降、SNS広告を起点とした認知拡大とECチャネルでの販売強化を組み合わせた戦略で急成長を遂げました。
既存ヘアケア大手がひしめく市場で、新興D2Cブランドとして認知獲得と販売チャネル拡大を同時に進める必要がありました。そこでInstagramを中心とした世界観発信型のSNS広告で20代女性の認知を一気に獲得しています。その後は検索広告やショッピング広告、ドラッグストアの店頭展開、オンライン施策を組み合わせ、ファネル別に役割を分担。
認知フェーズはビジュアル中心の広告、検討フェーズは検索広告とLP最適化に集中投下しました。その結果、累計販売数はブランド全体で1.5億個を突破し、2021年のリニューアル後はシャンプーやトリートメントの売上げが前年比114%まで伸長したとI-ne社から公表されています。
D2Cブランドの広告戦略は、ターゲットペルソナを絞り込んだ上で、認知フェーズと検討フェーズで使うチャネルとクリエイティブを切り分けることが成長の起点です。世界観発信と購入導線整備の両方をやり切れる体制があるかどうかが、ブランドの成長速度を左右します。
まとめ
ECサイトの広告戦略を策定するためには、各広告チャネルの特性を理解した上で、目標設定からターゲット定義、チャネル選定、クリエイティブ制作、PDCAまでを順序立てて設計することがスタートになります。
立ち上げ期や新商品投入時、需要期の前、売上げの伸び悩み時など、戦略を見直すべきタイミングは複数あり、半期に1回は必ず点検する運用サイクルを組み込むようにしましょう。広告戦略は事業KPIと連動させ、利益を守りながら成長させるための地図として運用すべきものです。
複数チャネルの広告データを横断で集約し、戦略の判断と改善に集中できる環境を整えるには、広告運用自動化ツールのShirofuneのような基盤を活用します。そうすることで、ECサイト運営者は商品開発や顧客体験の改善といった本質的な仕事に時間を振り向けやすくなります。
豪州ビジネス大学院国際ビジネス修士課程卒業。複数企業と起業を経てBtoB専業マーケティング代理店へ。その後、外資SaaSのユニコーン企業の日本法人立上げを行い、法人営業開始後マーケティング責任者として創業期を牽引。現在、日本のBtoBマーケティングの支援事業を行う株式会社LEAPTにて代表取締役。また、株式会社Shirofuneの外部マーケティング責任者を兼任。





