Amazon広告広告戦略

Amazon広告の種類や広告費の目安、広告戦略策定の考え方を解説

菊池 満長

Amazonに出品しているメーカーやEC事業者の現場では、CPCの高騰や利益の圧迫、広告フォーマットの多様化に悩む声が日増しに大きくなっています。

電通の調査によると、2025年の物販系ECプラットフォーム広告費は2444億円(前年比112.5%)に達し、再成長の局面に入りました。さらに、Amazon広告は2025年にUnified Campaign Managerの登場でスポンサー広告とDSPを1つのコンソールで運用できるフルファネル媒体へと進化し、戦略設計の前提が大きく変わっています。

このような背景の中、Amazon広告に興味のある方や、すでに出稿しているものの成果につながっていないと悩む方は多いのではないでしょうか。

本記事では、Amazon広告の種類と費用、戦略策定が必要な理由とタイミング、現状分析からPDCAまでの5ステップ、成功事例を網羅的に解説します。

広告戦略とは

広告戦略とは、売上や利益といったビジネスゴールから逆算し、広告媒体・KPI・予算配分・運用ルールを統合的に設計する一連の行動計画です。出稿テクニックや個別の入札調整の前に、「ゴールへ到達するための設計図」を持つことが本質といえます。

特にAmazon広告は、スポンサープロダクト・スポンサーブランド・スポンサーディスプレイなど役割の異なる複数フォーマットが同じ管理画面に並びます。さらに、広告経由の販売がオーガニック検索順位にも影響する独自の構造を持っています。そのため、戦略の有無がACoSやROASといった費用対効果の指標に直結し、同じ広告費でも成果が大きく変わっていくのです。

まずはECモール特有の構造を踏まえたAmazon広告戦略の定義と、各広告フォーマットの全体像、広告費の目安を順に整理します。

Amazon広告における広告戦略とは

Amazon広告における広告戦略とは、複数の広告フォーマットを目的別に配分し、ACOS(Advertising Cost of Sale:売上高広告比率)やTACOS(Total Advertising Cost of Sales:総売上げに対して広告費が占める割合)などのKPIで投資効率を最適化し続ける設計と運用の総体です。

ECモール特有の制約として、販売手数料やFBA手数料、在庫制約、オーガニック順位への影響があり、これらを前提に戦略を組み立てることが他媒体と比べて重要になります。

Amazon広告はクリック課金(CPC)、インプレッション課金(CPM)、視聴課金(CPV)が混在する複合的な媒体です。スポンサープロダクト、スポンサーブランド、スポンサーディスプレイといったスポンサー広告群、Amazon DSPやストリーミングTV広告、オーディオ広告を組み合わせることで、認知から検討、購買、LTVまでファネル全体をカバーできます。

Unified Campaign Manager(統合キャンペーンマネージャー)の登場により、ファネル横断の戦略設計が前提になった点も2025年以降の大きな変化です。さらにAmazon Marketing Cloud(AMC)は2024年10月以降、スポンサー広告のみのアカウントでも利用可能になりました。効果検証の粒度が一段引き上がったことで、データドリブンの戦略運用がしやすくなっています。

Amazon広告の種類

Amazon広告は、大きく分けると自社運用型のスポンサー広告群と運用サポートを前提とするAmazon DSPやStreaming TV、オーディオ、カスタム広告ソリューションの2種類で構成されています。

それぞれが検索意図への刈り取り、ブランド指名強化、リーチ拡大、ブランド共創と役割を分担しており、戦略策定の中核は各フォーマットの組み合わせ設計になります。以下では、6種類の広告の特徴を詳しく紹介します。

スポンサープロダクト広告

スポンサープロダクト広告とは、検索結果ページや商品詳細ページに表示されるキーワード連動/ASIN連動広告で、Amazon広告のなかでもっとも基本かつ売上に直結するフォーマットです。

クリック課金で配信され、日本のCPC相場はカテゴリや競合状況によって10円台から200円超まで幅広く分布し、人気カテゴリでは通常30〜50円が繁忙期に100円超へ跳ね上がるケースもあります。

主な目的は、検索意図にもとづく購買の刈り取り、商品ページへの送客、レビュー獲得初期施策です。ファネルでは購買フェーズの中核を担い、新規ブランドが立ち上げ初期に予算の60〜70%程度を割り当てるケースが多く見られます。

一方で、コピー商品やカテゴリリーダーとの入札競争に巻き込まれやすく、主要キーワードはACOSが粗利率を超えやすい点に注意が必要です。後述するBEACOS(損益分岐点ACOS)を商品ごとに設計した上で、入札上限を明確に決めて配信する運用が前提になります。

スポンサーブランド広告

スポンサーブランド広告とは、ブランドロゴ、カスタム見出し、最大3商品を同時に訴求できる検索結果上部の大型広告で、Amazon Brand Registryへのブランド登録が必須のフォーマットです。プロダクトコレクション、ストアスポットライト、ビデオ(SBV)の3種類があり、目的に応じて使い分けます。

主な目的はブランド認知の獲得、ブランドストアへの送客、ブランド指名検索の強化です。ファネル全体では中層から上層を担う位置づけで、NTB(New-to-Brand)率やブランドストア訪問数、ブランドリフトといったKPIと相性が良いフォーマットです。

スポンサーブランドビデオは2024年から2025年にかけて在庫が拡大しており、認知層へのリーチ手段として複数フォーマット組み合わせ設計で活用しやすくなっています。検索意図が顕在化したユーザーに対して、ブランドの世界観を一気に伝えられるのが他フォーマットにない強みです。

Amazon DSP

(引用:amazon ads

Amazon DSPとは、Amazonの一次データにもとづいてAmazon内外のディスプレイや動画、オーディオ枠にプログラマティック配信できるDemand-Side Platformです。在庫はAmazon.co.jp内に加え、Prime Video、Twitch、サードパーティサイト、CTV在庫など多岐にわたります。

スポンサー広告との最大の違いは、キーワードではなくオーディエンスに当てに行くこと、Amazonの外(Prime Videoや提携サイト)にも配信できる点の2つです。主な目的は認知獲得、リターゲティング、未購入オーディエンスへの再配信、ブランドリフトで、ファネル全体をカバーします。

スポンサー広告で取り切れない層へのアプローチに有効で、フルファネル設計の中核を担います。

ストリーミングTV広告

(引用:amazon ads

ストリーミングTV広告(STV)とは、Prime VideoやTwitchなどのストリーミング在庫に配信されるスキップ不可の動画広告です。課金はCPMやインプレッション、リーチベースで設計されます。

2025年には在庫が大きく拡張され、Netflix、Disney+、Hulu、Roku、Spotify、SiriusXM、iHeartMedia、Microsoftなど外部の主要ストリーミングサービスにも配信できるようになりました。なお、Amazonの広告付き無料ストリーミングサービスFreeveeは2025年内にPrime Videoへ統合される形でサービス終了し、Amazon系のストリーミング在庫はPrime Video中心に再編されています。

主な目的は新規ブランドの認知獲得、季節キャンペーン、Prime Day前のリーチビルディングです。最上層ファネルの認知層を担い、スポンサー広告と組み合わせてNTB比率を底上げする運用が広く採用されています。テレビ広告の枠を予約せずに同等のリーチを得られる点で、中堅ブランドにも投資余地が広がっています。

オーディオ広告

(引用:amazon ads

オーディオ広告とは、Amazon Music(無料プラン)、Alexa対応デバイス、iHeartMediaなど提携プラットフォーム上で配信される音声広告です。2025年にはAmazon AdsとiHeartMediaがプログラマティック音声を強化し、Amazon DSP経由でiHeartの音声在庫にアクセスできるようになりました。

主な目的は、ながら聴きや運転中、家事中といったスマートフォン画面を見られない可処分時間中のリーチ獲得です。ファネル上部のオーディエンスにリーチする手段として、動画と組み合わせることで自宅、モビリティ、職場のあらゆるシーンでカバーできます。

視覚に頼れない分、ブランド名や音声ロゴ、印象的なメッセージといった聴覚特化のクリエイティブ設計が成果を左右します。

カスタム広告ソリューション

(引用:amazon ads

カスタム広告ソリューションとは、Amazon Adsチームが個別ブランド向けに企画する非標準のソリューションで、特設ランディングページやコラボイベント、オフライン連動、新商品共同開発などを含みます。

主な目的はブランドエンゲージメントの向上、新カテゴリの創出、オフライン購買への波及で、戦略上は中長期の取り組みになります。広告というよりはAmazonとのブランド共創プログラムとして位置づけられる領域です。

2025年のunBoxedでは、生成AIによってTVやディスプレイのクリエイティブを自動生成するCreative Agentが発表され、カスタム企画の制作スピードと選択肢が拡大しました。

Amazon広告における広告費の目安

Amazon広告の予算設計は、業界平均の数字をそのまま当てはめるのではなく、自社のBEACOS(損益分岐点ACOS)を先に算出して上限を決めるアプローチが基本です。粗利率を超えるACOSで運用すれば、売れば売るほど赤字が拡大します。

業界全体の目安としては、スポンサープロダクト広告主要カテゴリのCPC相場は米国で1.31ドル、全業界平均のACOSは約30%というベンチマークが公表されています。日本国内のCPCは1クリックあたり10円台から200円超までカテゴリ依存で大きく分布し、人気カテゴリでは通常30〜50円のところが繁忙期に100円超まで跳ね上がることもあるでしょう。

TACOSは5〜15%が一般的なレンジで、10〜15%で良好とされます。月額予算の目安は、月商100万円のSKUに対して広告費が約20万円(広告売上比20%前後)が一つの基準です。なおPrime Day 2025のように期間が延長されると在庫が分散し、CPCの下落やSponsored Productsの広告費増加など、効率が改善する場合があります。

一方でBlack Fridayや一部カテゴリではCPCが通常期から上昇する場合もあり、繁忙期の入札上限は通常期から切り離して設計しましょう。

Amazon広告における広告戦略策定がなぜ重要なのか

Amazon広告の戦略策定が重要なのは、Amazon広告が単独のCPC媒体ではなく、利益構造、オーガニック順位、ファネル設計のすべてに影響する性質を持っているためです。以下で戦略策定が必要な3つの理由を見ていきます。

広告費が直接的に利益に影響を与える構造だから

Amazonでは販売手数料(カテゴリ別8〜15%)、FBA手数料、保管料や長期保管料に加えて、広告費が利益を圧迫するため、ROAS設計なしの運用は赤字に直結します。

特にCPC高騰下で全キーワード一律入札を続けるのは危険で、粗利率から逆算したターゲットACOSを商品ごとに設定し、利益確保用の広告とシェア獲得用の先行投資広告を切り分けることが戦略策定に欠かせません。押さえるべき計算式は以下の通りです。

  • 損益分岐点ROAS = 1 ÷ 粗利率 × 100%

たとえば、粗利率25%の商材なら最低ROASは400%、粗利率40%なら250%が損益分岐点になります。BEACOSは粗利率と同値で、粗利率20%の商品でACOSが21%になれば、その商品は売れば売るほど赤字に転落します。

Prime DayやBFCM期はCPCがカテゴリにより+30%以上に跳ね上がる場合があり、平時のターゲットACOSのまま入札を続けると一気に赤字化します。利益確保ACOS(BEACOS以下)とシェア獲得ACOS(BEACOSを一時的に超える許容枠)をSKUごとに分けて運用設計に落とすことで、損益とシェアの両立が現実的になります。

オーガニック順位と広告が相互に影響し合うエコシステムだから

Amazonのランキングアルゴリズム(ECコンサル業界で俗にA9やA10と呼ばれるもの)は注文数を主要シグナルとして使い、広告経由の販売実績もオーガニック順位の押し上げに反映されるため、広告と自然流入は好循環も逆回転も生む構造になっています。

なお、「A10」はAmazon公式が正式に発表したアルゴリズム名ではなく、運用現場での通称として広まった呼称です。スポンサープロダクト広告経由の販売実績はオーガニック順位の向上に貢献するとされています。

一方で、自社ブランド名や既にオーガニック1位を獲得しているキーワードへ過剰に入札すると、刈り取れるはずの顧客に広告費を払い直すカニバリゼーションが起こります。特にスポンサーブランドとスポンサープロダクトを併用するときに発生しやすく、入札可否は慎重に判断すべき論点です。

逆に新商品ローンチ初期はオーガニック順位では埋もれるため、広告を絞り込むと順位低下を招きやすくなります。導入期、成長期、成熟期というライフサイクルに応じて広告と自然流入の比重を設計することが、長期的な売上基盤の構築には欠かせません。

広告フォーマットが多様化し、ファネルを横断した設計が必要だから

Amazon広告は2020年代以降、スポンサー広告3種、DSP、ストリーミングTV、オーディオ、カスタムソリューションへ拡張を続け、2025年にはUnified Campaign ManagerとCreative Agentの登場でフルファネル運用の前提が整いました。

認知から購買、リテンションまでを1つの媒体で完結できるフォーマットへ進化したいま、各フォーマットの目的とKPIの違いを理解しないまま運用すると、投資効率は確実に落ちます。

各フォーマットを併用するほど、成果指標は改善する傾向があります。繁忙期にスポンサープロダクト単独に依存しているとリターンが先細りし、スポンサーブランド広告やスポンサーディスプレイ広告、DSPを重ねたブランドがShare of Voiceを取りに行く動きが2025年Prime Dayでも確認されました。

戦略策定の本質は、どのファネル段階の課題に、どのフォーマットを、どのKPIで当てるかをマッピングする設計に集約されます。

Amazon広告における広告戦略策定はいつ行うべきか

戦略策定はローンチ前、四半期ごと、環境変化時の3つのタイミングで意識的に発動するものです。後から組み直すコストは初期設計の数倍に膨らむため、タイミング設計そのものが戦略の一部になります。代表的な3つのタイミングを取り上げます。

新商品ローンチ前

もっとも重要なタイミングは新商品のローンチ前の準備期間です。Amazonには出品から30日間の新着ランキング枠があり、新商品が露出しやすい優遇期間が存在するため、ここでの初動が長期の検索順位とCVRの天井を決めます。

加えて、運用現場で7Daysハーフの法則と呼ばれる経験則(販売実績スコアは1週間ごとに半減すると想定する考え方)が広く知られており、Amazon公式が公表したアルゴリズム仕様ではないものの、初動の集中投下が後続順位の伸びを左右するという運用判断の根拠として参照されています。

戦略策定は出品申請と並行して進めるべきです。そのため競合分析、メインキーワード選定、BEACOS設計、通常の2〜3倍の初動予算、レビュー獲得施策(クーポンやVineプログラムの活用)までを事前にパッケージ化します。プロダクトマーケットフィット未確認の段階でも、出品申請と同時に30日、60日、90日のマイルストーンと撤退基準を文書化しておくと、初動を見ながら冷静に方針を判断できます。

後手に回るほど機会損失が膨らむフェーズなので、ローンチ前の準備精度が中長期の成果に直結するでしょう。

四半期ごとの定期的なレビュータイミング

運用フェーズに入った後は、四半期単位の戦略見直しが必須です。CPCや競合、季節需要、Amazonの新フォーマットは常に変動するため、ACOSとTACOSの推移、キーワード順位、競合の新規参入、在庫日数と予算配分、新フォーマットの利用可否を四半期ごとに総点検します。

Q4集中型のビジネスでは、Q3前半(7〜8月)にQ4戦略を固め、9月から段階的に増額していくのが現場で広く採用される進め方です。Q1は需要減局面になることが多いため、効率重視、除外語の整理、在庫消化のフェーズに切り替えます。

Amazon Marketing Cloud(AMC)Amazon Brand Analytics(ABA)の活用についてはAmazon Ads公式ヘルプが示すとおり、Search TermやConversion、NTBといった指標を組み合わせて分析すれば、四半期ごとの戦略レビューを定量化できます。

属人化を防ぐためにも、四半期レビューでは定型レポートとアクションリストの組み合わせを社内のプレイブックとして整備しておくと運用が安定するでしょう。

ビジネス環境に構造変化が起きたとき

四半期レビューとは別に、即時の戦略再策定が必要なトリガーがあります。具体的には、競合大手の新規参入、自社の値下げや値上げ、原価とFBA手数料の改定、新商品の追加、Amazonの新フォーマットの登場、Prime DayやBlack Friday Cyber Mondayの接近、レビュー閾値の通過によるCVR変化などです。

月次定例を待たず前提を書き換えるべき局面なので、検知ルールを事前に決めておくことが望ましい運用です。

Prime Day前は8週間前からの再設計が推奨され、入札、予算、在庫、クリエイティブを再パッケージする必要があります。Amazon DSPとスポンサー広告の重ね打ちといった新しい統合手法は方針変更レベルで戦略再策定の対象です。

2025年のUnified Campaign ManagerとCreative Agentの登場は、運用ベンダーや代理店との契約見直しのトリガーにもなる大きな変化点として位置づけられます。トリガーを社内で言語化しておくことで、ビジネス側と運用側の意思決定スピードが整います。

Amazon広告の広告戦略策定の考え方とやり方

広告戦略の策定は、現状分析からPDCAの設計まで5つのステップで進めます。以下では、各ステップの詳細を見ていきましょう。

STEP1:現状分析とKPIの定義

最初に行うべきは、現在地とゴールの数値化です。粗利率、FBA手数料、販売手数料からBEACOSを算出し、TACOS、CVR、CTR、検索順位、レビュー数、在庫回転率の現状値をベースライン化します。

Amazon Ads公式のROAS、ACOS、CPCの定義に厳密にそろえ、社内とベンダーの指標定義を統一しておくことが、後続のレビューで議論をかみ合わせるための前提条件です。

さらに、短期売上、シェア獲得、ブランド認知(NTB)、在庫消化のうち、今四半期はどれを優先するかをビジネス側と合意します。優先順位が曖昧なまま運用に入ると、現場が個別最適に走り、結果として全社のKPIから外れた施策が積み上がる失敗が起こりがちです。

Amazon Marketing CloudとAmazon Brand Analyticsを使えば、検索語句単位でROI+20%以上の貢献語を抽出できます。そのため、ベースライン化のタイミングで自社の勝ち筋語を可視化しておくと、後続STEPの意思決定が速やかに進みます。

STEP2:商品ポートフォリオの分類とフェーズ判定

次のステップは、商品をライフサイクルと役割の2軸で分類することです。ライフサイクルは導入期、成長期、成熟期、衰退期の4フェーズに分かれます。これに主力、集客、利益、防衛の4種類の役割を掛け合わせてマトリクス化すると、SKUごとの予算配分の根拠が明確になります。

導入期は利益度外視で露出最大化、成長期はシェア拡大とNTB獲得、成熟期は効率最大化とTACOS低減、衰退期は最小防衛と在庫消化というように、フェーズ別に打ち分けることが基本です。導入期×主力には集中投資、成熟期×利益は効率重視、衰退期×集客は最小予算といった配分の根拠が、ここで言語化できます。

全商品に同じ戦略を当てはめるのは非効率なので、Amazonビジネスレポートのページビュー、注文数、在庫日数を使って四半期ごとに再分類するルーチンを作っておくと、ポートフォリオ運用が定着します。

STEP3:キーワード戦略とターゲティング設計

誰に、どの検索意図で、どの広告を当てるかのターゲティング設計です。キーワードはビッグ(カテゴリ)、ミドル(属性)、ロングテール(用途や悩み)、ブランド(自社や競合)の4階層に分け、新商品はロングテールから始めてCVRが立証された語のみビッグへ拡張する勝ち筋語の昇格戦略を取ります。

ASINターゲティングは、競合ASINへの攻め(カテゴリ流出客の取り込み)と自社ASIN防衛(カニバリではなく相互送客の設計)を併用します。スポンサーディスプレイやDSPでは商品ターゲティングから一歩進めて、リマーケティングや特定のライフスタイル、ライフイベントといったオーディエンス設計へ思考を切り替えるのが定石です。

原則として、自然検索で取り切れない顧客や逃している瞬間に予算を集中投下します。Amazon Brand Analyticsの市場バスケット分析で、自社ブランド指名語からの流出先を確認しておくと、競合への防衛策と新規獲得の打ち手が同時に見えてきます。

STEP4:広告フォーマットの組み合わせとファネル設計

ファネル全体での広告フォーマットの組み合わせ設計が4番目のステップです。

  • 認知フェーズ:DSP、ストリーミングTV、スポンサーブランドビデオ
  • 検討フェーズ:スポンサープロダクト、スポンサーディスプレイ(オーディエンス)
  • 購買フェーズ:スポンサープロダクト、スポンサーディスプレイ(商品)
  • リテンションフェーズ:スポンサーディスプレイのリマーケ、DSPのオーディエンス除外配信

このように顧客の検討段階に合わせて、最適な広告フォーマットを選びましょう。

新規ブランドの初期配分は、スポンサープロダクト70%、スポンサーブランド20%、スポンサーディスプレイ10%から開始し、ブランド成熟度に応じてDSPやStreaming TVへ拡張していきます。

KPIはファネル段階で使い分け、認知はNTBとリーチ、ブランドリフト、検討は詳細ページ閲覧やカート追加、購買はROASとACOS、リテンションはRepeat RateとLTVを軸に置くとよいでしょう。スポンサーディスプレイはBrand Registry登録済みのブランドが利用できるリターゲティングとオーディエンス配信を兼ねたフォーマットで、購買後のクロスセル設計にも有効です。

フォーマットの組み合わせを設計するときは、自社の現フェーズ(導入期か成熟期か)と目的(NTB獲得か効率最大化か)を先に決めてから配分するのが定石です。

STEP5:PDCA運用ルールの設計と継続改善

最後のステップは、戦略を動かし続けるためのPDCA運用ルールを設計することです。

日次(入札と予算消化)、週次(検索語句と除外語)、月次(構造見直しとACOS、TACOSの精査)、四半期次(戦略再設計)の4層レビューを定義します。

属人化を防ぐためには、ACOSがBEACOSの1.2倍を3日続けたら入札を15%引き下げる、在庫日数が14日を切ったら広告予算を30%抑える、といった自動判断ルールを言語化しておくことが有効です。

レポート資産としては、Search Term Reportでの除外キーワード選定と新規語の拡張、Amazon Brand Analyticsの市場バスケット分析、AMCのクロスファネル分析、ブランドリフト調査による認知効果の検証を四半期ごとに回します。

Unified Campaign Managerのおかげでスポンサープロダクト、スポンサーブランド、スポンサーディスプレイ、DSPを1つの画面で運用できるようになり、PDCAのリードタイムも短縮されました。

仕組みとして回り続ける運用にできるかどうかが、戦略の質を最終的に決めます。

Amazon広告における広告戦略策定の成功事例

最後に、Amazon広告の成功事例を紹介します。

事例①:株式会社ジョージオリバーの化粧品ブランド スーパーフードラボ

(引用:スーパーフードラボ

古来の健康習慣と最新科学を融合させた化粧品ブランド・スーパーフードラボを展開する株式会社ジョージオリバーは、Amazon広告を自社で運用する中で、業務の複雑化と分析精度の低下に直面していました。

Amazon広告の管理工数が増えるにつれ、手動分析では十分な精度を出せず、ブランド認知の獲得にも時間がかかっていたのです。そこで同社は、自動運用ツールを導入します。

各キャンペーンに下限ROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)を設定した上で、予算とターゲットROASから入札額を自動で算出する仕組みへ切り替えました。あわせてスポンサープロダクト広告で検索時のブランド露出を強化し、レポート作成も自動化しています。

その結果、ROASが向上し、コンバージョン獲得件数は64%、クリック数は20%それぞれ増加しました。運用工数を抑えながら、売上の拡大を実現しています。

この事例から学べるのは、STEP1で下限ROASを定義してからSTEP5のPDCAを自動化する設計です。ブランド認知がまだ小さい初期フェーズでも、指標の基準を守りながら拡張できる運用モデルとして再現性があります。手動運用で精度が頭打ちになっている場合、入札の自動化が品質と工数の両立に効きます。

本事例の詳細はこちらで確認いただけます。

事例②:株式会社山善(多商品EC×Amazon広告自動化)

(引用:株式会社山善

工作機械から家庭機器までを扱う専門商社の山善は、Amazonに1万点を超える商品を展開していました。しかし運用リソースが不足し、広告のチューニングが追いつかず、費用対効果を最大化しきれていませんでした。1万点超の出品に対して小規模キャンペーンの調整まで手が回らず、セール期間への依存度が高まる傾向にあったのです。

そこで同社は自動入札を導入し、月間予算に合わせて配信を調整しました。プライムデーなど需要が急増する時期には、日予算を1.5倍まで自動で消化する機能を活用しています。さらに日次レポートで商品需要の変化をとらえ、需要の高い商材へ予算を動的に配分しました。

その結果、導入前後2か月の比較でROASが1.18倍に改善し、広告経由の売上は1.3倍に増加しています。

この事例から学べるのは、商品ポートフォリオが大規模で需要変動も激しいECでは、日次レポートでの気づきと動的な予算配分の組み合わせが成果のポイントになるという点です。役割別分類と自動入札を結びつければ、限られたリソースでも需要期を取り逃がさない設計が実現します。

本事例の詳細はこちらで紹介しております。

事例③:Crio Bru(米国DTC機能性飲料/フルファネル × データ統合)

(引用:Crio Bru

米国でカカオを焙煎した機能性ドリンクを展開するCrio Bruは、従業員約20人のDTCブランドです。同社は、外部代理店のパフォーマンスが社内運用に劣る状況に加え、Amazon広告のキーワード入札を手作業で行う運用負荷を抱えていました。

手作業の入札とスプレッドシートの分散により月36時間もの運用負担が発生し、ファネル別の貢献度を可視化できず、新規顧客比率の改善にも壁があったのです。

そこで同社は、自動運用ツールとTriple Whale(データ分析プラットフォーム)、Amazon Marketing Cloudを連携させました。

顧客の購買段階をTOFU(認知)・MIFU(比較検討)・BOFU(購入直前)の3つに分け、それぞれに合った貢献度の測り方を設定しました。たとえば新規顧客には最初の接点を重視するモデル、既存顧客には各接点を均等に評価するモデルを適用しています。こうして新規と既存の売上を分けて見える化した上で、入札と予算配分を自動化しました。

その結果、全体のROASは147%向上し、ボトムファネルのROASは931%に到達しています。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は500%増加、新規顧客の獲得は前年比30%増、新規顧客比率は60%まで上昇しました。広告運用にかける時間も、月36時間から19時間へと47%削減しています。

この事例が示すのは、Amazonの内部データだけに頼らず、外部の計測データを判断の軸に据える考え方です。

顧客の購買段階ごとに貢献度の測り方を変えることで、Amazon単体では見えないチャネルをまたいだ成果まで把握できます。まず計測の基準を統一し、次に購買段階ごとにグループを分け、最後にAMCを使い続けて改善を回す。この3つを一貫して組み合わせる設計は、小規模なチームでも売上を伸ばせるスケール戦略として参考になります。

まとめ

Amazon広告の戦略策定では、まず6種類の広告フォーマットと業界平均ACOSやTACOSの目安を押さえた上で、BEACOSを商品ごとに算出し、ライフサイクルと役割の2軸でポートフォリオを分類することが重要です。さらにキーワード4階層の設計、ファネル別のフォーマット組み合わせ、4層のPDCA運用ルールまでをセットで組み立てることで、CPC高騰やフォーマット多様化に耐える運用設計を実装できます。

スポンサー広告とDSPの統合管理がUnified Campaign Managerで前提化した2025年以降、運用者の負荷は媒体間の入札調整や複数レポートの集約に集中する傾向があります。

広告運用自動化ツールのShirofuneは、Amazon広告を含む複数媒体の入札最適化と日次レポート、運用アラートを自動化するサービスです。運用工数を抑えながら、BEACOS設計やデータドリブンの商品開発に時間を振り向けやすい環境を整えられるでしょう。

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