広告データ

広告戦略における「人流データ」の活用方法とは?データの種類から活用のステップまで解説

菊池 満長

「広告を出稿しているのに、実際に来店につながっているか分からない」「どのエリアに広告予算を集中すればよいか判断できない」このような悩みを持つ場合、人流データについて理解するべきです。

人流データとは、スマートフォンや各種センサーから取得した「人の動き、移動パターン、滞在情報」をまとめたデータです。オンラインとオフラインの行動をつなぐ架け橋として、近年の広告戦略においてその重要性が急速に高まっています。

総務省「情報通信白書 令和7年版」によると、スマートフォンの普及率は約75%に達しており、人流データの取得精度、カバレッジは年々向上しています。また、電通「2025年 日本の広告費」によれば、2025年のインターネット広告費は8兆623億円と過去最高を更新しており、総広告費に占める構成品が50%以上を突破しました。

デジタル広告への投資が拡大するなかで、オフラインの行動データをいかに広告戦略に組み込むかが競合との差別化を生むポイントになっています。

本記事では、人流データの定義と種類から、広告戦略への具体的な活用シーン、実践ステップ、事例までわかりやすく解説します。

広告データとは

広告データとは、広告の配信状況、ユーザーの反応、成果の達成状況に関する数値の総称です。インプレッション数・クリック数・コンバージョン数・CPAといった指標から、ROASやLTVなどの顧客価値指標まで、広告効果を多角的に評価するためのあらゆる数値が広告データに含まれます。

これらは、Google広告やMeta広告などのプラットフォーム管理画面を通じて収集・確認でき、日々の運用改善から予算配分の意思決定まで、広告運用のあらゆる場面で活用されます。

広告データは、大きくオンライン行動データとオフライン行動データに分類できます。

  • オンライン行動データ:クリックや閲覧、フォーム送信などWeb上の行動に関するデータ
  • オフライン行動データ:来店、購買、移動など現実空間での行動に関するデータ

本記事で解説する人流データは、後者にあたる代表的なデータであり、デジタル広告の成果評価とターゲティング精度向上の両面で活用が進んでいます。

広告データにおける「人流データ」とは

人流データとは、スマートフォンの通信記録、GPSログ、Wi-Fi/Bluetooth信号、カメラ映像などをもとに取得した、人の移動・滞在・行動パターンに関するデータです。

広告データの一種に位置づけられますが、従来の広告データがクリックや表示、CVといったオンライン上の行動を対象にしているのに対し、人流データはリアル空間での行動を数値化する点に大きな特徴があります。

たとえば、人流データを見ることで、以下のようなインサイトを得られます。

  • 特定の場所に何人いたか
  • どこから来てどこへ移動したか
  • どの時間帯に人が集まるか

こうした情報を広告に活用することで、オンラインデータだけでは把握できなかった生活動線や行動圏をターゲティングに反映できます。国土交通省が公開している「人流データの活用に関する手引き」でも、人流データが都市計画、商業施設運営、マーケティング活用の観点から整理されており、公共、民間を問わず活用が広がっています。

(引用:国土交通省

人流データの種類

人流データには取得方法によって複数の種類があり、それぞれ精度・カバー範囲・取得できる属性・活用シーンが異なります。自社の目的に合った種類を見極めることが、人流データ活用の第一歩です。以下では、代表的な5種類とその特徴を紹介します。

なお、各データは個人情報保護法やガイドラインにもとづき、適切な同意取得、匿名化処理のもとで提供、利用されることが前提です。

通信キャリア系人流データ

通信キャリア系人流データとは、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIなど携帯電話会社が保有する基地局への接続記録や位置情報をもとに提供される人流データです。

代表的なサービスとして、NTTドコモの「モバイル空間統計」やKDDIの「Location Analyzer」、ソフトバンクグループの「Agoop」などが挙げられます。

(引用:モバイル空間統計

通信キャリア系は、スマートフォンの普及率が高い日本では全国規模での網羅性があり、性別、年代などの属性情報と組み合わせた詳細な分析を行える点が強みです。

人が集まりやすいエリアの全体傾向を把握したい場合、広域での商圏分析、エリア比較を行いたい場合に有効です。一方で、個人を特定しない統計処理が施されているため、個人単位の行動追跡には向きません。

スマホアプリデータ

スマホアプリ系人流データとは、地図アプリ、天気アプリ、ショッピングアプリなどのスマートフォンアプリを通じて、ユーザーの同意のもとで取得したGPS位置情報をもとにした人流データです。

代表的なサービスとして、Unerryや位置情報データプラットフォームのAzira(アジラ)などが挙げられます。アプリ利用者ベースのデータであるため、属性情報(年齢、性別、居住地域など)との紐づけが比較的容易で、行動履歴を細かく追いやすい点が特徴です。

(引用:Unerry

広告運用においては、特定の施設やエリアを実際に訪問したユーザーへのリターゲティングや競合店舗の来訪者へのアプローチといった、行動ベースのセグメント作成に向いています。ただし、データの母数はアプリのアクティブユーザー数に依存するため、データの偏りに留意が必要です。

Wi-Fi/ビーコンデータ

Wi-Fi/ビーコンデータとは、スマートフォンなどの端末から発せられるWi-FiのMACアドレスやBluetoothのBLE(Bluetooth Low Energy)信号を、施設内に設置したセンサーで受信・解析することで得られる人流データです。

商業施設、空港、駅構内、イベント会場など、特定の閉鎖空間での人の動きを高精度に把握できるのが最大の特徴です。「どの売り場を何秒通過したか」「どの導線で入退場したか」「どのブースにどれだけ滞留したか」といった、詳細な行動軌跡を把握できます。

広告・マーケティングへの活用では、施設内での滞留エリアをもとにしたデジタルサイネージの配置最適化や、来館者属性の把握を通じたターゲット広告の改善などに使われます。一方で、設置コストが発生することや、取得できるデータが施設内部に限定されることには注意が必要です。

センサーデータ

センサー系人流データとは、主にLiDAR(Light Detection and Ranging)センサーや赤外線センサーを用いて、人の通過、滞留、密度を計測することで得られるデータです。LiDARは光の反射によって距離を計測する技術で、人の動きをリアルタイムかつ高精度に捉えられます。

個人のプライバシーに配慮しやすい点も特徴のひとつです。カメラ画像のように顔情報を取得しないため、プライバシー規制の観点からも活用しやすい取得方式といえます。また、天候や照明条件の影響を受けにくく、屋内外を問わず活用できる点も特徴です。

小売店舗の入口カウント、店内動線分析、混雑状況のリアルタイム把握などに使われることが多く、広告効果の現場評価(プロモーション前後の来客数比較など)にも活用されます。

カメラ画像データ

カメラ画像系人流データとは、店舗や施設、公共空間に設置したカメラの映像をAI解析し、人の通行数・滞留時間・移動軌跡・混雑状況などを把握するデータです。カメラ画像からカウントデータや軌跡データを取得できるため、都市空間から商業施設まで幅広く活用が進んでいます。

カメラ解析では、人数・性別推定・年齢層推定・滞在時間などの多様な情報を一つのインフラから取得できる点が強みです。OOH(屋外広告)の掲載効果評価、イベント会場でのブース来訪分析、駅前、商業施設入口でのトラフィック計測などに活用できます。

一方で、顔認識技術の利用については法的、倫理的な整理が必要であり、プライバシーポリシーの明示や匿名化処理が欠かせません。

広告戦略における人流データ活用の重要性

Web広告のターゲティングや入札精度が上がる一方で、「広告をクリックした後に本当に来店しているのか」「どのエリアに予算を集中すべきか」といった疑問を解決するには、オンラインデータだけでは限界があります。そこで重要になるのが人流データの活用です。

以下では、広告戦略に人流データを取り入れることで得られる3つのメリットを整理します。

実際の行動にもとづいてターゲティング精度を高められる

人流データを活用すると、居住地や年齢などの属性情報だけでは見えにくい「実際にどこへ行っているか」「どのエリアを行き来しているか」といった生活動線を把握することが可能です。これにより、来店可能性の高い層や特定エリアに関心を持つ層へ広告配信しやすくなり、無駄打ちを減らしながら広告効果を高めやすくなります。

たとえば30代女性といっても、自社店舗周辺を日常的に行き来しているユーザーと、まったく別のエリアで生活しているユーザーとでは、当然ながら来店可能性は大きく異なります。人流データを組み合わせれば、属性ターゲティングに行動圏という軸を加えられ、広告配信の精度を底上げできるでしょう。

このように、オンラインの行動データとリアルの移動データを掛け合わせることで、広告配信の無駄を削減しながら成果を高めやすくなります。

出稿エリアや配信タイミングを最適化できる

人流データを見ることで、どの地域に人が集まりやすいのか、曜日や時間帯によって人の動きがどう変わるのかを把握可能です。こうした特性は、商圏分析やエリアマーケティングに活用できます。たとえば店舗周辺、商業施設周辺、競合周辺などの比較により、成果が見込める場所に予算を集中できます。結果として、ROASの改善を見込めるのです。

人が多い・少ないだけでなく、自社の商圏にいる人が多い時間帯、場所という観点でデータを読み解くことが欠かせません。たとえば通勤ルート上のエリアなら、朝夕の人流が多く、商業施設近隣なら週末の午後が最も人が集まるといった傾向が見えてきます。

こうしたデータを広告の配信スケジュール、エリア設定に反映することで、限られた予算でも成果につながりやすいターゲティング設計が実現します。

広告効果を来店、オフライン成果まで評価しやすくなる

クリック数やCV数だけで広告を評価すると、実店舗への送客効果が見えにくい場合があります。人流データを活用すれば、広告接触後の来訪傾向や来店増加の把握に役立ち、オンライン指標だけでは測れない成果を補足しやすくなります。

特に小売・商業施設・不動産・観光・飲食など、来店が重要な業種では意思決定の精度向上に直結します。特定の地域に広告を集中配信した前後で人流データを比較すれば、広告の来店誘引効果を定量的に評価することが可能です。

そのため、なんとなく出稿しているエリアを根拠のある配信設計に切り替えられ、広告投資の費用対効果を高めやすくなります。

広告における「人流データ」の活用シーン

人流データは、広告戦略のどの段階にも組み込める活用性の高いデータです。ここでは、特に活用頻度の高い5つの場面を紹介します。

商圏分析と出稿エリアの選定

人流データは「いつ、どこに、どれくらい人がいるか」や移動の傾向を把握するのに使えるため、広告を出すべき商圏や重点エリアの判断に向いています。

通信キャリア系データを活用すれば、自社店舗の商圏内に実際にどれだけの人が生活、行動しているかを推計できます。競合他社の近隣エリアと自社周辺の人流量を比較することで、出稿優先度の高いエリアを客観的に選べるでしょう。

さらに具体的な活用例を出すならば、Google 広告で地域指定や半径指定のロケーションターゲティングを活用し、人流が多いエリアに集中配信するという設計が可能です。人流データで人が多く動くエリアを特定し、そのエリアに広告を集中配信するという組み合わせが、商圏ターゲティングの基本的な活用パターンといえます。

店舗集客を目的にしたエリア広告の配信

実店舗への送客を狙う場面では、人流データをもとにすることで、人が集まる場所や店舗近接エリアを見極めて配信しやすくなります。競合他社の周辺エリアに滞在・通過するユーザーへのアプローチ、自店舗の半径数km圏内への広告集中など、地理情報を組み合わせた精度の高いターゲティングが可能です。

Google 広告の住所アセットを使えば、広告に住所・地図・距離・経路案内などを表示し、近隣ユーザーの来店行動を後押しできます。

(引用:Google 広告

人流データで来店見込みの高いエリアを絞り込み、そのエリアのユーザーへの広告に住所アセットを設定することで、クリックから来店までのハードルを下げられます。

広告接触後の来店、オフライン成果の測定

EC事業のCVだけではなく、広告が実店舗来店や店頭売上にどうつながったかを見たいときにも人流データは重要です。Google 広告の来店コンバージョンでは、オンライン広告の広告接触後のオフライン来店を測定できます。さらに、店舗販売測定ではPOSや顧客データを突き合わせて、広告が店舗購買にどうつながったかを把握可能です。

これらのGoogle広告のオフライン計測機能に加え、サードパーティの人流データ(キャリアデータ、アプリデータ)と広告の配信ログを照合する手法も注目されており、広告を見たユーザーが実際に店舗を訪れたかを検証できる精度が年々高まっています。

オンライン指標だけでなく、来店というオフライン成果まで計測サイクルに組み込むことが、広告ROIの正確な評価につながります。

OOH、デジタルサイネージ、イベント出稿の場所選定

屋外広告やイベント施策では、人通りが多い・少ないだけではなく、立ち止まって見ているのか、それとも通過しているのか、どの方向に異動しているのかまで見られると、掲出場所やブース位置の精度が上がります。

たとえば、同じ駅前でもA出口とB出口では人流量、流向が異なる可能性は高いです。サイネージの視野角や設置高さを考慮した上で、実際に広告が目に入りやすい動線上に絞って掲載場所を選定すれば、OOHの費用対効果を高められます。

イベント会場も同様で、ブース設置位置の選定や動線設計に人流データを活用することで、来訪者との接触機会を最大化できます。

曜日、時間帯ごとの予算配分や訴求の最適化

人流データを見ると、平日昼、夕方、週末などで人の集まり方が変わるため、広告予算の投下時間や訴求内容の見直しに活用できます。たとえば、商業施設周辺の人流が週末の午後に集中している場合、その時間帯に配信予算を厚くし、週末限定の訴求(週末セール、イベント告知など)を強化すれば、同じ予算でも反応率を高めやすくなります。

広告媒体の標準機能だけで完結する話ではありませんが、人がいる時間と場所に合わせて配信量を変えることで、同じ予算でも効率を上げやすくなります。人流データが「いつ、どこに、何人いるか」を把握するための基礎データだという前提から、時間帯別の予算配分最適化とは相性の良い使い方といえるでしょう。

広告戦略に人流データを活用する5つのステップ

人流データを広告戦略に組み込むには、目的の設定から分析、配信設計、効果測定まで、一連のプロセスを体系化することが重要です。以下では、広告戦略に人流データを活用する5つのステップを解説します。

STEP①:課題と目的を決める

まずは広告運用の目的を明確にしましょう。店舗型ビジネスの場合、主な目的は以下の通りです。

  • 来店数を増やしたい
  • 特定エリアでの認知を高めたい
  • イベント集客を強めたい

人流データは万能ではありません。商圏把握・重点エリア選定・回遊把握・来訪評価のどこに使うかを先に決めた方が、後工程の分析や配信設計がぶれません。

目的が来店促進であれば、来店前後の動線を把握できるデータが必要です。認知拡大であれば、対象エリアのリーチ量、人流量の把握が主な目的になります。

このように、目的によって必要なデータの種類、粒度、分析軸が異なるため、先に「何を変えたいか」「どの指標を改善したいか」を定めることが、人流データ活用のファーストステップとなります。

STEP②:目的に合う人流データの種類を選ぶ

広域の傾向を見るなら通信キャリア系、店舗周辺の通行や滞留を見たいならカメラやLiDAR、アプリ利用者の動きを見たいならスマホアプリデータといった具合に、目的にあった人流データの種類を選びます。

人流データは取得方法ごとに精度・カバー範囲・取得できる属性・個人情報上の留意点が異なるため、コストとカバー範囲のバランスを考慮しながら、目的に合った種類を選定することが重要です。複数種類を組み合わせることで、マクロ(広域傾向)とミクロ(施設内詳細)の両面から立体的な分析が可能になる場合もあります。

STEP③:人が集まる場所、時間、導線を見つける

データを選んだら、どのエリアに人が集まるか、平日と週末でどう違うか、店舗前は通過が多いのか滞留が多いのかを見ます。ここで重要なのは、単に人が多い場所を探すのではなく、自社に来店しやすい動線や競合と比較して伸ばせるエリアを見つけることです。

この分析段階では、データのビジュアル化ツール(ヒートマップ、時系列グラフ、動線フロー図など)を活用することで、エリア特性を直感的に把握しやすくなります。特に複数店舗を持つ場合や複数候補エリアを比較する場合には、データの可視化が意思決定の精度を大きく高めます。

分析結果は、配信設計の根拠として社内共有できる形に整理しておくことも重要です。

STEP④:配信エリア、訴求、媒体設定に落とし込む

分析結果をもとに、広告では対象地域や半径、重点拠点を設定し、必要に応じて店舗情報も広告に付与しましょう。以下に主要広告の地理ターゲティングの特徴を整理しました。

媒体設定単位ターゲット条件向いている活用
Google広告国・都道府県・市区町村・郵便番号・半径指定所在地 / 所在地+関心検索ニーズに応じた広域〜商圏ターゲティング
Meta広告国・都道府県・市区町村・郵便番号・半径指定居住者 / 最近訪問 / 旅行者店舗集客・来訪ベースの配信
YouTube広告国・都道府県・市区町村・半径指定基本は所在地ベース地域限定サービス・認知施策

人流データで特定した人が集まる時間帯に合わせて広告スケジュールを設定したり、エリア特性に応じた訴求内容(近隣の施設名、アクセス情報、時間限定オファーなど)を組み込んだりすることで、広告の関連性スコアは高まり、配信効率の向上につながります。

STEP⑤:来店、オフライン成果まで測定して改善する

クリックやCVだけを成果指標にしていると、広告の本当の価値を見落とします。デジタル広告の最終目的が来店や店頭売上にある場合、そこまで測定して初めて改善サイクルが機能します。

具体的には、配信後に人流データと売上データを照合し、「どのエリアへの配信が、どの時間帯に、どの訴求で来店を生んだか」を特定しましょう。こうした分析をもとに予算配分を見直すことで、露出最大化から、成果に直結する配信設計へと精度を高められます。

人流データの活用は、出稿前の商圏分析や配信設計に留まりません。出稿後の評価と改善にこそ、継続的な広告ROI向上の余地があります。測定・分析・配信設計の改善というサイクルを着実に回すための基盤として、人流データを位置づけることが、デジタル広告を中長期で機能させる上での要となります。

人流データを活用した広告戦略の事例

人流データの活用は、既に多くの企業で実績が積み上がっています。ここでは、異なる業種、課題を持つ3つの事例を通じて、具体的な活用イメージを紹介します。

事例①:湘南モノレール株式会社

(引用:湘南モノレール株式会社

神奈川県の湘南エリアは、首都圏からの観光客を多く集める一方、週末を中心とした道路混雑が観光客と地域住民の双方にとって慢性的な問題となっていました。湘南モノレール株式会社はこの状況を解消するため、人流データを活用した混雑情報の発信と、観光客の移動行動の変容を促す取り組みを開始しました。

同社は、カメラ・Wi-Fi・ビーコン・自動改札機など複数のセンサーから人流データを収集し、混雑状況をリアルタイムで把握できる体制を整えました。取得したデータをもとに、Web広告・SNS・乗り換えアプリ・雑誌・ポスター・観光協会サイトなど多様なチャネルを通じて、出発前後の観光客へ適切なタイミングで情報を届けています。

効果検証のために実施したアンケートでは、回答者の70%以上が情報を「分かりやすい」「役に立つ」と評価しました。また、約45%が湘南モノレールの1日フリーパス購入のきっかけになったと回答しており、送客効果としても数字に表れています。

混雑情報の発信開始後は、平日朝の乗降客数に平準化の傾向が確認されており、行動変容への一定の効果が示されています。

事例②:バーガーキング

(引用:バーガーキング

バーガーキングはマクドナルドの店舗周辺にジオフェンスを設定し、アプリ経由で注文するとワッパーが約1セントで購入できるキャンペーンを長年展開してきました。競合店舗の半径180メートル以内に入った顧客を、自社アプリへの誘導と価格訴求で引き込む戦略です。

地域の小売店でも同様の発想は応用できます。たとえば、ペット用品店が競合チェーンの駐車場周辺にジオフェンスを設定するとします。そのエリアに入った顧客のスマートフォンに「200メートル先に地元産のヘルシーなペットフードを扱う専門店があります。この広告を提示で初回購入20%オフ」といった広告を配信できます。

購買意欲が最も高まった瞬間に、意思決定を後押しするメッセージを届けられる点が、この手法の強みです。

事例③:スターバックス

(引用:スターバックス

スターバックスは、人流データを位置情報の把握にとどまらず、AIを活用した予測的パーソナライゼーションの中核として位置づけています。同社のシステムは、個々の顧客の購買履歴に加え、現在地の位置データ・天候・時間帯・周辺イベントといったコンテキスト情報を統合的に分析します。

たとえば、冷え込みが予想される日の通勤経路上にいる顧客に対して温かい飲料のオファーをアプリ経由で配信し、その反応を店舗レベルの需要予測にも活用しています。

2025年後半から2026年にかけての施策は、こうしたデータ主導の事業立て直し計画が成果を上げていることを示しています。ブライアン・ニコルCEOの主導のもと、プロモーションの最適化とオペレーション改善が進み、リワード会員・非会員を問わず取引数が増加しました。

とくに「Bearista(ベアリスタ)」キャンペーンやホリデーメニューの展開時には、人流データにもとづく精緻な配信タイミングが競合他社を上回る来店増加をもたらしています。

まとめ

人流データとは、スマートフォンの通信記録、GPS、Wi-Fi/センサー、カメラ画像などをもとに取得した、人の移動・滞在・行動パターンに関するデータです。通信キャリア系・スマホアプリ系・Wi-Fi/ビーコン系・センサー系・カメラ画像系の5種類があり、それぞれ精度、カバー範囲、活用シーンが異なります。

広告戦略への活用においては、ターゲティング精度の向上、配信エリアや時間帯の最適化、来店成果の測定という3つの領域で重要な役割を果たします。商圏分析から出稿エリア選定、エリア広告配信、OOH設置、時間帯別予算配分、来店効果測定まで、広告戦略の全フェーズにわたって活用できる点が人流データの大きな強みです。

オンラインデータとオフラインの行動データを組み合わせた広告運用は、競合他社との差別化を生む重要な取り組みです。本記事で紹介した人流データの種類、活用シーン、実践ステップを参考に、自社の広告戦略への組み込みをぜひ検討してみてください。

なお、複数の広告媒体を横断して管理・分析している場合、媒体ごとの管理画面を行き来しながらデータを集約、比較する作業は大きな工数を要します。Shirofuneのような広告自動化ツールを活用することで、Google広告、Yahoo!広告、Meta広告など複数媒体のデータを一元管理し、人流データとの照合や配信設計の改善サイクルをより効率的に回せるようになります。

人流データの活用を広告運用全体の改善につなげるためにも、データの集約、管理基盤を整えることも合わせて検討してみてください。

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