SEOの潮流は圧倒的な「顧客視点」。成功している企業に共通する「社内を巻き込む力」
- Shirofune広報担当
室屋 武尊氏(むろやたける):グローバル企業を中心にデジタルマーケティングをリード。英国ユニコーン企業 Farfetchでは、シニアマーケターとして日本におけるグロースに従事。2019年、LVMHグループを経てDemandMarkets株式会社に参画。
今やSEOはWebマーケティングにおける重要な施策の一つというのは共通認識になってきている。しかし、検索エンジンの度重なるアップデートにより、情報を追っても追っても終わりがなく、長期的な成果を出し続けることに苦労している担当者も多いのではないだろうか。
今回は、SEOインハウス化支援プラットフォームを提供している、DemandSphere社のPlatform Growth Manager 室屋さんに、最近のSEOの潮流と、その中で成功している企業の共通点を伺った。
SEOの潮流は「顧客視点」で上流から施策に落とし込む
室屋さんによると、これまでのSEOの潮流は大きく三段階で変化してきているという。
室屋氏:
「かつてのSEOというと、SEO会社によるリンクビルディングが主流でした。(Webサイトの評価を高くするために被リンクを増やす手法)。
その後、Googleのアルゴリズムが大幅にアップデートし、コンテンツの質が問われるようになりました。
リンクよりもコンテンツが重視されるようになったのです。コンテンツマーケティングをはじめ、SEOのインハウス化が進み始めたのはこのタイミングだったと思います。
そして現在SEOで成功している企業はリンクやコンテンツの量産をやめ、マーケティングの基本に立ち返っています。
一言で言うならば、”顧客視点”。
自社の顧客は何を求めているのか、どう見せるのがいいか。顧客視点の発想でSEOを工夫している会社が増えてきています。」
これまで、Googleが「ユーザーの利便性が重要」と発信してきたのに対し、多くの企業はユーザーの利便性よりもGoogleのアルゴリズムばかり気にしていた。それが顧客視点に立ち返ったことで、本質的なマーケティングの動きになってきたのだ。
マーケティング活動の上流から落とし込むSEO
具体的な施策として、企業ブランディングなどマーケティング活動の上流からSEOに落とし込む企業が増えているという。
室屋氏:
「ブランディングの一貫としてSEOを実施するクライアントもいます。
ブランディング施策にはTVCMやSNSなど様々な手法がありますが、SEO担当者も関わっていく。発信するメッセージの統一をはかるためです。
すべてのチャネルで同じメッセージを発信し、ブランドの一体感を作り出しています。
“競合よりもいい順位をとる”というコンセプトはブランディングもSEOも同じなので、この2つは意外と相性のいいコラボレーションだと思います。
かつてはいかに被リンクを増やすか、いかに多くのキーワードで上位を獲得するかなど画一的なSEOが主流でした。しかし現在では、自社独自の強みやメッセージ、顧客視点のキーワードを意識することが新しい勝ちパターンになっているように感じます。」
さらに顧客視点であれば、Googleと同じベクトルを向いているために、これまでのようにアップデートに大きな不安を抱く必要もなさそうだ。
最近話題になることが多いUGC(User Generated Contents)と言われる、ユーザーによるSNSへの投稿や口コミを増やすことが重要視されている中で、企業名や商品名、商品イメージに関わるワードで指名検索された際にしっかりと顧客の求めるものをヒットさせることは、SEO担当者も意識するべきことかもしれない。
成功の鍵となるのは、SEO担当者の「巻き込む力」
SEO担当者からすると、小手先の対策が効かなくなり、全社の動きやメッセージを意識する必要がでてきた。
これまでSEO担当者は個人商店的に、一人で業務に取り組むことが多かったかもしれないが、これからは周囲を「巻き込む力」が必要だという。さらに、成功している企業とそうでない企業の違いがそこにあると、室屋さんは力強く語った。
室屋氏:
「例えば、弊社クライアントのEコマースサイトでは、在庫管理の部署を大胆に巻き込んでいます。
背景としては、基幹システムを通してEC用のデータが生成されているという問題がありました。商品名やカテゴリ、URLなどSEOを行う上で重要な要素が物流センターで管理されていたのです。
しかしシステムもプロセスも簡単には変えられない。
そこでこのクライアントは、SEO担当者が指揮をとって組織全体でSEOに取り組むことにしました。
1年以上かけて商品の重複や情報の抜け漏れを地道に改善し、業界内でトップの成果を叩き出すようになりました。
社内のSEO勉強会には100名以上の応募があり、まさに組織を巻き込んだSEOの事例だと言えます。」
また別の例として、同じくEコマース運営会社の具体例を教えてくれた。
室屋氏:
「複数のショッピングモールで同一商品が取り扱われる中、SEOで強化することができる施策の一つはそこにしかないオリジナルコンテンツで差別化することです。
とあるEコマースの会社では、カスタマーサポートを巻き込み、顧客のフィードバックを大量に集めて何年もかけて独自コンテンツを作り上げました。
このコンテンツは顧客の疑問や不安を解消し、新規顧客のコンバージョン率を高めました。」
社内を「巻き込む」にあたり重要なのは共通認識・共通言語
関係各所にSEOの重要性や協力を仰ぐうえで、重要なのは共通認識と共通言語。それらは「ツール」と「知識」によって補完できる。
ツールは、スピーディな意思決定を求めてBIツールを導入する企業も増えているが、専門性の高いSEO分野においても社内理解を促進するために、情報を可視化することが助けになる。
室屋氏:
「社内を巻き込んでいくうえで情報可視化ツールの必要性が増してきています。
ツールを使うことで、他部署への情報のシェアが簡単になります。誰にでもわかりやすく、SEOによる売上インパクトなどを伝えることができる。
自社・顧客・競合といった市場環境をシンプルなグラフで表現してくれるツールは、他部署とのコラボレーションを実現するために必須の装備です。
そうした考えから弊社のツールを導入するクライアント数も順調に増えています。」
つぎに、知識については、
「SEOの知識と自社の業務知識が大切です。
ベンダーではなくSEO担当者自身でツールを使いこなし施策に落とし込んでいく必要があるので、これまで以上に担当者にSEOの知識が求められます。
また、様々なステークホルダーを巻き込んでいくためには、業務理解が欠かせません。
システム、ブランド、オペレーションなど幅広いステークホルダーを説得し、SEOを推進していくためです。
ただし、SEOが大事だからといって、無理やり他部署にSEOを押し付けるのではなく、SEO担当者が率先して他部署の業務も理解していくのが理想的かもしれませんね。」
コツはSEOで得られる顧客インサイトを活用すること
スムーズに関係各所と会話するための幅広い知識習得に加えて、SEO担当者が社内を巻き込んでいくコツは、各担当者のメリットになるような情報を提供して寄り添っていくこと。
室屋氏:
「SEO施策で吸い上げた情報は企業にとって非常に貴重な顧客の声(インサイト)なので、それを活用するのも一つの手です。
例えば、営業部に検索ワードやその背景となる消費者の要望をシェアする。営業担当者は肌で感じていた顧客のインサイトをデータで確認することができ、さらに良い提案を作る一助となるでしょう。
SEOのために協力して欲しい、ではなくてSEOでこういうことが見えたよ、と相手の得になるような情報をもって、まずは寄り添っていくことが大事です。
SEOは”言葉のマーケティング”。
顧客がどのような言葉で検索を行い、どのような欲望があるかがわかります。
SEOツールは言葉の市場を可視化し、シェアや競合について数値で表現してくれます。オフラインの市場調査に比べて圧倒的に早く、正確にマーケットを把握できる。
SEO担当者は他の部署の人にどんどんマーケティングデータとして展開していくべきだと思います。」
今回、多くの企業のSEOインハウス化を支援しているDemandSphere社だからこそ見える大局的な業界の動きと成功している企業に共通しているポイントを伺うことができた。
お話を伺って感じたことは、Googleの進化によってインターネットの世界がユーザーにとってどんどん良くなってきている、ということだ。
SEO担当者がSEOのことだけではなく、自社と自社の顧客に向き合い、より本質的な思考で施策に落とし込んでいく必要がある。
成功している会社と、そうでない会社の分岐となっているポイントは、社内を巻き込む「越境人材」がいるかどうか、さらにその人材を生かすのは越境した動きが取りやすい体制・風土があるかどうかではないだろうか。SEOに限らず、これからの社会の動きの中で大事になってくる考え方かもしれない。
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- この記事を書いたライター
Shirofune広報担当