リスティングプラス長橋が語る、現代のWeb広告代理店に求められていることとは
- 中島 孝輔
「広告運用代行のみにニーズが集中していた時代と比べると、今はマーケットの変化が激しいため、同じ内容を同じように提供していてもお客様は満足しません」
こう語るのは、リスティング広告の運用代行をはじめ、Facebook広告運用代行やLP制作など、高い専門性からWeb広告運用を支援している株式会社リスティングプラス(以下、リスティングプラス)代表取締役の長橋 真吾氏だ。
同社は変わりゆく時代に対応するため、Web広告の運用代行のみならず、Webマーケティングの総合支援を行っていくという。
今回の『インハウスマーケティングラボ』では、リスティングプラスの経営戦略やマーケティング戦略について、幅広くお話を伺った。
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リスティングプラスの社内体制と強み
――貴社の社内体制について教えてください。
長橋 真吾氏(以下、敬称略):運用とフロントのクライアントワークを兼任するコンサルタントが35人、営業が8人、バックオフィスが10人、クリエイターが10人、オウンドメディアのライターが3人、LP制作のライターが3人の合計70人ほどですね。
――競合のWeb広告代理店と比較したとき、リスティングプラスの強みは何ですか?
長橋:以前までの強みは、「リスティング広告の運用実績や専門性」でした。しかし、リスティング広告運用の専門性が高いWeb広告代理店や、運用代行費をかなり抑えているWeb広告代理店などが増えてきています。
そうした現状でリスティング広告運用の専門性のみを自社の強みとすると、競合他社との差別化が難しいです。
そこで現在は、「オウンドメディアやコンテンツマーケティング、サイト戦略含め、Webマーケティングの総合的な支援の提供」を強みにすべく戦略を変えています。
リスティングプラスのマーケティング戦略
――「Webマーケティングの総合支援会社」というポジション確立のために行っているマーケティング戦略は何でしょうか。
長橋:創業時からセミナーを開催するなど、情報発信を続けています。
約2年前から、オウンドメディア『リスマガ』にも注力しており、基本的に毎日更新しています。
コンテンツ制作は担当ディレクターを1名置いて内製化しています。専門的な領域のため、記事の内容はすべて経験豊富なコンサルタントが書いています。それをライターが編集し、アップする仕組みです。
また、昨今では顧客の情報収集源が検索領域からSNSに流れてきているため、会社全体としてTwitterやYouTubeなどSNSでの情報発信にも去年頃から注力しています。
※長橋氏のTwitter(@naga_shingo)
※リスティングプラスのYouTubeチャンネル「マーケ脳社長 by Listing Plus」
継続的にコンテンツを作成できるコツ
長橋:まずは「どのようなキーワードを選ぶか」など、完璧なコンテンツを目指すのではなく、最初は「質よりも量」が大事と捉え、1日1本の更新を目指していました。
コンテンツマーケティングにおいて、内容はもちろん重要ですが、特に立ち上げ時は質より量のほうが重要です。初めてコンテンツマーケティングに取り組む会社が、最初から質も量も同時に追い続けていると、中々継続が難しいです。
情報発信により、2年間でリード数は2倍に
長橋:約2年前は、広告からの見込みリード数は月間300件ほど、問い合わせ数が月間50件ほどでしたが、現在は見込みリード数と問い合わせ数が2倍になりました。
オウンドメディアは10万PVを超えたくらいから、しっかりとCTA設計も加え、それ以降はリード数が増加しています。さらに、検索経由のリードなので、広告経由のリードよりも受注確度が高いことが特徴的です。
Web広告代理店が顧客を獲得するために重要なこと
長橋:基本ですが、ターゲティングが重要です。
私たちの場合、ターゲットは中小企業の広告主です。検索・SNSをきっかけにインバウンド中心でリストを獲得、メルマガ経由でセミナーに誘導し、セミナー経由で受注しています。もし仮にターゲットが中小企業ではなく、大手企業の広告主であれば、テレアポや会食などアウトバウンド寄りの施策が必要でしょう。
私たちの場合、Facebook広告やGDN、オウンドメディアなどでリストを獲得し、メルマガでセミナーに誘導、セミナー経由で「商談→契約」という2ステップモデルで顧客を獲得しています。
ちなみに、弊社ではセミナー集客のほとんどがメルマガ経由です。
セミナー集客用のメルマガ活用法
長橋:例えばセミナー集客の際は、席が埋まるまで、毎日セミナー案内のメルマガを送ります。企画が良ければ、メルマガを1回送るだけで満席になりますね。
多くの企業ではメルマガの購読解除を恐れて、あまりメールを送っていないようですが、それではもったいないです。
メルマガ購読の解除は、その会社が発信するコンテンツに価値を感じていないということ。価値を感じてくれるのであれば、相当なことがない限り解除はされないはずです。
そのため、弊社では臆さず積極的にメルマガを配信しています。
Web広告代理店に求められていることの変化
――Web広告代理店を取り巻くマーケットの変化について、いかがお考えでしょうか。
長橋:広告運用代行のみにニーズが集中していた時代と比べると、今はマーケットの変化が激しいです。昔と同じ内容を同じように提供していても、お客様の成長に貢献できません。
中小企業の広告主にとって、広告運用はあくまで手段です。真に解決すべき課題が広告運用とは限らないので、より高度な経営課題から支援する必要があります。
広告費100万円以下の中小企業の広告主は、広告運用の専門性よりもWebマーケティングの総合支援へのニーズの方が大きいです。
一方、広告予算が1,000万円を超える広告主は、難解な入稿作業に特化したミスのない運用代行へのニーズが大きいです。
Web広告代理店はターゲットに合わせた最適なソリューションを提供すべきです。
例えば、中小企業のお客様を支援していると、お客様の競合サービスを比較して、コンセプトや商品設計が弱いと感じることもあります。
以前までは、リスティング広告運用とLP改善をセットにしたサービスを提供していました。しかし、LPを改善していると結局、コンセプトを改善すべきという結論にたどり着きます。
コンセプトが弱いと、広告出稿によってリードがいくら取れても、売上につながらないこともあります。そのため、リスティング広告運用以前に、中小企業が戦えるようにコンセプトやマーケティング戦略を練り直す必要があります。
したがって、競合他社を意識したというよりも、お客様の収益向上を第一に考えた結果、サービス領域を広告運用代行からWebマーケティングの総合支援へと広げざるを得ませんでした。
求められていることの変化に伴い、社内の教育方針を変更
――Webマーケティングの総合支援へと事業領域を広げるため、リスティングプラスが行った取り組みを教えてください。
長橋:お客様の経営課題を改善し、最適化して組み合わせることができるコンサルタントを育成するため、社内の教育体制を変えました。
今まで社内の教育体制では、広告運用の専門性を教育する仕組みでしたが、現在はコミュニケーションスキルやお客様のビジネスモデルの改善方法などの技術や知識を教育する仕組みに変えています。
お客様が経営のボトルネックを把握しているとは限りません。コンセプトが弱く、マーケットで戦えないお客様から「アクセスアップのためにWeb広告をやりたい」と依頼いただいても、単純にWeb広告をやるだけでは高い成果は上がりません。
Webマーケティングの総合支援会社へ
――リスティングプラスの今後の展望を教えてください。
長橋:最近ローンチしたばかりですが、中小企業向けに展開する「御社のWebチーム」というサービスを今後注力していきたいです。
中小企業が抱える問題は、優秀なマーケティング担当を採用できないこと。この問題は、今後より一層顕著になるでしょう。大手企業が優秀なマーケティング担当者を囲いはじめ、中小企業のマーケティング担当者は独学で学ばなければいけない。そのため、伴走できるチームが必要となってきます。
我々の「御社のWebチーム」では、CRMやコンセプト、マーケティング設計のすべてを支援します。広告運用も含めてノンストップのチーム体制をつくる「ラボ型」のWebチームを外部に持ちましょう、と提案しています。
ステージによって必要な施策は変化するため、ステージごとに人員を入れ替えます。都度見積もりをいただくのではなく、一定の月額でいただいて、その中で現状必要なマーケティング戦略を専門人員を入れ替えて提供するサービスです。
リスティング広告の運用代行から事業を始めましたが、今後はWebマーケティングの総合支援会社としてお客様の成長に貢献していきたいです。
Web広告代理店からも高評価!運用業務を圧倒的に効率化する「Shirofune」の資料を請求する>
長橋 真吾氏 プロフィール(Twitter:@naga_shingo)
株式会社リスティングプラス 代表取締役社長
1984年、長野県生まれ。2007年に日本体育大学を卒業後、情報通信系商社に入社し、営業を担当。その後、Webマーケティング会社を経て、治療院に特化したネット集客支援サービスを手がけるWebコンサルティング会社に入社。リスティング広告のノウハウを学ぶ。2011年に株式会社リスティングプラスを設立し、代表取締役社長に就任。中小企業様を対象にコンサルティング会員は累計3000名超え、年間100社以上の企業のWeb集客を支援している。
<取材・編集=金森 悠介(@user_id_us)、文=中島 孝輔(@KosukeNakajima_)、写真=植田 翔(公式サイトはこちら)>