【博報堂 TOOL PROJECT特集 Vol.1】 ツールの力で学びを加速!ツールとスキルの掛け算がフリーランサーの提供価値を上げる。博報堂 TOOL PROJECT × Shirofuneが目指す世界
- 岩井智昭
ノーコードツールを活用し、フリーランサーのスキルの獲得と業務領域の拡張を目指す博報堂のTOOL PROJECT。
これまでにWEBサイト制作ツール「STUDIO」、データ分析ツール「Exploratory」と連携し、フリーランサーや副業人材にトレーニングプログラムを提供してきました。そこで手応えを得た同プロジェクトが3つ目のツールとして目をつけたのがShirofuneでした。
そもそもShirofuneは、デジタルマーケティング未経験者でもWEB広告で成果を出せる世界を目指して開発されたツールです。TOOL PROJECTの理念に共感したShirofuneは2022年1月から連携をスタート。デジタルマーケターの育成を目指し、13名のフリーランサー、副業人材を集めて両社でトレーニングプログラムを実施しました。
本記事では、博報堂TOOL PROJECTとShirofuneに行ったインタビュー内容を全2回に渡りお届けします。
Vol.01ではTOOL PROJECTの誕生背景から、STUDIO/ Exploratoryを活用したトレーニング結果と気づき。Vol.02ではShirofuneトレーニングプログラムの内容やツールを通じてスキルを身につけることの価値、両社が描く「フリーランスが稼げる未来」についてお届けします。
大関 力
博報堂ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター
2007年博報堂に入社し、金融/自動車/ステーショナリー業界の営業に従事。3つの会社への出向を経験し、うち2社で新規事業を開発部署に所属。営業時にデジタルマーケティングのスキルを身につけた経験がTOOL PROJECT×Shirofune推進の原動力となる。TOOL PROJECTではデジタルマーケティングコースを担当し、デジタルマーケターの育成に取り組んでいる。
大倉 誠一 ※リモート参加
博報堂ミライの事業室 クリエイティブディレクター
2001年博報堂に入社し、クリエイティブディレクターとして数々の統合コミュニケーションを手掛ける。2012年米サンフランシスコでの実務研修を機にスタートアップに魅了され、事業開発の道を志す。博報堂のイントレプレナーシッププログラムでテックスタートアップCueworksを起業。自社製品の開発およびに経営に従事した後、2019年4月よりミライの事業室に参画。TOOL PROJECTのリーダーとして事業化に向けた準備を進めている。
三谷 健介 ※リモート参加
博報堂ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター
大手メーカーにて数々のIoTソリューションを企画・開発。開発した商品をセールスするスキルを身に付けたいと博報堂に入社し、2019年4月ミライの事業室に参画。2021年2月に大倉と共にTOOL PROJECTを立ち上げSTUDIOやExploratoryとの連携を推進している。
「ツールを活用することでキャリアの補助線が引ける」という仮説
ー2022年から、博報堂TOOL PROJECTとShirofuneの連携がスタートしています。そもそもTOOL PROJECTはどのような経緯で誕生したのでしょうか。
大倉
私達が所属する博報堂ミライの事業室では、新規事業を開発しています。当時から関心のあった「仕事と学び」というテーマで何かできないかと考えていた時、テック系のスタートアップを創業した知人の話が着想のきっかけになりました。
それはデザインの素養のない彼が、ノーコードツールを使ってWebサイトやワイヤーフレームを作り、エンジニアとたった二人でプロダクトを開発したという体験談でした。
目的や意思さえあれば、ツールひとつでスキルを身に付けることができる。ツールに頼ることでキャリアの補助線が引かれ、然るべき人材へと成長できる。そんな仮説が浮かんできたんです。
そこからノーコードWebデザインツールの「STUDIO」、データ分析ツールの「Exploratory」と連携し、ツールによってどこまでスキルが拡張できるのか、第1回目の実証実験が始まったわけです。
「スキルのピポット」で提供価値はブーストする
ー実証実験では、どのようなことを行ったのでしょうか?
大倉
Webデザインツールの「STUDIO」とデータ分析ツールの「Exploratory」、この2つのツールについて、使い方をレクチャーするライブレッスンをZoomで実施しました。
参加者は幅広くサンプルを集めたいという考えから、多岐に渡るバックグラウンドの方を30〜40名程集めました。元キャビンアテンダントの方、飲食店の経営者、フリーのイラストレーターから、現役バリバリのデータサイエンティストまで。既にツールに近しいスキルをお持ちの方もいらっしゃいました。
STUDIOとExploratory、それぞれで学びたい人を募集し、レッスンは1回90分の合計7コマ開催しました。レッスンの後は、一定の基準を満たした人を対象に実務訓練を行いました。
ー実証実験ではどのような気づきや学びがありましたか。
三谷
ツールに近しいスキルを持った方ほど、提供価値がブーストするというのが1つの大きな気づきでした。これを「スキルのピポット」と我々は呼んでいます。
例えば、グラフィックデザイナー方がSTUDIOを使いこなせるようになると、WEBデザインの仕事もできるようになります。エンジニアがExploratoryを使えると、データサイエンティストの領域にピポットできるようになります。既存のスキルを軸足として、新しいスキルを学ぶことで仕事の幅が広がる。顧客への提供価値が上がるのです。
学びをお金に変える。そのために必要なのは、修羅場を乗り越えた経験
大倉
我々が大事にしていたのはまさにこの部分です。ツールを活用して、ご自身の顧客への提供価値を高める。学んだことをしっかりお金に変える、ということです。そのためにどのようなインプットをすれば良いか。その点を重視してトレーニングプログラムを開発しました。
その役割を大きく果たしてくれたのが、プログラム後半に実施した「実案件トライアル」でした。それは身につけたスキルで、実際に我々のクライアントに対して納品までしていただくという、かなりハードなものです。
三谷
STUDIOのプログラムでは、クライアントにWebサイトを納品する。Exploratoryでは、クライアントからの要件に基づき分析をし、そこから導き出された仮説をクライアントにぶつける。その工程をTOOL PROJECTの事務局メンバーが並走し、一定のクオリティへと仕上げる部分をお手伝いしました。
大切なのは、自信をもってツールを使いこなし、顧客の前に立って納品までを経験することです。
座学だけでは、ツールを使いこなすオペレーターになってしまいます。非常に厳しいようですが、プロとして身につけたスキルをお金に変えるには、実務を通じて納品実績を作るしかない。
大関
学んで終わりではなく、学んだことを発揮してご自身の提供価値に変え、お金を稼ぐところまで持っていく。とにかくそこをゴールにしましたが、参加者の皆さんがなんとかこのハードルを乗り越えて下さり、私達も実証実験を通じてその手応えを得ることができました。
実案件トライアルでは受講者同士が助けあい、戦友のように学びを深めていく関係性も生まれました。トライアル終了後には、受講者同士でこの経験を共有する場を設けたところ、一人で一社経験した以上の学びが得られ、一気に経験値が爆上がりする。学習効率を高めるための方法も見えてきました。
STUDIOとExploratory。これにShirofuneを組み合わせると、スキルのピポットが進む
ーSTUDIO、Exploratoryに続く第二弾の実証実験ツールとして採択されたのがShirofuneですね。Shirofuneに目をつけた背景を聞かせてください。
三谷
クライアントへの価値提供を考えたとき、サイト制作しかできないより、Shirofuneを使ってデジタルマーケティングまでできると価値は高まります。STUDIOやExploratoryと組み合わせて使うことで、スキルのピポットが進むのがShirofuneだと考えていました。
STUDIOでサイト制作をし、Shirofuneで広告を出稿する。両方を使うことで、中小企業やスタートアップのデジタルマーケティングを支援することができます。
大倉
Shirofuneを活用すれば工数を抑えながら、広告運用ができるようになるという側面にも注目していました。その人が本来持っているスキルにしっかり時間を配分した上で、広告運用という新しい領域で価値提供できるようになるからです。
大関
一歩引いて博報堂のミライの事業室という視界で捉えると、Shirofuneと連携することで新しい価値提供ができるのではないか、という考えもありました。
博報堂の既存事業ではナショナルクライアントに統合コミュニケーションを提案し、ある程度まとまったご予算をいただいています。ところが予算の限られる新規事業や、中小企業、スタートアップのお客様にそのメニューはtoo muchです。人材とSTUDIO やShirofuneのようなツールを組み合わせることで、そういったお客様のニーズに応えられる可能性も感じていました。
Shirofuneが手を付けられずにいた、ツールによるリスキリングの支援
ーShirofuneサイドはTOOL PROJECTをどう捉えていたのでしょうか。
Shirofune菊池
最初にお声がけいただいた時、すごく面白い取り組みだと思いました。というのも、Shirofuneが生まれた背景と繋がるものがあったからです。
Shirofuneは「スキルのない人が、デジタル広告で成果を出せるようになる」というベネフィット提供をイメージして作りました。ただ実際に作ってみて思ったのは、そう簡単なことではない、ということです。
結局、Shirofuneはテクノロジーでありただのツールです。ツールをポンと渡して、できない人ができるようになるかというと、そんな単純な話ではありません。テクノロジー単体でリスキリングを支援する難しさを感じていました。
できる人が、より効率的にできるようになるツールか。はたまたできない人が、できるようになるツールか。ツールベンダーとして、まず前者に大きく舵取りをしました。そんな背景があった中でお話をいただいたのがTOOL PROJECTでした。
TOOL PROJECTと一緒に取り組めば、ただツールを渡すだけではなく、それをうまく使って個人の人生を変えていくところにまで寄与できるかもしれない。個人が持つスキルとShirofuneのテクノロジーを掛け合わせて、より豊かに生きる意義を提供できるかもしれない。すぐに売上に繋がるかとか、そういう考えは全くなく、一緒に長期的に取り組むことで社会に価値を提供できるのではないか。
そんな想いから、両社の連携はスタートしました。
〜[Vol.02]へ続く。〜
『博報堂TOOL PROJECT×Shirofune。両社が開発したトレーニングプログラムの内容と、実証実験の成果、両社が描く「フリーランスが稼げる未来」とは。』
<取材・文/藤井恵 撮影/鈴木慶子>