Google広告リスティング広告広告運用

リスティング広告の運用方法とは?成果が頭打ちにならないためのコツ・設計・評価指標・体制づくりまで解説

菊池 満長

近年、リスティング広告を取り巻く環境は、私たちが想像する以上のスピードで激変しています。たとえば、自分でもちょっとした調べものは検索結果のAIの回答だけで済ませることが増えていないでしょうか? 

これは「ゼロクリック検索」という、生成AIが検索結果のトップで回答を完結させてしまうことで起きるユーザー行動です。実際、Ahrefsの2025年の調査では、Googleの「AIによる概要(AI Overviews)」の表示によって、上位ページの平均クリック率 (CTR) が 34.5%も低下したというデータが出ています。

一方で「IABインターネット広告収入レポート:2024年通期」を見ると、2024年のインターネット広告収入は2021年以来の最高額。メディア企業がAIを積極的に活用することで成長していくと予想されています。

また、米国調査会社EMARKETER(イーマーケター)も、AIを活用した検索広告への支出が、2029年までに260億ドルに急増すると予測しています(2025年6月ロイター報道)。

そもそもユーザーの探し方が変わっていても、ユーザーが「情報を求めていること」に変わりはありません。今求められているのは、AI時代に即したリスティング広告の「設計」の描き直しです。

従来と同じような運用を進めると成果が頭打ちになるリスクがあります。本記事では変化の激しい今、リスティング広告をどう設計し、どのような体制で成果を出し続けるべきか? 基本原則や注意点を解説します。

リスティング広告とは

リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザーが特定のキーワードを検索した際、その検索結果ページに連動して表示される広告のことです。

検索結果には「オーガニック(自然検索)」と「有料検索広告」の2種類が混在しますが、リスティング広告には「スポンサー」や「PR」というラベルが表示されています。

以下は「リスティング広告 運用」で検索した際の検索結果ページ。上部に掲載されている赤字で囲まれた3社がリスティング広告掲載企業です。

(リスティング広告の掲載例)

リスティング広告の定義と特徴

リスティング広告の定義は、以下のとおりです。

ユーザーの検索意図(クエリ)に対し、入札価格だけでなく「広告とサイトの品質」「検索時の状況(コンテキスト)」「広告アセット」を統合した「広告ランク」によって掲載順位が決まる、リアルタイム・オークション形式の意図ベース広告。

(参考:検索広告って、そもそもどんな広告? – Google 広告)

リスティング広告の特徴は、ユーザーが検索するキーワードと​連動して広告が表示されることです。ユーザーが今まさに「知りたい」「解決したい」と考えて検索した瞬間にアプローチできるため、サービスや​商品に​興味を​持っている​ユーザーに​広告メッセージが届きやすく、クリック率や​コンバージョン率が​高い傾向があります。

ただし、リスティング広告は購買意欲の高いユーザーにアプローチできる一方、検索されない限りは表示されないという拡張性の限界も併せ持っています。​

リスティング広告の仕組みと他広告との違い

リスティング広告が他のディスプレイ広告やSNS広告などと決定的に違うのは、自分で何かを探そうとしている「能動的」なユーザーを対象としている点です。

SNS広告、ディスプレイ広告、テレビCMなどは、何かを視聴しているユーザーの目にとまって興味を持つきっかけを作ることを目的としており、ユーザーの姿勢は「受動的」です。

仕組みも独特です。リスティング広告の本質は、経済学の『ポジションオークション(GSP)』という理論に基づいています。この理論を実務で運用するために、プラットフォームが用いているのが「広告ランク」という指標です。

1位、2位、3位といった掲載順位は、単に高い金額を出せばよいのではなく、「入札価格」に加えて「広告とLPの品質」「広告アセット(電話番号・サイトリンク等」「コンテキスト(ユーザーの所在地、デバイス、検索の背景)」などが絡み合って決定される、極めて合理的な競争モデルとなっています。

リスティング広告運用の基本原則とフロー

ここでおさらいも兼ねて、リスティング広告運用の基本を解説します。リスティング広告においては、「成果は作業ではなく設計で決まる」が鉄則です。

運用の計画を立てる際のフローは「目的・KPI設定」 →「構造設計」 「キーワード選定」→「広告作成」→「入札・予算管理」 →「 効果測定・改善の繰り返し」という順番です。

この基本原則が、継続的に成果を出し続けるための土台だと忘れないようにしましょう。

Wordstreamの「Google 広告ベンチマーク 2025: あらゆる業界の競合データと分析情報」においても、「アカウント構造は広告オークションでの体験を左右する」旨が記載されています。以下は、同サイトの画像をベースに日本語で概念図を簡略したものです。

リデザイン

(出典:Wordstream「Google 広告ベンチマーク 2025: あらゆる業界の競合データと分析情報」の概念図をもとに作成)

1.目的とKPIを起点に運用全体を設計する

まず、目的とKPIを明確にします。なぜなら、リスティング広告の運用の最適な設計は「何を最大化するか(CV数、売上げ、LTVなど)」という目的によって大きく変わってくるからです。

特にBtoB商材の場合、Web上の「リード獲得」を目的にするだけではおそらく不十分なので、多くは売上げへの貢献を目的とするでしょう。その場合、実際にこれまでの広告がどの最終的な成果につながったかのデータを、Google広告にアップロードする工程が必要になります。

Google広告には、オフラインの成果を計測・反映するための以下の仕組みがあります。

Googleの機能できること
オフラインコンバージョンインポート(オフライン連携・オフライン計測と同じ)クリックID(GCLID等)を活用し、オフラインの成果を後から広告にひもづける仕組み。※CSV、APIなどでデータをアップロード
リードの拡張コンバージョン顧客提供データ(メールアドレス等)を用いて、オフラインインポートをより正確に計測できるオフラインコンバージョンの進化版

また、コンバージョンという定義は多様に解釈できるので、配信前に自社の「コンバージョン(CV)の定義」を明確にすることも不可欠です。

(コンバージョンの定義の例)

  • 資料請求
  • 見積依頼
  • 問い合わせフォーム
  • イベント申込
  • 会員登録

さらに、どのコンバージョンが自社にとって価値が高いかもAIに正しく教える必要があります。具体的にはGoogleなら「コンバージョン値のルール」を用い、AIに対して「どのCVが高価値(受注に近い)か」を定義します。Googleでは、以下のようにユーザー層、地域、デバイスなどの設定が可能です。

(出典:コンバージョン値のルールについて – Google 広告 ヘルプ)

2.検索意図に基づいてキーワードと構造を設計する

次に、検索意図にもとづいて「キーワード」と「構造」を設計します。

キーワードとは、ユーザーの検索意図を想定した単語です。

リスティング広告は、検索語句(クエリ)ごとに競合他社の顔ぶれ(参加者)が入れ替わる「ポジションオークション」という独自の構造を持っています。そのため、キーワードは単なる単語の羅列ではなく、「検索意図(解決したい課題)の束」として捉える必要があります。

たとえば「〇〇ツールとは」と「〇〇ツール 比較」では、同じツールを探していても検討フェーズが異なります。これを混在させると検索意図にズレが生じ、広告文の訴求や遷移先LPとの整合性がとれなくなってしまいます。

「構造」とは、キャンペーンや広告グループです。言いかえれば「評価」「最適化」「予算配分」ができる単位」です。なお、かつてリスティング広告は「1キーワード1広告グループ」が主流でしたが、現在は「スマート自動入札」が主流です。

スマート自動入札では、すべてのキャンペーンのデータに基づいて最適化が行われるため、十分なデータ量を確保しつつ、検索意図に一貫性のある「意味のあるまとまり」で構造(キャンペーン等)を組むことが推奨されています。

このような構造設計の狙いは「AIの学習の分離」にあります。構造ごとに異なる意図(例:認知向けと獲得向け)を分けることで、AIがそれぞれの文脈で正しく学習・比較できるようになり、結果としてオークションごとの入札精度が最大化されます。

3.媒体アルゴリズムを前提に入札と予算を管理する

前述のとおりリスティング広告の入札は、入札価格だけでなく広告品質の他、いろいろな要素を反映した「広告ランク」によって決定されます。

人間が手動で調整するのではなく、AIが数百万ものシグナル(ユーザーの所在地、時間帯、過去の行動など)から「コンバージョンする可能」をリアルタイムで予測して入札額を決める「スマート自動入札」が主流です。

そのため、、AIが最適な解を見つけ出せるように「広告の目的」「価値設計」「十分な信号」「計測しやすさ(タグやサーバーの正常な設置)」を管理することが運用においても重要になりました。Googleのヘルプでも十分なデータがあるほど精度が上がることが示唆されています。

予算管理の考え方も変わりました。広告成果のよいところに多く配分するだけでなく「AIの学習・探索のための予算」も配分する必要があります。あまり予算設定を細かく制限しすぎると、AIの学習が停滞してしまうので、ある程度のボリュームのデータを学習できるように余裕を持った予算配分を行うほうが、最終的なパフォーマンスの最大化につながります。

4.広告文・LP改善を含めた改善プロセスを回す

運用開始後は、キーワードや入札の調整だけでなく、「クリエイティブ(広告文・LP)」の継続的な改善が成果を左右します。

広告文をいくら改善しても遷移先のLP(ランディングページ)でユーザーが離脱してしまえば、広告費は無駄になります。広告文で伝えた「強み」や「解決策」が、LPのファーストビューで即座に確認できるかといった「一貫性」の検証が不可欠です。

具体的には、以下のプロセスを高速で回します。

  • A/Bテストの実施: 訴求軸(価格、品質、実績など)を切り替えて反応を比較。
  • LPO(ランディングページ最適化): ページの表示速度、入力フォームの簡略化やコンテンツの再構成等を行う。

この点は、現在と同じであり継続した検証と改善を地道に行っていくことが大切です。

成果が頭打ちになってしまう理由とその回避策

リスティング広告を続けていると、「これ以上、成果が伸びない」という壁にぶつかることがよくあります。検索広告の市場はとても大きく多くの会社が参加しているため、どうしても競争が激しくなり、費用対効果(ROAS)が上がりにくくなってしまうのです。

この章では、多くの現場で起きがちな「成果が詰まってしまうパターン」を「症状 」→「 原因 」→「 処方箋」の順に整理します。このような壁も、Google広告などの最新機能(オフライン連携やコンバージョン値のルール)を正しく使えば多くは「回避」できます。

まずは、何が原因で今の症状が起きているのかチェックしていきましょう。

CPA・ROAS最適化に偏りすぎている

リスティング広告の成果を「安くたくさん取ること(CPA)」や「効率(ROAS)」だけで判断していませんか? 効率ばかりを追いすぎると、単価は安いけれど「売上げにつながらない質の低い成果」ばかりが集まってしまうことがあります。

大切なのは、その先の「売上げ」や「利益」、そして長くお付き合いしてくれる「LTV(顧客生涯価値)」を増やす設計に切り替えることです。

対策として、Google広告には、コンバージョンごとに重み付けを変える「コンバージョン値のルール」や、利益を最大化する「tROAS(目標広告費用対効果)」という仕組みがあります。これらを使えば、「価値の高いお客さま」を優先して集める運用が可能です。

BtoBの場合は、ネット上の登録だけでなく、その後の「商談」や「受注」のデータを広告管理画面に戻す「オフライン連携」も考えましょう。「リードの拡張コンバージョン」という機能で可視化できます。また、どの粒度で価値を持たせるか(商談・受注・継続等)をあらかじめ決めておくことで、ツールが賢く動いてくれるようになります。

短期成果だけで判断してしまっている

「数字が悪いからすぐに設定を変えなきゃ!」という発想になっていないでしょうか? 直近のCPAやROASだけで判断してしまうと、かえって成果を下げてしまうことがあります。

特にBtoBのように「検討期間が長い商材」では、今日広告をクリックした人が、数カ月後にようやく受注につながることも珍しくありません。また、季節や時期による動き、AIが学習するために必要な時間もあります。

短期的な数字だけを見て「ダメだ」と判断してしまうと、将来の利益につながっていたはずの大切なチャンスを捨ててしまうことになりかねません。「今の動きを見る期間」と「本当の成果を判断する期間」を分けて考えましょう。 

BtoBであれば、ネット上の反応だけでなく、その後の「受注」まで追いかける仕組み(オフライン連携)を整える必要があります。長い目で見てリスティング広告がプラスになっているかを確認することが大事です。

顧客の「質」を見られていない

広告からの問い合わせ(リード)は増えているのに、営業サイドからは『売れそうにない人ばかりだ』と言われてしまう。これをそのままにすることも、運用がうまく行かなくなる原因のひとつです。

問題を解決するには「リードの質」を言葉のみで表現せず、数字で定義しなおす必要があります。具体的には「申し込みのうち、何件が商談になり、いくらの受注につながっているか(受注率や単価)」をしっかり調べ、質を見極めましょう。

さらに「コンバージョン値のルール」を使い、「商談になったら◯円、受注したら△円」と重みをつけることで、広告の仕組みが自動的に「質の高いお客さま」を探しにいってくれるようになります。

前述のようにGoogle広告には、広告のその後の営業成果を広告管理画面に戻す「オフラインコンバージョン(オフライン連携)」や「リードの拡張コンバージョン」という仕組みがあります。

「リードの拡張コンバージョン」という機能で顧客データ(メールアドレス等)を照合し、オフラインの成約を広告データと紐付けることで、どの広告文やLPが「実際の受注」に貢献したかを可視化できます。活用して「どのお客さまが良質のお客さまだったか」をAIに教えてあげるとよいでしょう。

・リードの拡張コンバージョン

 (出典:リードの拡張コンバージョンについて – Google 広告 ヘルプ)

運用が属人化してしまっている

「あの担当者にしか設定がわからない」「手作業のExcel管理でミスが怖い」といった、運用の「属人化(ぞくじんか)」も大きな問題です。判断のルールがバラバラだったり、データのつなぎこみが個人に依存していたりすると、チームとしての成長が止まってしまいます。

運用を「誰がやっても同じようにできる仕組み」に変えていく必要があります。まずは、手作業のExcel管理を卒業しましょう。前項のような公式のAPIや自動アップロード機能を使い、オフラインのデータもオンラインデータもつなぎこみ、クラウド上で管理できるようにするのが属人化を防ぐ第一歩です。

いきなりすべてを自動化するのは大変ですので、まずは「正しく計測する」、次に「コンバージョンの価値をきめる」、最後に「自動で最適化する」というように段階を分けて導入するのがコツです。

最初は少し手間がかかりますが、一度「標準化」してしまえば、誰でも一定のクオリティで成果を出せるようになり、チーム全体の力がぐっと底上げされます。

リスティング広告の運用成果を伸ばすためのコツ

ここからは「上位運用者」の設計思想(考え方のルール)をお話しします。コツは、単なる「設定のテクニック」を集めるのではなく、迷わずに正しい判断ができる「再現性のあるものさし」を持つことです。

これらの内容はすべてGoogle広告などの仕組み「広告ランク」「自動入札」「価値最適化」を活用するものです。公式ルールに基づいた「正しい戦い方」を知ることで、たまたまではない、狙い通りの成果を出せるようになります。

検索意図と成果指標を一貫して設計する

ユーザーが検索するとき、そこには必ず「知りたい(情報収集)」「比べたい(比較)」「買いたい(購入)」といった「意図」があります。検索広告の仕組みでは、検索される言葉(クエリ)ごとに参加するオークションが変わるため、この「意図」に合わせて評価のルールを正しく決めることが重要です。

「キーワードごとにバラバラな『成功の定義』を持たせるのではなく、ひとつの共通のものさしをベースに、広告文・LP・入札戦略を設計しましょう。このものさしが一貫しているほどAIは迷いなく学習を深めることができます。

なお、Google広告のAIは高度な数学的計算(アルゴリズム)で動いているため「このリードは価値が高いから高評価で!」といった指示はできません。必ず「このコンバージョンには〇〇円の価値がある」という数値で伝える必要があります。

具体的には、Googleの「コンバージョン値のルール」「tROAS(目標広告費用対効果)などの機能を使って価値をAIに伝えます。以下のように各コンバージョンに「価値(金額)」を設定すると、AIに自社が何を重視しているかの意図を伝えることができます。

  • 「今すぐ相談」=10万円
  • 「資料ダウンロード」=1万円

もし運用において、10万円の価値がある成果を、広告費2万円以内で獲得したい(=投資に対して5倍の成果が欲しい)のであれば、入札戦略で「目標広告費用対効果(tROAS)」を500%に設定します。すると、AIは「1件あたり2万円払ってでも、この価値を獲りにいくべきだ」と判断できるようになります。

改善インパクトの大きいレバーから優先的に触る

限られた時間で成果を出すには、影響の大きい「レバー」から順に触ることが鉄則です。おすすめの順番は構造 → 計測 → 価値設計 → 入札 → 広告文・LPです。

多くの人が「入札(金額)」を真っ先にいじりたくなると思いますが、Googleの広告ランクは、金額だけでなく「広告の質」や「計測データの正確さ」など、複数の要素で決まります。

そもそも計測が正しくできなかったり、コンバージョンの価値がAIに正しく伝わっていなかったりすると、いくら入札を変えても空回りするだけです。まずは大きなレバーからひとつずつ丁寧に動かすことが、再現性のある成長を生むコツです。

・やることチェックリスト

  • オフライン連携や計測タグが正しく動いているか確認する
  • 1件あたりの「価値」の設定がビジネスの実態と合っているか見直す
  • 変更を加えるときは、一度に一箇所ずつにして変化を観察する

短期最適と中長期最適を切り分けて運用する

運用の現場では、「今すぐ安く取りたい(短期)」という気持ちと、「将来の利益を増やしたい(中長期)」という目的がぶつかることがあります。両方大事なことは、いうまでもありません。

しかし、目先のCPA(獲得単価)だけを追いすぎると、すぐにいなくなってしまうお客さまばかりが集まり、結果として会社の利益が減ってしまうこともあります。

広告運用においても、長期的な価値を確認できることがベスト。評価する期間も大切にすべき数字(KPI)も、全く別物として切り分けて考える必要があります。

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)やコロンビア大学の研究でも、一人のお客さまが将来もたらしてくれる価値(LTV)を考えることの重要性が説かれています。また、真に顧客中心の企業は顧客を長期的に(またチャネルを超えて)追跡する能力を持ち、LTV(顧客生涯価値など)の算出を模索しているとあります。

Googleの「オフライン連携」や「価値設計」の機能を使い、将来の利益につながるアクションを高く評価するようにAIに教えてあげることで、短期と長期のバランスがとれた強い運用が可能になります。

リスティング広告運用で意識すべき評価指標と考え方

運用指標や事業の数字が混ざってしまうと、チームの会話が噛み合わなくなり、正しい判断ができなくなってしまいます。リスティング広告に関わる指標を「運用指標」「事業指標」「顧客価値指標」の3つに分けて整理しましょう。

誰が、何の意思決定のためにその数字を見るのか(現場の運用者なのか、経営層なのか)を明確にすることで、報告や改善のスピードがぐっと上がります。

それぞれの立場に合った「指標」を使い分けることが、プロの運用への第一歩です。

運用指標:CTR・CVR・CPA

運用担当者にとって一番身近な3つの指標です。

CTR(クリック率)は、「広告のメッセージが、ユーザーの知りたいこと(意図)と合っているか」を表します。CVR(コンバージョン率)は、「ランディングページが、ユーザーの期待にこたえられているか」を教えてくれます。これら2つによって1件あたりのコストであるCPA(顧客獲得単価)が決まります。

運用指標意味
CTR(クリック率)広告がクリックされ割合
CVR(コンバージョン率)広告が成果につながった割合(コンバージョンの定義は自社で設定)
CPA(顧客獲得単価)1件のコンバージョンを獲得するためにかかった広告費用

Googleの「広告ランク」の仕組みでは、入札金額だけでなく「広告の質」も掲載順位に大きく影響します。つまり、CTRやCVRを改善することは、ただ効率を上げるだけでなく、競合に勝ってよい場所に広告を出すための「競争力」になります。

「この数字が悪かったら、ここを直す」というアクションに直結させて考えましょう。

  • CTRが低い → 広告のコピーを見直す
  • CVRが低い → ページの内容(LP)や、狙っているユーザー(キーワード)を見直す

 このように、数字を改善の「手がかり」として使うのが運用者の仕事です。

事業指標:ROAS・売上げなど

運用指標が「コストを最適化する視点」なのに対し、事業指標(ROAS)は「利益を最大化する視点」の指標です。

事業指標意味(ビジネスへの貢献度)
ROAS支払った広告費に対して、何倍の「売上げ」を得られたか
売上げ広告経由で発生した、直接的な事業収益の総額

どれだけ安く顧客を獲得できても、その後の受注や売上げにつながらなければ、ビジネスとしては成功といえません。そのため、現代のリスティング広告では、CPAだけでなく「売上げ」や「粗利」といった事業成果に近い指標を最適化の対象にすることが不可欠です。

事業指標であるtROASに寄せると、以下のように入札も変わります。

  • これまでの入札(tCPA): 「1000円で獲れそうか?」だけを判断し入札
  • これからの入札(tROAS): 「このユーザーは、将来的に10万円の利益をもたらす意図を持っているか?」までを予測市入札。

たとえば、Googleのスマート入札戦略で、売上げや利益拡大を目的に以下のような戦略をとることができます。

(出典:スマート自動入札について- Google広告ヘルプ)

LTV・顧客価値を踏まえた評価

広告の本来のゴールは、申し込み(リード)を増やすことではなく、会社の利益が増え続けることです。そこで大切になるのが「LTV(顧客生涯価値)」という考え方です。これは、一人のお客さまが将来にわたって企業にもたらす価値の合計を指します。


LTVは「究極の事業指標」であり、現代のリスティング広告においては「最も強力な運用指標」になります。「安くたくさん取れたけれど、すぐにやめてしまう人ばかり」では、事業は成長しません。評価の基準を「獲得」で止めず、その先の「受注」や「継続」まで広げてみましょう。

Google広告には、営業現場での成約データを広告に戻す「オフライン連携」や「リードの拡張コンバージョン」という仕組みがあります。これらを使って、「長く取引してしてくれるお客さま」のデータをAIに教えてあげましょう。

さらに「コンバージョン値のルール」を使って、継続しそうな方(たとえば、特定の業界・役職などの属性)のリードを、評価を高く設定すれば、広告の仕組みが自動的に「未来の利益」を探しにいくようになります。

この「LTVを意識した運用」こそが、本来の目的にマーケティングへの入り口です。

属人化しないリスティング広告運用体制の作り方

代理店でも事業会社でも、リスティング運用の最終的な目的は「広告費を使って、いかに事業の利益を最大化するか」です。そのためには、盤石の運用体制が必要。特に、属人化しない広告運用体制を作ることが重要です。

以下はよくある属人化の課題です。

代理店「担当者が変わると成果が落ちる」「あの人じゃないと分からない」という状況。担当替えが顧客離反のリスクとなる。
事業会社「マーケ部門が何をやっているか他部署に見えない」「広告の数字が売上げにどうつながっているか不明」というブラックボックス化。担当者の異動や退職で業務が停滞する。

運用業務を分解し、再現性を高める

リスティング広告運用が「担当者のスキル・カン」に頼りきりにならないように、業務をできるだけ分解し、ロジカルにとらえ標準化しましょう。そのためには業務を「考えること(判断)」と「動かすこと(作業)」の2つに分けて整理することがポイントです。

判断業務(設計・意思決定)ビジネスの方向性を決め、AIに「何をすべきかを考え、決定する仕事
ターゲット設計: 誰に、どんな悩みを解決するメッセージを届けるか決める。KPIの策定: 今追うべきは「CPA(安さ)」か「LTV(将来の利益)」かを判断する。アカウント構造の決定: キャンペーンをどう分けるか設計する。例外への対応: 競合の参入や季節要因で数字が急変した際アクセルを踏むかブレーキをかけるか決める。LP・バナーの改善方針: 数字を見て「次はこの訴求を試そう」と仮説を立てる。
作業(実装・集計)ルールにもとづいて実行。正確さとスピードが求められる仕事
キーワード・広告文の入稿: 決まった内容を管理画面にセットする。入札価格の調整: AI(スマート自動入札)に目標値を設定し、24時間の調整を任せる。レポートの作成: ツールを使って数字を抽出し表やグラフにまとめる。計測タグの発行・設置: サイトにコードを貼り正しく動くか確認する。

ツール活用・自動化で任せるべき領域

運用のなかで、ツールやAIに任せるべき領域を整理します。代表的なのが「ミスが出やすい反復作業」「24時間365日のリアルタイムな入札調整」「膨大なデータの集計」です。

たとえば、Google広告の「スマート自動入札(Smart Bidding)」は、ユーザーが検索した瞬間のシグナルを捉えて、0.1円単位で入札額を調整してくれます。これは人間が手作業で行うには限界がある領域です。また、APIなどを活用して広告プラットフォームにオフラインデータを自動でアップロードすれば、集計ミスも防げます。

人間の役割は「設計」と「例外への対応」です。上の表のように「そもそも誰に何を届けるか」という戦略を立てることや、急な社会情勢の変化、競合の参入といった、AIが予測できない「例外」が起きたときの舵取りです。

できるだけ作業はツールにまかせて、マーケティング担当者はビジネスの未来を描く「設計思想」を磨くことに時間を使っていきましょう。

教育コストと品質を両立する体制設計

新しい担当者を育てる際に「とにかく現場で慣れて」というOJT体制にすると、教える側の負担も大きく、広告運用の品質もバラバラになってしまいかねません。また、今のマーケティング領域の進化のスピードにまったく対応できません。

「職人を育てる」のではなく「誰でも成果が出せる環境」を整えることがチームを強くする一番の近道。大切なのは、広告運用の品質を落とさないまま人材が自走できるような育成の仕組みを作ること。以下の対応が必要です。

  1. 最低限守るべき広告運用の「型(チェックリスト)」を整える。
  2. 上司がチェックする際の「監査のポイント」を明確にする。
     例:広告ランクの要素(品質スコアやアセットなど)の適切な規準
  3. 受注までのオフラインデータを接続し、広告運用の成果を見える化する。

仕事の成果が数字で裏付けられれば、新人ならずとも自走スピードは格段に上がるでしょう。また、こうした体制は業務の属人化を防ぎます。内部にノウハウや知見が蓄積されるため、代理店なら「引き継ぎ体制の強化」、事業会社なら「内製化の強化」につながっていくでしょう。

まとめ

生成AIの登場によってリスティング広告をとりまく環境は激変しつつあります。しかし、AIの登場で全体のクリック数が減ったとしてもユーザーの購買意欲が変わるわけではありません。真剣に何か購入を検討するときには、多くの人が「たしかな情報」を検索するでしょう。

リスティング広告の成果は「作業ではなく設計」で決まります。設計(目的/KPI)→キーワードと構造設計→広告品質の最適化→入札戦略→検証・改善という順番で考える基本原則にのっとり着実に運用していきましょう。

また売上げやLTVの向上につながるようなリスティング広告運用を目指すなら、Googleの「オフライン連携」「リードの拡張コンバージョン」などの機能を活用していきましょう。

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