
クリエイティブプランニングとは?進め方や成功のポイントについても解説

- 戸栗 頌平
入札調整や配信面の最適化を重ねても、クリック率やコンバージョン率が思うように改善しない。そんな状況に陥ったとき、成果を左右するのはクリエイティブ、すなわち伝え方の設計です。
近年、GoogleやMetaをはじめとする広告プラットフォームでは配信アルゴリズムの自動化が進み、ユーザーの意思決定を左右する表現の質が一層重視されるようになりました。表現を変えるだけで、同じターゲット・同じ予算でも成果は大きく変化します。
さらに、生成AIの進化によってクリエイティブ制作の効率化も加速しています。実際、株式会社サイバーエージェントの調査では、企業のクリエイティブ制作における生成AI活用率は54%に達していると報告されています。しかし、やみくもにクリエイティブを量産し配信するだけでは、広告予算が無駄に消化されるだけになりかねません。求められるのは、戦略的な「クリエイティブプランニング」です。
本記事では、広告効果を最大化するために欠かせないクリエイティブプランニングについて、基礎から実践的な手順、成功のポイントまでを体系的に解説します。企画段階から施策後の振り返りまでを一貫して設計することで、成果の再現性とスケーラビリティを高めていきましょう。
クリエイティブプランニングとは
クリエイティブプランニングとは、広告におけるクリエイティブ(広告表現)の設計を行うプロセスです。具体的には、誰に対して、どのような表現で、何を伝えるのかを明確にします。簡潔に言えば、「広告で何を伝えるか」を考える工程です。
広告は、企業と消費者のコミュニケーション手段であり、「誰に届けるか」「何を見せるか」「どのような行動を促すか」の3要素に分けて考えられます。このうち、「何を見せるか」に関わるのが、クリエイティブプランニングの役割です。

広告クリエイティブは、ユーザーと遷移先であるランディングページ(LP)や目指しているアクションをつなぐ橋のような存在です。クリエイティブの質が低ければ、どれほど適切なユーザーに広告が届いても、クリックや行動を起こしてもらえず、認知拡大や売上向上につながりません。
ここで注意すべきなのは、見栄えの良さだけを追求すればよいという誤解です。重要なのは、各広告媒体の特性、ターゲットのインサイト、広告運用の目的を踏まえた上で、伝えるべき価値を的確に届ける設計です。
広告クリエイティブとは
そもそも広告クリエイティブとは、広告として制作されたコンテンツ全般を指します。リスティング広告では見出しのコピーや説明文、SNS広告やディスプレイ広告では画像・動画・音声、記事広告では記事コンテンツが該当します。
広告媒体によって使用するクリエイティブの形式は異なりますが、いずれも目的を達成するためにユーザーを次の行動へと導くものでなければなりません。
リスティング広告は、クリックによってユーザーを遷移させることが主な目的であり、構造も比較的シンプルです。一方、SNS広告やディスプレイ広告では、購買が目的であればクリックを促す設計が求められますが、認知拡大や想起率の向上を目指す場合には、印象に残るクリエイティブの構築が重要となります。
広告クリエイティブの例
それでは実際に、いくつかの広告クリエイティブの例を見ていきましょう。
まずは、GoogleやYahoo!に代表されるリスティング(検索連動型)広告です。
基本的にはテキストを中心に構成されており、中でも最も目立つのが見出しです。検索キーワードに一致した語句は太字で表示され、視認性が高まります。また、広告表示オプションを設定することで、広告の表示領域を拡張し、より多くの情報を伝えることも可能です。

次に、ディスプレイ広告のクリエイティブです。これは各種Webサイトの広告枠に表示され、静止画や動画を用いて訴求します。多くの場合、コンテンツの上下や左右といった目立たない位置に表示されるため、ユーザーの視線を引きつけるクリエイティブ設計が成果を左右します。

(出典:東洋経済オンライン)
これはX(旧Twitter)の広告です。Xに限らず、SNS広告の多くはユーザーのタイムライン(フィード)に自然な形で差し込まれます。ユーザーは素早くスクロールしながらコンテンツを選別するため、最初の数秒で興味を引く構成が不可欠です。ここで惹きつけられなければ、広告はただ流されて終わってしまいます。

(出典:X)
YouTube広告には、動画内に配信される「インストリーム広告」と、動画外の広告枠に表示される「アウトストリーム広告」があります。インストリーム広告は、動画の再生前・途中・終了後に表示され、一定時間が経過しないとスキップできないため、比較的高い確率でユーザーの注意を引くことができます。

(出典:YouTube)
このように、広告の種類や配信媒体によって、最適なクリエイティブの形は異なります。だからこそ、事前の綿密なプランニングが重要となるのです。
メディアプランニングとの違い
メディアプランニングとは、広告予算を「どの媒体に」「どのタイミングで」「どのように配分するか」を設計するプロセスです。いわば量と面の戦略であり、リーチの最大化や配信効率の最適化を通じて、ターゲットに確実に広告を届けることを目的としています。
これに対して、クリエイティブプランニングは、届けた広告がユーザーの心を動かし、行動へつながるかどうかを左右する質と中身の設計です。価値提案をどのように翻訳し、どのような体験としてユーザーに届けるかが問われます。

ここで重要なのは、メディアプランニングとクリエイティブプランニングが分断されてしまうと、広告効果が著しく低下するという点です。届ける相手は適切だったが、見せ方に問題があったというケースや、反対に優れたクリエイティブだったが、配信先がずれていたという例は少なくありません。
成果が出ないとき、入札設定や配信の仕組みだけに原因を求めがちですが、クリエイティブの見直しも行うべきです。多角的に見ることで、ボトルネックを特定できます。
クリエイティブプランニングはなぜ重要なのか
クリエイティブプランニングが注目される背景には、広告配信の最適化が頭打ちになっている現状があります。かつては、ターゲティングや入札制御を磨くだけでも大きな成果が得られましたが、AIの精度が高まった今では誰もが似たような最適化を行い、差がつきづらくなっています。そんな中で、広告効果を分ける最後の一手となるのが伝え方の質、つまりクリエイティブプランニングなのです。
媒体配信の自動化が進むほど、人の手で設計する余地はクリエイティブ領域に集中していきます。特に獲得目的の広告では、1クリックあたりのコストが高騰しやすく、CV率やLTVに大きく影響する要素がクリエイティブの精度であることは、現場感覚としても明らかではないでしょうか。
では、どのような点でクリエイティブプランニングが広告成果に貢献するのか、3つの観点から整理していきます。

クリエイティブが広告の成果の最大化につながる
広告の配信量や入札価格には、どれだけ調整しても一定の限界があります。しかし、同じ広告枠であっても伝える内容が変われば、クリック率やコンバージョン率は大きく変化します。つまり、表現を工夫することで、同じ予算内でも成果を最大化することが可能です。
同じ製品であっても、時短を訴求するのかコスト削減を訴求するのかによって、反応するターゲット層は異なります。このように、ユーザーの関心や状況に応じたクリエイティブを制作できるかどうかが、広告のROIを左右します。
実際にグローバルマーケティング企業KANTARの調査によると、クリエイティブはキャンペーン効果の約50%を占める最重要要因とされています。特に、ビジュアルが重視されるSNS広告では、クリエイティブが成果の8割を左右するといっても過言ではありません。ユーザーの目に直接触れる要素である以上、クリエイティブは最も重要な構成要素として位置づけられています。
いかに優れた媒体戦略やターゲティングを行っても、クリエイティブの質によって成果は大きく変動するのです。
メッセージにより競合優位性を確立できる
同じ商材を扱う競合が多数存在する中で、どの企業も似たような訴求を繰り返していると感じたことはないでしょうか。ターゲティングや出稿媒体が似通っている場合、成果を分けるのは伝え方の巧拙です。クリエイティブプランニングを通じて、自社ならではの強みや独自の価値を的確に表現できれば、競合との差別化が可能になります。
現代の消費者は、製品のスペックそのものよりも、それによって得られるベネフィットに関心を持ちます。ただ特徴を列挙するだけでは響かず、「その製品を使うことで、どのような変化が得られるのか」を明確に伝える必要があります。
たとえば、業務効率化が業界全体の訴求トレンドになっている場合でも、「導入によって離職率が改善した」「チームの生産性が継続的に向上した」といった具体的な成果を軸に語ることで、独自性を打ち出せます。こうしたユニークな価値提案が、競合に埋もれず優位性を確立する鍵となります。
媒体選定や配信設定は模倣されやすい一方で、ユーザーインサイトをもとにしたクリエイティブの表現設計には、経験と知見の蓄積が欠かせません。だからこそ、精緻なメディアプランニングと戦略的なメッセージ設計の両立が、成果に直結する差別化要因となるのです。
再現性を持つことで継続的に効果を出せる
米国のマーケター、Larry Kim(ラリー・キム、WordStream創業者)氏は、発信したコンテンツのうち「トップ1%」のものが実質的にユニコーンであり、それ以外の約98%は「ドンキー(凡庸)」にすぎないと述べています。これはパレートの法則(2:8の法則)にも通じており、ごく一部の施策が成果の大半を生み出すという現象です。

(出典:Medium)
そして重要なのは、ユニコーンがユニコーンたる理由を言語化し、再現性を持たせることです。再現性がなければ、次回以降は運に頼るしかなくなり、広告費用も無駄になりかねません。クリエイティブプランニングを体系化し、検証結果を継続的に蓄積することで、勝ちパターンを再現しやすくなります。広告施策においてもPDCAサイクルを回し、効果的だったクリエイティブの要素や訴求軸をナレッジ化することが求められます。
たとえば、YouTube広告においては、Googleが提示する「ABCD原則(Attraction, Branding, Connection, Direction)」に従うことで、一定の成果が得られやすくなるという知見があります。これを参考にし、自社でも「最初の5秒でベネフィットを提示する」「人物+ナレーション+字幕の組み合わせが効果的」といった学びを体系化すれば、媒体を越えた横展開が可能になるでしょう。
さらに、クリエイティブごとの評価指標(例:クリック率、完了率、CV率など)を一貫した形式で記録・共有しておくことで、属人化を防ぎ、チーム全体で再現性のある成果を継続的に生み出すことが可能になります。
クリエイティブプランニングはいつ行うべきか
クリエイティブプランニングは、「制作工程のどこかで考えればよい」というものではありません。施策の初期段階から意図的に設計し、実行・改善・振り返りまで一貫して携わることで、はじめて成果に結びつきます。
配信直前にあわててクリエイティブを用意する後追い設計では、成果につながる訴求軸が見つからなかったり、仮説の精度が低くなったりしてしまいます。逆に、プランニングのタイミングを意識的に設けることで、検証性の高いクリエイティブを計画的に生み出せるようになります。
ここでは、クリエイティブプランニングを実施すべき3つのタイミングについて整理していきます。

施策の企画前のタイミング
最も重要なのが、施策を企画する前のタイミングです。メッセージコンセプトやクリエイティブの方向性を事前に定め、媒体計画と並行してプランニングしておくことで、後々の制作や運用がブレずに進みます。もしこの段階を飛ばしていきなりデザイナーに制作を丸投げしてしまうと、製品理解・ターゲット設定・メッセージ決定といった重要プロセスを省略することになりかねません。
また、この段階で訴求と表現で複数のパターンを準備しましょう。まずは、ベネフィット、機能・特徴、その他(第三者の評価やサポート体制など)の3つの訴求軸を回すとよいでしょう。各訴求軸に対して、静止画や動画、コピー表現を作り分けます。配信時には、これらのパターンを統計的に有意な差が出るまで回し、勝ちパターンを特定しながら次の仮説へ予算をスライドする。こうした検証前提の進め方こそが、成果を出すポイントです。
このように、施策全体の流れを見据えた準備こそが、後の運用効率と学習効果を大きく左右します。

施策の実行中や更新のタイミング
広告配信の開始後も、データを分析しながら継続的にクリエイティブを改善していく必要があります。途中経過で想定通りの成果が得られていない場合は、新たなバリエーションを投入したり、訴求ポイントを調整したりすることで、パフォーマンスを立て直すことが可能です。
特にSNS広告では、同じユーザーに繰り返し広告が表示されやすく、広告疲れが起きるリスクが高まります。そのため、複数のクリエイティブを並行してテストし、反応の良いものに最適化することで、広告の効率が向上し、同時に広告疲れも回避できます。
ドミノ・ピザは、広告パフォーマンスをリアルタイムで細かく分析し、そのデータをもとに広告クリエイティブや配信場所をリアルタイムで調整しました。結果、クリック率が大幅に向上し、ROASは最大で398%という驚異的な数値を記録したのです。このように、配信中も仮説検証を繰り返すクリエイティブプランニングによって、キャンペーン成果の最大化が可能です。
このアプローチは特定の企業に限らず、日々の運用においても活用できます。たとえば、日次・週次・月次のレポートをもとに、CTRやCVRの低下が見られた場合は、原因を仮説立ててクリエイティブを改善します。重要なのは、配信先やオーディエンスの変化に応じて、訴求軸やCTAなどを柔軟に調整することです。こうした小さな修正の積み重ねが、成果の回復につながります。
加えて、外部要因の影響も見逃せません。季節要因や価格改定、在庫状況の変化などによってユーザーの期待値が変動する場面では、訴求内容そのものを変更することで、期待とのギャップを埋めやすくなります。
施策の振り返りのタイミング
施策が終了したあとは、成果を定量的・定性的に振り返り、次回に活かすための学びを言語化するフェーズです。
この際は、マーケティング担当者だけでなく、実際にリード対応を行った営業担当、クリエイティブを制作したデザイナーも巻き込み、複眼的に評価することが重要です。たとえば、資料請求は増えたが商談化率が下がったといった場合は、訴求が魅力的すぎて期待値が上がりすぎた可能性もあります。
こうした振り返りを通じて、「このクリエイティブはどんな層に響き、なぜ効果が出たのか」を整理することで、より高精度なクリエイティブ設計が可能になります。
クリエイティブプランニングの進め方
クリエイティブプランニングを成功させるには、場当たり的な制作ではなく、設計から検証、改善、再利用までを見通したプロセス設計が必要です。広告運用の世界では、どれだけ多く広告を配信するかよりも、どのように伝えるかが差を生む時代に入りました。そのためには、仮説と検証を繰り返しながら、勝ち筋を言語化・体系化していく視点が欠かせません。
ここでは、実務で活用できる5つのステップに分けて、クリエイティブプランニングの進め方を解説します。

① 目的・KPIの明確化
最初に行うべきは、施策のゴールとなるKGI(重要目標達成指標)と、そこに至る過程を測定するための中間指標であるKPI(重要業績評価指標)を明確に定義することです。たとえば、「自社サービスへの無料相談申込数を増やす」がKGIであれば、それに対応するKPIとして、以下のような指標が考えられます。
- CTR(クリック率)
- CVR(コンバージョン率)
- CPA(顧客獲得単価)
これは比較的シンプルな例ですが、BtoBや検討期間の長い商材を扱う場合は、目的やKPIの設定がより複雑になります。なぜなら、顧客の意思決定までに時間がかかるため、短期的な広告キャンペーンでは効果を正確に測定できないからです。こうしたケースでは、ROASやLTVなど、長期的な指標をKGIに設定し、それに基づいたKPI設計が求められます。
初期段階で目的と指標を明確に定めることで、関係者間での認識のズレを防ぎ、クリエイティブの方向性も一貫性を保てるようになります。
② 顧客インサイトとメッセージ骨子の設計
ターゲットとなるユーザーのニーズやインサイトを調査・分析し、伝えるべきメッセージの骨子を設計します。市場環境や競合の動向、自社商品の強みを洗い出し、ユーザーの共感を呼び、行動を促す訴求軸(キー・メッセージ)を設定することが目的です。
このプロセスで活用したいのが、マーケティングフレームワークです。たとえば、3C分析(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)を用いれば、競合が訴求しておらず、自社の強みが活かせ、かつ市場ニーズが存在する領域を見つけ出せます。
この段階で、自社の「独自優位性(USP)」をいかに明確にできるかが、後の成果を大きく左右します。仮に明確な強みが見つからない場合でも、ターゲット層や用途を絞り込んだり、製品機能ではなくサポート体制や操作性といった周辺要素に目を向けることで、新たな訴求ポイントが見えてくることがあります。視野を広げることが、差別化のヒントにつながります。

メッセージ設計においては、単に機能や価格を伝えるだけでは不十分です。ユーザーの悩みや期待を踏まえ、それに応える表現へと落とし込むことが重要です。特に競合の多い市場では、スペックを並べるだけでは埋もれてしまいます。製品を使うことで「どのような結果や変化が得られるのか」を、ユーザー視点で具体的に伝えるようにしましょう。
③ クリエイティブブリーフとバリエーションの設計
メッセージの骨子を具体的なクリエイティブへと落とし込むために、クリエイティブブリーフを作成します。ブリーフには、想定するターゲット像、訴求ポイント、トーン&マナー、フォーマットなどの要素を盛り込み、デザイナーやコピーライターと情報を共有します。
前述の通り、複数のクリエイティブ案(バリエーション)を前提に設計することが重要です。最初から一案に絞り込むのではなく、画像やコピーを変えた複数パターンを用意し、テストできる状態を整えておきます。
GoogleやMetaなどの主要な広告媒体では、複数のクリエイティブを同時に配信することで、アルゴリズムに多様な選択肢を提供できます。これにより、学習精度が向上し、広告成果も安定しやすくなります。
「これが正解だ」と初期段階で決めつけるのではなく、テストを前提とした柔軟な構成を取ることが、実務上の成功には欠かせません。あらかじめ複数案を用意しておけば、テストによって得られた勝ちパターンへ素早く舵を切れ、運用の最適化もスムーズに進められます。
④ 検証と振り返り
制作したクリエイティブは、実際に配信して効果を検証します。配信後は一定期間データを収集し、事前の仮説と照らし合わせながら結果を分析します。主な指標であるCTR、CVR、CPAなどをKPIと比較し、各クリエイティブのパフォーマンスを評価しましょう。
このプロセスを通じて、「どの要素が成果に貢献したのか」「どのターゲットにどの表現が効果的だったのか」といった知見を抽出できます。評価にあたっては、数値面だけでなく、クリエイティブそのものに対する質的なフィードバック、たとえばユーザーコメントやクリックヒートマップなどの情報も活用できるとより精度が高まります。
また、分析結果は次のアクションにつなげられるよう、要点を整理し、再利用可能な形式でまとめておくことが重要です。配信媒体や季節要因、ターゲット層の属性といった外部要因も考慮し、結果を多角的に捉える必要があります。検証フェーズを単なる運用レポートで終わらせるのではなく、ナレッジの発掘という視点で振り返ることが、次なる成果への土台となります。
⑤ 検証結果の資産化
最後に、検証によって得られた知見をドキュメント化し、チーム内で共有・蓄積します。「ユーザーの共感を得やすいフレーズ集」「高CVRを記録した構成パターン」「業種別に効果的だったビジュアルの傾向」などを、スプレッドシートやNotionなどのツールで体系的に管理しておくと、次回施策での再活用が容易になります。
このようにナレッジを蓄積していくことで、「どの訴求が、どの媒体で、どの指標に影響を与えたか」を横断的に把握でき、属人化のリスクも抑えられます。制作チームと運用チームが同じ言語で成果を評価・分析できる環境を整えることが、クリエイティブの再現性を高める上で重要な要素となります。
テスト結果から得られた「何がうまくいったか」を記録に残すことで、半年後に同じ検証を繰り返すといった非効率を防ぐことができます。ナレッジを資産として社内に蓄積していくことで、クリエイティブ開発の再現性が向上し、継続的な改善サイクルを支える基盤となります。
クリエイティブプランニングの成功のポイント
クリエイティブプランニングを正しく実行していても、「思ったように成果が出ない」「勝ちパターンが見つからない」といった壁に直面することがあります。このような課題の多くは、設計や検証のやり方ではなく、その前提条件や取り組み方に潜んでいることが少なくありません。
ここでは、クリエイティブプランニングを成功に導くために特に重要な4つのポイントを解説します。いずれも成果直結型の要素であり、再現性の高いパフォーマンス改善を実現するうえで欠かせない視点です。

インサイトを掘り下げて訴求軸を決める
クリエイティブ設計の初期段階で陥りやすいのが、「なんとなく流行っているから」といった理由で、根拠のないトーン&マナーを模倣してしまうことです。
「短く、強く、印象的なコピー」や「イラスト中心の柔らかい世界観」など、表現の手触りだけで判断してしまうと、表層的な演出に偏りがちです。これでは見た目は整っていても、中身が伴わないクリエイティブになってしまいます。
成果につながる訴求は、ユーザーの潜在的な悩みや期待、不安といったインサイトに根ざしています。わかりやすく言えば、3C分析において自社と顧客の領域が重なっている部分、そこが本当の意味での独自優位性です。自社が強みと思い込んでいる領域(Company)と、実際に顧客が求めている価値(Customer)が一致しているポイントを見極める必要があります。自社だけの視点では、ユーザーにとっての本質的な価値は見えてきません。
では、インサイトはどのようにして特定すればよいのでしょうか。
最も基本的かつ効果的なのは、実際の顧客へのインタビューです。自社を選んだ理由や導入後に満足している点、期待とのギャップなどを直接ヒアリングすることで、リアルな声を抽出できます。加えて、以下のような複数の情報ソースからもインサイトを導くことが可能です。
- 営業やカスタマーサクセスが受け取っている定性的なフィードバック
- 検索クエリや流入キーワードに表れるユーザーの問題意識
- 過去クリエイティブの反応傾向(高CTRの文言、離脱要因など)
原則として、インサイトは一次情報や一次に近い定性データ(いわゆる1.5次情報)の丁寧な分析から導かれるものです。個人の思い込みや主観に頼るのではなく、客観的なデータや実際の声をもとに、説得力のある訴求軸を構築していきましょう。
バリエーションを前提に設計する
GoogleやMetaなどの主要広告媒体は、高度な機械学習によって広告パフォーマンスを自動で分析・最適化する仕組みを提供しています。ただし、このAIの最適化機能は、十分な学習データがあってこそ機能するものです。
そのため、あらかじめ「正解を当てに行く」のではなく、意図的にバリエーションを設計し、複数の広告パターンを並行して配信することが前提となります。さまざまな仮説にもとづく広告クリエイティブを用意し、それぞれのパフォーマンスを比較することで、AIが最適解を導き出しやすくなります。
たとえば、以下のような要素を組み合わせて、複数の仮説を同時に検証できる構成にしましょう。
- 顧客層:潜在層、認知層、比較検討層
- 訴求軸:コスト削減/業務効率/感情訴求
- 表現手法:コピー中心/ビジュアル中心/動画訴求
- CTA:無料体験/資料請求/導入事例ダウンロード
ここで重要なのは、バリエーションに十分な差を持たせることです。背景色の変更や文言の微調整など、見た目だけの小さな差では、AIが新たなデータと認識しづらく、かえって予算を消耗する結果を招きかねません。機械学習に有効なデータを提供するためには、構成や訴求内容に明確な違いを持たせる必要があります。
また、配信量の設計にも注意が必要です。たとえば、1日の広告予算が1万円で10本のクリエイティブを均等配信する場合、1本あたりの配信額は1,000円にとどまり、十分なデータが蓄積されません。このように、ただ数を増やすのではなく、機械学習にとって意味のある量と質のデータをどう供給するかという視点で、クリエイティブの数と配信本数のバランスを設計することが重要です。
LP(ランディングページ)との一貫性を保つ
広告クリエイティブでユーザーに投げかけたメッセージや期待感は、そのまま遷移先のLPでも一貫して伝える必要があります。広告とLPの内容にズレがあると、ユーザーは「思っていたのと違う」と感じ、離脱につながるおそれがあるためです。
たとえば、広告バナーで「今だけ○○が安い!」と訴求しておきながら、クリック先のLPにその製品の情報がない、あるいはまったく異なる内容が表示されると、ユーザーの信頼を損ねてしまいます。こうした乖離を防ぐには、広告からLPまでを一つのストーリーとして捉え、訴求の軸を統一することが不可欠です。また、広告に使用した人物や色使い、ビジュアルのトーンなどをLPにも反映させることで、視覚的な一貫性を保ち、心理的な違和感を軽減できます。
広告とLPの制作が分業体制で行われている場合でも、構成レベルでの連携は必須です。チーム全体でクリック後のユーザー体験を設計するという視点を共有し、広告からLPまでを一貫したコミュニケーション設計として考えることが、成果の最大化につながります。
媒体仕様とアルゴリズムを前提に設計する
広告が配信されるプラットフォームごとに、ユーザーの利用シーン、フォーマットの仕様、配信アルゴリズムの特性は大きく異なります。そのため、媒体ごとに最適なクリエイティブの見せ方を設計する意識が重要です。
たとえば、以下のような設計要素があります。
- YouTube:最初の5秒で商品価値を伝える構成が必須。音声をオフにして視聴するユーザーもいるため、字幕やテキストの工夫が必要
- Facebook/Instagram:アルゴリズムの精度が極めて高く、いかに適切な学習データを与えられるかどうかがカギ
- Google広告:レスポンシブ形式では、複数のヘッドラインと説明文の組み合わせによる構成が前提となる
このように、各媒体の仕様やアルゴリズムに応じて、フォーマット(サイズや秒数)、表現手法(テキスト量や演出の強弱など)を適切に調整しなければいけません。これらの要件に沿ったクリエイティブを設計することで、配信効率が向上し、学習フェーズも早期に進みやすくなります。
反対に、媒体の仕様を無視したクリエイティブは、最悪の場合、学習が開始されず、成果以前の問題として配信そのものが非効率になるリスクもあります。まずは各プラットフォームの特性を理解し、それに合わせた設計を徹底しましょう。
まとめ
広告運用が自動化・均質化するなかで、差を生む領域は「何をどう伝えるか」という表現設計にシフトしています。まさにその表現設計を担うのが、クリエイティブプランニングです。
クリエイティブプランニングとは、ユーザーの意思決定を動かすために戦略的にメッセージを設計・検証・改善していくプロセスです。メディアプランニングが「誰に届けるか」の戦略であるのに対し、クリエイティブプランニングは「どう伝えるか」の戦略といえます。
もし、現在の広告施策が配信面や入札調整ばかりに偏っていると感じているなら、次に着手すべきは伝え方の再定義かもしれません。自社の独自優位性を、ターゲットにとって意味のあるメッセージに落とし込む。それが、成果を変える第一歩です。
豪州ビジネス大学院国際ビジネス修士課程卒業。複数企業と起業を経てBtoB専業マーケティング代理店へ。その後、外資SaaSのユニコーン企業の日本法人立上げを行い、法人営業開始後マーケティング責任者として創業期を牽引。現在、日本のBtoBマーケティングの支援事業を行う株式会社LEAPTにて代表取締役。また、株式会社Shirofuneの外部マーケティング責任者を兼任。





