
アドネットワークとは?仕組み、他広告手法との違い、メリット、代表例などについてわかりやすく解説!

- 菊池 満長
最近、日本国内の料理レシピサイト運営企業が、「サイト上で内容とまったく合わない広告が表示されている」というユーザーからの指摘を受け、謝罪のコメントを出すといった事例が複数ありました。(参考:【重要なお知らせ】クラシルの広告表示に関するご報告 | dely株式会社、広告表示に関するお詫び | 株式会社オレンジページ)
それらの企業はいずれも「広告ネットワークを利用していた」と述べており、広告運用担当者にとっては、改めて広告ネットワークとの向き合い方を考えさせられた事例だったのではないでしょうか。
広告ネットワーク(アドネットワーク)の利用にはメリットが複数ある反面、課題もあるといえます。
そこで本記事では、アドネットワークの基本を改めて解説するとともに、メリットや注意点、日本国内におけるアドネットワークの具体例や、活用のポイントについてお伝えします。
記事終盤では、アドネットワークが今後どのような役割を期待されていて、どのように進化していくのかといった考察も述べますので、どうぞ最後までお読みください。
アドネットワークとは
まず、アドネットワークとはどのようなものなのか、基礎知識や具体例をご紹介します。
アドネットワークとは、オンライン広告を出稿したい広告主と、Webサイトやアプリの運営者など掲載メディアを仲介し、多数の広告枠を一括して提供するプラットフォームです。
広告主は一度の購入手続きで複数の媒体に広告を配信でき、メディア側にとっては販売代行の役割を果たします。

「Google ネットワーク」はアドネットワークの一例です。ディスプレイ広告であればGoogleのサービス内(YouTube、Gmailなど)に配信できるだけではなく、Googleと提携する何千ものパートナーサイトに配信が可能です。特にこのディスプレイネットワークは世界最大規模で、世界中のインターネットユーザーの90%以上にリーチが可能です。
アドネットワークは1990年代半ばに、オンライン広告の普及とともに登場しました。当初は各サイトで売れ残った広告枠(余剰在庫)をまとめて安価に販売する役割が大きく、現在でも複数サイトの広告枠を一括集約し、低コストで提供する仕組みは変わりません。近年では、プレミアム在庫を高価格で提供するネットワークも登場しています。
アドネットワークの仕組みと配信方法
アドネットワークは、まず多数の加盟サイトやアプリから広告枠を集め、それらをユーザー属性やコンテンツカテゴリなどで分類します。
そして、広告主はネットワークの管理画面上で広告のクリエイティブやターゲット(例:地域、年齢層、興味関心)を設定し入稿します。
その後、ネットワーク側で広告主の指定に合った媒体枠を自動的にマッチングし、広告を配信するという仕組みです。
一般的な配信の流れをまとめると、以下のようになります。
| ① | メディア側 | アドネットワークから提供された広告タグ(スクリプト)を自サイトに設置 |
| ② | 広告主 | ネットワークの管理画面上でキャンペーンを設定(予算、期間、ターゲティング条件など) |
| ③ | ユーザー | 媒体サイトを訪れると、その枠に適合する広告がネットワーク経由で自動表示される(多くの場合リアルタイム入札または事前契約で配信枠が決定) |
| ④ | 広告主 | 広告ネットワークの管理画面で配信結果(インプレッション数・クリック数など)の集計を確認 |
これら一連の流れはシステムによって瞬時に処理され、広告主は個々の媒体と直接やり取りすることなく、多数のサイトへの広告配信を実現できる点が特徴です。
アドネットワークと他の広告手法の違い
次に、他の広告手法や広告関連用語との違いについて紹介します。
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)との違い
DSP(Demand-Side Platform)は、広告主向けのプラットフォームです。複数のアドエクスチェンジ(一例:Googleの「Ad Exchange」など、広告在庫を販売するプラットフォームのこと) やアドネットワークに接続し、リアルタイム入札で広告枠を購入・最適化する自動化ソフトウェアです。
DSPとアドネットワークは似ている特徴も多いように感じられますが、両者は別物です。
アドネットワークは媒体から預かった在庫をパッケージ化して広告主に販売するサービスです。在庫管理やターゲティング設定など、人的なサポートも含む場合があります。
一方でDSPは、あくまで広告主側のテクノロジー(ソフトウェア)であり、メディアとの個別交渉やフルサービスは伴いません。
また、広告枠の購入方式の違いも挙げられるでしょう。DSPはリアルタイム入札(RTB)によって1インプレッション単位で価格を競り落とすのに対し、アドネットワークではあらかじめ媒体枠を束ねて一定の単価(CPMなど)で販売するケースが多く、価格や配信先の細かなコントロールに違いが出ます。
アドネットワークは常にリアルタイムで動作するとは限らず、広告主は個々のオークションに参加するのではなく広告枠を一括購入することが多いため、配置の柔軟性や即時性が制限される点も指摘されています。
また、DSPでは広告主が入札戦略や配信先サイトを細かく指定できるため透明性が高いのに対し、アドネットワークではどのサイトに配信されたか詳細が伏せられる場合があるのも違いです。このようなアドネットワークの注意点について、詳しくは本記事の後半で解説します。

アフィリエイト広告との違い
アフィリエイト広告(提携広告)は、ブロガーやサイト運営者などのアフィリエイター(提携パートナー)が広告主の商品・サービスを自分のサイトやSNSで紹介し、成果(購入や会員登録など)が発生した場合に成功報酬を得るという成果報酬型の手法です。
一方、アドネットワークは広告主からインプレッション数やクリック数に応じて料金を受け取り、それを媒体側に分配する形が主で、成果発生の有無にかかわらず表示やクリック自体に価値を置きます。
アフィリエイトは「成果(購入やリード獲得)」にフォーカスしており、アドネットワークは露出量(インプレッション)や広告配信そのものといった「広告面の確保」にフォーカスしている点が大きな違いだといえるでしょう。
また、両者は仕組みと主体の観点からも違いがあります。
アフィリエイト広告では、広告主はアフィリエイトネットワーク(ASP)に商品・サービスのアフィリエイトプログラム(報酬条件やリンク)を登録し、そこに参加した個々のアフィリエイターが自分のメディアで広告リンクを掲載・プロモーションします。言わば「人(アフィリエイター)」を介した広告であり、成功報酬であるためアフィリエイター自身も成果獲得に向けて創意工夫する点が特徴です。
これに対しアドネットワークは「システム」を介した広告配信で、広告主が素材と予算を預けるとネットワーク側が自動で複数サイトに配信してくれます。
つまり、アフィリエイト広告は「商品・サービスのオファー」を軸に「人づて」で拡散する仕組み、アドネットワークは「広告枠の在庫」を軸に「システムで」配信する仕組みであると整理できるでしょう。
| アドネットワーク | アフィリエイト広告 | |
| 広告枠在庫の有効活用による広告面の確保(インプレッションや広告配信そのもの) | 軸・フォーカス | 成果(購入やリード獲得) |
| システム | 主体 | 人(アフィリエイター) |
アドエクスチェンジとの違い
アドエクスチェンジ(広告取引所)は、広告主と媒体社がリアルタイム入札(RTB)で1インプレッションごとに売買できる公開マーケットプレイスです。複数のDSPやSSP(後述)が接続し、多数の広告在庫がオークションにかけられます。
アドネットワークとの大きな違いは、アドネットワークが事前に在庫をキュレーション(選別・バンドル)して売るのに対し、アドエクスチェンジは生の在庫をそのまま競売にかける点です。
また、価格設定にも違いがあり、エクスチェンジ上では入札によりインプレッションごとに変動価格で売買されますが、アドネットワークでは固定のCPMや事前取り決めの単価で在庫を提供する場合もあります。
| アドネットワーク | アドエクスチェンジ |
| ・在庫を厳選・入札によりインプレッションごとに変動価格で売買 | ・生の在庫をそのまま競売にかける・固定CPMや事前取り決めの単価で在庫を提供する場合も |
SSPとの違い・関係
SSP(Supply-Side Platform)は、媒体社向けのプラットフォームで、複数のアドエクスチェンジやアドネットワークに接続して、自社の広告在庫を自動的に売却管理するためのシステムです。
言わば「媒体社側のDSPに相当するツール」であり、最低価格指定や、購入希望広告主の制限、在庫分析など高度なコントロールを提供します。
SSPとアドネットワークは一見似た役割を果たしますが、SSPはテクノロジー提供に徹しており、広告主側に対するサービスは含まれない点で異なります。
近年では、アドネットワーク自体がSSP経由で在庫を仕入れたり、逆にSSPが広告主と直接取引できるようになったりなど、両者の機能の境界は徐々に曖昧になりつつある側面も。たとえば、多くの主要SSPは内部にアドエクスチェンジ機能を統合し、実質エクスチェンジとSSPが一体化しているといえます。また、アドネットワークも高度な入札エンジンを搭載してRTBに対応したり、プレミアム在庫を直接契約で扱ったりなど、プログラマティックダイレクト的な色彩を強めています。
つまり、「SSP=媒体社用の在庫販売システム」「アドネットワーク=在庫をまとめて広告主に売る事業」と理解することが基本です。その上で現状では双方のハイブリッド化が進行しているところです。
| アドネットワーク | SSP |
| 広告在庫をまとめて広告主に売る事業 | 媒体社が広告在庫を販売・管理するためのシステム |
アドネットワークの特徴・メリット
ここからは、アドネットワークを利用するメリットについて何点かご紹介します。
- 一括大量配信による効率化
- 複数の広告をまとめて効果測定
- スケールによるトラフィック確保
- 媒体側の管理負担軽減
1.一括大量配信による効率化
アドネットワーク最大の利点は、一度の契約・入稿で多数の媒体にまとめて広告を出稿できる点です。広告主は各媒体社と個別に契約・調整する必要がなく、窓口はネットワーク1社に集約されます。そのため、大規模な広告展開も省力化でき、スピーディーなキャンペーン開始が可能です。
一括管理は、人的コストの削減にも直結します。たとえば従来、10サイトに広告を出すには10件の個別契約ややりとりが発生しましたが、アドネットワークなら一度の設定で済むため、担当者の作業時間を大幅に削減できます。社内リソースが限られる広告主でも、ネットワークを活用すれば少人数で大規模な広告配信を回すことが可能になるでしょう。
2.複数の広告をまとめて効果測定
アドネットワークを使うことで、複数媒体の広告効果を一元的に測定・分析できます。各サイトごとにバラバラのレポートを集計する手間が省け、ネットワークの管理画面でインプレッション数・クリック数・CTR・コンバージョン数などをまとめて確認可能です。
さらに、頻度制限(フリークエンシーキャップ)などもキャンペーン全体で適用されるため、ユーザーが異なるサイトで同じ広告を過度に見ないよう調整することもできます。
一元管理されたデータに基づき、広告主は全媒体横断の最適化(たとえば、全体の予算配分調整やクリエイティブのA/Bテスト)を行いやすくなるメリットもあるでしょう。
3.スケールによるトラフィック確保
大手アドネットワークは、何百万というWebサイトやモバイルアプリに広告配信できるため、広告主は単一のネットワークに出稿するだけで莫大なユーザーにリーチ可能です。
たとえば、Googleが運営するGoogle ディスプレイ ネットワーク(GDN)は世界中のWebサイト・アプリを網羅し、ディスプレイ広告でインターネット上の90%の人々にリーチできるといわれています。つまり数十億規模のユーザーへの接触が可能です。アドネットワークは膨大な在庫を抱えているため、一社では到底届かないようなオーディエンス規模にもアプローチできるのが強みだといえるでしょう。
また、アドネットワークは各媒体の空き枠を集めているため、広告主は常に一定量以上の露出機会を得やすいのが特徴です。たとえばリターゲティング広告等で大量のインプレッションが必要な場合でも、ネットワークを介せば不足なく在庫が供給されます。
一つのサイトではPV(ページビュー)数に限界がありますが、ネットワーク全体では膨大なPVがあるため、大規模キャンペーンや短期間での露出拡大にも対応しやすいのです。特に、ブランド認知向上などリーチ重視の目的では、このスケールメリットが非常に大きな価値を発揮するでしょう。
4.媒体側の管理負担軽減
媒体社(Webサイトやモバイルアプリ運営者)にとって、アドネットワークは広告枠の販売代行をしてくれる存在です。自社で広告主を開拓したり、個別に広告を差し替えたりする負担を軽減でき、運営側はコンテンツ制作に注力しつつ広告収益を得られます。特に中小規模のサイトでは広告営業のリソースがない場合も多く、ネットワークに参加するだけで自動的に多数の広告主の広告が配信され収益化できる点は大きなメリットとなるでしょう。
また、広告主と直接契約している媒体でも、埋まらなかった在庫(未販売インプレッション)が発生することがあります。そのような余剰在庫の埋め合わせにもアドネットワークは有用だといえます。ネットワークに余剰枠を流すことで多少単価は下がっても収益化できるため、インプレッションの無駄を減らし収益機会を最大化できるでしょう。
また、アドネットワークによっては広告枠の種類(バナー、ネイティブ、動画など)に応じて自動最適化し媒体ごとに最適な広告を配信する技術を提供している場合も見られます。一例として、日本のアドネットワーク「i-mobile」には、動画広告を入稿しておけばデスクトップブラウザ向けバナーやスマートフォン向け広告などに、自動最適化して配信してくれる仕組みがあります。
このように、媒体運営側の手間を減らしつつ収益を底上げしてくれる点で、アドネットワークは多くのパブリッシャーにとって欠かせない存在です。
アドネットワークの注意点・デメリット
メリットが4点ある一方で、注意点や課題も5つのポイントから理解したうえで利用する必要があります。メリットよりも課題点がやや目立ちますが、本記事の後半でアドネットワーク活用のポイントと運用方法、今後の展望も解説していますので、本章だけではなく終盤もあわせてお読みいただければと思います。
- 掲載先を細かく指定できない
- ネットワークごとの違い
- 複数のアドネットワーク利用時の手間
- 透明性の課題
- 最適化の限界
1.掲載先を細かく指定できない
アドネットワーク経由の広告配信では、広告主が特定のどのサイトに掲載するかを厳密に指定しにくい場合があります。
多くのネットワークでは配信面はカテゴリや属性単位での指定に留まり、実際の掲載サイト名は開示されない場合も。たとえばターゲットとして「自動車関連サイト全般」のような指定は可能でも、個別のサイト名までは選べないケースが多いといえます。
このため、ブランドセーフティ(自社広告が好ましくないサイトに出てしまわないか)や特定媒体への集中投下など、細かな戦略を立てにくい、コントロールが限定される側面が挙げられるでしょう。
広告ネットワークによっては掲載先リストの提供や除外指定オプションもありますが、DSPなどに比べると配信先透明性が低く、広告主が配信面を細かく管理しづらい点は留意が必要です。
2.ネットワークごとの違い
アドネットワークは各社で提携媒体が異なり、その品質や傾向もさまざまです。「ネットワークAでは有名サイトが多いが、単価が高い」「ネットワークBは安いが、無名サイト中心」「ネットワークCはモバイルアプリ特化」など、ネットワークごとに強み・弱みが存在します。
そのため、広告主は複数のネットワークを試して結果を比較したり、自社に合ったネットワークを選定したりする手間が生じます。
また、一部ネットワークでは不適切なサイトも含まれている可能性があり(品質管理ポリシーの差)、配信結果の質にばらつきが出ることも。ネットワークの選択次第でパフォーマンスに差が出る点が想定されます。
つまり、「どのネットワークを使うか」が広告効果に直結するため、広告主側で各ネットワークの特徴(媒体ラインナップ、ユーザー層、配信方式など)を把握し、適切な組み合わせを検討する必要があるでしょう。
3.複数のアドネットワーク利用時の手間
一つのネットワークでリーチが足りない場合には、広告主は複数のアドネットワークに同時出稿することもあります。しかしその場合、各ネットワークごとに入稿・入札管理・レポート収集を行う手間が増え、結果としてDSPを使う場合より管理負荷が高くなる場合も想定されます。
また、異なるネットワーク間で同じユーザーに重複配信してしまい、同じ広告を過剰露出してしまうリスクや、効果測定の重複(同一コンバージョンに複数ネットワークが貢献したとして計上される等)の問題も起こりえます。
欧州のアドテック関連企業・Clearcode社は、このような現象が起きてしまう歴史的経緯として「当初は1つのアドネットワークで事足りたが、サイト増加で1社では在庫を売り切れず複数ネットワークを使うようになり、広告ネットワークを次々に呼び出してしまう “waterfalling” という状況が生まれた」と説明しています。
このように、複数ネットワーク運用は管理が複雑化しがちで、特に広告主側で統合的にコントロールするDSPやアドサーバが無いと運用負荷が高まる点に注意が必要です。広告主は必要最小限のネットワークに絞りつつ、全体を俯瞰する仕組み(統合レポートや第三者計測ツール)を併用して、効果を最適化する工夫が求められるでしょう。
4.透明性の課題
アドネットワークの弱点としてよく挙げられるのが、透明性の低さです。
広告主から見ると、広告が具体的にどのサイトに表示されたか、どのサイトで何回クリックあったかなどの詳細が伏せられるケースも。たとえば、「ネットワークAでは10万インプレッション、CTR0.1%」という総計は示されても、個別サイト名は「その他」扱いで非公開といった具合です。
また、手数料率についても明示されないことが多く、広告主が支払った金額のうちどれだけが媒体社に渡りどれだけがアドネットワークの取り分か不明瞭です。
このような不透明さは、広告効果の正確な評価やブランドセーフティ確認を難しくし、広告主に不信感を与える場合も挙げられるでしょう。
不透明さへの対策として、プレミアムネットワークでは参加サイトを限定公開している場合や、広告主がサイト単位で掲載可否を選べる機能(ブラックリスト・ホワイトリスト設定)を提供している場合もあります。
また、最近では広告主側でインプレッションログを取得し検証する技術(例:ads.txt / sellers.json や トラッキングピクセル利用)も普及しつつあります。しかし、一般的にDSP経由のオープンなRTB取引に比べると、アドネットワークはブラックボックス的な要素が残りやすい点は否めません。
透明性を重視する広告主にとっては、特にブランド毀損リスクや不正トラフィック(bot)の混入リスクが見えづらいことが、デメリットになり得ます。
また、botによる不正トラフィックのリスク、すなわち「アドフラウド」にリスクにも十分な注意が必要です。アドフラウド対策ツール「Spider AF」のブログでは「直近2年間で広告詐欺被害は急速に拡大し、Web広告予算のほぼ4分の1が無効なインプレッションやあからさまな詐欺によって吸い上げられている」と警鐘を鳴らしています。
5.最適化の限界
アドネットワークは基本的に、ネットワーク側が提供する一律の最適化ロジックに則って配信が行われます。広告主自身が入札価格をインプレッション単位で変更したり、リアルタイムで予算配分を調整したりといった細かなチューニングは難しいケースが多いといえます。DSPであれば可能なことでも、アドネットワークではお任せになる部分があるのです。
たとえば、「特定の時間帯だけ入札額を上げたい」「特定のユーザーセグメントにだけ絞り込みたい」といった高度な戦略は、ネットワーク単体の機能では限界があります。また、クリエイティブの細かなテスト(パターンごとの配信最適化)やコンバージョン最適化も、ネットワーク標準のアルゴリズム任せとなり、広告主独自のナレッジを活かしにくい場合も挙げられるでしょう。
総じて、アドネットワークは手軽さと引き換えに緻密な最適化余地が狭まる点を理解しておくべきです。特に、パフォーマンス重視型の広告主にとっては、いずれDSPや、さらに高度なプラットフォームへの移行を検討すべき局面もあると考えられます。
代表的なアドネットワークの例
ここからは、日本国内で出稿可能なアドネットワークをいくつかご紹介します。
- Google ディスプレイ ネットワーク(GDN)
- Yahoo!広告 ディスプレイ広告(旧称:Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)
- Audience Network(Meta)
- i-mobile(アイモバイル)
Google ディスプレイ ネットワーク(GDN)

(出典:Google 広告)
Googleが運営する世界最大規模のアドネットワークです。AdSense参加サイトやYouTube、モバイルアプリなど数百万の媒体で構成されています。Google Ads(旧称AdWords)を介して広告出稿でき、テキスト・画像・動画など多彩な広告フォーマットに対応しています。
非常に高いリーチを誇り、世界のインターネットユーザーの90%以上に到達可能な点が大きな特徴です。
加えて、詳細なターゲティング(キーワード、興味関心、リマーケティング等)や豊富な計測ツール(Google Analytics等との連携)を備え、あらゆる業種・目的の広告主に利用されています。
Yahoo!広告 ディスプレイ広告(旧称:Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)

(出典:Yahoo!広告)
かつて「YDN」の名称で親しまれたYahoo!ディスプレイアドネットワークは、ヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)が提供する国内最大級のアドネットワークのひとつでしたが、2021年6月23日をもって提供を終了、現在は後継として「Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)」がサービス稼働中です。
Yahoo! JAPANポータルサイト(トップページやニュース等)の広告枠を中心に、提携する外部サイトにも配信でき、広告管理はYahoo!広告のプラットフォーム上で行います。
特徴は、日本国内における圧倒的なリーチ力です。月間アクティブユーザー約8500万を抱えるYahoo! JAPANの媒体力により、日本のインターネット利用者のうちスマホユーザーの80%以上、PCユーザーの60%以上にリーチ可能だとのデータがあり、国内カバー率はトップクラスです。
Yahoo!ニュース等のプレミアム面への掲載や、Yahoo!の持つ膨大なユーザーデータ(検索・閲覧履歴)に基づく高度ターゲティングが強みで、特に日本市場を重視する広告主に広く利用されています。
Audience Network(Meta)

Meta社(旧Facebook)が提供するオーディエンスネットワークは、Facebook広告をFacebookやInstagram以外の外部アプリ・サイトにも配信するためのネットワークです。
モバイルアプリ内における広告枠が中心で、ネイティブ広告やインタースティシャル(全画面)広告、リワード動画広告などを提供、Facebook広告の管理画面から出稿できます。
強みは、Facebookの膨大なユーザーデータを活用した精度の高いターゲティングですFacebook/Instagramと同じオーディエンスセグメントを使って外部媒体にも広告を出せるため、ソーシャルメディアのキャンペーンを拡張する形で利用可能です。
規模も非常に大きく、Facebook発表によれば「1カ月あたり10億人以上がAudience Network経由の広告を目にしている」とのこと。審査基準を満たした質の高い媒体が参加しており(収益性の低い媒体は除外される傾向)、ブランドセーフティにも配慮されています。
ただし、一般のDSP等に比べ媒体数は限定的で、主にモバイルアプリユーザーへのリーチ手段として使われます。
i-mobile(アイモバイル)

(出典:i-mobile Ad Network)
株式会社アイモバイルが運営する日本最大級の独立系アドネットワークです。パソコン・スマートフォンのWebサイトからアプリまで幅広い媒体を網羅し、特にモバイル分野に強みを持っています。広告フォーマットもバナー、テキスト、ネイティブ、動画など多彩です。
掲載メディア数は非常に多く、LinkedInの企業プロフィールによれば月間930億インプレッション(PC+モバイル)を生成。また、スマートフォンでは月間550億インプレッションを生成しており、これらのデータからも、国内有数のトラフィック規模を持つことが分かります。
また、広告主向けには細かなターゲティング設定やリターゲティング、媒体レポート提供などサービスも充実。ゲームやアプリプロモーションから一般企業の広告まで、幅広く採用されています。
アドネットワーク活用のポイントと運用方法
ここからはアドネットワーク活用のポイントと運用方法をいくつかお伝えします。
- 自社運用? 代理店に任せる?
- ネットワーク選定と複数活用のコツ
自社運用?代理店に任せる?
アドネットワーク広告を自社でインハウス運用するか、専門の代理店に委託するかは悩みどころです。それぞれメリット・デメリットが考えられるためです。
自社運用の場合、自社で細部までコントロールでき迅速な意思決定が可能で、代理店手数料も節約できます。一方、専門知識や工数が必要で、運用担当者のスキル・リソースが不足すると成果に影響を与えるでしょう。
代理店運用の場合には、豊富な知見を持つプロが最適化してくれる利点や最新情報の提供、工数削減があります。ただ、手数料コストが発生し、レポートを介しての間接的な把握になる分タイムリーな細かな調整にはワンクッション入ります。
昨今、大手広告主の中にはDSPなどを用いたプログラマティック広告の内製化を進める企業も出てきています。ただし一般にはまだ代理店支援への依存が大きく、2023年時点の調査では「自社でプログラマティック運用が可能なマーケターは全体のわずか32%」との報告も。残りの多くは代理店や外部パートナーに運用を委託、あるいは共同で行っているのが実情です。
つまり、代理店は今なお重要な役割を果たしており、特に最新の知見や技術活用においてブランドをサポートしていることが伺えます。
判断基準として、「予算規模」と「社内スキル」が体制決定のポイントです。
年間予算が大きく自社に運用チームを置ける場合には、内製化によるコスト削減とノウハウ蓄積のメリットは大きいでしょう。一方、専門人材の確保が難しい場合や最新テクノロジーへの対応が追いつかない場合には、実績を持つ代理店に任せた方が短期間で高パフォーマンスを出しやすいと考えられます。また、ハイブリッド運用(基本は代理店、戦略部分は自社関与など)もひとつの手です。
重要なのは、自社のマーケティング目標に照らしてどちらがROIが高いかを検討することです。たとえば内製化により透明性が上がり手数料は減りますが、運用ミスによる機会損失が出ては意味がありません。反対に、代理店任せで社内知見が蓄積しないリスクも想定されます。
ケーススタディとして、製薬大手のバイエル社がプログラマティック広告内製化で媒体手数料を削減でき「6週間で1000万ドル以上のコスト削減に成功」と報じられた例も。しかしこれは例外的成功で、多くの企業は長期的に徐々にコスト効率が向上するのが一般的ともいわれます。
総じていえるのは、「自社運用=万能、代理店=無駄」といった極論ではなく、自社の状況に応じて段階的なアプローチを取ることが重要です。まずは小規模に内製運用テストをしてみる、あるいは代理店に人材トレーニングを依頼するなど、自社とパートナーの最適な協業モデルを模索するのが現代の主流となりつつあるでしょう。
ネットワーク選定と複数活用のコツ
前章で日本国内の例を紹介した通りアドネットワークは多数ありますが、キャンペーンの目的やターゲットに合致したネットワークを選ぶことが重要です。
たとえば「アプリのインストール数を増やしたい」という場合には、Googleのモバイルアプリ向けネットワーク)や、MetaのAudience Networkがグローバルなリーチと精緻なセグメントで有効とされています。ネットワークごとに得意領域があるため、「自社ターゲットユーザーはどこに多いか」「目的達成に必要な広告フォーマットは何か」を整理し、それにマッチするネットワークを優先的に選定するとよいでしょう。
また、一社のネットワークだけでリーチが不足する場合や、異なるフォーマットを併用したい場合には、複数のネットワークを組み合わせることも有効です。組み合わせで取り組む際には、重複配信や管理の煩雑さへの対策がポイントとなります。
具体的には、重複を避けるためにネットワークごとに配信ターゲットを分ける(例:ネットワークAは若年層向け、Bはビジネス層向けとする)工夫や、広告サーバーを用いて全ネットワーク横断の頻度制御を行う方法が考えられるでしょう。
複数ネットワークの成果を比較して予算配分を動的に変えるなど、積極的なチューニングが求められます。たとえば最初は複数試してみて、成果の良いネットワークに予算を集中させる、といった具合です。
重要なのは、漫然と複数使うと手間ばかりが増えるため、必ずパフォーマンス指標をモニタリングし、費用対効果に基づいて取捨選択・配分調整することです。適切に使い分ければ、単一ネットワークでは届かない層にもリーチしつつ全体効率を高めることができるでしょう。
アドネットワークの最新動向と今後の展望
最後に、アドネットワークに関する最新動向と公開情報から考察する今後の展望をお伝えします。
サードパーティCookie規制への対応
デジタル広告業界ではプライバシー保護強化の一環で、サードパーティCookieの廃止(ブラウザによるトラッキング制限)が進行中です。従来、アドネットワークはCookieを用いたユーターゲティング(行動履歴に基づく配信最適化)を強みとしてきましたが、今後はそれが困難になります。
そこで、各ネットワークはファーストパーティデータ(媒体社が直接収集したデータ)やコンテクスチュアルターゲティング(文脈配信)へのシフトを図っていて、媒体社との連携強化によるデータ活用や、統一IDソリューション(Cookieに代わる業界横断ID)の採用などに取り組んでいます。
たとえばGoogleはChromeブラウザでのCookie廃止に向けPrivacy Sandboxを提唱し、興味関心をブラウザ内で推定する「Topics API」を導入予定です。それに対応する形でGDNはブラウザ側から提供されるトピック情報でターゲティングする仕組みへの移行を進めています。
また非Google系でも、コンテキスト広告(閲覧ページの内容に基づいて関連広告を出す手法)の精度向上や、媒体社の会員情報と連携したログインベース広告などCookieに頼らない技術開発が活発です。
今後は、ユーザーの許諾を得たファーストパーティデータ活用とAIによる文脈解析がカギとなり、アドネットワークもそれらを駆使してプライバシーに配慮しつつ広告効果を維持・向上させていくと予想されます。
新しいチャネルへの拡大
従来はWebサイトやモバイルアプリへの配信が中心だったアドネットワークも、コネクテッドTV(CTV、インターネットに接続しているテレビのこと)やデジタル音声広告、デジタル屋外広告(DOOH)など新たなチャネルに領域を広げつつあります。
特にCTVは近年大きく成長しており、ストリーミング動画サービス上での広告枠を扱うアドネットワークやアドエクスチェンジが特に米国などで台頭しています。米国のマーケティングリサーチ企業・Nielsenの調査によれば「2025年には世界のマーケターの56%がOTT/CTVへの広告出稿を増やす計画」と報告されており、広告主のCTVシフトに応じてアドネットワークもこの領域を重視しています。
もう一つのトレンドは、小売業者が自社のデータと媒体を活用して構築するアドネットワーク、いわゆるリテールメディアネットワーク(RMN)の拡大です。Amazonや楽天、ウォルマートなどの小売事業者が、自社サイト内や提携サイトに広告配信するネットワークを展開し始めています。
これらは購買データに基づく高精度なターゲティングが強みで、メーカーなど広告主にとっては新たな有力チャネルとなっています。米国では総広告市場が伸び悩む中でリテールメディア広告費は2025年に前年比プラスの成長予測とも。
日本でも楽天、アマゾンジャパンなどが広告サービスを拡充しており、従来型アドネットワーク企業も小売データと提携する動きを見せています。(参考:リテールメディア・ネットワークスがもたらす破壊的イノベーション | 藤野直明の視点 | 野村総合研究所(NRI))
新たなチャネルへの拡大は、アドネットワークの提供価値をさらに高めるでしょう。テレビ的リーチを持つCTV、生活導線に組み込める音声アシスタント広告、リアルとデジタルの接点となるDOOHなど、広告接触の場が広がるほどネットワークの果たす役割も増大します。ただし、新チャネルごとにクリエイティブ規格や効果測定の指標が異なるため、広告主側も対応力が求められるでしょう。
ネットワーク各社はそれぞれの分野に特化した子会社や技術提携を進めており、今後は「あらゆるチャネルをカバーする統合型広告ネットワーク」が登場する可能性も考えられます。
マーケターとしては、こうした動向を注視しつつ、自社の広告戦略に適したチャネルを敏感に取り入れていく姿勢が重要だといえるでしょう。
まとめ
本記事ではアドネットワークに関する基礎知識にはじまり、他の広告手法・用語との違い、メリット・留意点や日本国内で利用可能な代表例などを具体的に紹介しました。
アドネットワークは1990年代のオンライン広告の普及とともに登場し、現代まで進化を遂げてきましたが、記事終盤で紹介したとおり今後はオンラインとオフラインの垣根を超える役割も予想されていると考えられるでしょう。
本記事が貴社の広告運用の参考となれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現在までに米大手EC企業や広告代理店への導入実績。
2025年3月に米国広告業界で最古かつ最大級の業界団体である全米広告主協会からMarketing Technology Innovator AwardsのGoldを受賞。





