ROASX(旧Twitter)広告

X(旧Twitter)広告のROASとは?広告フォーマットの種類やROASを高めるためのポイントを解説

菊池 満長

X(旧Twitter)広告は、国内外の多くの企業がマーケティング施策に取り入れている主要プラットフォームのひとつです。短期間で広範囲に情報を届けられる拡散力が魅力ですが、その一方で「広告費が売上げにどれほど貢献しているのか」を正しく把握しきれない担当者も少なくないのではないでしょうか。

実際にこういった課題は広告施策全般で発生します。2022年に株式会社IDEATECHが行った調査では、自社の広告施策の「費用対効果が明確にわかる」と回答したマーケターは、わずか21%しかいなかったとわかっています。

そのような状況で、広告施策のパフォーマンスを図るのに役立つ指標がROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果) です。ROASは、投入した広告費に対してどれだけの売上げが生まれたかを数値化し、広告投資が効率的かどうかを判断する基準となります。

特に、X広告のように拡散力の高い媒体では、このROASを意識した戦略設計により無駄な支出を防げるので、売上げを最大化する上ではより重要になってくるでしょう。

本記事では、X広告におけるROASについて、基本的な知識に加え、費用対効果を高めるための具体的な手法までを体系的に解説します。

ROASの定義と計算方法とは

まずはじめに、ROASの意味と計算方法についておさらいしましょう。ROASは広告運用の費用対効果を測る基本指標であり、これを正しく理解しておくことで、どの施策が売上げに直結しているのかを客観的に把握できます。

ROASの定義

ROASとは、広告に投じた費用に対してどれだけの売上げを生み出したかを示す指標です。

この指標の特徴は、広告の成果を売上げベースで客観的に把握できる点にあります。ROASの数値が高いほど、投資した広告費が効率よく売上げに結びついていることを意味します。

ただし、ROASは売上げのみに着目した指標であり、商品の原価や配送費、人件費などの運用コストは含まれていません。そのため、事業全体の収益性を判断する際は、ROI(投資収益率)や利益率といった別の指標と併せて分析することが大切です。

ROASはあくまで「広告がどの程度売上げに貢献したか」を測定するための基礎的な指標として活用し、より精度の高い運用改善や予算配分の土台として位置づけましょう。

ROASの計算方法

ROASは非常にシンプルな計算式で求めることができます。基本的な計算式は以下のとおりです。

<ROASの計算式>

仮に、あるキャンペーンに50万円の広告費を投じ、その結果200万円の売上げが発生した場合、ROASは次のように算出されます。

  • 200万円 ÷ 50万円 × 100 = 400%

この結果は、投じた広告費の4倍の売上げを生み出したことを示しています。逆にROASが100%を下回る場合は、広告費を売上げで回収できていない状態であり、施策の改善や配信の見直しが求められます。

実務におけるROASの算出では、「売上げ」と「広告費用」に含める範囲を明確にすることが重要です。「広告費にクリエイティブ制作費や代理店手数料を含めるのか」「それとも純粋な媒体費だけにするのか」といった基準がブレてしまうと、キャンペーン間の比較や時系列での分析が正確に行えなくなってしまいます。

特にX広告のように広告配信が短期間で加速する媒体では、日別・週別といった細かい単位でROASをモニタリングし、異常値や改善ポイントを早期に発見する運用体制が必須といえます。そのため、こうした積み重ねが、最終的な広告投資効率の最大化につながるのです。

X(旧Twitter)広告とは

ご存じのとおり、X(旧Twitter)は、月間アクティブユーザーが数億人規模に達するグローバルなプラットフォームであり、リアルタイム性と拡散力の高さが特徴です。

(出典:X Bsusiness

広告主にとっては、ブランド認知から購買促進まで多様な目的に活用できる媒体です。特に、トレンドやタイムラインに連動した広告配信が可能な点は、他のSNSにはない強みといえます。

日本においてXユーザーは非常に多く存在しており、2023年の公式発表では「日本の一日一回以上利用者数は4000万」と報告されています。もちろん、複数アカウントを持っているユーザーも多数いるはずですが、それを加味しても、非常に多くの利用者がいるとわかります。

本章では、X広告の基本的な仕組みや特徴、さらに提供されている広告フォーマットの種類について詳しく解説します。

X(旧Twitter)広告のフォーマット種類

X広告には、目的やターゲットに応じて使い分けられる複数のフォーマットが用意されています。

具体的には、以下のものが挙げられます。

  • プロモ広告
  • フォロワー獲得広告
  • Amplify
  • テイクオーバー
  • ライブ
  • ダイナミック商品広告
  • コレクション広告

それぞれの広告がどのような特性を持ち、どのようなシーンで効果を発揮するのかを理解することで、より戦略的な運用が可能になりますので、個別にみていきましょう。

プロモ広告

プロモ広告は、Xのタイムライン上でオーガニック投稿と同じ形式で表示される広告フォーマットです。通常のツイートに「プロモーション」というラベルが付くのみで、ユーザーのスクロール中に自然に溶け込みやすい特徴があります。そのため、広告に対する心理的ハードルが低く、クリック率やエンゲージメントの向上が期待できます。

(出典:X Bsusiness

また、プロモ広告は動画、画像、テキストなどさまざまな形式に対応しており、広告主の目的に応じた柔軟な訴求が可能です。

一例を挙げると、新商品の発表や期間限定キャンペーンの告知では、タイムラインの拡散力を活かして短期間で多くのユーザーにリーチできます。さらに、アプリインストールやウェブサイト誘導など、具体的な行動喚起にも対応しています。

<プロモ広告の特徴>

表示場所タイムライン、検索結果、プロフィール
目的リンク誘導、動画再生、アプリインストールなど
活用例新商品発表の告知、期間限定キャンペーンの拡散

フォロワー獲得広告

企業やブランドの公式アカウントのフォロワー数を増やすことに特化したフォーマットが、フォロワー獲得広告です。広告にはアカウント情報と「フォロー」ボタンが表示され、ユーザーはワンタップでアカウントをフォローできます。このシンプルさが、特にモバイルユーザーにとって高いコンバージョン率を生み出す要因です。

(出典:X Bsusiness

この広告は、ブランド認知の初期フェーズで非常に有効です。新規顧客との接点を作り、公式アカウントからの継続的な情報発信によって長期的なファンベースを構築できます。さらに、獲得したフォロワーを通じてキャンペーン情報を拡散し、エンゲージメントを高めることも可能です。

<フォロワー獲得広告の特徴>

表示場所タイムライン、検索結果、ユーザーのおすすめ欄
目的ブランド認知向上、ファンコミュニティの構築
活用例新規ブランドの立ち上げ時や既存アカウントの活性化

Amplify

Amplifyは、X公式が提携している人気の動画コンテンツ内に広告を挿入できるプレミアムフォーマットです。ユーザーは動画の冒頭や途中で広告を目にするため、高い視認性と記憶への定着効果が期待できます。

スポーツのハイライト動画やニュースコンテンツと連動するケースが多く、特定のテーマに興味を持つユーザー層に効率よくアプローチできます。

(出典:X Bsusiness

このフォーマットは、大規模イベントやトレンドに合わせたキャンペーンで効果を発揮します。視聴体験の流れの中で広告が再生されるため、ブランドのメッセージを自然に届けることも可能です。

<Amplifyの特徴>

表示場所動画コンテンツの冒頭や中間
目的ブランド想起の向上、短期間での認知獲得
活用例スポーツイベントやニュース連動型キャンペーン

テイクオーバー

テイクオーバーは、Xのタイムラインや検索タブを1日限定で独占できることが特徴です。検索トレンドの最上位に表示されるため、圧倒的な露出と話題化を狙うキャンペーンに適しています。

(出典:X Bsusiness

広告主は、新商品のローンチやブランドの記念イベントなどで、このフォーマットを活用することにより、短期間で爆発的なリーチを獲得できます。トレンド入りを目指す施策との相性も良く、他の広告フォーマットと組み合わせて使うことでさらなる効果が期待できます。

<テイクオーバーの特徴>

表示場所タイムライン最上部、検索トレンド上部
目的新商品・キャンペーンの認知拡大、話題化
活用例大型プロモーション、映画公開日の集中訴求

ライブ

ライブは、Xの「ライブ配信」に連動して表示されるフォーマットです。視聴者がリアルタイムで配信を楽しむ中で広告が表示されるため、ユーザーの没入感を損なわずにメッセージを届けられます。

(出典:X Bsusiness

このフォーマットは、双方向性の高いコミュニケーションを実現できる点が特徴です。具体例を挙げると、新製品の発表会やアーティストのライブ配信中に、関連広告を表示することで、その場でのエンゲージメントや即時の行動喚起を狙えます。

また、スポーツイベントやカンファレンスのスポンサー広告としても活用されており、ブランド体験の一環として記憶に残りやすいのも強みでしょう。

<ライブの特徴>

表示場所ライブ配信画面内
目的ブランド体験の提供、リアルタイムでの双方向訴求
活用例製品発表イベント、スポーツ・音楽ライブの協賛広告

ダイナミック商品広告

ダイナミック商品広告は、ユーザーの過去の行動データを活用し、関心の高い商品を自動的に表示する、いわゆる「リターゲティング広告」です。ECサイトやオンラインショップとの相性が非常に良く、特にカート放棄やサイト訪問履歴があるユーザーへの再アプローチに効果を発揮します。

(出典:X Bsusiness

運用例としては、ユーザーが閲覧した商品ページの商品をそのまま広告として表示することで、購入意欲を高め、コンバージョン率の向上が期待できます。高度なパーソナライゼーションにより、広告の無駄打ちを減らし、効率的な運用が可能です。

<ダイナミック商品広告の特徴>

表示場所タイムライン
目的購買意欲の高いユーザーへのパーソナライズ訴求
活用例カート放棄者への商品再提案、ECサイトのリマーケティング

コレクション広告

コレクション広告とは、1つのメイン画像または動画の下に複数のサムネイル画像を配置できるフォーマットで、ビジュアルによる商品訴求力が非常に高いのが特徴です。ユーザーはタイムライン上でサムネイルを横スクロールしながら商品を閲覧でき、視覚的にブランドや商品の世界観を体験できます。

(出典:X Bsusiness

ファッションブランドやライフスタイル系商材の新作コレクション紹介などに向いており、複数の商品を一括で見せたい場合に最適です。また、特集ページやブランドストーリーの訴求とも相性が良く、単なる商品紹介以上の価値提供が可能になります。

<コレクション広告の特徴>

表示場所タイムライン
目的複数商品の一括訴求、ブランドストーリーテリング
活用例新作コレクション紹介、特集ページへのトラフィック誘導

X(旧Twitter)広告における入札戦略

Xの広告配信は、広告オークションの仕組みに基づいて行われています。広告主が設定する「入札戦略」は、ターゲットユーザーに対してどの程度の予算配分でリーチを狙うかを決定づける重要な要素です。効果的な入札設定を行うことで、限られた予算でも最大限のパフォーマンスを引き出せます。ここからは、X広告が提供する代表的な入札戦略の特徴と活用ポイントを解説します。

自動入札

自動入札は、Xのアルゴリズムに入札額の調整を任せる仕組みです。広告主が目標を設定すると、その目標達成のためにシステムが最適な入札額を自動的に決定し、キャンペーンの成果最大化を目指します。

(出典:LINEヤフー for business「毎日の入札価格調整は『自動入札』におまかせ」)

この戦略は、広告運用の初心者や、細かな入札管理に時間をかけられない場合に適しています。仮に、「ウェブサイトへのトラフィック最大化」や「動画再生数の増加」といったシンプルな目標であれば、自動入札で十分な成果を見込めます。

ただし、アルゴリズムが学習するまでの期間はパフォーマンスが安定しないことがあるため、一定の運用期間を見据えて活用することが重要です。

上限入札単価

上限入札単価とは、広告主が入札額の上限を手動で設定し、その範囲内で広告オークションが行われる仕組みを指します。これにより、1回のクリックやインプレッションに対する支出をコントロールできます。

予算管理が厳格に求められる場合や、CPC(クリック単価)の上昇を避けたい場合に適した戦略です。ただし、入札額を低く設定しすぎると競合に負けて広告が表示されにくくなるため、適切な金額設定が不可欠です。競争が激しい業界では、オークションに勝てるだけの上限設定を意識する必要があります。

目標入札単価

目標入札単価は、1回のコンバージョンあたりの費用を広告主が設定し、その目標値に近づけるようにシステムが入札を最適化する戦略です。コンバージョン単価(CPA)の効率化を図りたい場合に有効です。

もし「1件の会員登録を1000円以内で獲得したい」と考えたなら、目標入札単価を1000円に設定しておくことで、アルゴリズムがコンバージョン率の高いユーザーに広告配信を集中させます。ただし、設定した目標値が低すぎる場合は、配信量が極端に減少し、結果的にキャンペーン全体のパフォーマンスが落ちるリスクがあるため注意が必要です。

X(旧Twitter)広告の運用でROASを意識する重要性

Xは、瞬間的な情報拡散力とリアルタイム性が魅力のプラットフォームです。しかし、その特性ゆえに広告運用では「どの施策が実際に収益に結びついているのか」を見極めることが求められます。

具体的には、以下の理由からX広告の運用でROASを意識することが大切だといえます。それぞれ個別に解説します。

X広告の特性を活かすROAS重視の予算配分ができる

X広告は、その性質上リアルタイムにユーザーのタイムラインに流れ込み、トレンドやハッシュタグに連動して瞬時に拡散していきます。この拡散力は大きな長所ですが、逆にいえば短期間で広告予算が一気に消化されやすいというリスクもあります。

そこでROASをKPIに置くことで、限られた予算を「売上げに直結する広告」に集中させる判断が可能です。たとえば、複数のクリエイティブやターゲティングで広告を展開している場合、ROASが高い組み合わせに予算を重点配分し、低いものは停止または改善するといった戦略的な運用ができます。

そもそも、X広告に限らずデジタル広告施策は「費用対効果の向上」が課題として常につきまとってきました。2025年5月に株式会社ベクトルデジタルが公開した調査結果では、57%が「費用対効果(ROAS)を重視する」と回答していたことからも、最重要指標のひとつだといえます。

(出典:キーマケLab「BtoB企業における2025年度Web広告予算の実態と展望に関する調査結果」)

ROASを指標にすることで、広告予算を収益性の高い配信に集中させ、無駄のない運用が実現できます。X広告特有の短期的な予算消化リスクにも対応できますので、より持続的な成果が期待できます。

最適なターゲティングとクリエイティブを発見できる

ROASを継続的にモニタリングすることで、「どのターゲティング設定や広告クリエイティブが実際に収益に寄与しているか」を客観的に把握できます。

前述のとおり、X広告には多くの出稿方法がありますので、広告予算を効率よく消化する上では、早期に「誰に、どのようなクリエイティブでアプローチすべきか」を見つけることが、他の広告プラットフォーム以上に大切です。

(出典:X Bsusiness「X広告媒体資料2024年4-6月期」)

実際に、広告運用では同じ商品でも年齢層や地域、興味関心の異なるユーザーに対する反応は大きく変わります。広告の見せ方ひとつでクリック率や購入率に差が生じることも珍しくないでしょう。

ROASを軸に分析を行えば、効果の高いターゲット層やクリエイティブを特定し、そこにリソースを集中できます。このアプローチは、無駄な広告費の削減につながるだけでなく、広告施策全体の最適化にも直結します。

短期的なキャンペーンでも長期的な収益性を確保できる

X広告は、トレンドや時事ネタを活かした短期施策で高い即効性を発揮します。しかし、バズ狙いやエンゲージメント数だけに固執すると、一過性の話題作りに費用を投じるだけで、売上げや収益につながらないリスクがあります。

そこで、X広告運用においてもROASを運用指標に据えることで、短期的な反応はもちろん、中長期の収益性まで視野に入れた施策設計が可能です。具体的には、X広告で一度ハッシュタグやプロモツイートに反応したユーザーが、その後どれだけ購入・契約に至ったかをデータで追跡・分析し、LTV(顧客生涯価値)を意識したキャンペーンを考えていきます。

こうしたROAS重視のアプローチにより、X広告への投資を「一時的な宣伝費」ではなく、「ブランド価値向上と収益拡大のための投資」に転換することで、短期的な話題化と長期的な事業成長の両立を実現できます。

X(旧Twitter)広告のROASを高めるポイント

X広告は、配信のスピード感ゆえに広告費が一気に消化され、結果が伴わなければ「投資が無駄になる」リスクも存在します。それを踏まえると、X広告でROASの最大化を図る上では以下のポイントを意識することが大切です。次項より、詳しく解説します。

ポイント①:コンバージョン目的の広告設定を活用する

X広告では、キャンペーン作成時に「認知」「エンゲージメント」「コンバージョン」など複数の目的を選べます。ROASを意識した運用では、この中でも「コンバージョン目的」の設定が、成果に大きく影響します。

この設定を使うと、Xの配信アルゴリズムが購買意欲の高いユーザーを優先してターゲティングし、無駄なクリックを抑えながら売上げに結びつきやすい配信が可能です。特にBtoBのリード獲得や高単価商品の販売では、認知やエンゲージメント目的よりも費用対効果が高まりやすくなります。

ただし、配信を開始した直後はアルゴリズムが最適化のために一定のデータを集める必要があり、成果が安定しない場合があります。初期の数字に振り回されず、1〜2週間程度の学習期間を確保することが大切です。

<実践の手順>

手順①:キャンペーン目的を「コンバージョン」に設定し、成約につながる配信を行う

手順②:アルゴリズムが十分に最適化するまで、1〜2週間の学習期間を確保する

手順③:コンバージョン数が少ない場合は、リンククリック目的でデータを集めてから切り替える

手順④:成果が伸びないときはCV地点を「資料請求」など低いハードルに調整する

ポイント②:カスタムオーディエンスの活用でターゲティング精度を高める

X広告でROASを改善するためには、カスタムオーディエンスを活用し、広告配信の無駄を徹底的に削減することが重要です。カスタムオーディエンスは、既存顧客データやウェブサイト訪問者情報をもとに、配信対象を絞り込める機能です。

(出典:X Bsusiness「カスタムオーディエンスとは」)

例を1つ挙げると「過去に商品を購入したユーザーを広告配信から除外した」とすれば、すでにコンバージョン済みの層に広告費が流れることを防げます。一方で、購入直後のユーザーに「アップセル商材」を提案する再ターゲティングも可能です。

これらの施策を駆使することで、広告費の一部が見込みの薄い層に流れるのを防ぎ、限られた予算を成果につながるユーザー層に集中投下できるようになります。

<実践の手順>

手順①:既存顧客やCV直後のユーザーを除外し、無駄クリックを防ぐ

手順②:アップロードする顧客リストは常に最新状態に管理する

手順③:リード獲得数が一定に達したらLook a likeを生成して新規層へ拡張配信する

ポイント③:複数のクリエイティブを素早くテストする

広告運用では「ターゲティング以上にクリエイティブが成果を左右する」といわれるほど、素材の出来がROASに大きく影響します。どんなに優れた配信設定でも、ユーザーの目に留まらなければクリックや購買は発生しません。

X広告には、A/Bテストツールも実装されており、「テイクオーバー」を除くすべての広告目的で、最大5つまでクリエイティブ比較が可能です。

(出典:X Bsusiness「X広告媒体資料2024年4-6月期」)

X広告の運用現場で重要なのは、複数のクリエイティブを同時にテストし、成果データに基づいて高速で最適化を行うことです。「画像と動画の比較」「動画の尺(6秒 vs 15秒)」「広告コピー(煽り型 vs 情報提供型)」など、バリエーションを持たせてA/Bテストを実施すれば「反応が良いクリエイティブの勝ちパターン」を早期に特定できます。

また、クリック率(CTR)だけでなくコンバージョン率やROASで評価するのが重要です。CTRが高くても最終的な成果につながらなければ意味がないため、評価指標の優先順位を見極めて運用しましょう。

<実践の手順>

手順①:3〜5パターンのクリエイティブを同時配信し、データを収集する

手順②:成果が低いクリエイティブは即座に停止し、新案に差し替える

手順③:反応が良いクリエイティブは類似パターンを展開してボリュームを増やす

ポイント④:ランディングページの改善でコンバージョン率を上げる

広告のクリック後にユーザーが訪れるランディングページ(LP)は、ROASを左右する大きな要素です。どんなに優れた配信設定でも、LPの体験が悪ければ離脱率が上がり、広告費が無駄になります。

特に、総務省の情報も参照すると、2022年には71%の人がインターネットを閲覧する際にスマートフォンを利用しているとわかっていますので、LPのモバイルフレンドリー化は必須といえます。

 (出典:総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」)

PC向けにページを作ってしまい、ページ表示速度が遅い場合や、フォームが複雑すぎる場合、せっかく広告で関心を持ったユーザーも離脱してしまうことがあります。

さらに、広告内容とLPの訴求ポイントがずれていると、ユーザーは期待外れと感じてコンバージョンに至りません。広告コピーとLPの見出し・ビジュアルを一致させ、シームレスな導線を設計することが大切です。

<実践の手順>

手順①:LPをモバイルに最適化し、表示速度を高速化する

手順②:広告とLPの訴求ポイントを一致させ、離脱を防ぐ

手順③:フォーム項目を見直し、入力完了までの負担を減らす

ポイント⑤:正確な計測環境を整える

X広告でROASを高めるには、配信効果を正確に計測できる環境を整備することが前提となります。計測が不十分だと、どの広告が売上げに貢献しているかを把握できず、適切な改善施策を打てません。

特に最近の広告運用では、iOSのトラッキング制限やプライバシー強化の影響で、従来のピクセル計測だけではデータが欠損するケースが増えています。こうした状況に対応するため、Conversion APIなどサーバーサイド計測を導入する企業が増えています。

計測環境を整えることで、機械学習による配信最適化も正しく機能し、広告費の無駄を防ぎやすくなります。

<実践の手順>

手順①:コンバージョンピクセルを設置し、広告成果を計測する

手順②:Conversion APIを活用して、データ欠損リスクを補う

手順③:広告配信データと売上げデータを統合し、分析精度を高める

X(旧Twitter)広告のROASを向上させた具体事例を紹介

ROASを改善するための理論や手法はさまざまにありますが、実際に企業がどのように施策を実践し、成果につなげているかは非常に参考になります。ここから、国内外の企業がX広告を活用してROASを大きく向上させた具体的な事例を紹介します。

具体例①:三菱自動車、コンバージョン最適化で試乗予約数を30%改善

三菱自動車は、新型車の試乗予約を伸ばすためにX広告を活用し、コンバージョン最適化に特化したキャンペーンを実施しました。これまでは認知獲得が中心の広告施策が多かった同社ですが、「実際の予約」という成果に直結するよう、配信設計を根本から見直したとのことです。

具体的には、X広告の「コンバージョン目的」を設定し、さらに自動入札機能を組み合わせることで、試乗予約に至りやすいユーザー層に配信を集中させる。その上で、動画広告など視覚的な訴求も交え、エンゲージメントの高いクリエイティブを展開しました。

この取り組みにより、キャンペーン期間中の試乗予約数は従来比30%以上の増加を記録。CPA(コンバージョン単価)は約20%低減し、広告費用対効果(ROAS)の大幅な改善に成功したとわかります。

(出典:X Bsusiness「三菱自動車工業」)

また、ブランド認知の指標でも動画視聴完了率や想起率の向上が確認され、認知から行動への移行をスムーズに促した点が特徴です。

具体例②:米Baker Creek Seedsはターゲティング最適化でROASを330%に改善

米国の種苗通販企業、Baker Creek Seeds社は、2023年秋のカタログ発売にあわせてX広告を活用しました。特に「Whole Seed Catalog」の予約販売を中心としたキャンペーンにおいて、精緻なターゲティングとクリエイティブのA/Bテストを実施したと報告されています。

具体的に採用されたアプローチは、以下のものです。

(出典:scandiweb「PPC Case Study: Twitter Ads Generate +330% ROAS」)

  • 複数のオーディエンスセグメント(興味関心、行動、地域)をテスト
  • 最も効果の高いセグメントに絞って本格配信
  • クリエイティブも複数パターンを高速で並列検証

その結果、クリック単価は約77%減少、購入単価も約94%減少。売上げは約791%増加し、ROASは前年比で驚異のプラス330%に向上したとレポートされています。

(出典:scandiweb「PPC Case Study: Twitter Ads Generate +330% ROAS」)

この改善の背景には、「誰に」「どのクリエイティブで響くか」をデータドリブンで高速に見極める運用体制がありました。とくに、目標セグメントの精度向上とクリエイティブの迅速な検証は、ROAS大幅改善の原動力といえるでしょう。

具体例③:米Digital Marketerが記事誘導型X広告でROI198%を達成

米国のマーケティング企業Digital Marketer社は、2024年にオンライン講座「Authority ROI」のリード獲得を目的としたキャンペーンを実施しました。

同社はX広告を活用し、直接的な販売ではなく「価値あるコンテンツへの誘導」を軸としたネイティブ広告戦略を展開。これにより、見込み客の関心を高めながらスムーズに購入へつなげる仕組みを構築しました。

(出典:Digital Marketer「[Case Study] How We Got 198% ROI Using Twitter Advertising」)

施策では、まず業界向けの専門記事を広告経由で配信し、そこからリードフォームへと自然に誘導。複数の広告コピーと画像でA/Bテストを行い、反応の良い組み合わせに予算を集中させる手法を取りました。

この取り組みの結果、キャンペーンは投資額3997ドルに対し総収益7937ドルを達成し、ROI198%という高い費用対効果を記録しました。さらに、約35万回のインプレッションを獲得し、ブランド認知の向上にも寄与しています。

まとめ

確かに、X広告はリアルタイム性と拡散力の高さが大きな魅力です。一方で、トレンドに乗れば一気にリーチを広げられる一方で、配信のスピード感に任せて運用すると広告費が一瞬で消化され、売上げにつながらないまま終わるリスクもあります。

こうしたリスクを防ぐには、ROAS(広告費用対効果)を軸に「どの施策が本当に成果を生んでいるか」を見極めなければなりません。ROASを意識せずに出稿を続けると、費用対効果の低い広告に予算を浪費し、結果としてキャンペーン全体の収益性が悪化する恐れがあります。

一方で、ROASを重視した運用は「今ある予算の中で最大限の成果を出す」ことを目指すだけでなく、広告施策全体の精度を高めるための学習プロセスでもあります。適切なKPI設定とデータ分析を繰り返すことで、初期の失敗を次の成功に繋げられます。広告運用は一度きりの勝負ではなく、PDCAを回す中で徐々に精度を上げるものです。

データを起点にしつつ、短期的な成果だけでなく、中長期的な目線を持ってX広告を運用していきましょう。

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