
アドネットワークとDSPの違いとは?基本知識から使い分け方まで丁寧に解説!

- 菊池 満長
Web広告を運用する担当者の中で、近年Cookie規制の強化や広告費の高騰といったトピックを注視しつつも課題に感じている方も多いはずです。大きな変化を迎えている時代だからこそ、Web広告の仕組みの基礎について改めて理解し、自社のビジネスに最適な戦略を立てることが求められます。
この記事では、Web広告施策に取り組むうえで必要なプラットフォーム「アドネットワーク」と「DSP」について、その基本から仕組み、メリット・デメリット、そして最適な使い分け方まで、わかりやすく解説します。
終盤でアドネットワークとDSPを取り巻くこれからの環境と展望についてもお伝えしますので、最後までお読みいただければ幸いです。
アドネットワークとは
アドネットワークとDSPの違いを説明するために、まずはアドネットワークの定義や仕組み、メリット・デメリットなどについて、基礎から解説します。
アドネットワークの定義と基本
アドネットワークは、広告を出したい企業と、広告を載せたいメディア(Webサイトやモバイルアプリなどの運営企業など)をつなぐサービスです。企業は一度の手続きで多くの広告枠に広告を掲載でき、メディア側は広告枠の販売を代行してもらえます。

代表的な例としてGoogleのディスプレイネットワークが挙げられ、これは世界中のインターネットユーザーの90%にリーチできる大規模なものです。
アドネットワークは元々、売れ残った広告枠を安く提供する仕組みとして誕生しましたが、現在ではプレミアムな広告枠(知名度の高いWebサイトなどの広告枠)も扱っています。
アドネットワークの仕組み
アドネットワークの広告配信は、広告主とメディアの自動マッチングで行われます。
まず、メディアは広告表示用のタグをWebサイトに設置し、広告主は管理画面でターゲットや予算を設定します。ユーザーがそのWebサイトを訪れると、ネットワークが条件に合った広告を自動的に選び、瞬時に表示します。広告主は、個別のメディアとやり取りすることなく、結果を管理画面で確認可能です。
この一連の流れがシステムで自動処理される点が特徴です。
アドネットワークのメリット
アドネットワークは、広告主とメディアの両方にメリットがあります。
広告主は、一度の手続きで多くの媒体に広告を出稿でき、一括で効果測定もできるため、業務の効率化と人的コストの削減が可能です。また、大規模なユーザーにリーチできるため、ブランド認知を高める観点でも効果的だといえます。
一方でメディア側のメリットは、広告枠の販売を代行してもらえるため、営業の手間が省ける点です。空いた広告枠も有効活用できるため、収益の最大化につながります。
アドネットワークのデメリット
アドネットワークにはメリットの一方で、いくつかデメリットも挙げられます。
広告主側で、広告の掲載先を細かく指定できないため、ブランドイメージに合わないWebサイトに表示されるリスクがあります。また、ネットワークごとに提携媒体の質が異なり、複数のアドネットワークを利用すると管理が複雑になる点も挙げられるでしょう。
また、広告の透明性が低く、「どのサイトにいくらの広告費で掲載されたか」「クリック数などの成果はどうだったか」が見えにくい点も課題です。
さらに、配信の最適化はネットワークのアルゴリズムに依存するため、広告主側で細かな調整が難しい場合もあります。
代表的なアドネットワークの例
日本国内で利用できる代表的なアドネットワークの例として、以下の4種類が挙げられます。
| Google ディスプレイ ネットワーク(GDN) | 世界最大の規模で、YouTubeなどを含む数百万の媒体に広告を配信し、高いリーチを誇る。 |
| Yahoo!広告 ディスプレイ広告(旧称:Yahoo!ディスプレイアドネットワーク) | Yahoo! JAPANの強力な媒体力を背景に、国内の多くのユーザーにリーチできる。 |
| Audience Network(Meta) | Facebook広告を外部アプリにも配信し、SNSのデータを活用した高精度なターゲティングが強み。 |
| i-mobile(アイモバイル) | 特にモバイル分野に強い独立系ネットワークとして、幅広い媒体とフォーマットに対応。 |
アドネットワークについてさらに詳しくは、別記事「アドネットワークとは?仕組み、他広告手法との違い、メリット、代表例などについてわかりやすく解説!」も、あわせてお読みください。
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは?
続いて、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の定義や仕組み、メリット・デメリットなどについて、基礎から解説します。
DSPは、広告主が広告枠を自動で購入するためのプラットフォームです。リアルタイム入札(RTB)技術を使い、広告の閲覧者1人分の広告枠を最適な価格で買い付けます。
DSPもまた、広告主と媒体をつなぐ役割を持っています。
アドネットワークと違う点は、アドネットワークが特定のネットワーク内で広告枠を販売するのに対し、DSPは複数のネットワークや広告取引所に接続し、横断的に最適な広告枠を買い付けるところです。
これにより、DSPはより広範囲で効率的な広告配信を可能にします。DSPの方がリアルタイム性・データ活用・自動最適化の面で進んだ仕組みになっているといえるでしょう。

DSPの仕組み
DSPは、リアルタイム入札(RTB)によって広告を自動で配信する仕組みです。
ユーザーがWebサイトを訪れた瞬間に、広告主が設定したターゲットや予算に基づき、DSPはその広告枠の価値を判断して入札を行います。
たとえば、「30代、スポーツファン」のユーザーが、あるWebサイトを訪れ広告枠が出る場合を考えてみましょう。DSPはユーザー属性データを解析し、広告主にとっての価値に応じた入札価格を瞬時に算出してオークションに参加します。入札に勝てば、瞬時に広告が表示されます。
このような一連の流れは、機械学習や統計モデルで最適化されています。配信結果を分析して、より効果が高まるように自動で調整されるため、広告主は効率的に広告を運用できる点が特徴です。
配信結果はDSPに蓄積され、リアルタイムで分析が行われます。これにより、どの広告が効果的だったかを学習し、今後の入札戦略が自動で最適化されるため、広告主は成果を把握しつつ、より戦略的な運用に集中できるでしょう。
DSPのメリット
DSPの大きなメリットは、広告主が多くの媒体にまとめて広告を出せる点です。
また、リアルタイム入札(RTB)で広告の効果を即座に分析し、予算やターゲットを自動で最適化できる点もメリットです。年齢・興味関心などの細かいユーザーデータを使って、精度の高いターゲティングができます。広告の無駄を減らし、担当者の運用負担を軽減しながら、より効果的な広告配信を実現できるでしょう。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)などの外部データ(サードパーティデータ)を取り込んで、より精度の高いターゲティングを試みることも可能です。
加えて、広告の配信結果が詳細にレポートされるため、「どの広告が、どこで効果があったか」が分かりやすく、分析と改善が容易です。配信の自動最適化機能も備えているため、効果の高い場所に予算を集中させるなど、担当者の運用負担を大幅に軽減できるでしょう。
DSPのデメリット
DSPの利用にはいくつかのデメリットも挙げられます。
まず、運用には専門的な知識が欠かせません。初心者には学習コストが高い点で、十分な知識を持った担当者や、外部の専門家が必要です。
また、DSPのメリットを最大限に活かすためには、ある程度の広告予算が必要です。多くのDSPには最低利用料金(月間数千ドル~数万ドルなど)が設定されているため、予算が少ない場合は費用対効果が見合わないことも。
さらに、一つのDSPだけでは全ての広告枠をカバーできないため、複数のDSPを併用するケースも想定されます。その場合には管理が複雑になり、運用の手間やコストが増える可能性もあるでしょう。
最後に、DSPはオープンな取引市場から広告枠を購入するため、品質の低いサイトや、botによる不正なトラフィック(アドフラウド)に配信されてしまうリスクも存在します。多くのDSPは不正検知機能やブランドセーフティ設定を提供していますが、アドネットワークのように配信面を限定できない分、完全に不正を排除するのは難しい側面も注意点として挙げられるでしょう。運用者がレポートを常に監視し、適切な対策を講じる必要があります。
代表的なDSPの例
次表でまとめているように、DSPにはさまざまなプラットフォームがあります。
| DSP名 | 運営企業 | 主な特徴 |
| Display & Video 360 (DV360) | 世界最大規模のDSP。YouTubeやGoogle広告との連携が強みで、豊富なデータと機能を持つ。 | |
| The Trade Desk | The Trade Desk | 世界有数の独立系DSP。テレビ広告やオーディオ広告など、多様なチャネルに対応し、高い透明性を提供。 |
| Amazon DSP | Amazon | Amazonの購買データを活用した高精度なターゲティングが可能。EC事業者に特に有効。 |
| Criteo | Criteo | 特にリターゲティング広告に強みを持つ。ECサイトを訪れたユーザーへの再アプローチで高い効果を発揮。 |
DSPを選ぶ際は、自社の広告目的や予算に合わせて、提供される機能やサポート体制を比較検討することが重要です。
一般的に、大規模なDSPは機能が豊富で多くのユーザーにリーチできますが、コストや契約のハードルが高い傾向も。そのため、自社の規模に応じた適切なDSPを選ぶことが、広告運用の成功につながるでしょう。
アドネットワークとDSPの違い・比較
アドネットワークとDSPは、どちらもオンライン広告の配信を支援するプラットフォームですが、その仕組みや運用方法には大きな違いがあります。それぞれの特徴を理解することで、より効果的な広告運用につながるでしょう。
| アドネットワーク | 比較項目 | DSP |
| 媒体と直接契約し、広告枠をまとめてパッケージ化して販売する。 | 配信の仕組み | リアルタイム入札(RTB)により、複数の広告取引所やネットワークから最適な広告枠を自動で買い付ける。 |
| ネットワーク側の担当者が手動で運用することが多い。広告主は設定を伝えれば、比較的運用負担が少ない。 | 運用方法 | 広告主や運用担当者が自ら詳細な設定を行う。自動最適化機能により、大量のキャンペーンを効率的に管理できる。 |
| どのサイトに広告が掲載されたか、詳細が不明瞭な場合がある。 | 在庫の透明性 | どのサイトに掲載されたか、詳細なデータが確認可能。ブランドセーフティの管理がしやすい。 |
| 大まかなユーザー属性やコンテンツカテゴリでのターゲティングが主流。 | ターゲティング | 多様なデータを組み合わせて、精度の高いターゲティングが可能。 |
| 固定価格や、クリック数・コンバージョン数に応じた課金など、柔軟な料金体系。少額から始めやすい。 | コスト | リアルタイム入札によるCPM(表示回数)課金が基本。プラットフォーム利用料などがかかる場合があり、ある程度の予算規模が必要。 |
| 比較的運用が簡単で、専門知識が少なくても利用しやすい。 | 必要なスキル | 運用には、データ分析や入札戦略に関する専門的な知識が必要。 |
| 自社と契約した媒体のみに限定される。 | リーチ範囲 | 複数の広告取引所に接続するため、広範囲な広告在庫にアクセスできる。 |
配信の仕組み・運用方法の違い
アドネットワークは、人の手によって広告枠をまとめて販売する仲介業者で、運用はネットワーク側に任せるため広告主側の手間が少ないです。広告枠は固定価格で取引され、個別の価値に応じた調整はできません。
一方、DSPはアルゴリズムで広告枠を自動購入する、広告主が自らアクセスして利用するためのプラットフォームです。運用者が詳細な設定を行い、リアルタイムで最適化します。広告枠はオークションで価格が決まるため、価値に応じた柔軟な入札が可能です。
アドネットワークは運用をネットワーク側(または広告主から委託された代理店)に任せるため、広告主の手間が少ないです。一方、DSPは広告主自身が細かく設定・調整でき、自動最適化機能により効率的な運用が可能です。
アドネットワークは固定価格での取引が中心で、価格の柔軟性はありません。DSPはリアルタイムのオークションで価格が決まるため、価値に応じた入札ができ、コスト効率が高いです。
ターゲティング精度・データ活用の違い
アドネットワークとDSPの大きな違いのひとつは、ターゲティングの精度とデータ活用の度合いです。
アドネットワークのターゲティングは、ネットワーク側が用意した大まかなセグメント(例:年代・性別・サイトのカテゴリ)に限定されます。広告主が自由にデータを持ち込むことや、細かい条件でターゲットを絞り込むことは難しいでしょう。
一方、広告主自身が運用するDSPでは、より高度なデータ活用が強みだといえます。広告主が持つ顧客データや、外部のDMPから取得した購買履歴、興味関心などの多様なデータを組み合わせ、より緻密なターゲティングが可能です。
たとえば、「特定のページを閲覧したユーザー」や「高級車に関心のあるユーザー」といった細かな条件で絞り込めるうえ、リターゲティングや広告の表示回数を制御するフリークエンシーキャップも、DSPであればユーザー単位で正確に管理できます。これにより、広告の無駄打ちを防ぎ、ユーザーに不快感を与えることなく効率的にアプローチできるでしょう。
配信面のカバー範囲・在庫の違い
アドネットワークは、契約した媒体の広告枠しか扱わないため、カバーできる範囲は限られます。ただし、一部の大手サイトや専門性の高いサイトの広告枠(プレミアム在庫)を確保していることがあり、DSPではリーチできない特定のユーザーにアプローチできる点が強みです。
一方、DSPは複数の広告取引所と接続しているため、事実上インターネット上の膨大な広告在庫にアクセス可能です。非常に広い範囲のユーザーにリーチできるため、グローバルな大規模キャンペーンにも適しているといえます。
また、透明性においても違いがあります。アドネットワークでは配信先のサイト名が伏せられることがありますが、DSPはどのサイトに広告が掲載されたか詳細に確認できます。これにより、広告主は自社のブランドイメージを損なうサイトへの掲載を避けられるため、ブランドセーフティの観点からはDSPに優位性があるといえるでしょう。
どちらを選ぶかは、広告の目的に応じて使い分けることが重要です。特定のサイトに確実に広告を掲載したい場合はアドネットワーク、幅広いユーザーにリーチしたい場合はDSPが適していると考えられます。
広告コスト・課金モデルの違い
アドネットワークは、クリック課金(CPC)やコンバージョン課金(CPA)など、成果ベースの料金モデルを交渉によって選ぶことができ、特に小規模な予算でもコストリスクを抑えて始めやすいのが特徴です。なお、広告枠の価格は事前に固定されているため、個々のインプレッションの価値に応じた柔軟な価格設定はできません。
一方、DSPは基本的にオークション形式のCPM(インプレッション単価)課金が主流です。各インプレッションの価値を判断して入札するため、無駄な高値掴みを避けることができ、コスト効率の面で優れているといえるでしょう。
ただし、クリックやコンバージョンにつながらない表示にも費用が発生するリスクもあります。また、DSPは高度な機能の対価として、プラットフォーム利用料や最低出稿額が設定されていることが多いため、潤沢な予算を持つ大規模な広告主向けといえます。少額予算の場合は、手数料負けするリスクも考慮する必要があるでしょう。
このように、アドネットワークはコストリスクの低さが魅力で、DSPは高度な機能とコスト効率の高さが魅力だといえます。
運用リソース・必要なスキルの違い
アドネットワークは、運用をネットワーク側に任せられるため、広告主側の運用リソースや専門知識が少なくても手軽に始められます。担当者がいない企業でも、素材と条件を渡せば広告を配信してもらえる点がメリットです。
その反面、DSPは、運用担当者が入札戦略の立案やデータ分析を自ら行う必要があるため、専門的なスキルが求められます。キャンペーン数が増えると管理が複雑になり、一定のチーム体制が必要となるでしょう。しかし、一度スキルを習得すれば、外部に頼ることなく高度な広告運用が可能です。自社内に知見が蓄積され、競合に対して優位に立てるでしょう。
一方、スキルやリソースが不足している状態で無理にDSPを使うと、効果が上がらないリスクも想定されます。最近では、初心者でも使いやすいようにUIや自動最適化機能が改善されていますが、戦略立案や効果検証は人間の役割であり、最終的な成果は運用者のスキルに大きく依存すると考えられます。
参考:Ad Network Vs. Ad Exchange Vs. DSP: Why Are They Different? – Growth Marketing Genie
アドネットワークとDSPはどう使い分ける?
アドネットワークとDSPは、それぞれ異なる強みと弱みを持つため、自社の状況に合わせた適切な使い分けが重要です。
ここでは、広告主が最適なプラットフォームを選ぶための3つの判断軸に焦点を当て、それぞれのシナリオでどちらが適しているかを解説します。
- 広告予算・企業規模
- マーケティング目的・ターゲット
- 運用リソース・スキル
判断軸1. 広告予算規模・企業規模
広告予算や企業規模によって、最適な選択肢は変わります。
小規模な予算や中小企業には、アドネットワークが向いているでしょう。多くのネットワークは最低出稿額が低く、シンプルな料金体系のため、少ない予算でも手軽に広告を始められます。
一方、大規模な予算を持つ大企業には、DSPが有効だといえます。DSPは、緻密なターゲティングと自動最適化により、広告費のROI(投資対効果)を最大化しやすいためです。月数十万円以上の予算があれば、DSPのプラットフォーム手数料を払っても、十分な効果が期待できるでしょう。
また、極めて予算が大きい企業では複数のDSPを併用し、それぞれの強み(たとえば、特定のデータや広告枠)を組み合わせることで、さらなる効果の向上を狙えます。
結論として、予算が限定的な場合はアドネットワークで堅実に運用を始め、予算規模が拡大するにつれてDSPの導入を検討するのが一般的だと考えられます。
判断軸2. マーケティング目的・ターゲット
マーケティングの目的によって、適したプラットフォームは異なります。
ブランディングを重視し、「特定の有名サイトや業界専門サイトに広告を確実に掲載したい」場合は、アドネットワークが有効です。アドネットワークは特定のプレミアムな広告枠を確保していることが多く、ブランドイメージを保ちつつ、ニッチなターゲットにリーチできます。
一方、購入やインストールなどのコンバージョンを目的とするパフォーマンスマーケティングでは、DSPが適しています。DSPは、サイト訪問履歴や購買データなどに基づき、ユーザーの行動に合わせた緻密なターゲティングやリターゲティングが可能です。これにより、購入を迷っているユーザーに再度アプローチするなど、無駄のない効率的な広告配信を実現します。
そして、ターゲット層の広さも判断基準となります。多くの潜在顧客に広くリーチして認知を広げたい場合はアドネットワーク(大手ポータルサイトやトラフィックの多い媒体に一気に露出するなど)。特定の趣味や属性を持つ限られたユーザーにピンポイントで届けたい場合は、DSPの詳細なターゲティング機能が非常に有効です。
キャンペーン初期の認知拡大段階ではまずネットワーク等で母集団にリーチし、その後DSPで関心層を追うという併用戦略も考えられるでしょう。目的のフェーズ(認知→興味喚起→検討→購入)に応じて両者を使い分けるのもひとつの手だといえます。
判断軸3. 運用リソース・スキル
運用リソースやスキルも、アドネットワークとDSPの選択を左右する重要な要素です。
運用担当者が少なく、専門知識が不足している場合は、アドネットワークが適しています。設定がシンプルで、運用の多くをネットワーク側に任せられるため、人員が限られた中小企業でも手軽に始められるでしょう。
一方、専門的なチームや知識を持つ企業であれば、DSPを導入することで競争優位を築けます。高度なデータ分析や入札戦略を駆使し、他社には真似できない緻密なキャンペーン最適化が可能です。たとえば、「自社の顧客データをDSPと連携させ、より効果的なターゲティングを行う」といった高度な運用は、専門知識があってこそ実現します。
また、社内にリソースがない場合でも、DSP運用を専門の広告代理店に委託するという選択肢も。委託に関する手数料はかかるものの、自社で人員を増やすよりも効率的な場合が多いです。
最終的な成果は運用者のスキルに大きく依存するため、ツールの導入だけでなく、人員計画も含めて総合的に考えることが重要です。自社のリソース状況を客観的に評価し、どこを自社で運用し、どこを外部に任せるかを判断することが、成功の鍵となるでしょう。
(参考:Ad Network vs DSP: Which Is Better for Media Buying – Affroom)
アドネットワークとDSPを取り巻く環境と展望
デジタル広告を取り巻く環境は、目まぐるしく変化しています。特に、ユーザープライバシー保護の意識の高まりや技術の進歩は、アドネットワークとDSPのあり方に大きな影響を与えています。
このセクションでは、デジタル広告の未来を形作る主要なトレンドについて掘り下げます。
Cookie規制強化による影響
デジタル広告業界では、プライバシー保護のためにサードパーティCookieの廃止が進んでおり、これがアドネットワークとDSPに大きな影響を与えています。
SafariやFirefoxは既にCookieをブロックしており、主要ブラウザであるGoogle Chromeも2024年中に廃止を予定だと表明。この話は当初の計画より延期されましたが、実施は時間の問題だと考えられます。
これにより、DSPが得意としてきたユーザーの追跡や行動ターゲティングが困難となり、広告の精度低下や効果測定の不確実性が増すことが懸念されているところです。
この変化に対応するため、業界全体で代替技術の模索が進んでいます。具体的には、ユーザーデータではなく、閲覧中のページ内容に基づいて広告を表示する文脈ターゲティング(コンテキスト広告)や、GoogleのTopics APIといった新しい技術が開発されています。
今後、広告主自身が収集したファーストパーティデータの重要性が一層高まります。Cookieに頼らない新しいターゲティング手法への対応力が、アドネットワークとDSP双方の競争力を大きく左右すると考えられるでしょう。
アドネットワークとDSPの機能融合・境界の変化
デジタル広告の技術が進化するにつれて、これまで明確だったアドネットワークとDSPの境界が曖昧になりつつあります。
かつては人の手による広告枠販売が中心だったアドネットワークが、DSPのようにリアルタイム入札(RTB)や高度なターゲティング機能を導入するケースが増えています。これにより、「アドネットワーク=手動・固定価格」、「DSP=自動・RTB」という対比はもはや通用しなくなり、アドネットワークとDSPの区別自体がなくなってきています。
「Google 広告」や、日本の「SmartNews Ads」などがその一例です。アドネットワークの一種でありながら、広告主がセルフサービスで出稿の設定を細かくできるなど、DSPの要素も兼ね備えたプラットフォームだといえるでしょう。
しかし、両者が完全に一体化するのではなく、それぞれの強みを生かした形で共存していくと考えられています。シンプルで手軽な運用を求める広告主向けにアドネットワーク的なサービスが残り、高度なデータ活用と最適化を求める広告主向けに、DSPが発展していくでしょう。
まとめ
本記事では、オンライン広告の世界を支える主要なプラットフォームであるアドネットワークとDSPについて、その定義から仕組み、メリット・デメリット、そして今後の展望までを詳しく解説しました。
アドネットワークとDSPは、どちらが優れているということではなく、広告予算やマーケティングの目的、チームのスキルレベルに合わせて賢く使い分けることが重要です。
プライバシー保護の動きが強まる中で両者の境界は次第に曖昧になり、テクノロジーやプラットフォームが時代とともに次第に変化していくことへの理解、および対応力が求められる時代になっているといえます。
この記事が、貴社のデジタル広告戦略を立てる上で少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現在までに米大手EC企業や広告代理店への導入実績。
2025年3月に米国広告業界で最古かつ最大級の業界団体である全米広告主協会からMarketing Technology Innovator AwardsのGoldを受賞。





