
Amazon広告の運用工数を8割削減、ROASは+89%。ミズノがShirofuneと実現した「考える運用」への転換
はじめに
Amazon広告の運用には、多くの企業が共通のジレンマを抱えています。それは、成果の最大化を目指して精緻に運用しようとすればするほど、工数に忙殺されてしまうということ。特に運用を内製(インハウス)化している企業にとって、この工数は深刻な課題となります。
総合スポーツ用品メーカーとして知られるミズノ株式会社もまた、同様の課題に直面していました。同社のAmazon広告は、Amazonを担当する営業組織が、営業活動の一環として内製で運用してきました。広告運用の経験がゼロの担当者が、手探りで3ストア・約150キャンペーン・膨大なSKUを管理する。手動での運用により「日予算切れ」が頻発し、自社運用の持続可能性に大きな課題を感じていたと言います。
そこで、運用工数の削減と成果最大化の両立を目指してShirofuneを導入。結果、運用工数は約8割減。さらに広告費を13%削減しながら、ROASは前年同期比で+89%、収益は+67%と大きく伸ばすことに成功しました。本稿では、ミズノ社のAmazon広告運用がどのように変化したのか、数値だけにとどまらない運用業務の質の変化を含めてご紹介します。

営業が担う「セルアウト型」のAmazon広告
メーカーにとってAmazon広告は、ブランディング以上に、売上に直結する「刈り取り」の側面が強くあります。ミズノ社でも、運用を担うのはAmazonを担当する営業組織です。
ー御社におけるAmazon広告の位置付けから教えてください。
ミズノ株式会社 山本(以下、社名略) 当社のマーケティング全体のなかで、Amazon広告は大きく2つの役割を担っています。1つはデジタル媒体としての重要な広告チャネル、もう1つは営業活動における「刈り取りの場」です。認知獲得を目的としたブランディングは各事業部が担っており、私たちAmazon広告に課せられたミッションは、あくまで「セルアウト(刈り取り)」。購買意欲の高いユーザーが集まるAmazonで、いかに効率よく売上を最大化するか。そのため運用は営業部が主導しています。

ミズノ株式会社 澤浦(以下、社名略) 私たちは「Amazon担当の営業」という位置付けです。バイヤーとの商談で商品を提案しつつ、並行して広告も運用しています。営業はカテゴリーごとに分かれていて、私はイクイップメント、山本がシューズとアパレルを担当。本格的に取り組み始めたのは2018年以降で、当初から営業がインハウスで対応してきました。2023年度以降は、営業部門内に広告専任を設ける体制へと移行しています。

(山本 菜月様 ミズノ株式会社 グローバルデジタルDTC統括本部 eコマース営業部 EC販売課)
ーどのような背景で、分業体制へ移行されたのでしょう。
澤浦 もともとは「ROASさえ良ければいいのか?」という運用への課題意識がありました。加えて、事業部が注力したい商材が年々増え、営業だけでは抱えきれなくなってきました。「広告の専任が必要ではないか」という議論から山本が加わり、現在の体制へ移行しています。

(澤浦 勝貴様 ミズノ株式会社 グローバルデジタルDTC統括本部 eコマース営業部 EC販売課)
菊池 Amazonの体制は、一般的なマーケティングとは少し違っていて面白いんですよね。通常は事業部やマーケティング部が広告を統括しますが、Amazonの場合は「対Amazon」という1つの窓口で、営業と広告運用が一体になっている。ここがAmazon広告ならではの特徴だと思います。
ーお二人は、広告運用のご経験は?
澤浦 GoogleやMetaなど他の広告は一切触ったことがなく、Amazonの担当になって初めて触りました。本当にゼロから、手探りで覚えてきました。
山本 私も同じです。「ROASって何?」という状態からのスタートでした。
Shirofune 菊池(以下、社名略) 広告運用は専門知識に加えて「感覚」も必要になる、かなりの専門職です。普通のGoogle広告なら、だからこそ代理店に任せるのが一般的。それを未経験から自社で覚えていったのは、本当にすごいことだと思います。
日予算切れの頻発と、手作業による調整の限界
朝出社するとすでに予算が切れている、需要が高まる夜間に広告が出せない——。ミズノ社では、そんな機会損失が常態化し、手作業での調整に限界を感じていたと言います。
ー導入前の課題には、どんなことがありましたか?
山本 一番の課題は「日予算切れ」の頻発でした。1ストアにつき約50キャンペーン、3ストア合計で150ほどを二人で運用していて、扱うSKU数は把握しきれないほど膨大でした。営業が持つ広告予算は大きくないため、限られた予算で大量のSKUを回すと、常に予算が足りない状況でした。特に澤浦の担当は退勤する頃にはほぼ予算が切れ、私の担当でも半分ほどで予算切れが起きていました。Amazonで最も需要が高まるのは夜間なので、朝の時点で予算が切れているということは、その分、競合に機会を奪われているということです。
ーどのように調整されていたのですか。
山本 オートターゲティングで回していたので、調整は主に入札額と予算ルールの設定でした。たとえば600円以上かけられるキャンペーンは18時以降に配信を強化し、600円以下のものは朝の出社と同時に停止して退勤前に再開する、という作業を手動で繰り返す。この作業に1日1〜2時間は奪われ、セール前には予算調整に毎回2〜3時間かけていました。導入前はベンダーセントラルのレコメンデーションを月に一度反映させるだけで、その結果が良かったかどうかも検証できていない状態でした。
ーセール期間中はどうされていましたか?
山本 Amazonでは予算の事前予約ができません。そのため、セールが土日に重なると、金曜の夜に予算を大きく上げておき、週末は祈るような気持ちで流れに任せ、月曜の朝に慌てて確認する……という運用にならざるを得ませんでした。
菊池 担当者の働き方を考えれば、土日や深夜にリアルタイムで調整を続けるのは、そもそも現実的ではありません。
予算内に着地させる入札調整は、150個のパズルを同時に解くようなものです。手動では到底時間が足りない。これが、多くのAmazon広告担当者が直面する運用のリアルだと思います。
ツール選定——「ハンドリングできる」ことが決め手
数あるツールのなかから、なぜミズノ社はShirofuneを選んだのか。決め手は、全自動ではなく、運用者の意志を尊重する設計にありました。
ーShirofune導入のきっかけを教えてください。
山本 2025年5月の「Tech Partner Day Tokyo 2025」で、登壇していたShirofuneを知りました。登壇企業の講演はすべて拝聴し、複数のツールを比較しましたが、惹かれた理由は、日本企業であること、そしてAIによる「全自動」ではなくプログラミングで運用している点です。他社の多くは「AIがすべてやってくれる」と謳っていて、ロジックが分からず運用がブラックボックス化する印象がありました。私たちには意図的に出しているキーワードもあるので、勝手に除外されるのは避けたい。その点Shirofuneは「このキーワードは効果が悪いですが、除外しますか?」と確認が入り、最終判断を運用者が下せる。そこが大きな決め手でした。
澤浦 3ストアを横断して一元管理できる点も大きな魅力でした。実はAmazon側からも「Shirofuneが合うのでは」と推薦がありました。
菊池 そこはまさに大切にしているところです。入札調整のような作業は自動で行いますが、どのキーワードや広告を出すかという戦略的な判断には、企業ごとのポリシーや意図がある。海外製のツールの多くは「数字が悪いなら勝手に止めればいい」という発想ですが、私たちは提案はするけれど、決定権はマーケティングチームに残す。人の力と機械の計算力を掛け合わせて成果を最大化する、という設計思想です。
山本 導入前がそもそも手探りで不安だらけだったので(笑)、むしろ期待のほうが大きかったです。改善提案を通じて私たちの視座も高まり、運用知識も得られるのではないか、と。
菊池 改善提案には「なぜその改善をした方がいいのか」の解説を添えることで、エデュケーション的な側面を持たせています。どういう観点で運用すればいいのか、新しい視点を提供することで、運用者のスキルアップを支援したいと考えているんです。
自動化による解放、そして工数は約8割削減
2025年5月にShirofuneを知り、8月に試運転、9月に本格導入と、Shirofuneの小島さんの伴走もありスムーズに進みました。導入後、ミズノ社の運用業務は一変します。
ー導入後、日々の運用はどのように変わりましたか。
澤浦 一番印象的だったのは予算管理です。以前はとにかく予算切れしないよう毎日画面を操作し、膨大な時間を割いていました。それがShirofuneでは、月初に予算計画を入力すれば、あとは自動で調整してくれる。土日をはさむセール期間も、使いたい予算額を入力しておくだけ。物理的な作業工数はもちろん、「予算が切れていないか」が常に頭をよぎる心理的な負担からも解放されました。そこに時間を割かなくて済むようになり、別のことに取り組めるようになったのが、本当に良かったです。
山本 セール期間中の負荷も劇的に下がりました。以前は予算の事前予約ができないため前日の夕方に手動で設定していて、急な会議が入ると作業が漏れるリスクもあり、ヒヤヒヤしていました。今はShirofune上で「どの日付に、いくら予算を使うか」を事前に設定できるので、非常に心強いです。
菊池 これまでは計画した予算を自分で実行までしなければならなかったのが、今は「この予算で、これくらいの売上を目指したい」と指示を与えるだけ。優秀なアシスタントに役割を委ねられるようになった、というイメージですね。

(菊池 満長 株式会社Shirofune 代表取締役)
山本 導入前は複数アカウントを一画面で確認できるか、相談できる担当者がいるかが気がかりでしたが、いずれも事前に確認でき、不安は解消されました。困ったときはShirofuneサポート担当の小島さんがすぐにショートミーティングを設定してくださいます。UIも直感的で、「これは何だろう?」と迷うポイントがなく、特に改善提案の機能は「なぜその改善をすべきか」まで解説してくれるので、広告知識が深まっている実感があります。代理店との会話も、以前より踏み込んだ内容になってきました。
ー運用工数は、どれくらい削減されましたか?
澤浦 導入前は日予算の調整だけで1日1〜2時間、他の作業も加わると累計で一日がかりのことも。それが今では1日数十分なので、感覚的には8割ほど削減された印象です。

菊池 Shirofuneを活用することでAmazon広告の運用工数は7〜8割削減できるケースがほとんどです。Meta広告だと5割ほどなので、それだけAmazon広告は運用負荷が高い。かつてのGoogle広告のように、代理店が何百人と張り付いて行うような緻密な作業が、いまだに求められる媒体だからです。
ー浮いた工数で、どのようなことをされていますか?
山本 購買データの確認やストアの改修、広告効果を見ながら今後の方針や施策を考えるなど、本質的な業務に時間を割けるようになっています。以前は作業で手一杯だったので、大きな変化です。
菊池 自分たちで「実行」まで担っていると、新しい施策も「作業が増えるから億劫」とブレーキがかかりがちです。PDCAの「A(実行)」をShirofuneに委ねれば、プランニングの心理的ハードルが下がり、「成果がいいから予算をこっちに寄せてみよう」といった仮説検証も楽しめるようになります。
澤浦 おっしゃる通りで、実行の負荷が下がったことで、PDCAサイクルが格段に回しやすくなりました。
広告費13%削減、ROASは+89%、収益も+67%
運用自動化の先に待っていたのは、大幅な成果改善でした。24時間365日、Shirofuneが休むことなく緻密な入札調整を繰り返すことで、広告費を抑えながら成果を跳ね上げています。
ー導入後の定量的な成果を聞かせてください。
山本 前年同期比でROASが+89%と飛躍的に向上しました。一方で広告費は13%減少。結果として収益は+67%です。広告費を抑えながら、売上を大きく伸ばせました。

菊池 理想的な成果ですね。人間には不可能な24時間365日の微細な入札調整を機械が肩代わりし、最も売れる時間帯に確実に広告を表示させる。さらに、配信を止めずに回し続けることで学習データが蓄積され、最適化の精度も高まっていきます。手動運用による日予算切れの機会損失が、それだけ大きかったということでもあります。稟議を上げる立場の方にとっても、こうした数字がきちんと出ることは大きいですよね。

ーセール期間の効果も上がっていますか。
澤浦 各種DEALや新生活セールでは確かな効果を感じています。以前は150ものキャンペーンを手動で運用していたので、「初日は予算を上げて、中日は抑え、最終日にまた上げる」といった傾斜配分は物理的に不可能でした。それがShirofuneでは簡単に設定でき、コントロールできている手応えがあります。土日に売上が強くなる傾向も見えてきたので、最近は曜日でのコントロールも試しています。
菊池 今後、浮いた工数を分析に充てれば、セール期の売れ方の傾向が見えてきます。初日にどれだけ投下すべきか、最終日はどうすべきか。予算配分を細かく設計するだけでも、効果は1.2倍、1.3倍と伸びる余地が十分ある。実際、導入後にセール期で過去最高の売上を更新した企業様もいらっしゃいます。手動では難しい作業もShirofuneなら具現化できる。作業は機械に任せ、その分の時間で人が考え、より良い指示を出すことに集中する。こうした試行錯誤の積み重ねが、ビジネスの成長につながっていくはずです。

CPCを下げて「安く広く」——セール運用の逆転発想
Amazonのセール期間は競合も予算を投下するため、「入札単価を上げなければ」と考えがちです。しかしShirofuneは、その逆をいく「入札単価を抑えて広く拾う」運用で成果を実現しました。
ー「広告の無駄打ち」に気づいたのは、どのような場面でしたか。
山本 以前のセール期間は、広告費はかかるのに売上がついてこないことがありました。たとえばブラックフライデーの際、Shirofune導入後の数字を前回と比較したところ、CPCが大幅に下がっているのに売上は上がっていた。その結果を見て初めて、「これまでの広告は無駄打ちをしていたのではないか」と気づいたんです。

菊池 セール期は「お金をかけよう」「入札単価を上げよう」と考える担当者が多く、単価が高騰してすぐに日予算が尽きます。しかしセール期はユーザーの検索数自体が爆発的に増える。母数が多いからこそ、あえて入札単価を下げて「安く広く」拾うほうが、予算内でより多くの顧客にリーチでき、結果として売上が最大化するんです。ただ、これを人の手でやろうとすると土日も深夜も画面に張り付くことになる。担当者の働き方を守りながら成果を最大化するうえで、運用ツールは欠かせないと思います。
山本 検索ボリュームが多いからこそ、あえて安く広く拾いにいく——。その発想は、手動運用のときには持てていませんでした。
運用者が「考える」ことで、本質的な成果が生まれる
ー運用面での一番大きな変化は何だと思いますか?
山本 「作業」ではなく「考える」時間を増やせたことだと思います。広告知識が増えたことで、代理店に任せている広告の中身まで確認・議論できるようになったのも大きな変化です。
澤浦 効果が見やすくなり、時間的な余裕も生まれたことで、以前より「思考する」ようになった実感があります。「このキャンペーンの成功要因は、別のキャンペーンにも応用できるのでは?」といった仮説が生まれ、試して、結果を見て、また次を考える。そういうサイクルが回り始めています。正直、全自動だったら担当者は画面をあまり見なくなる気がします(笑)。Shirofuneは改善提案がくるので、毎日チェックして判断する必要がある。見ているうちに「なぜこう動くんだろう?」と興味が湧いて調べたりする。そのあたりが、ちょうどいい塩梅だと思います。
菊池 Shirofuneを導入いただく最大のメリットは、運用の自動化以上に、担当者の脳が活性化することにあると思っています。「こう設定すると、結果がこう変わる」というサイクルが見えるようになると、自然と改善のサイクルが回り始める。全自動のブラックボックスでは「なぜ良くなったのか」が分からない。あえて人間の介入を残すことで、見て、考えて、実行し、振り返る力が養われ、プランニングが強化される。これこそが、Shirofuneが目指す姿です。
今後の展望——踏み込んだ分析と、知見の横展開へ
ー運用をどのように進化させていきたいですか?
澤浦 もっと踏み込んでいきたいのが分析です。「ROASが高ければよし」で終わるのではなく、新規顧客の流入にどれだけ寄与したのかを分析し、データの裏付けを取っていきたい。ROASが高いという理由だけで止めているキャンペーンも、新規顧客を流入できているなら続けるべきですから。
菊池 広告をきっかけに購入したお客様が、その後どれくらいリピートし、会社にどれだけ利益をもたらしているのか。LTVまで見えてくると、予算配分の考え方はさらに進化します。「ROASが高いことが本当に良いのか」という議論の答えも、ここにあります。
山本 もうひとつ強化したいのが、社内での情報連携です。営業担当が戦略を考え、それを広告チームに共有し、広告チームが設定・分析・改善・提案まで行う——そんな流れを作りたい。運用から得た知見を関係部署にフィードバックし、プロモーション全体の精度を高めていければと考えています。
菊池 Shirofuneには「モニタリンググループ」という機能があり、運用上の予算グループとは別に、商材ごとや季節ごとなど見たい粒度でキャンペーンをまとめられます。月次レポートも自動で作成でき、AIがサマリーまで出してくれるので、ぜひ活用いただきたいです。
おわりに
膨大な作業に追われる運用から、考える運用へ。ミズノ社は「機械に任せられることはShirofuneに任せ、人間は人間にしかできない思考と判断に集中する」という役割分担で、難しいとされるAmazon広告のインハウス運用を乗り越えました。
その分担こそが、広告費−13%・ROAS+89%・収益+67%という成果と、担当者の前向きな姿勢を生み出す原動力になっていました。
ー最後に、Amazon広告の運用に苦労している企業へメッセージをお願いします。

澤浦 当社のように商品数の多い企業には、ぜひShirofuneによる変化を体感してほしいです。機械に任せるべき作業を任せるだけで、効果も仕事の質も劇的に変わります。担当者が少なく取り扱いSKUが多い企業、異動が多く担当者が固定されにくい企業には、特に向いていると思います。
山本 専任の運用者がいない企業や、経験のない人材に運用を任せている企業にもお薦めしたいです。Shirofuneは「なぜこの改善が必要か」を教えてくれるので、日々PDCAを回しながら自然と知見が溜まっていく。Amazonのeラーニングで学ぶのも一つですが、確認しながら知識を高めていけるShirofuneは、社員教育の側面でも大きな価値があると感じています。日次で改善できる体制を作れること——それが、これまでの運用との最も大きな違いだと感じています。
<取材・文 = 藤井恵>






